Velvet Morning (in the rain)

悲しい夢を見ますか?
あなたは悲しい夢を・・・・

狭苦しくもので溢れかえったコンピュータデスクの上に
マニキュアや薬瓶やペンスタンドや灰皿に混ざって
美しい薔薇のコーディネートがある。
何年か前に開発された本物の青い薔薇のプリザーブドフラワー。
ここにあるのはその開発で初めて作られたもののレプリカ。
プリザーブドだから香りはしないし、
したとしても煙草の匂いでわからないだろう。
青い薔薇が特別なのは
自然界に青、シアンという色素が存在しないからだ。
だから、人工的に遺伝子を改ざんして作られた。
人工的というと大量生産できそうだけれど
そういう話しは聞かないし
沢山出回っているわけでもない。
今でも特別な贈り物として高価なものらしい。
赤い薔薇の写真のデータがあれば簡単に
青い薔薇に変換することはできるし
実際にそうしたものをコンピュータ上で見たことはある。
大して興味は惹かなかったけれど。
その理由がコンピュータの画面だったからなのか
偽物だと初めから知っていたからなのかわからない。
けれど、目の前にある本物の花は美しいと思う。
プリザーブドだとしても美しい。
何故、青は特別なのだろう。
わからない。
空も海も青い程美しいことに似ているか。
これは僕自身の価値観だけれど。
青い海はいい。
本当に青いんだ。
エーゲ海を初めて見た時にそう思った。
青いって、いいね。

知ってる?
悲しい夢って青いんだ。
全部青いんだよ。

悲しいって青いのかな。
青いって悲しい?
違う。
僕の心は青い。
だから悲しい。
どうして?
どうして?
どうしてなんだろう?
誰も知らない。
誰もわからない。
僕もわからない。
永遠にわからない。
わかるのは
青い薔薇が美しいってこと。

きみが去ったあと
きみの温もりの残った
ベッドを椅子変わりにして
僕はコンピュータをいじっていた。
あのときはまだデスクに青い薔薇はなくて
代わりにきみの写真があった。
僕はあれから
何かを探して今もまだ見つけられないでいる。
きみはきみの欲しいもの
見つけた?
僕はあのあと三回死んで
四回生まれ変わった。
きみの知っている僕は
きみが去った三ヶ月後に死んで
今の僕は三週間前に生まれたばかりだ。
記憶だけ共有しているけど
きみを直接は知らない。

きみは今も
ヴェルヴェットモーニングが好きなのかい?

Do you have a sad dream?

___Yes I do

blog_5 - 085

All is full of love

Sep 1 2012 19:33:09

届きますか。
届きます。
いいえ、届きません。
はい、届きました。
届いた。
届いていた。
届かない。
届けない。
届く。

私はベッドを椅子変わりにして
コンピュータでロックバンドのライブ映像を観ていた。
すぐ後ろに彼は寝ていて
時々、目を覚まして、私の名前を呼ぶ。
私は振り返って彼をみる。
彼は目を閉じたまま、少しだけ動く。
私は返事の代わりに彼の手を握る。
彼も少し握りかえしてくる。

あれはいつだったろう。
あれはたしか、

私は背後から突き飛ばされるまで回想に夢中で
信号機が青色に変わったことに気付かなかった。

あれは、
あれは、
あれは、
あれは、あれは?

あれは、、、?
私は今、、思いだそうしていた。
忘れ、た?

思い出せない。

帰り道歩きながら
何度も思い出そうとして
順序立てて記憶を辿ってみたけれど何も思い出せなかった。
それどころか、思い出そうとする度に
他のことまでどんどん朧気になり
自分の部屋のドアの前に着く頃には
はっきりしていた背景の視覚イメージまでが曖昧になって
黒で塗りつぶされた。

 (7(しち)あなたの番号)

私はドアのネームプレートの下のセキュリティスキャナーを右目で覗く。
(液晶表示:go_Umbrella…)
ドアが開いた瞬間、部屋でかけっぱなしだったビョークの歌が
フロア中に響き渡った。
 
(All is full of love)

「いい曲なんだけどな」
私は失敗したときの表情をつくって、
取り繕うように呟いた。

煙草に火を付けて朝焼けに紫の煙が浮かんで
机の上に飾ってある虚ろの写真を手にとって、侮れないなきみは。
虚ろくんは大変優秀です。と写真にマジックで花丸を書いて
写真立てを放り投げた。

 些末なことだよ。
全てね。
これに比べたら
全て些末なこと。
そう言って部屋の電源を落として、
ドアを閉めた。

blog_5 - 084

二人のいいわけ。

Aug 26 2012 14:11:28

虚ろは廊下の窓から見える通りを眺めていた。

ミスー、生きるって
凄く疲れるし
悲しくて辛いことが多いよね。

僕はこんな壊れ物だけど
それでも
悲しさや辛さを感じるよ。

普通の人間なら
本当の心なら
もっと辛いのかな。

ミスー、見てよ。
あんなに沢山の人が歩いてる。
こんなに悲しい世界なのに
みんな平気なのかな。

ねえ、ミスー。
もし、僕が死にたいって言ったら
死んでもいいよ、って言ってくれる?

僕は
ミスー、
きみが
死んでもいいよ、って
言ってくれるなら
今すぐ
死んでもいいよ。

ねえ、ミスー。
きみは、なんて言うのかな。

(愛してるよ。虚ろ。)

アンブレラはスピーカーから聞こえる
虚ろの独り言を聞きながら
涙で埋もれそうになる口を無理矢理開いて
小さい声で、愛してるよ、虚ろ、と
呟いた。

Aug 26 2012 14:39:09

虚ろ、バカだ、

おまえは。
虚ろ、
バカだよ、お前は。

大バカだ。

虚ろ。
虚ろ。
虚ろ。
虚ろ。

本当に
バカだ。

お前も、
私も。

大バカだ。

Aug 26 2012 15:01:04

そうか、
もうひとつの選択肢が
残っていたね。
虚ろ。

お前も、
死を望み、
私も、
死を望み、
お互いが
お互いの生を願った。

答えは、

二人で一緒に死のう。

生まれ変わろう。
虚ろ。
私たちは。
生まれ変わって
やり直そう。

世界のはてでなく
世界の中心で
もう一度生まれ変わろう。

アンブレラは虚ろの時間を止めて
虚ろのあたまを
膝に抱いた。
そして、一度くちづけし
虚ろのこめかみに
銃をあてて
引き金を弾いた。

バアーン。

音がした。

そのあとに
もう一つ
バアーン。と
音がした。

崩れ落ちたアンブレラの目から
大きな花が咲くように
真っ赤な涙がこぼれ落ちた。

Aug 26 2012 21:12:28

先生、そのひとだあれ。

虚ろくん、
紹介するよ。

ミス・アンブレラ。
今日からきみの担当だよ。

虚ろくん、
初めまして。
私はアンブレラ。
今日から
虚ろくんの担当になるわ。
よろしくね。

アンブレラ。か。
変な名前。

傘。

ミスー、
よろしく。

blog_5 - 083