さよならのこと。3

私、12月って大嫌いなの。
街中を埋め尽くすイルミネーションは私の憂鬱を加速させるし
大きく飾られたツリーは私を罰するための磷付の十字架にしか見えない。
大気は透明度を増して空を更に青くするし(私は青が大嫌い。)、
北から吹く風は百戦錬磨の殺し屋のように私の頬だけを刺してくる。
街を歩く人の顔は大抵がほころんでいて両脇に大きな荷物を抱えている。
百貨店には世界中から集めてきたんじゃないかと思うくらい大量のクリスマスカードが並んでいて、
それを買い求める客が列をなして品定めしている。
みんなが浮れている、楽しんでいる、喜んでいる、幸せそうな顔をして。
私の憂鬱は更に加速する。
フラワーショップの入り口に咲いた大きな赤い葉を広げたポインセチアが死刑判決を下す裁判官のように私に問いかける。

「あなたはどうして死なないの。」

答える必要なんてない。
私はさよならなんだから。
赤なんて嫌い。
緑も嫌い。
クリスマスが大嫌い。
サンタクロースが嫌い。
クリスマスが私を悲しく辛くさせる。
早く終わってよ!!
もう来ないでよ!!!
あぁ!クスリがきれちゃった・・いたいよ。辛いよーーーーー。
死にたい!
ねぇ、だれかクスリ持ってない。
だれかねぇちょうだい。
おねがいだからちょうだい。
もうわるいことしないからちょうだい!
どうしてわたしだけ・・・
いつも・・ねぇ
だれかあちょうだい・・
おねが・・い・
ちょうだい・・
くるしい・よ・・
じゃあ!もう死なせてよー!!
こんな辛いのやだよー!
もうしなせて・・
ころし・・てよ・・

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (10)

さよならのこと。2

まとーーう、待ってよー。まとうー、ちょっと待ってよ、まとう。
後ろから走って追いかけてくるさよならの声に、仕方なく立ち止まってちょっと面倒くさそうに真冬は、はあ、と溜め息をついた。

>全くこの暑さには本当にうんざりだ。
>この世界から夏なんて消えてしまえばいい。

追いついてきたさよならが真冬に向かい合うと、
真冬ってさ、夏嫌いでしょ。絶対そうだよ。名前からしてそうだもん。あははは。と真冬を指差して笑った。

>つうか太陽眩しすぎだろう。

真冬は右手をゆっくりとまっすぐに上げると人差し指を太陽に向けてこう言った。
闇を返せ。沈黙しろ。燃え尽きろ。消え去れ。

あははは、まとうー、太陽なくなっちゃったら私たち死んじゃうんだよー。
まとうって本当におかしいんだからー。

>いいんだよ。それで。全宇宙からしたらこの銀河のうちの一つの恒星系が消えるだけだ。何にも影響ない。

ねえ、まとう、アイスクリーム食べにいこうよ。
さよならは真冬の右腕にしがみつきながら不機嫌そうな顔を覗き込んで笑顔で言った。

さよなら、暑いんだよ、くっつくんじゃねーよ。離せよ。そう言いながらも真冬はさよならから腕を離さなかった。
まとうー、アイスクリームー。いつものところー。行こー。
唐突に真冬が言う。
さよならー、お前俺が死んだらどうする。

(世界は果てしなく広いのに、自分と云う存在は思考に限定されている。)

まとう、、、、、、、何言ってるの。まとうが死ぬわけないじゃない。まとうは死なないよ。
バッカみたい。まとう。あはははあははは。とさよならは笑い転げた。
まとう、アイスクリームいこー。アイスクリームーー。
もしもだよ、もーしもーのことー。真冬がそう言い終わる前にさよならが遮って言う。

まとうは私が守ってあげるから何が有っても死んだりしないよ。
私には力があるの。だから私はその力でまとうを守る。

言い終わるとさよならはまた笑顔に戻って真冬の腕にしがみついた。

まとうーー、アイスクリームいこーーよーー。
はやくーーー。
わかったよ、だーから、あんまりくっつっいてくんなよー。
いやだよー。絶対に離さない。あははー。

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (9)

さよならのこと。

私はなんのために生まれてきたのだろう。
なに不自由のない暮らし、
私の周りにはいつも人がいて
私の世話をしてくれる。
世界中にはいまたべるものもなく死んでいく人間もいるというのに。

私がさよならというだけで人の群れが割れる。
私がさよならというだけで人が恐れる。

(私は当時まだ12歳で世界を知らないただの女の子だった。)

それでも時間は私に様々な役割を押し付けてきた。
私は何をしているのだろう。
私は何をさせられているのだろう。
それに気づいたのは姉様の死後、私に付き従う大勢の人間の私への服従。
私へ発せられた「女王様」という声。
私の役目は姉様のあとをついで女王闇になることだった。
そして、私はさよならから女王闇になった。

私はこの世界を統治する。
悲しみを統治する。
不幸を統治する。
絶望を統治する。
失くしたものを統治する。
命を統治する。
女王闇として命令をくだす。

私はそれを百年続けた。
私は狂っていった。
私は自我を制御出来ず
闇夜に荒れ狂う嵐の海原を進む船のように軋みながら生きた。
何人殺したのか知らない。
誰を殺したのか知らない。
私は赤い月に囁かれるままに殺した。
歯車が人の血で出来ていることを知った。
この世界は人の血で動いている。
だから私は殺す。
私の世界は闇だから光しか見えなくて良い。
もっと光り輝け。
私の闇はもっと深いぞ。
冷たい風に慣れてしまえば痛みさえ心地いい。
私は忘れていくさよならだったことを、
私は最初から女王闇だったんだ。
私の闇を恐れるが良い。
私の闇を忘れるが良い。
それでも私は此処にいる。

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (7)

虚無は13番目に殺し合う。

手についた血を洗い落とす。
何時間洗い続けても消えない血を、ジンロウは何度も何度も手の皮が擦り剥けるまで洗い続けた。
手のひらの血が自分の血だと気づかないままジンロウは何時間も洗い続けている。

俺は血が好きだからな。いいんだよ。
俺はこの時間が大好きだぜ。

独特の金属のサビの様な匂い、黒くて赤くてねっとりと温かい血だけがジンロウの好物。
プロトコルナンバーズ13、ジンロウ。
永遠や虚ろ、語り、他のナンバーズとジンロウは全く違う異質なもの。
他のナンバーズは宿主から意思を持って生まれ各個人の人格を持っている。
ジンロウだけは女王闇によって人為的に作られた個性を持たない個性。
ジンロウという人格は疑似人格であり、人を模倣しているだけで人ではない。
ジンロウに備わっている行動原理は2つだけ。
女王闇に従うということ。
邪悪であるということ。
女王闇の後始末をするために作り出された唯一魂のないナンバーズ。

ジンロウ、あとは頼んだぞ。

姉様、まかせろよ。
全員ぶっ殺す。
死んでるやつもぶっ殺す。
死ね、ほら、死ねよ、ふふん。
楽しいぜ。
なに生きてんだ。
死ね。
俺の前で生きてていいのは姉様だけだ。
だから、お前ら全員死ね。

血が大好きで、
殺しが大好きで、
姉様が大好きなジンロウ。
本当は存在しないジンロウ。
そんなジンロウが女王闇に何度もいう言葉、
「姉様が大好きだぜ俺は。」。
魂のないジンロウ。

ジンロウ、私はお前のことが大嫌いだ。

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (6)

宮廷図書館アッシュールバニパル。

図書館にいるといつも落ち着かないのは何故だろう。
広大な空間に自分以外誰もいないからだろうか。
けれど私はいつも此処にいるし、ここから見上げる星空も好きだ。
孤独な心を満たしてくれるのは知識しか無い。
私にとって知識とは麻薬であり、
簡単に今を忘れさせてくれる阿片に似ている。
新しい知識を得れば満足するが、すぐにまた欲しくなる。
そして新しい知識は私を賢くし、同時に悲しくもする。
知れば知る程この世界は狭くなり私の居場所を限定する。
悲しいが知ると云うことは必ずしも自分の願った結果ではない。
寂しさを埋めるために知識を増やそうとした結果絶望する真実を私は知っている。
私自身が絶望であり、私自身が世界であり、私自身が知識である。

この城の宮廷図書館にはテーブルと椅子は一対しか無い。
それはここが女王である、私一人のために作られている図書館だからだ。

入り口の重厚なドアに刻まれている精巧なレリーフには知恵の実が刻まれていて
そのドアを押せば、見えてくるのは、一つの街を丸ごと飲み込んでしまう程の広大な空間。
見上げれば遥か遠くにある天井は厚さ1000mmのサファイアクリスタルガラスが覆う天窓になっていて、
見たければいつでも空を見ることが出来る。
館内には見渡す限り同じ形の本棚が等間隔で並び、その本棚の群れは巨大な迷路を形成している。
此処に収集されている世界中の図書、視聴覚資料、録音資料は
紀元前7世紀まで遡りそこから現在までのあらゆる情報が保管されている。

私だけのための世界一大きな図書館である。

星が綺麗に見えるのは冬の特権だな。
よどみが無くはっきり見える。
誰かがどこかで私の夢を見ているな。
この闇が続く遠い何処かで私に誰かが殺されている。
残忍だろうか、恐怖するだろうか、
悲鳴を上げて逃げ惑い、私にすがって命乞いするだろうか。
切り刻んでやろうか。
それとも毒で逝かせてやろうか。
死にたいのだろう。
どんな死でも死は死だ。
痛みを恐れるな。
死ねば消える。
だから私の願い通りに残忍なやり方でお前を殺させてくれ。
いいだろう?
今日は何人死人が出るか、楽しみだ。

なあ、ジンロウ。

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (5)

氷点下の理由。

私は本が好きだ。
本を読んでいる時間だけは、私が自分が誰であるかということを忘れさせてくれる。
私は自分を好きでいたことが一度も無いから。
特別に女王であることが嫌なのではなく、
例えば私が世界の果てではなく、世界の中心に住む普通の人たちの中の誰かだったとしても
やはり私は自分のことを好きにはなれないだろう。
私はなんのために生きるのか。
生きると云うことはその先に必ず死があるということ。
人は誰でも例外無く必ず一度死ぬ。
死は無だ。死後の世界なんて無いし、輪廻転生して生まれ変わることもない。
一度生まれ、一度死ぬ。そして、無。何も無い。
生命はその繰り返しだ。
下等生物や植物なら、生きるために理由が必要だなどということはないだろうが。私は違う。
私には理由が必要だ。
生きると云うことは命の奪い合いだ。
人間なら誰でも幸せを願う。
幸せな状況とは他人よりも自分が幸せであるということを意味する。
だから幸せと云う状況の判断は比較対象を必要とする。

幸せになるために人間は戦争や競争に勝たなければならない。
戦争という行為が有史以前から一秒もやんだことがないのは足りないものを得るため。
足りないものを得て満足するため、満足している状態を幸せという。
他人より幸せになるためには他人より多くのものが必要になる。
大げさに云えばこれはもう容赦のない、
殺し合いだ。
だからこそ、生きると云うことは戦争なのだ。
そしてこれは世界で最もたちの悪い類いの戦争なのだ。
この戦争は一度きりではなく何度も何度も、死ぬまでずっと戦い続けなければならない。
しかも死ぬまでずっと勝ち続けなければならない。
毎日続く戦争だ。
たった一度さえも負けることは赦されない。
負けることとはつまり、死。
だから結局のところ人間は全員が必ず最後に負けるのだ。
私が考える生きると云うことは戦争であり、
常に勝たなければ死んでしまう。
そして残酷なことにこの闘いはどんな人間であっても
いつか必ず負けることになっている。
負けることが赦されない戦争、けれど絶対にいつか負けることが決まっている。
それが生きるということなのだ。
それが私の世界。
大嫌いな世界。

私が生きることに理由を求めるのは勝ち続けなければいけない戦争の毎日に疲れてしまって
それでも戦い続けていかなかればいけないと云うのなら、その苦労に見合った正当な対価の見返りを求めたいと思っているから。
今はまだみつけられていないけれど
もしいつか、その見返りが見つかったら、それが私の生きるための理由になる。

もういい、か、この話は。
考えることに疲れた。
本当に私は生きることに不向きなのだな。
だから私は自分を忘れるためにいつでも本を読む。
とりわけ、生きる理由が死ぬための私にはお似合いなのだろう。
早く死にたいよ、永遠。
お前のところへ、私は早く行きたい。

天は闇に覆われて
肌をすり抜ける風は冷凍庫のように冷たく
時間だけが規則的に過ぎていく。
時間が過ぎるのをただひたすらに待っている。
物語はゆっくりと結末を編み始めた。
もう終わりも近い。
空が黒いな。
私の中のようだ。

おやすみ、永遠。
私はお前がいなくてとても寂しいよ。
夢で逢おう。

1 (3)

サカサマと命と女王闇。

サカサマの夢の話をしよう。

12月に入って三日目に今年初めての雪が降った。
降ったと言っても積もることなく
ゆっくりと降りてくる雪のひとつひとつを数えながら私は天窓に降る雪を楽しんだ。
雪は小さなパールのような大きさで色は透明で目には見えなくて、絞り立ての濃厚なミルクのように白く、殺したばかりのあなたを彩る新鮮な血液のように赤かった。

(冷凍されたあなたの赤い目はいつでも輝いている。)

私は隣に座るあなたのこめかみにピストルを押し付けてこう言った。
一から十まで数える間に私の元を去りなさい。
そうしなければ私はあなたを殺す。
何も言う必要は無いし、何も聞きたくない。
黙って此処から出て行って欲しい。
私はもう女王闇なのです。

あなたが出て行く代わりに、私はあなたの部屋に有るものは全てあなたのものとして取り扱う。
そしてあなたはそれを全て私に売る。
元々私の城であるあなたの部屋を一式、クローゼット内に有る洋服や靴、アクセサリー、腕時計、など
あなたの部屋に有るものは何で有れ例外無く全て買い取る。
あなたはもしかしたら気に入っていて持って出て行きたい何かが有るかも知れない。
でもそれは出来ない。
あなたは私がこの話を終えたら十数える間に宮殿を出て真っすぐエントランスへ向かい城を出て行く。
あなたはここから何も持っていくことは出来ない。
私は既にセキュリティクレジットネットワークにあるクイーンバンクにあなた名義のゴールドクレジット口座を開設した。
あなたはそのクレジットだけで贅沢をしながら一生生活に困ることはないし、働く必要も無い。
此処を出たらあなたは自分の命の有る限りあなたの好きなように生きていくことが出来ることを約束する。
クイーンバンクはあなたに埋め込まれている生体情報を常時観測している。
あなたが生きている限り、あなたの口座が空になることはない。
口座は使用すれば常に補充される仕組みになっている。
ただし、あなたが死亡したあと口座は登録が解除される仕組みになっている。
死人は何も必要としない。
問題ないはず。

さあ、それではこれから一から十までゆっくりと数えてあげる。
(あなたの目はどうして赤いの?)

天窓に降り堕ちる白い赤い雪を見上げていた。
私はどうしてこの世界がこの今が夢の中なのだとわかるのだろうかと考えながら雪を見ていた。

どうして?あなたはそうなの?

バン。

私があなたを殺した。
私はあなたを、

冷たい空気が天井から垂れ下がった細いピアノ線のように頬に触れる。
人は死ぬために生きている。
私はそれを幼い頃からよく知っている。

だから、私は、

この世界が本当に
大嫌い。

サカサマの夢の話なんてもう聞きたくない。
死にたい。

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (4)

200万光年の永遠。

1APRIL 2016 00;01:22

日付けが変わると、きみは死ぬ。(月の欠け方がきみの歯並びを模倣していた。)
時計塔が燃えている。(愛は進化し欲望となる。)
耳を澄ませてみて、聞こえるでしょ。

おいで、ここへ、おいで、ここが自由、
ここが楽園、ここへおいで、はやくおいで、

(死が呼ぶの、疲れたらおいで、死が呼ぶの、宇宙に還ろう。ここへおいで。)

早く死んで、、お願いだから、死んで、

永遠、おいで。
私はお前が命の選択を自由にすることを赦すことに決めた。
お前の望みを叶えよう。

永遠、13号室の鍵を持っていきなさい。
せめて苦しまぬようにな。

これは私だけの意見ではない。
皆の総意である。

永遠、見えているか。
これだけの人数がお前を弔うために集まり悲しんでいるのだぞ。
お前はそれだけ皆に愛されていたのだ。
衛兵、現時点での参列者の人数はわかるか。

はい、現時刻で3254211209928602428人であります。

そうか、
では、
一人追加してくれるか、
私の分だ。

永遠、お前の死をこれだけの人間が悲しんでいる。
永遠、私もそちらへいずれいく。
それまでお前に寂しい想いをさせることを赦せ。
永遠、宇宙はな、宇宙全体で一つの生命体と考えることも出来ると私は思う。
すべてがひとつに、ひとつが、すべてに、

親愛なる姉様へ
_______________________________

悲しいって、なんですか? 
僕には悲しいという概念が理解出来ない。
教わったことは覚えている。
悲しみとは対象を失うことで感情に負荷が掛かり元気をやモチベーションが減少し、身体的にも倦怠感、涙が出るなどと言った現象を引き起こす。悲しみの強度は、浅い、深い、で表現される。悲しみの強度は対象への依存度で変わる。
だから何?
どうして悲しいって辛いの?
そんな辛い仕掛けが心に必要なの?
ね、神様、教えて
いつもなにもいわないあなたはいつもそうだ
僕らがどんなに願ってもあなたは一度だって返事さえしてくれやしなかった。
しってるんだよほんとはね、
うまれたころからね、
ひとはひとりきりなんだ
かみさまもいるなんておもってなかった
ただ
本当にいたらぼくもきみもお前も,ミクニも姉様も、、あ、さよなら忘れてた、

それとおまけで世界の中心に生きるすべての人間全部足してやる、
神様が本当にいるならみんなが幸せになれたかなって想像しただけだ。
かみさまなんていない
この世界は宇宙のほんの一部だ。
人間の存在強度は宇宙全体からすれば針より細い。
宇宙は今も広がり続けている。
僕らが世界と呼ぶこの地球と云う惑星はね。
全宇宙の中に最低でも1700億個以上有る銀河団の一つ。割と小さな銀河でね。
天の川銀河ってきいたことあるでしょ。
この銀河にはさあ2000億以上の恒星があるんだよ。
恒星って知らない? 僕は学校に行ってないから姉様に教えてもらったんだけど
恒星って太陽のことだよ。
太陽だけでもめちゃくちゃ大きいのにそれが2000億以上もあるんだよ。
太陽を中心とする系が所謂、太陽系。
その中の惑星のひとつが地球。
ここだよ。
あなたたちが世界と呼ぶ、青くて綺麗な惑星の名前だ。
此処まで話してやっと地球まで来れた。
本当に宇宙って想像以上に大きいね。
宇宙が生まれて130億年、
人間が生まれて3万年、
西暦はまだたった2016年、
人間の命って平均で80とか90歳とか、そんなくらいだよね。
でも、事故とか病気で死亡すると、1歳とか、10歳とか、よく有る話でしょ。
生命として人間一人が生きる時間なんて全宇宙の規模を考えたら
何ひとつの影響を与えることも出来ない。
そして、命は一度きりだ。
生命は必ず一度死ぬ。
死んだらどうなると思う?
四次元空間から三次元空間へ移るんだよ。
わかりやすく言うとね、時間が止まるってこと。
脳細胞の中で強力に結び繋がれていた陽子と電子の運動が止まる、
意識が解散していき自我は消えて、そこで時が止まるんだ。
それが人間の死の本質だよ。

ごめん、話が長くなっちゃって、
姉様、僕が姉様に最後に伝えたいのは生命は死を得たとき、
初めて全員が平等になるということです。
全員が無になるからです。
そしてこれはおまけなのですが
誰でも一度くらいは考えたことが有ると思うけど
決してこの世界では絶対に実現しないこと、
平和、無は平和と同じです。

姉様、宇宙の話とても楽しかったです。
14歳って宇宙の年齢と比べたら、何百倍拡大しても見えてこない凄い細い線。
100歳まで生きても、同じだよ。
宇宙はスケールが大きい。
僕はこの宇宙に一欠片の影響も与えることは出来ないと知りました。
だから、ここでおわかれしたいと思います。
姉様、今までずっと有り難うございました。
姉様が大好きです。
姉様、お体に気をつけてください。
姉様、ごめんなさい。
お別れです。
姉様、これが悲しみですか。
きっとこれが悲しみなのですね。
やっと僕、人間らしくなれた。
姉様、悲しみって本当に涙が出るんですね。
胸が苦しいです。
とても辛いです。
こんなに痛いなんて、人間は凄いですね。
姉様、いきます。
いってきます。
姉様、さようなら、愛しています。

永遠
2016年4月1日

1 (2)

ミクニと私。

私がまだ幼かった頃、わからないことがあるといつもミクニに聞きにいった。
ミクニは冷たい話し方をする人で。何と言うか少し怖い印象の人だったけれど。私は臆せずにミクニに会いにいった。
髪の毛が首の下まであって、性別不詳、年齢不詳、何人も人を殺したことがあるという噂を恐れて誰も怖がって近づかない。
でも昔のミクニは今のミクニと全然違っていたらしい。

かつてミクニは自分の王国を持っていた。
何もかも欲しいものは手に入れた、だけど
すぐに全てを失くした。
血を吐く様な悲劇がミクニの体中に詰め込まれてる。
そのせいかな。
ミクニは狂人か、もしくは世捨て人と云う感じが似合う。
無口だと思っていたけれど
実際は聞いていないことまで何でも話を広げて何時間も話す様な人だった。
それだけは意外で、印象としては何を考えているのか全くわからない人というのが一番合うだろう。

どうしてあんな冷たそうな人に話を聞きにいったのかといえば、、、、、
どうしてだろう。

何となくだけど、ミクニならきっと知っている。
そう感じていた。そう思っていた。それに私は変わり者が好きなのかもしれない。
ミクニは噂では三千年も生きていて他の人と比べたら知識の情報量が桁違いだというし、
周りの他の人と違って私を子供扱いせずに大人に話す内容と同じことを話してくれた。
(ミクニの目、瞳はエーゲ海のように青く真っ青で綺麗だった。瞳の奥は本当に海になっていて、更に奥を覗くと知りたい未来が見えるらしい。)
あと、これは理由にならないけれど何となく孤独に見えるミクニと話をしてみたかったのだ。
実際、ミクニは誰も知らないようなこと、例えば世界地図には載っていない誰も知らない様な王国に伝わる古い歌のルーツが
どの文明なのかと云う様なことまで知っていたのだ。本当かどうかは知らないけれど。

ミクニは今と変わらず毎日塞ぎ棍んでいて自分の部屋から出ることはあまり無く
毎日テラスの椅子に座って晴れの日も雨の日も何かが飛んでくるのを待っているみたいにずっといつまでも空ばかり見ていた。
集団は嫌いで普段は誰とも会いたがらない偏屈な人だったから友人もいない孤独な人だったと思う。
そう云う訳で会って話すことなど奇跡に近い人だった。
そんなミクニが幼い少女の私に会ってはなしをしてくれたのは、私がさよならだったからだ。
私はいずれ女王になる。
次の女王になる特権として私はその権利を利用してミクニと沢山の話をしたのだ。
私ならミクニに会いたいと思えばいつでもミクニに会うことが出来た。そんな身分だったのだ。
そういう訳で私は特に前もって連絡することもなく、いつでも唐突にミクニに会いにいった。

ミクニは何でも知っていた。ミクニは孤独で、でも、だからかな、何でも知っているのだと当時の私は勝手に想像していた。
何を聞いてもすぐに答えが返ってくるミクニが羨ましかった。
ミクニはなんて頭が良いんだろう。どんな勉強をしたらこんな賢い人になれるのかと思っていた。

話をするとき私はいつもミクニの目を見ていたけれど
ミクニは決して私の目を見ることはなかった。
(ミクニの青い瞳の奥に本当に海が見えた。真っ青で静かな海。瞳の奥でゆらゆらと青く波が揺れていた。)
ミクニが教えてくれることは当時の私にはとても難しくてあまり理解出来ていなかったと思うけれど
私はミクニと話をすることが好きだった。

ミクニは私が聞いたこと以外のことを沢山教えてくれた。
幼い私にはミクニが私の先生だった。
ミクニは難しい話が好きで、当時12歳の私に、
オイラーの等式、レイリー散乱、ミー散乱、相対性理論、ラザロ兆候、
ゲシュタルト崩壊、記号論について延々と話し続けた。
意味は理解出来なかったけれど、話を聞くことは嫌ではなかった。
そこがわたしにとってのミクニの不思議な魅力と云うことなのだろう。

そうだ、ミクニ、今度あなたの青い目で占って欲しいわ。
私の、私たちの、これから来る、過ぎ去っていく未来のことを。

1 (1)

女王闇とギロチンのスープ。

選ぶのはあなたじゃない。
選ぶのは常に私。
あなたは選ばれないかもしれない。
私はあなたを選ばないかもしれない。
それでもあなたは私の選択を待つしかない只の人間なのだ。
私がいるこの世界で
私以外が何かを選択するなど出来はしない。

だから私は常に選ぶ。
私が選ぶのは私の気に入ったものだけ。
それ以外の凡人は去れ。
生きる価値のない凡人ども。
哀れな搾取されるもの。

私に選ばれることは
神に選ばれることと同じなのだ。
だから、あなたがたは皆
私に従え。

私が本当の世界を見せてやる。

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (3)