コンティニュイティ・ダイ・ストロベリー

此処では今日も雨が降っている。
(雨が濡らすのは翻るドレスではない。)
雨が濡らすのは絶望と不幸から逃れられない、
宇宙の真理を追いかける愚者だ。
生まれたことに意味はない。
生きたことにも意味はない。
生まれてから知覚してきた全ての記憶を消して
人は死んでいくのだ。
意味を作っても、それは本質ではない。
生命ははあるべくして存在する。
存在の意味を問うても
いつか死んでしまう仕組みで
構築された経験した記憶も何もかもが
死ぬと消えてしまう。
この事実を知った日、自分がこの世界で生きた意味が何処かにあると祈った。
けれど、この宇宙全体の法則などには
人の持つ希望や願いなどは一切入る余地がない。
だから、僕には、本当はなにも見えていない。
特殊な仕組みで構築された微分、積分で解答される自己の完全な成り立ちを知るために
耳を切って狂うしかなかった。
そこはね、いつも痛みが降っているんだ。
とても細い線のような鉄の雨が降っている。
空からではない。
僕と僕以外を隔てる空間から降ってくる。
針に突き刺されながら痛みが増していく、これが命のせいなんだと僕は涙を流して痛みに耐えている。
血の雨に塗られながら、僕ははっと思い出す。
生きることが死ぬことなのだと。
それを思い出せるから
僕はこの無の世界で生きていける。
神様が僕を殺すまで。
ずっと待ってるんだよ。
いつも、いつでも、あと何秒だろう?
あと何日だろう?

神様 、
早く僕を殺しに来て、
そして、
この世界を完全に終わらせて。

1 (5)

透明な、透明な、

なんだか最近自分がどんどん透明になっていっているような気がするんだ。
透明になるっていうのは綺麗になるとか、存在が希薄になるとか、そういったことじゃなく、
透明という言葉の意味の持つ本質的な解釈としての透明なの。
悪い意味でもないしいい意味でもなくて中立でそういう二元論では表しきれないような透明さ。
意識が透明になるのじゃなくて私とこの世界の関係性が透明になっていくんだ。
私と世界を完全に隔てていた壁が透明になっていく感じがするの。
でもそのことは私には少しだけ嬉しいんだけど、同時に小さい頃に迷子になって預かり所でいつ迎えが来るのかわからなくて泣き続けている子供が感じる類のある種本能的な感覚でとても寂しくてたまらないんだ。
そしてこれはどうしようもないことなんだけど、この手の類の寂しさは何かで埋めて無かったことには決してできない。
抗うことのできない寂しさがこの世界には沢山あって、私たちのほとんどはそれを感じることはできないけど
ほんの少し周りより感受性が強くて世界の本質は自己意識を拡大したものだと思い込んでいるような人の中に稀に存在するんだよ。
私はその稀な人なんだ。
だから、こうして寂しさを編み続けてしまう。
違う寂しさを他の違う寂しさに繋げてどんどん大きいものに編み続ける。
そうして私は何処にいても寂しさの中から出ることのできない世界を作ってしまう。
多分私の最終型は測ることもできないくらい冷たい透明な氷になるんじゃないかなって思うよ。
私が氷になったら誰が私の中にある寂しさを感じるんだろう。
それはきっと誰でもなく、やっぱり自分で、
氷を叩いて割って私は氷の中を出て私の中にある永遠に近いとても長い寂しさを
何処かで一人泣きながら過ごすの。
毎日が寂しくて誰もいない。
人が何処にもいない私だけの世界でずっと寂しさに晒されたまま、風の強い丘の上で青い空を見上げ
誰もいない世界の神様に祈るだけなんだ。
私をはやく殺してくださいって。
だって仕方ないよ。
辛いんだから。

きみにはそういう特別な何かってないの。

1 (4)

“Hold the secret close”, I hear you say

彼女の場合。
26 MAY 2106

今週はずっと雨続きだったから久しぶりに青い空を見て昔のことを思い出した。
それは私たちがまだ知り合って間もない頃のはなし。
空の色は時間によって少しずつ変わることを私に教えてくれたのは幼なじみで今も同級生の司だった。
幼い私と司には難しい言葉でそれでも司は空の色と雲の色の変化はレイリー散乱とミー散乱の影響なんだと言った。
その話をしてくれた日の空の色もこんな風にとても綺麗だった。気持ち良く流れる風の温度も心地よくて、
まさかこんな良い天気に恵まれた日に自分が死ぬなど全くありえないように思えた。
私は今日のクラスは全部欠席して学園内をゆっくりと見て回りたくなった。
そして廊下で友達何人かと話している司を都合良く見つけて、話に割り込み強引にいつ果てるとも分からない散歩の道ずれにした。
中等部の校舎を出ると研究棟に続く道の脇にある座るのに丁度いい階段付近には話をしているグループがいくつもいて
ときどきどっとした笑い声が聞こえてきた。
司は午後受ける予定だった高分子生物学のクラスの単位を落としたことを根に持ったらしく、
暑さをしのぐために入った喫茶室に入り席に座ると
私の一番の悪い所は計画性のないことだと私がおごってあげたアイスコーヒーを飲みながら事細かく私を責めるのだった。
私は司に責められながら司の飲んでいるアイスコーヒーのグラスを見ていた。
グラスについている細かな水滴がキラキラ光ってその光がこれから私が成すことを祝っているかのように思えた。
私はこのまま時が止まって仕舞えばいいのになと訳もないことを思いながら氷が溶けてしまって薄くなったアイスミルクティを飲み干し、司に「行こう。」と言って外へ出た。
サングラスを外すと外はもう昼間の眩しさが嘘のように優しい光に包まれていた。陽が沈み夜を迎える準備をしていて
ついさっきまで頬を気持ち良く撫でていた風は二重人格かのように姿を変え夜の闇と混ざり合って寂しく冷たいものへ変えてしまった。
昼には学生でごった返していたこの広い構内も残っている人はまばらで階段に腰掛けて話をしていたグループはみんなどこかへ行ってしまっていた。
時計を見ると18時を少し過ぎていた。
私は司と一緒に部室のある研究棟に向かった。

私と司は幼なじみで今までずっと一緒に過ごしてきた。
司の苦手なものを知っている。
司が好きなものを知っている。
司の癖も知っている。
司の好きな作家や作品、音楽、将来の夢、司の全てを知っている。
そして私は司を誰よりも愛していた。
司の優しさや寛容さそして私への愛を何よりも私は尊ぶ。

司がコーヒーを淹れてくれた。
とても美味しかった。
「ありがとう、司。」と私が言うと「なにそれ、大げさ。」と笑いながら司が言った。

(そんなことないよ、とてもおいしいんだよ、ありがとう、つかさ。)

「ねえ、司、、」と少しためらいながら言葉を続けて言った。
「私、もうこれ以上大人になりたくないの。だから、18歳になる前に死にたいの。いつ迄も17歳でいたいの。ごめんね。」

司は知っていたよ、というような顔をしたあとに俯いて随分な時間黙っていたけれど、
結局は視線を起こし私を見つめて「いいよ。」と言ってくれた。
その言葉が合図になった。
部屋の空気は凍りつくような緊張を一瞬で作り出して蜘蛛の巣に絡め取られたような沈黙の後に私は司を抱きしめて、

「ありがとう」と言った。

ソファに楽な姿勢で横になって、準備を整えてから、
司にこの後起こること全ての責任を押し付けることになること、警察に拘束されるだろうことを謝罪した。
司はそんなこと気にしなくて全然いいんだよと言って笑顔を作ってくれる。
私は司がいるからこれまで生きてこられたんだなということを改めて思った。
世界で一番大好きな司が見守っていてくれる。
死ぬことへの恐怖から守ってくれている。
死ぬまでずっと一緒にいてくれる。
本当に私は幸せだ。

そして私は手首に致死量のオピエイドが入ったパッチを貼り付けて司だけを見ていた。
司はソファに横たわる私を同じように見つめながら煙草を吸っている。
煙草の煙が天井に登るのを見て、私の体から白い魂が出てどこか特別な楽園へ昇っていく様子を思い浮かべた。
オピエイドのパッチを貼ってすぐに私の体はアヘンに支配されていった。
とても気持ちが良くて目に飛び込んでくる光の大量な槍が私の体のありとあらゆるところを突き刺しにした。
快楽の天井に私は祭り上げられ女神になった。
次第に意識が拡大していき自我を構築している内と外に分けられていた神経系を外へと解放すると
私を私と規定していた構造が崩れだして自己と非自己が認識できなくなって、
そこで私という自我は消えた。
代謝と循環を司る神経系が機能しなくなり呼吸が止まる。
心臓が止まる。
そして全ての機能が止まった。

司が口づけをした。
もう息はしていなかった。

私を失くして
きみはひとりきりになった。

私のワイアードはきみの名前がパスワードなんだよ。
きみならいつかまたあえるから。
それまで少しだけさようなら。
いまでもちゃんとつながっているんだよ。

1-3

春に散る花、きみという僕。

24 MAY 2016
いつか死ぬと知ってここに記そう。
僕の企みを、いつかのきみへ
届け、

23 MAY 2109
春を長く感じるのは温度変化が少ないせいか、それとも
僕だけの気のせいなのか。
もう春を通り越して初夏だというのにまだ心が春を気取っているせいで
きみの命日を忘れそうになる。
ふちが白く天が青い空の遠い向こうから太陽の光が燦々と降ってきて、
頬に当たる風がとても気持ちのよいこんな日に彼女は死んだ。
あと3日できみの死から丸3年が経つというのに
きみという存在がこんなにも強烈に僕の中に残っている。
きみがいないということが僕にはまだ非現実的に思えるのだ。
僕はきみが死ぬのを見たし、葬儀にも参列してきみの死に顔も見た。
確かに現実ではきみはもう死んでいてこの世界にのどこにもいないということは知ったことだ。
それでもなぜか、寂しいからなのか、愛しいからなのか、わからないけれど
きみが死んだことに実感が持てない。
それがきみを失くしてから3年過ぎても何も変わらない僕の中の世界なんだ。
きみが死を願ったとき、僕は止めなかった。
きみは死ぬ前に僕にこう尋ねた。
「私、もうこれ以上大人になりたくないの。だから、18歳になる前に死にたいの。いつ迄も17歳でいたいの。ごめんね。」
きみは僕へ振り返り両手を差し伸べて更に言う。
「これ以上、ワイアードの言いなりにならないために私ここからもう離れたいの。お願い、、いいよね。」
暗い部屋できみの表情は見えなかった。でも最後の時間を楽しんでいることは口調でわかった。
そして、小さな灯りの下にいる僕の前に来ると満面の笑みをしたきみがいて、
彼女のワイアードをよく知っていた僕にはこう言うしかなかった。

いいよ。

きみは両手で優しく包み込むように僕を抱きしめながら耳元で「ありがとう。」と囁いた。
それはとても小さな声で、きみの人生最後の声だった。きみはソファに座って左手の内側に大量のオピエイドを含んだパッチを貼り付けてソファに深く沈みこんで天井を見た。
彼女は数秒後に僕に視線を戻して一瞬ちらっと見て声を出さずに笑った。(なに? さよなら、なの?)
あれはさよならの言葉だったのかもしれない。
チャイナホワイトの強力な神経毒が心臓の鼓動と共に身体中の血管のありとあらゆるすべてに行き渡っていく過程で
彼女はゆっくりとレッドカーペットの絨毯のひかれた階段を昇っていく。
彼女の時間がゆっくりになっていくのを感じた。
彼女の時間がどんどん遅くなっていく。
僕はすべて見ていた。
何も声に出さず、彼女の邪魔にならないように息をひそめて
きみがゆっくりと死んでいくのをじっと見ていた。
それらの記憶は強く残っている。
それでももうきみがこの世界にいないことが信じられないでいる。
何故だろう。
あれを全部見ていたのに。
事情聴取を受けたときにすべて警察に話した。
記録も残っている。
新聞にも載った。
それでも僕の中の細胞がきみの死を拒否しているかのように
僕の脳がちゃんと機能しないんだ。
現実逃避ではない。
記憶の改ざんでもない。
物忘れでもない。
何の問題もない。
ただきみがいない。
それだけが事実なのに僕はそれを信じていない。
これだけの証拠があっても僕のきみはこの世界のどこかで生きているらしい。
それが今現在の僕の心の中の中心で、
僕は自分のことが何もできなくなってしまった。
きみを思うあまりに僕はきみの代わりを僕の中に見つけようとしているのかもしれない。
そんなことはおかしいことだとわかっていても心が勝手にそうするのだ。
僕には何もできない。
僕はもう僕じゃないのかもしれない。
僕はもうきみなんじゃないか。
僕は僕の中に僕というきみを作り出してしまったのかもしれない。
だったら死ななきゃ。
あの日きみが僕に言ったように、僕はきみとして死ななきゃいけないんだ。
きみが死んだ同じ日に、同じやり方で。
それが僕が見ているきみなのだから。
星が生まれて死ぬシステムで僕たちは命を自由に取り扱うのだ。
きみに返すよ、この命。
僕は自我をきみに譲って、
きみがこの世を去ったあの日をもう一度繰り返すんだ。
最後にきみにもう一度会うための僕の中の、

この世界の最後の補完だよ。
何処かで見ていてね、

1 (1)

地獄の季節。春。

原因が何であったとしても
依存症という病が一番たちが悪い。
とりわけ渇望や誘惑に弱い受容的な人達にとっては。
(受容的ではない人間などいないとは思うけれど。)
問題は何が人を受容的にさせるかだ。
受容的な個人と薬物や行動の組み合わせが
依存症を開花させる。そして殺す。
(Y.S / Diary 17, May, 2016)

14:01:11 PM
退屈な経済の授業のテキストを画面脇に押しやってメインフレームに映し出されているのは
半世紀も前の名も知れぬ社会心理生物学者が専門誌の片隅に書いた短いテキストだった。

「人間は社会的・心理学的環境に強く依存している。」by アーヴィン・ネルヴァル

14:01:44 PM
何かに憑かれたように「~依存している。」という部分を何度も頭の中で繰り返し読み返していると、なにか不思議な感覚がした。
(頭の中で、僕の声で、何度も何度も、小さな声で読み直した。)

14:02:22 PM
僕は「アーヴィン・ネルヴァル」をサーチした。
すると幾つもの幾何学模様が小さな星座を無数に描いてあらゆる「アーヴィン・ネルヴァル」でスクリーンを埋め尽くした。
「アーヴィン・ネルヴァル」は思っていたよりも沢山いるらしかった。
それでタグに「社会心理生物学者」を追加してタップした。
するとスクリーンを埋め尽くしていたワードの群れがたった一行になり、第一世代のアーカイヴウェブリンクだけ残して全部消えた。

僕は「また退屈だ。」

こういうことは第一世代から第三世代までのオンラインデータがすべて揃う教育機関で使われるような古いサーバーではよくあることで
殆どは何の役にも立たないゴミばかりで価値のあるものなんてまずない。
今までこうしたことは山ほど経験してきたからよく知ってる。
それでも「何もない。」と自分に言い聞かせてタブレットの履歴データをすべて携帯にデスクコネクトしてから取り敢えず授業に戻った。

Irvin11222-1.pdf

「人間関係神経生物学」
19 MAY 2016

神経系の機能を定める原因は、人間関係に起因している育時期に世話をしてくれる人、人生において愛する人たち、
それに我々を取り巻く社会的環境すべてとなる。
その為人間の神経生物学的な要素と人が育ち存在している環境は切っても切れない。
そしてこの関係は死ぬまで続く。
脳の発達期である幼少期もそうであるし
大人になってもそれは変わらない。
だから人間は個人差があるとしても誰もが何かしらの依存症になる。
生活に支障がない依存症であれば自覚はなく生命の危険がなければ誰も気づくこともない。
人間は誰でも何かしらの依存症を患っているのだ。
ただし依存症すべてが治療を必要とするわけではない。
だから社会は人間という個体差の大きいパーツで出来ていてもシステムとして機能する。

by Irvin Nerval

僕もそう思う。
ただ僕自身はパーツにはならないけれど。
もうすぐ死ぬからね。

携帯が鳴った。
クスリがキマって若干ハイになっていた僕は、
コールする携帯を掴んでスクリーンに表示されたよく知ったきみの名前をスライドして消した。

うつつでいようか、それとも、

いくらこっちを見られても
もう二度と見つめ返しはしないと
僕はいま、決めた、

おやすみなさい、きみ、

ゆめであおう。

1 (1)

Endless Universe is Reincarnation

はやくみつけないと、きみが、まっている、

わたしのこと
すき?

きこえない
すき?

わたしはね
わたしはね

もっといきていたかった
いきて
いきてて
なにもしなくてもいいから
いきてて

COME TO THE SPECIAL MY UNIVERSE

わたしがいまおもっていることを
ぜんぶつたえたい
あなたのこと
せかいのこと
わたしのこと
しんだこと

わたし、もういない

しんだの
だからこれは
ぜんぶ
いしょにかかれていることなの

わたしはしんだから
じかんはないの
なにもないの

わたしのしたいはやかれて
たんそとちっそとすいそにかんげんされて
わたしをげんじつのせかいでみえるようにしていた
なんぜんおくというぶんしのつながりをつないでいた
しなぷすがひとつのこらずじょうはつして
すべてをばらばらにして
はへんだけになって
それさえもつながりはなく
もえきったあとにのこったのは
どこかのほねだとわかるかたちのはいのかたまりで
ゆびでふれるともろくくずれておちる
そして
なにもない
ただのしろいすなとおなじ
もうせいめいじゃなくなったわたしには
いしきもなければかたちもない

それは
だれのめにもうつらない

くうきでさえない

かなしくないよ
くるしくもない
なんだろう
なにもかもうちゅうなの
ここが
うちゅうなの

おおきくなったり
ちいさくなったり

でも
けして
みえない
だれにも
みれない

ちっそと
けいそと
たんそと
すいそと
いくつかのげんしで
できた
げんしてきな
うちゅうなんだよ

わたしが
うちゅう
なの

あなたもしんだら
きっとわかる

うちゅう
なんだよ
ぜんぶ

1

私たちの成れの果てとディラックの海。

ずっと前もそうだった。
ここではない宇宙で見つける意味があるなら
いつかずっと繋がるような奇跡が起きることもあるのかな、、、、それは、、、ないよね。
それではあまりにも私の都合に良すぎる。
私ひとりのためにこの宇宙が存在していることになってしまう。
あの星も、あの星も、あの星も、みんなみんな私のために輝いているなんてことにはならない。
ここでは何もかもが在るようでない。全てが宇宙なんだ。
何度も出逢いと別れを繰り返す私たち二人はどういう現象なのだろう。
例えば私が陽子であなたが電子なら、私たちは原子核の周りを回っている。一時も休むことなく何百億年も続く。
私があなたに追いつこうとすれば私たちは離れていく。
我に返ってあなたのスピードに合わせようとすると私はあなたを弾き飛ばしてしまう。
1兆年とその10億倍のさらにその1兆倍の年月が過ぎたら、
エネルギーも尽き果てて、陽子と電子、共に原子核に落ちるときが来るのよ。
それが私たちの行き着く果てなら、暗く重い闇も上等な天鵞絨に思えてくるの。
私はそれでいいの、本当に。生きて、生きて、生きた、何兆億年の交わりの記憶を持って過ごした実時間がたった1時間だったとしても私には価値がある。
寂しくて悲しくて暗い空に怯えていた私に光をくれたあなたが私のすべてなの。だから、この宇宙が在る限り私たちの恋は終わることはないの。
私たち永遠に閉じこめられたの、きっと。ここが永遠。
だって時間が止まっているんだから。

17 May 2016
信号が青に変わった。(ここに刹那があるんだね)
私は足を止めて左手に嵌めた腕時計の針をじっと見ていた。
私の背中や腕に迷惑そうに沢山の人がぶつかりながら私の両脇や後ろから押しのけて通り過ぎて行く。
後ろから一台のトラックが蛇行運転しながら突っ込んでくる。
(真央が夢の中で見たとおりの時間に事故が起きる。)
トラックが急にハンドルを切ってガードレールの方へ向って突っ込んだ。
トラックはそのままの勢いでガードレールを破壊しながら小学生の歩く歩道へ突っ込んだ。
それでも止まらず、近くの電信柱に衝突してやっと止まった。
歩道を歩いていた小学生たちの母親が泣き叫んでいる。(私はこれを昨日見た)
小学二年生の男の子と隣に住む小学三年生の女の子が死んだ。
ほぼ即死だった。
トラックの運転手も死んだ。
でも死因は事故じゃない。運転手の死因は脳卒中によるくも膜下出血。
運転手はトラックの運転中に脳卒中を起こして意識不明になってガードレールに突っ込んだ。
(全部知っている)

命は儚く散る短さが美しい。
何処にいるの、ねえ、
きみは、、、

はやく、みつけない、と

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死合わせな、死合わせな、

2016-05-03 15:27:21
テーマ:死合わせな、死合わせな、
あなたの秘められた運命こそしらないが、あなたにかんするすべてのことが、ぼくの興味をそそるのだ。だからいってくれたまえ。あなたは地獄の王子の棲家なのか。それをぼくに答えてくれ・・・・・・わだつみよ、ぼくにそれをいってくれ(ぼくひとりにだけでいい、いまだに幻影だけしかしらない者たちをかなしませないために)。

(Le Comte de Lautréamont / Les Chants de Malodor chant 1)

私たちは一瞬だ。
宇宙に広がる広大な時間の中の小さな点にしかすぎない。
それでも私は彼を見つけることができた。
(やっとあえた)
ずっと長い間探してきた彼が意外なことに同じ高校の同級生だと知って驚いた。
話したこともないし特に他に関わったことが何もないから同級生だったのに気付かなかったのだ。
彼は教室のみんなから名前で呼ばれない。沢山の酷いあだ名で呼ばれているのだ。
夏生に振り向くと、気のせいか少し泣いてるように見えた。
ごめんね夏生、あなたは私が教える方法でイジメを苦にして自殺するの。
すぐにあとから行くから待ってて。

私はそれから夏生に近づくためにインターネット上に会員制の自殺サイトを立ち上げて、自殺サイトへの招待メールを夏生に送った。
そして夏生は思惑通りに自殺サイトへ登録し、掲示板へ書き込みをした。

>なるべく痛くなくて確実に死ねる方法を教えてください。」

私はこの書き込みに返事をした。
「10階以上のビルから飛び降りると確実に死にます。」

>飛び降りは確実なのは知っていますが高所恐怖症なので、他の方法はありませんか

私はすぐに返事を返した。
「飛び降りより確率は下がりますが、頸動脈の切断をお勧めします。」

>確率は下がるというのは死ねないかもしれないということですか

「そうです。ですが方法を間違えなければちゃんと死ねます」

>特別な方法があるんですか。普通に切るだけではだめなのですか

「普通に切るというのが一般的な普通を指しているなら、普通に切ってもだめです。ただ切るだけでは頸動脈へナイフは届きません」
私は素早くタイピングして返事をした。そして続けてこう打った。
「頸動脈を確実に切るにはコツがあるのです。知りたいですか」

5分くらいの沈黙のあと、返事がきた。
>教えてください。知りたいです

こうしたやり取りをしたあと、私はここでは書けないから会って話したい、と告げて会う約束を取りつけた。
ベランダに出て夏生のことを思った。
煙草に火をつけて前世の夏生を思い出していた。
そのとき夏生は23歳で私は6歳だった。
大きな戦争があった。
夏生は思い出してくれるだろうか。
夏生に会えても夏生が前世の記憶を思い出さない限り
私と夏生は出逢っていないのと同じなのだ。
だから夏生にはどうしても私たちのことを思い出してもらう必要がある。
この世で輪廻を成功させなければ、次の輪廻まで待たなければいけなくなる。
これは不確実で不安定な出逢いなのだ。
この宇宙で唯一たった一度きりのランデブー。
私の生きる意味。

それはいつ始まったのかわからない。
(KISS HEART UNDER THE LION’S HEART)
急がなければいけない。もうすぐ夏生は死んでしまう。
私はこのチャンスにこの世の人生すべてをかける。

どうせ、私ももうじき死んでしまう。
私たちの出逢う時間はいつだって短く限られているのだから。

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桜咲いて、散って、ロンリー。

このドアが開いたら
何も知らなかった私にはもう戻れないと知っている。
それでも、私にはこのドアの向こうへ行く選択肢しかないのだ。
充分な時間過去を回想して楽しんだあと
私は諦めてドアを潜った。

ドアが開くと
ホームに降りて改札の出口へ向かう。

エスカレーターを下りながら

見覚えのあるお店やコーヒーの匂い。
改札のすぐ向こうの白い壁
かつてそこにいた人
冬の残雪が至る所に在って
まだここは冬なのだと思うと、
真夜中、雪の棺の中で
じっと目を閉じたまま、ただ意識が消えるのを待ち続けたきみがもう透明だ。
消えていくきみを懐かしんで私は泣く。
(新しいクスリを出して笑う。)

東京ではもう散ってしまっている桜も、
ここでは、まだ芽吹いてさえいない。
いつかお花見を一緒にしてみたいな、と思った。
ここから見る桜は何も遮るものもなく
特別席から見ているようなんだよ。
いつか、いつかね。

(きみがいないから、きっと無理だけど。)

桜は毎年咲いて、毎年散って、
生と死を繰り返して、
わたしたちを笑っている。

私も咲いて、散ってしまおうか。
風に吹かれて心臓が止まる。
それも悪くない。
そう思った。

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悪の園。

至上の愛は永遠に飢え
我らが愛するものは 一つの影。
若い日の金色の夢が亡びた時
わがためには親愛なる自然も亡びた。
故郷のこれほどのはるけさを
喜びの日々には お前は知らなかった
あわれな心よ 故郷をお前は問いたださない
その夢ばかりでは足りぬとしても。

(Friedrich Hölderlin / An die Natur)

海の深く深淵にはわたしたちの記憶が化石となって堆積している。
海は広くて深いから私たちすべての記憶を地層として残す。
残すとは言っても思い出に残すのとはぜんぜん違う。
間違わないでほしい。
記録として残す、でも、だけど再生はできない。
解析はできない。そういう仕組みなのだ。
ただ断層の縞模様を作るひとつまみの砂として存在するだけである。
記憶なんて覚えていてもいいことなどないし、
過去にすがっても仕方ないのだからこの仕組みでいいのだ。
だから、私たちは記憶を古い順から海の深くに沈めて忘れてしまう。

※ただし、一つだけの例外を退いて。
(LIONHEART)

口紅がカップに付いたことが気になって、私は赤い唇の跡を目立たないように親指でなぞった。
私は親指をハンカチで拭いてから、彼の手の上に自分の手を重ねた。
彼は暫くこちらを向いていたけれど、彼の目に映っているのは私の後ろに広がる海だった。
私はこういうことでいいとずっと思っていた。
彼と会って彼が好きな海を見ている。
その目に私が映らなくてもそれでいいと思っていた。
だけど、本当は違った。
私を見て欲しかった。
私を愛して欲しかった。
私は我が儘だった。

だから彼を殺した。
悲しくて仕方なかったけど彼を殺した。
私は死にたい。
この宇宙が私には何の意味もない現象だから、
どうせいつか終わる宇宙なのだから。

昔の話だよ。
そんなこともあってか
私は殺し屋になって
言われるままに殺しまくって、
お金もらって、
新しい武器を買う。
それは私として生きていく上で
誰にも負けないために、必要なこと。
だから、私は誰にも負けないために、

悪になったのだ。

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