死ぬために僕がしたこと。ver.7

4, Apr, 2223, 12:52:11

去年母さんは僕に、新しい年になったらきっと良いことが起きるわ、と言った。
環境の変化が起きて心も成長して、前みたいにふさぎ込む様なことなんてなくなっちゃうわよ。
興味が有ることにはどんどん挑戦しなさい。
あなたはとてもあたまがいいんだもの、もっと自信を持って生きなさい。

僕はそれを聞きながら思わず笑い出したので
母さんも一緒になって笑っていた。
食事の後テーブルの脇で立ったまま、二人して全然違うことを理由に笑った。
母さんは僕のいない世界で僕からとても離れたところにいる。
それは今も変わっていない。

まあでもよかった。
僕にとって母さんはとても可哀想な人だから。
自分より先に子供が死んでしまう僕の可哀想な母さん。

16歳になったら死のうと思っていた。
理由なんて無かった。
だけど生きていく理由も無かった。
多分それが死にたい理由。

僕は毎日死ぬ方法をアカシックレコードで探した。
200年前には自殺する方法なんて沢山有った。
死亡率も病気で死ぬ人より圧倒的に多くて、年間に2万人も自殺者がいた。
病気や年老いて死ぬより自ら死を選ぶ人が多いなんて人間て本当におかしいの。
でもわかるよ。
辛い、苦しい、悲しい、惨めで醜い、救いようが無い。
死にたいよね。
どうせいつか死ぬんだから我慢する必要なんて無いよね。
シネ、死ね,シネ、死ね,死ね。
みんないつか死んじゃうんだから死にたい人は死んだらいいよ。

僕はそう思うな。
平均的に幸せな暮らしをしていて
何も悲しいことや辛いことが無い僕が死にたいって思うんだから、みんな死んじゃえばいいよ。
方法?
何が良い?
なんでも教えて上げるよ。
どんな風に死にたい?
誰にも迷惑をかけない方法がいいのかな?
それとも希望が有るとか?
いってよ。
遠慮しなくて良いよ。
何が知りたいの?

え?死にたいけど生きたい?
なにいってるの?
冗談でしょ?
え?
辛い?
なにが?

ねえ生きてて何が面白いの。

死にたくなる空、
青くて、青すぎて辛くなる。
その青さが僕に不可能を押し付ける。
もうやめて、もうやめて、もう、やめて。
もう、やめてよ。
もういいよ。
もうなにもいい。
太陽の灼熱の残酷さだけが本当の痛みの理由を知っていた。
だから僕は、真夏で外で灼熱に溶かされながら
あたまの上にある遠い太陽を見上げて叫んだんだ。
(2015 年 7 月 22 日午前 11 時 48 分、気温 36°C)

こんなせかい、もう、いやだ

blog_5 - 182

死ぬために僕がしたこと。ver.6

2, Jun, 2015 06:56:04

生きている事が正しくて、自ら死を選ぶ事はとても悪い事だと決めたのは誰。
生と死は対等。
死んだら誰かが悲しむから、死ぬのはダメなの、
生きてたら僕が悲しむんだよ、それわかってるの。
僕の命は僕のものだよ。
誰にも奪えない。
リリィシュシュのすべて、
観ながら
僕は朝からこんな事書いてる。
バカみたい。
どうでもいいこと。
生きてるから生きてるだけ。
死んだら死ぬだけ。
僕はこの世界が本当に大嫌いだからね、
だって、僕の思い通りにきみたちが動いてくれないからさ。
つまんないんだよ。
全然楽しくない。
早く用事を済ませて
しまおう。
ジョゼと虎と魚たち、
観ながら、
悲しい気持ちになって
リリィシュシュのすべて、
観たあと、
冷たい気持ちになって
落下する夕方、
観て
死に方を考えてる。
今は生きてるけど
それも
夢。

blog_5 - 181

死ぬために僕がしたこと。ver.5

2, Jun, 2221, 02:42:08

僕は14歳で初恋をした。
何か月付き合ったっけ。最期は酷い終わり方だった。
別れた次の日、彼女は手首を切って自殺した。
それが僕の最初で最後の恋愛。
葬式には行かなかった。

不意に思い出したきみとの別離を
円筒形のホログラフィックで目の前に浮かべて瞼を2回素早く閉じると、
ホログラフィックの表面を6480時間分の記憶イメージときみの声が一瞬で全てを埋め尽くしていった。
そしてそれは徐々に円筒形ではなくなりDNAの様なスパイラルを描いて
連なり重なってレイヤードされて独自のネットワークを築きあげると
全ての記憶イメージと全てのきみの声を3ナノセコンドでひとつのAIに収束させた。
AIは記憶イメージの連続的な連なりからきみを解析すると
スパイラル状のホログラフィックを解体し、きみの姿を再構成した。(2, Jun, 2213, 02:42:12)
きみの姿をまとったAIはきみの記憶イメージから作られた。
つまり、ホログラフィックのきみの思考はきみを限りなく精密に模倣する。
だから、このとき、きみが僕に言った言葉は全部きみの言葉、

「どうして、別れたの? どうして。
ここは全部真っ白で何も見えないんだよ。
きみは何時来てくれるの?
私もう少し生きていたかったよ。
でも、辛かったの。
私きみのことが大好きだったんだよ。
きみは私のこと好きじゃなかった?
どうして付き合ったの?
きみが犯した罪の殆どは私が許してあげる。
でも、あの日のことだけは絶対に許さないよ。
私の手を離したあの日のこと。
あれだけは絶対に許さない。
許さないから。
早くおいで。

罰をあげるから。

(わたしあなたのことほんとうはだいっきらいだったんだよどうしてきづいてくれなかったのもしもあなたがわたしのほんとうのきもちにきづいていたらきっとわたししんだりしなかったのにあなたってぜんぜんわたしのことわかってなかったんだよわたしがきみのことあいしてるっていったからそれをしんじていたんでしょあいしてるなんてわたしへいきでうそでいえるんだよだからわたししんだことほんとうにこうかいしてるあなたさえいなかったらわたししぬことなんてしなかったよあなたってあいしてるっていったらかんたんにしんじるんだもんわたしばかみたいじゃないあいしてるなんてなんかいもいったけどぜんぶうそなんだからねしんじられないよほんとうにもうあいしてるってなんかいもセックスしたけどわたしあなたのことはじめからだいきらいだったわたしばかだからときどきおかしなことするんだよそれはわたしがわるいことだけどあなただってあいしてるってことばをかんたんにしんじるなんてどうかしてるとおもうよでもごかいしないでねわたしだれにでもあいしてるってうそつくわけじゃないのわたしがあいしてるっていったらそれはほんとうにあいしてるからなのあなただけなのあなたにだけうそついたのだってあなたあいしてるっていってほしいきもちがみえみえなんだもんなんかわたしそれであなたがかわいそうになってあいしてるってうそついたんだよけっきょくあなたがあいをもとめすぎたからわたしがしぬことになったんだからねほんとうにわたしあなたなんてだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいあいしてるなんてぜんぶうそあなたなんてだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらいだいきらい)

そのあと僕はアカシックレコードで「ジョゼと虎と魚たち」を観た。

blog_5 - 180

死ぬために僕がしたこと。ver.4

1, Apr, 2202, 09:21:23

公園に二つの滑り台が並んでいる。
一つは幼児用の小さな滑り台。
もう一つは子供用だが高さが5メートルはあるスリリングな滑り台。
何時も幼児用の滑り台で遊んでいた僕は、
その日何故か大きな滑り台が気になって仕方なかった。そのときの僕は3歳でまだ小さな幼児だった。
僕は何時もは見上げるだけだった滑り台の階段をゆっくりと登り、最上段に着くと周りの景色を見た。高い滑り台から見下ろす風景はとても悲しい色をしていた。下を見るとその高さに怯えて震える。
僕は滑り台の最上段で考えていた。
僕はどうしてこんなに怖いのに高い滑り台の上にいるんだろう。
僕はどうしても高い滑り台で遊んでみたかったわけじゃない。
じゃあ、どうしてここに来たの。
(僕の初めての、)

僕は最上段の手すりから両手を離す。
さよなら、せかい。
僕は最上段から飛び降りた。

意識が戻ると激しい痛みで泣き出した。
僕は血まみれで泣き喚いているところを通りかかった大人に保護されて病院に運ばれた。
アゴと頭を強く打ち、全治3カ月の重症。
生命に支障はなし。
僕の初めての自殺は失敗に終わった。

治療のあいだ、母親がお見舞いの度に持ってきてくれた大好きなアイスクリームを口に入れるとアゴに激痛が走った。
冷たくてとても痛い。
それでも食べた。
母親が笑うから食べ続けた。
冷たくてとても痛いアイスクリーム。

ただいま、せかい
僕、死ねなかったよ。

blog_5 - 179

死ぬために僕がしたこと。ver.3

4, Mar, 2213, 15:56:50

退屈な授業だった。
これだけ文明が進んで超高度情報化社会になっても大人は子供に苦労させることが美徳であるかのように教育に熱意を注いだ。
アイコンタクトモバイルがあればどんな情報や計算もすぐに透過スクリーンに映し出してくれるというのに、くだらない。
今日は綾菜の命日だと云うのに。

雲が白く見えるのはどうして、チェック
>雲が白く見えるのはミー散乱によるものです。
ミー散乱、チェック
>ミー散乱(ミーさんらん、独:Mie-Streuung)は、光の波長程度以上の大きさの球形の粒子による光の散乱現象である。粒子のサイズが非常に大きくなると、ミー散乱と幾何光学の二つの手法による計算結果が類似するようになる。なお、波長に対して粒子(散乱体)が大きい場合は回折散乱が、光の波長の1/10以下になるとレイリー散乱が適用される。グスタフ・ミーにより厳密解が導かれたとされているが、同時期にローレンツやデバイなども厳密解を得ていた。散乱の特徴として、粒子のサイズが大きくなるにつれて前方への指向性が強くなる。その際には、側方および後方へはあまり散乱しなくなる。雲が白く見える一因である。これは雲を構成する雲粒の半径が数~数10μmの大きさで、太陽光の可視光線の波長にたいしてミー散乱の領域となり、可視域の太陽放射がどの波長域でもほぼ同程度に散乱されるためである。

ほらね。
僕は目の前に浮かぶ透過スクリーンをタップして、授業をボイコットし、アカシックレコードにアクセスする。

>MUSIC
>M – PRINCESS PRINCESS

綾菜が遺書を書きながら聴いていた曲。
綾菜も僕と同じ自殺志願者だった。そして2年前に本当に死んだ。

アカシックレコードは膨大なアーカイヴライブラリーだ。
今から遡って約200年前、第二次大戦が終わってから、大三次大戦が終わるまでのあらゆるメディアのライブラリーを都心政府はその内容が暴力的、猥褻的、倫理観に欠けるとして一切の例外無く排斥し凍結した。今では誰もそれを知ることは出来ない。
僕の大切なものの殆どはそこにある。
既になくなってしまった音楽、映画、映像、テキスト、もうここにはないものがそこには沢山ある。
アカシックレコードがどういった理由で作られたのかは知らない。
アカシックレコードは完璧なセキュリティ・エンゲージ・エンバイロメントであり、高度な最先端医療セキュリティに守られている。
そこにアクセスするためにはCongenital Disorder Glycosylation Type Twoと呼ばれる稀に見る特殊な遺伝形成が必要であり、その遺伝形成を有する人間しかメンバーにはなれない。この特殊で強固なセキュリティがアカシックレコードのメンバーを血統で支配した。メンバー以外は誰もアカシックレコードのことを知らない。

ねえ、アカシックレコードって知ってる?

アカシックレコード、チェック
>404 not found error

アイコンタクトモバイルで調べても載ってないよ。
超極秘なんだ。
でも、四季には教えて上げる。
アカシックレコードっていうのはね・・・・・

僕にアカシックレコードを教えてくれたのは綾菜。僕の姉。
綾菜はアカシックレコードのメンバーだった。だから、同じ血筋の僕もCongenital Disorder Glycosylation Type Twoを持っていた。僕はすぐにアカウントを申請して認証された。そこにはありとあらゆる情報があった。自殺するための方法、音楽、映画、テキスト、etc。
その時からアカシックレコードは僕の大切な場所になった。
既になくなってしまったものがそこには全部ある。
綾菜だけ何処にもいない。

4, Mar, 2211, 10;09:05

>M – PRINCESS PRINCESS
>One repeat

空が近い。
ここから私は落ちて死ぬんだ。
ううん、本当はもう落ちていたのかも知れない。
私は今までずっと底の無い空を落ち続けてきたんだ。
みんな何処にいるの。
私,此処にいるよ。
でも,本当は何処にもいたくない。
だから、笑ってよ。
見えないものが欲しかったけど、そんなのないってわかったから。
もういいんだ。
空が青いよ。
青に染められていく。
吐き気がするよ。
青色が好きっていつも言ってたけど
本当は大っ嫌いなの。
きみがくれた青い薔薇、本当は全部燃やしてたんだ。
飾れなくてごめん。
でも、気持ちは嬉しかったよ。
四季、聞いてる?
これは生まれた時から決まっていたことなの。
星が森へ帰る時間だ。
私もう行くね。
さよなら
私、

自殺と遺伝子の関係、チェック
>SKA2と呼ばれる遺伝子が自殺に関係していると研究。
SKA2、チェック
>日常生活の緊張に対する特に目立たない反応で終わるかもしれないものを、自殺願望や自殺行動に変えることに重要な役割を担っている。SKA2は、マイナス思考や衝動的な行動を抑制する脳の部位に作用するといわれる。この遺伝子に異常があると、ストレスに反応して体内で生成される多量のホルモンをうまく抑制できなくなると考えられる。SKA2遺伝子は、マイナス思考を抑制し、衝動的な行動を制御するために機能する。SKA2が十分に存在しなかったり変異していたりすると、脳は異常レベルのストレスホルモン、コルチゾールを放出する。これまで集められた325人から採取した血液サンプルを検査した結果、SKA2の変異が認められた血液の持ち主の約80%は、自殺願望があったり、自殺を図ったことがあることがわかった。自殺した人はこの化学物質の脳内の値が高いことから、研究チームはこの物質と自殺との間に注目した。実験では80%の確率で、自殺を考えたことがある人や自殺未遂の経験がある人を言い当てたという。

blog_5 - 176

死ぬために僕がしたこと。ver.2

18, Mar, 2215, 10:20:28

母親の運転する車から降りて、皆がいる列の最後尾に並んだ。
空は春らしく霞がかった青空であちらこちらで小鳥の声がしている。
皆といっても全く話したことのないクラスメートなので誰も僕には話しかけてこない。
それは僕にとって有り難いこと。
周りを見渡せば、一様に白い服を着て真剣な顔で葬儀の伝統であるかのように誰も声を発せずにただ車の到着を待っている。

>What?
魂の無いただの灰を。
>Why?
ただの灰になんの価値があるのか。
きっと価値なんて無い。
これはただの儀式。
レストランで食事をしたらクレジットを支払う。
それと同じ。
誰かが死んだら葬式をする。

一際大きくて真っ白い車がゆっくりと入ってくる。
参列者が待ちこがれていたかのように列を崩し車を中心に列を組み直す。
車が止まり運転手が後部座席を開けると白いつばが長い帽子を被った女が降りた。
白いレースに隠れて顔は見えない。
女は両手に滅菌処理されたアルミニウムの円筒形のボックスを抱えている。
白いロングドレスが風に舞った。
一礼して女は列の真ん中を歩み進んでいく。
参列者もそれに続いてゆっくりと進む。
広い十字路の一番奥、荘厳なレリーフを施したプレートの前で女は立ち止まる。
プレートに刻まれているのは僕の友人の名前だ。

>Who?
僕が唯一話をするクラスメート。
>Lady?
友人の母親。

友人の母親を見るのは初めてだった。
葬儀関係者と見える白いスーツの男がプレートに触れるとカバーが音も無く開いた。
そこに友人の遺灰を納めたボックスを入れる。
母親が後ろになした列に振り向いて深く長い礼をした。
それは俯いて泣いているようにも見える。
参列者は皆沈黙を保って悲しみを演じていた。
僕だけが違う。

友人と僕は自殺志願者だった。
二人とも何度も自殺を試みたことがあり
その度に失敗した。そういう仲間だった。
彼がよく言っていたのは、どうして生きなければいけないのか。ということ。

>NOT
どうして死んではいけないのか?
>Anser
生命は尊く何よりも大切にするべきものだから。

彼がどうして死にたいと思っていたのか、それはよくわからない。
けれど、彼の場合は衝動が先に有ったのだと思う。
理由より先に衝動が有ったんだ。
死にたい衝動。
それだ。

彼との最後の会話のログは残っていない。
ヴァーチャルじゃなく直接会って話したから。
これは記憶の一部。

>やあ。これから死ぬよ、爆弾を手に入れたんだ。
どこで?
>秘密。
何処で死ぬの?
>それをききたくてわざわざ来たんだ。誰にも迷惑がかからない場所知らないかな。
夜の代々木公園なら大丈夫じゃないかな。
>そうだね。有り難う。
うん。
>今日でさよならだよ。
うん。
>何か欲しいもの有ったらあげるけど。
何も無いよ。
>きみはいつやるの。
近いうちに。
>そう、じゃあ。
うん、健闘を祈る。

気がつけば皆が花束をレリーフに捧げて友人の母親に挨拶している。
僕も皆と同じように静かに歩いていく。
花束をレリーフに捧げて、ゆっくりと友人の母親を見る。
この人は何も知らない。

>Judgement
僕があなたの息子さんの自殺のお手伝いをしたんです。
だから、もしかしたら半分くらいは僕が息子さんを殺した様なものです。
それでもこの花束を受け取ってもらえますか。
僕も彼もただ死にたいだけなんです。
自殺に理由なんて要らないんです。
それでもわかってもらえますか。
僕を許せますか。

生きていることが美徳だなんて誰が決めたのだろう。
誰もが一度は必ず死ぬと云うのに。

>Fact
命は一度きりだ。
だからといって命の価値を押し付けられるのはもう嫌なんだよ。

blog_5 - 175

死ぬために僕がしたこと。ver.1

18, Mar, 2218, 09:20:20

世界が裏切るなら、僕も裏切る。
そう言い残して僕はこの世界を去った。
つまり、死んだんだ。

空間が揺らいでいるように見える都心を形作るのは
光学迷彩を施して外からは中が透明に見える最新のパターンを施した高層ビル群。
商業、公的機関、オフィス、住居、用途は様々、都心で算出されるGDPはこの国の約80パーセントに及ぶ。
そしてここで暮らしている人々はこの国の人口の1パーセントにも満たない高額納税者だ。
第三次世界大戦後、資源の乏しかったこの国は最大の経済効果をあげるための戦略を押し進めた。
効率だけを優先した結果、有力な人材は都心へと集められ都心は拡大しやがて経済も回復した。
しかし都心への一極集中は地方都市の経済に壊滅的な打撃を与え疲弊させ、地方都市はことごとく滅んだ。
現在、この国は都心だけで成り立っている。この国の人口99パーセントを置き去りに。

20, Mar, 2215, 20:42:20

目を開けて起き上がろうとすると何かが僕の右手を引っ張って邪魔をした。
ふと意識の混濁から目覚め、右手に目をやるとたくさんの透明なチュープが皮膚から伸びている。
そのとき僕は瞬時に悟った。
ああ、またしくじったんだ、と。
優しいボリュームでアラームが鳴っている。
僕の右手を押さえている機械のパネルには僕の生命活動の詳細が記録され続けている。
最新の状況のところに僕が目覚めたことを示すパターンが表示されていた。
僕が初めて自殺しようとしたのは何歳の頃だっただろうか。
少なくても今回を含めて10回は自殺を試みたことになる。
全てしくじってしまったけれど。
高度に医療が発達した現在、自殺することは人を殺すことよりも難しい事実となった。
僕はベッドに倒れ込む。
ああ、なんて嘆かわしいことだろう。
自分の命さえも簡単に捨てることが出来ないなんて。
この言葉を何度となえたことだろう。
少なくても死のうとした数だけはあったはずだ。
そして、僕にはこのあと、大量の向精神薬による治療と26ヶ月に及ぶ心理カウンセリングが待っている。
そのことを思うとさらに憂鬱になった。
僕は天井に映し出される青空を睨みながら、次は飛び降りがいいかな、と呟いた。

blog_5 - 174

悲しみの上限。

12th/April/2008/21:41
Interlude ~ 暮れゆく滴は、闇。~

夕暮れにみとれていたら、
黄昏は、僕だった。

(数分後の未来。)

暮れてゆく自分を見ている僕は
いったい、誰なんだろう。

枯れた花に、みとれていたら、
その花びらは、左手のくすり指だった。

枯れていく自分を見ている彼は、
どうして自分の名を名乗らないんだろう。

いつから、暮れていたのだろう。
たぶん、ほんの少し前からかもしれない。

彼の中に
暮れゆく滴は、闇。

その滴が言う。

「あなたは一人で生きなさい。」

暮れゆく滴は、闇で、
降り積もっていく闇の中に、
    ひとりの僕を見つけるだろう。

それは、闇で、暮れゆく滴なんだ。
流れていけばいい。

どこまでも、暮れていけばいい。

/////////////

14th/March/2015/18:40

私が私であるように簡単なルールで未来まで続きますように。
この世界の悲しみを全部入れても大丈夫な器になれますように。
どうかそれでも壊れませんように。

blog_5 - 173

優しく殺して。

15th/May/2007/02:27
だから、殺してくれればよかったのに。

狂ったあの人は
いつも夢のなかみたいな
世界をみていた
遠くて手の届かない過ぎた世界
列車にひかれるより
ジャガーにひかれることを
望むような人だった
絶望していても優雅に憂鬱だった
小さい女の子がよってきて
彼のまえでおじぎをした
彼は女の子の手の甲に
キスをして
かけらを奪った
女の子は夕暮れが嫌いだと言った
彼は
ぼくは雨がきらいだと言った
きみは雨みたいだとも言った
首をしめて殺した
それは彼の空想だったけれど
彼にとっては現実とかわらなかった
奪ったものは
自分自身だと彼は
気付いていない
その夢は夕暮れと名付けた
橙色にそまった女の子の
柔らかい髪を思い出す
水彩でできた彼のベッドは
淡い水色で
彼はその中で泳ぐ
真っ暗な深海を目指して
もういいよ
殺していいよ
痛くしてもいいよ
もうぼくの絶望は
退屈すぎて
(何人も殺したくせに
夏まであとどれくらいだろう
あのこは幸せになれたかな
(きみが殺したあのこのこと?
意味ないよ
そんなこと考えても
それより
どうやってあのこを殺したの?
あんなにきみを暖めてくれたのに
どうやって殺したの?
覚えてないよ
ここはどこだろう
白線の上を歩きながら
真っ白いジャガーを待っている
彼はそういう人間だった
そして彼自身が雨だった

/////////

6th/March/2015/19:00

僕はもう死んでもいいよ、と俯いて言った。
その先に未来が無くても僕は死のう、と続けて言う。
悲しみの欠片に重ねる思いがなくなって酸欠になって苦しくて吐いた。
ここで切ってと首筋を差し出して茜色に告げる。
太陽が落ちると暗闇に寄り添って泣いた。
そんなきみだから
見ているこちらが辛くなって手を差し伸べてしまう。
おいで、ここへおいで。
もういいよ、もう死んでもいいよ。
僕が殺して上げるからおいで。
(優しく殺してね。)

blog_5 - 172

忘却の虜。

10th/April/2007/04:13
赤、黄色、紫、橙、群青、ひまわり。

雨が 降っている。
 そして、時計の針に恋をする。

 赤。 ようこそ、赤の世界へ。
  目がくらむような この絨毯の上を 静かにあるく。

  振り返ると 誰かの涙が 続きを 待っていて
   ベンチの上に 紫が 待ち受けている。

 黄色。 目隠しされた時間の 整合性が ため息をついていて
  ゆるやかに 絶望していく
ガフの部屋では 入れ替わり 立ち替わり 輪廻と孤独が
  ひとつの 玉座を 奪い合っている。(切り裂いてしまおうか?)

 紫。 ベールにつつまれた紫。
   なにが 嘘で 本当か。そんなことを1000年も議論している。

     それは まったくのナンセンス。紫は死にゆく運命。

 橙。 うるさい。手のひらで口をふさぐ。
   (殺した。何度でも、殺した。)

 群青。 気がつくと インクのしみが 狂った世界図を描く。
   スプレーされた 真っ青な霧。
     その霧の中で わめきちらすのは

      砂時計の脈絡のない 秒。

   いい? ここで は 全部 (死んでよ。お願い。)
             あるようでない。

         ひまわり。 チタニウムで できた 花びら。

     花びらが 切り刻んでいく、時間軸。あしたが 今日に。
        今日が きのうへ。
 時間軸を バラバラにして ぼくは ゆっくりと命をけずる。

  いい。よく聞いて。
    アカシックレコードによれば
          僕は きみを殺すことになっている。

        待ってて。殺しにいくから。
          悲しまないで。この世界はきみには 苦しすぎる。

     ようこそ、僕の世界へ。
          おねがい。死んで。

///////////

5th/March/2015/18:38

毎日が夢の世界。
壊れていく世界の果て。
ここではもう生きてはいけないと知る。
レースを翻して捨てていく日常。
こんなはずではなかったと後悔することさえない怠惰。
忘れていたのは生き方か死に方か。
午前0時にリセットされるシンデレラタイム。
忘却の虜。

blog_5 - 171