散ったのは君。

季節外れのひまわりが咲いた。
その花弁は、黄色く泣いた。

黄色は心を浸食していく。
浸食されて

螺旋階段を降りる。

遠くで鐘の音が鳴った。
とても遠くだ。
鐘の音とやっとわかるくらい離れている。

その鐘の音は心音に似ている。

耳を澄ませば
遠い未来まで見透かせそうだ。

遠い未来にはいつでもきみの影が付きまとっている。

(そこで待っていて。)

きみの影と踊る僕は深淵に魅入られている。
その深淵に問う。

「きみの記憶はどこまで精密なの?」

僕は今日
今までずっと下れなかった坂を降りてみたよ。

桜の樹も赤く染まるんだね。
古い家屋と大きな桜の樹。

懐かしいね。
だけど、儚い。

その空は青くて、枝の隙間から見える、
空の果てが綺麗。

空の果てに赤いものが見えたら
それは憂鬱。

ただの夕暮れ。
そして、大切だった記憶。

花弁はもう散ってしまったけれど
代わりに僕の涙が散った。

散りゆく僕は、闇。
そして、蜉蝣。

誰か、引き裂いてくれないか?

(誰を?)

僕を。

blog - 069

リセット装置。

小さなボタンひとつ。
真っ赤な円いボタンが目の前に一つ。

 いつでも、押せる。
 いつでも、リセット出来る。

何を望む?
この夢に、何を望む?

 全てを忘れて、記憶を整理さ。

小さなボタンひとつでほら、君を忘れた。
もう一度押せば、ほら、君も忘れた。

どんどん、忘れていくよ。
何もかも忘れて宇宙になって、

星屑になって、空へ落ちていこう。

  一つ消して、一つ消えて、
   一つ消して、一つ消えて、
 
       また一つ、また一つ、

 心の闇から解き放つ過去。

      そして、涙一つ消して。

blog - 068

セフィロト

それは広がっていく。
小さく細くミクロン単位の神経繊維のように
細かく枝分かれしていく。

プレパラートの上で青く染色されたそれは、
光に包まれながら一つの房から無数の枝に別れていき咲き乱れていく。

 

どれもたった一つの枝となるためだ。

(孤独に似ていると思った。)

繊維の先は常に伸び続けプレパラートの上では
収まり切らなくなって

 

テーブルの端から絨毯の上に伸びていく。

私たちはそれを「セフィロトの樹」と名付けた。

小さな生命のように拡大していくそれを
私たちは切り刻んでみる。

細かく分断された、それは、
ひとつひとつが分化された母体となり拡大し続けたが
4時間23分03秒に全てが死滅してしまった。

私たちはそれをサンプルとして
標本にした。

これはその時の記録。
けれど、私たちはそれが何だったかを
今に至るまで知ることが出来ないでいる。

結局、何もない世界の一片だったのか。

「セフィロトの樹」は
私たちをあざ笑っているかのように
静かに死んでいる。

(さよなら、君たち。)

blog - 067

36度に喘ぐ僕。

遠い日は、どこまでも逃げていく。
遠い日は、いつまでも死んだまま。
遠い日は、礼儀正しく列に並んで順番に消えていく。
不自然な形で出逢う僕ら、不自然な形で終わる。
(本当はそれが自然なんだけど。)
揺れる鼓動は夢の中でさえ、
82の心拍を持って喘ぐ。
僕はどうにかして
君ともう一度出逢おうとするけど、
結節点が見つからない。
イオンがシナプスに勾配を作るために
必要なチャンネルがあるように
それがなければ僕は君に出逢えない。
(ほんとに、どうにかしてよ。この胸騒ぎ。)
憐れんでくれる君はどこにいるの。
僕は本当に僕なの。
(違うあなたは、、教えない。)
だから、僕は僕を知らない。
(知っているのは、女王闇と私だけ。)
世界のはての風は冷たくて
真夏日でも冷たい風が吹くんだ。
それが僕の中心を通っていくとき、
熱を奪う。
熱を奪われるといいうことは
僕が僕でなくなってしまうこと。

だめ。やめて。

36度の熱を奪わないで。
君と過ごした日々が順番に列に並んでいく。
(消えていく。)
僕は、
もう一度君に会いたい。
どこかで見ているかな、
どうか忘れないで
あの時あの場所で僕と君は手を繋いでた。
覚えてる?
駅から内緒で歩いてきた君を
内緒で迎えにいったこと。
僕は忘れないよ。
暖かい右手も。
僕は今はここにいるよ。
君ともう出逢えない場所にいるんだよ。
近くてももう二度と出逢えない場所で僕はもうすぐ死ぬんだ。

だから、さよならをしよう。
ねぇ、君は僕のことずっと一生愛してるって
言ったけど、あんな嘘信じてなかったよ。
でも、気持ちだけでも嬉しかった
本当に有難う。
君に出逢えて幸せだった。
ずっと幸せでいてね。

さよなら。(バカ)

blog - 066

下れない坂。

君と一緒に上った道を次は下ってみようと思う。覚えている?

あの桜の花びらを。
空気が桜色に染まって僕たちを包んだあの日を。

今は、もう離れてしまったけれど
僕はまだ、あの道を下ることが出来ないでいる。

だから、そう、記しなんだ。
あれは記号。

夕べ思い出した記憶と一緒。

だからもう、ちゃんと理解して、
忘れて、

あの道を下ることが出来ればいいのに
まだ、僕は出来ないでいるよ。

なんだって、こんなに君にこだわるんだろう。

それを知ることが出来ない僕には
今も追憶だけが救いなんだ。

ねぇ、聞いている?
僕は君に問いかけているんだよ。

それを知ったら君は
僕になんて答えるんだろう。
わかるはずもないけど。

きっと、君は空を見上げてる。
だから、この道は見下ろせない。
僕と歩いたこの道を。

覚えている?
聞こえている?

僕は君に問いかけているんだよ。

ねぇ、何か答えてよ。
それが、意味のない問いかけであっても、
僕は答えてみせるさ。

だから、聞こえているなら、
ここへおいで。(こないで。)

ずっと待っているよ。
この坂道の上で。

 blog - 065

女王闇について。

小指に巻き付いた糸が揺れた。
ガラス一枚で隔離された僕の世界。

砂の城と蜃気楼だけが残された世界。

(本当の身体は203号室に繋がれたまま
点滴を受けている。)

戻ろう、僕の世界の話に。

輪廻や空虚や残酷といった言葉たちが並んでいた。
それらは僕の闇を照らす星々。

ああ、でも今夜は僕の話ではなく、女王闇の話をしよう。

さぁ、目を閉じて、小さなたくさんの光の中から
物語が始まるよ。

~~~

そこは遠い世界。

、、、、
砂の城には砂で出来た衛兵がいて、
女王闇を守っている。

僕は女王闇を唯一語ることが出来る。

彼女の何が知りたい?
彼女の何が欲しい?
彼女の何を忘れたい?

女王闇は完全に美しく、
圧倒的に残酷で永遠の命を持っている。

彼女に謁見するためには、
生け贄が必要になる。

何故って?

彼女は血で染まった絨毯の上を歩くのが好きなのさ。
(血がしたたる絨毯の上を
凛として歩く彼女はとても美しい。)

女王闇、
彼女はとても孤独で赤い月を見上げながら
たったひとり愛した彼を思う。

夜の砂浜で水際を歩きながら
冷たい波に素足を浸し歩いて
(顔すら忘れてしまった、)
彼が振り向く姿を夢想して、

毎晩、赤い月に(彼に)生け贄を捧げようと
ガラス一枚向こうの世界から
人さらいを行っている。

ときには名前を変え、
世界へ紛れ込む。

その名前は、××××。

赤い月に微笑む彼女はとても残酷で
その残酷さとは裏腹に悲しいほど、綺麗。

この世界のひとつの象徴として
永遠に輝く星。

どこまでも儚くて
どこまでも嘘の世界で
どれだけの虚しさを血に変えるのか。

~~~

闇、聞こえる?

忘れないで、
あなたはこの世界の全てを
自身で所有しているということを。

そして、それがあなたにかけられた
永遠の呪いだということも。

あなたはけして死ぬことが出来ない。
そして老いることもなく
永遠に美しく、永遠に続く空虚に

永遠に悲しみながら、
小指に絡んだ真っ赤な糸を辿ることも出来ずに

永遠に彼を忘れたまま、
彼が振り向く姿を待っている。

(愛しているよ、闇。)

blog - 064

小指の棘。

羨望の眼差しでそれを見た私は、
しばらくの間、言葉を失った。そして、やっと出てきた言葉は、

「綺麗」

たった一言、それを言うだけで精一杯だった。
けして、触れてはいけないものに触れた。
けれど、どうしてもそれを避けることは出来なかった。

約束とも契約とも違う絆が
私たちを繋げた。

それが出逢いだった。

(覚えている?)

指輪をみつけたよ。
その指輪には何かのオブジェが付いていて、
すっと小指に通すとそれは小指に生えた棘に見えた。

この指輪は私よりあなたに似合う。
だから、あなたにあげたい。

もう一度あなたに触れてもいい?

もう一度、
触れてもいい?

それ以上何も望まないから、
そして、本当のお別れをするから。

だから、この指輪をあなたにあげる。
受け取って、ギザギザの指輪。

お別れのしるしに。
(はじまりのしるしに。)

 blog - 063

昨日見た2時58分36秒の夢。

衛生的に神経質な君のクスリ指が愛しい。君の居ない世界で
伸びた爪にマニキュアを塗りながら
過去を懐かしんでいる。

絶対値を超えない憂鬱は、
それ自身で身を守る機能。

僕の言いたいことは、、、

昨日見た2時58分36秒の夢の一片を覚えている。
あれは、君と歩いた季節。
花びらが散って

まるで、桃色の大気にまぎれたかのよう。

そして、散っていく花びらに見とれる二人は、
いつかバラバラに散って
アスファルトを汚す欠片となる。

その汚れた欠片が僕だ。
君は傍観者。

でもね、知っておいて欲しいんだ。

僕は、、、、
どんなに汚れても君を忘れはしないよ。

また逢おうね。
(花びらの散る季節に。)

blog - 062

いらない羽根。

声が聞こえない?

ほら、そこにいる。

欲しいものはいつも、遠くにあって
そこまで行けない僕は
諦めて、人形と遊ぶ。

どうしても、君がいいんだ。
じゃないなら世界なんて意味もない。

目がかすんで君が天使に見えた。
そんな瞬間や
特別に暖かい夜とか

君がくれた大切な記憶を
僕は守りたいだけ。

新しい羽はもういらない。
新しい夢もいらない。

だから、教えてよ。

僕は一体、誰?

blog - 061