さよならの日記:2014年7月14日

14 JUL 2014 00:53:23

人は何故、(ううん、あなたは何故)
どうして、生きる意味を(目的を)問わずにいられるのですか。
私はずっと探している。
私はずっと探してきた。
生きるに値する意味、目的を。

私達は同じ時代、同じ国に生まれ、
境遇は違うとしても
同じ世界を生きている。
けれど、あなたは、あなたの生きる世界は柔らかくて甘い、
そんな気がする。私の感じ方とは違う。
私に世界は優しくない。

悲しさが私を覆う時、
私はそれにあらがう術を知らない。
その上、それは私をいつでも殺すことが出来る。

私が生きる理由、目的、意味にこだわるのは
ここが生きる価値のない世界だから。
せめて理由が欲しい。
死なない理由。
私が本当に欲しかったものは
そういうもの。
形の無いもの。

結局、見つからなかった。

苦しみ、悲しみばかりだったけれど、
あなたと過ごした年月は
私に優しかった。

有り難う。本当に。

課題曲「楽園」

「楽園なんて何処にも無い。
この心の中には。」

四季さん
なに?」
今流れてる曲はなんていう曲ですか?
楽園」
いいなあ。
初めて聴きました。
私も欲しいです。
なんていうアーティストさんです?

僕だよ」

え。

僕が作った」
四季さん、音楽創るんですか!!!!!
そうだよ」
凄いです。
凄くない、ここは音楽藝術大学附属高校だ」
でも、四季さん、授業に出てるところ見たこと無いのに。
授業に出なくても課題やテストはちゃんと受けてる。」
へえー、意外と真面目なんですね。

くださいな。
え?」
くださいこの曲。
ここにくればいつでも聴けるだろう。
それにクラウドにのってるんだ。
勝手に落とせばいいよ」
それはダメです。
私ちゃんとした形で受け取りたいんです。
お金も支払いますよう。

ダメだ」
どうしてですかあ?
一生のお願いです。

まだ未完成なんだ」
これ映像の実習課題だから」
完成したら、プレゼントするよ」
本当ですか。
嬉しい。
いつ出来るんですか?
新しいコンポジションを作ってるから
まだ・・・・・・・以下省略」

映、いつか見せてあげるからね。
未来で二人で一緒に観よう。

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終わる世界。

記憶をパルスにエンコードしている間、
僕は永い永い夢を見た。

宇宙が始まり星が生まれ
生物が生まれヒトが生まれ
世界が生まれ国家が生まれ
大きな大戦が幾度も繰り返され
その度に何度も何度もヒトは滅んだ。
そして永い時間を経て
また同じことを繰り返した。
その時間の流れの中心に自分がいた。
生まれ
生きて
世界を憎み
映を愛し
失い
死んだ。
時代が変わり
世界が変わり
生命がすべて消え去っても
僕だけは何度も何度も生まれ変わる。
永い宇宙の時間の中で
唯一、一筋の光のごとく一瞬だけれど
暖かい手のひらと
この手に抱いた柔らかい腰の華奢な軋みを覚えている。
僕はこの宇宙で何度も何度も生まれ変わった。
数えきれない程。
なのに映は一回すら生まれ変わらない。
僕は待った。
何度も死んで
何度も生きて
それでも映はリボーンしない。
どうして、僕は自分を過信していたのか。
そんなはずはない。
ブレインドライブの解析は終わっている。
遺伝子の修復も。
それなのにリボーン処理しても
映の細胞は分裂しない。
それが狂う程何度も繰り返された。
地獄のような年月が続いた。
それでも僕は諦めなかった。
解析データを再処理にかけてから
ブレインドライブを僕の記憶の保護優先にして
二人が300年おきにリボーンするように設定した。

人類が滅び生命が滅び
地球から海と大気が消えると
ブレインドライブは太陽系の外へ脱出した。
地球が太陽のフレアに飲み込まれる映像を見た記憶が残っている。
リボーンする度
目にするのは透過メインフレームの外の沢山の星。
それから、、、、、

眼から涙が零れた。

目覚めると
水でシャツが濡れていた。
天井が見えて
アイコンタクトモバイルがバイヴすると
エンコード終了を示すメッセージが宙に浮いた。

これで全部終わった。

さあ、行こう。
映が、
待ってる。

(僕はこの世界が本当に大嫌いだ。)

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愛しさの果てにあるもの。

生命は続いていくことに意味がある」と言ったのは
インドの大学にいたときの化学の先生だった。
ロマンティシズムを捨てきった、
その言葉が少しだけ気持ちよかったことを覚えている。

だけど今は違う。

生命は続いていくことに意味がある、という言葉は間違っている。
生命は生きていることに意味がある」というのが僕の現段階の意見だ。
生きている、ということはずっと生き続けるという意味だ。
だが、生物には必ず死がある。
生き続ける、ずっと生きる、永遠の命という機能は
生物にはない。

その代わり、
生命は(真核生物に限る)
同種の生物、例えばヒトなら異性2体で配偶子を残す。
真核生物は卵子と精子の遺伝子による減数分裂によって
作られる遺伝子を持つ新たな生命を作る。
その際、一切の記憶や経験などの情報は捨て去ることになる。
二つの遺伝子の半分ずつを受け取った配偶子は
二人の遺伝子を受け継ぐという形で生命をつないでいる。
遺伝子を主人と考えるなら
遺伝子が続くという意味でずっと生きている、と言える。
というか、それが現状の生命の定義だ。

でも、違う。
僕は違うと思う。

それは、ずっと生きる、という言葉の意味のすり替えだ。

個体が個体としてずっと生きる、ということはあり得ないという
当たり前のことを前提としているだけに過ぎない。
個体が個体としてずっと生きる。
本当に不可能だろうか。

卵子と精子の減数分裂によって作られる
新しい生命は遺伝子によって
親と子という関係を得る。
しかし、減数分裂で作られる新しい遺伝子の情報には
親の膨大な記憶や経験は含まれない。

個体が個体として自己たるゆえんは
小さな頃の記憶や多様な感情、経験、
鏡に映る自分が自分であると認識出来るだけの知覚。
少なくてもそれらがなければ自己の確立は出来ない。

減数分裂によって作られる配偶子は親のコピーではない。
減数分裂が単なるコピーであったならば、
たったひとつのウィルスによって壊滅させられる可能性を孕んでしまう。

生命が遺伝子の個体の乗り換えを伴う継続だと定義するなら
生命の現在の定義に間違いは無い。

減数分裂が進化に促す影響は確かに魅力的だ。
(減数分裂は配偶子形成において遺伝的な多様化を生じさせ、環境変化への対応や進化に貢献していると考えられている。例えば2組4本の染色体を持つ生物では、22=4 通りの組み合わせをもった配偶子が作られ、ここから得られる次世代は 42=16 通りである。ヒトの場合では23組の相同染色体、計46本の染色体を持つため、223=8,388,608 通りの配偶子、8,388,6082=70,368,744,177,664 通りの次世代が生じる可能性をもっている。)

けど、僕が望む答えはそれじゃない。
だから、僕が自分で答えを作ることにしたよ。

記憶も経験も残したまま進化という可能性は維持し
なおかつ、いつでも、いつの時代でも再生出来る。
クロンじゃない。

リボーンだ。

ブレインドライブならそれが可能だ。
僕はブレインドライブに自分の遺伝子と映の遺伝子情報を残す。
映の遺伝子が解析を終えて修復を終えたあと僕らはリボーンする。
リボーンで作られる僕らは記憶も経験も維持したまま生まれ変わる。

光速演算が可能なブレインドライブが作った最高傑作は
光子によるネットワークと光速演算による進化の適合判定と
遺伝子にそれらのすべての情報を組み込むための
第16世代の新アーキテクチャ。
それと僕が一生をかけて作り上げた新プロトコル「EDEN」。

EDENは
未だかつて誰も実現することのできなかった
リボーンを実現する。

僕らは光の海で生まれる
最初のヒトになる。

ねぇ、映、これでいいよね

blog_5 - 41

CUT OFF [SEX]

僕は映とセックスをした。
中に入るとき映が小さい声で呻いた。
僕が止まると映は僕を見て「大丈夫、続けて」と言った。
規則的な空調の音、宙に浮いたデジタル時計、
ブルーのライトが暗闇を照らしていた。

night 21:05:08
映は二人の体液をスポイトで集めて
シャーレに保存した。
それを密閉して僕に渡し
いつか、これを完成させてね」と言って後ろを向いた。
僕はクロンのことだと思った。だから、
クロンなら、今でも出来るよ。」と言うと
映は振り返って
クロンじゃだめなの。」
クロンじゃ死んじゃうの。」と小さい声で言い、俯いて

何年かかってもいいから。」

とそれがどのくらい時間のかかることか
あらかじめ知っていたみたいに一文字ずつ噛み砕くようにゆっくり言った。

僕はそれを培養して冷蔵庫にしまった。
映が死んでから僕は真実を知る。

映が死なずに生きていたとしても
あと一年も生きていられない原因不明の機能不全にあったことを。
僕は映が残した遺伝子を解析した。
ブレインドライブを使っても解析に300年かかるとわかった。
僕はブレインドライブに僕の遺伝子と映の残した遺伝子情報を残した。

sore ga utsuru tono
saisyo de
saigo no SEX datta.

blog_5 - 40

白雪姫のロールプレイ

NC3 night, 04:38:23

NC3(New Century 3 years)
バースデーカードが一通も無かった。
心の中も空っぽだった。
消えてしまったから。
きみが、

いつの間にか、きみが
トリガーに

ああああああぁ

NC3 day, 08:40:20

前に一緒に草間と食べた誕生日。
あれから僕らは親しく付き合いだした。
よその恋人とはほど遠い存在だったと思うけど。

僕は初めて人を愛した。
草間はどう思っていたのかな、
今はもう誰も知ることはできない。

夏で
真っ白い服を着て
右腕をロープで天井に縛られ引っ張られるように首は天井を見上げて
左腕は落ちて
まるで白鳥みたいに草間は
学校の研究室の天窓からぶら下がっていた。
僕が見た最後の映は、逆光が眩しくて
白銀に召された天使みたいだった。

草間の死因が自殺だということは
すぐに判明した。
映像があったんだ。
3Dビデオ。
自分で設置したカメラで
ロープを縛るところから息絶えるまでが
全て記録されていた。
ただ自殺の原因だけは誰にもわからなかった。
その当時は。

草間と最後に会った日。
あの日は学校は夏休みになっていたから
ほとんど誰も居ない研究室で
二人で話をしてた。
データは何処まで小さく出来るのかとか
宇宙はいつどういう終わり方をするのかとか
そもそも宇宙に終わりがあるのかとか
小説家「皆川博子」の本はどれが一番好きかとか
とりとめの無い話し。(僕は「薔薇密室」、草間は「死の泉」)
そして僕は、左手首を裏返して、手首を軽くさすって、
唇に挟んでるロケットを手首の裏側に貼り付けた。
数秒で全宇宙を知った気分。にやける。

「四月一日さーん、ここ、学校。だめでしょそれはー。」
「草間もキメたいの。やってみる。あるよ。」
「いらない。」
「何か欲しいものないの?
「実は私、二学期からマサチューセッツ工科大学行くの。」
「だから、四月一日さんと会うの最後かも、、、。
「あ、じゃあ、尚更誕生日プレゼントのお礼するよ。」
「何がいい? お金なら心配要らないから何でも言っていいよ。」
「何でもいいの?」
「絶対?:
「もう口から出た瞬間から、ごめんそれむりとか、だめですよ。」
「映の願い叶えるよ。」
「だから、言えよ。」

「私とSEXしよう。」

It is to have all begun with you. If, only as for one, my wish has a meaning.
A Shki Watanuki finally relieve my life. 300 years later.

私の願いにひとつだけ意味があるとしたら全部あなたから始まったことだけど
最終的に私の命を四季が救うの。300年後に。

blog_5 - 39

ref, 13, 5, 3, 13 23, 51, 23

(Q) refrain;3|

例えば、私が死んだら
みんなの
記憶の森に逃げ込んで
忘れられていよう
そうするのは
誰からも
忘れられている間の私が
獲得する姿が
私が本当に願った
真実の私の姿だから

そして
私は私のままに
死を得るから

もうこれ以上
何も哀しくないように

blog_5 - 38

MAY 2 2013 PM18:37:29

四月の雨。

NC2 night, 04:38:23
暗い空だった。
目はぼやけていてあんまりよく見えないけど
部屋中を不透明できらきらしたものがくるくる廻ったり
素早く落ちたり舞ったりしていた。

僕達が生まれた時にはまだ誕生日という制度があった。
いまは全てを連続時間でのみ表すので
それ以降、生まれてくる子供達に誕生日はない。それを祝う風習もなくなりつつある。
誕生日制度がギリギリ間に合った僕の世代にはバースデーカードを贈り合う行事があった。
今ではほとんどが特権階級のお金を使いたいだけのイベントになっている。
それもいつかみんな忘れていくんだろう。
(僕は元々バースデーイベント嫌いだから、早くなくなればいいのに。)

とりあえず縦横無尽に闇を舞うバースデーカードを
指先でタッチしてソートする。
どれも見る気なんかしない。
「要らないのに。」そう言って
目の前に浮かぶフロートデスクトップを瞳でタップ、
鮮やかなイルミネーションは全部ライブラリに落ちていった。

右目の表面を優しく押される感触。
慣れるまではアイコンタクトモバイルの
ヴァイブ機能を嫌がる人が多かったけど
今では誰もが 利用している。
慣れてみれば目の表面を優しくヴァイヴされるのは気持ちいい。

着信メールが一件。
二回瞬きしてメールを開くと、KUSAMA と表示される。

“HAPPY BIRTHDAY SHIKI
三百年目の誕生日。
あなたをずっと待っていました。
300年後のお礼をしたくて。

といっても、今のあなたに何もわかるわけないんだから
心配しないで。””

U/KUSAMA

なに?

チャイムが鳴った。
モニターを見たらピザのデリバリーサービスだったけれど
頼んだ覚えがないと伝えたら
「料金はもうもらっています、これはギフトに成ります。どうぞ受け取ってください。」
僕は母親からかなと思って
エレベーターのロックをはずした。
5分でドアのチャイムが鳴った。
モニターを見てからドアを開けて、
玄関に来るとピザをはもう置かれていて
サインを求められた。
SHIKI WATANUKI
レシート要りません、と言う前に
もうデリバリースタッフはいなかった。

誰が?

またメール;ピザ届いた? 一緒に食べたいな。VCでつないでいい?

結局あの後、草間は自家用ヘリで送ってもらうといって、
マンションの屋上にある緊急用のヘリポートに10分もしないうちにいた。
そして、僕の部屋で仮想現実じゃなくリアルに誕生日をした。
二人だけどそれほど寂しくはない誕生日。

最後の誕生日と知っていたとしても
きっと何も特別なことは出来ない。だから、これは十分幸せな誕生日だったと思う。

blog_5 - 37

茜色の空。

NC2 night, 02:08:43

草間は研究会に入会した次の日
僕と同じようにクラスに出ず、
朝から研究室で過ごした。
そして、何日か過ぎると、
いつのまにかそれが日常になっていた。

day, 8:00:00丁度に草間はアイコンタクトモバイルで
研究室のセキュリティを解除した。
草間の父親は日本を代表する電子機器やソフトウェアを取り扱う
KUSAM IndustryのCEO。

ドアが開くと草間は奥のデスクにいる僕に向けて
「おはようございます。」と言う。
僕は振り返ることなく「おはよう、、、、ね、僕眠ってないけどね。」
「え、四月一日さん、昨日から帰ってないんですか?」
「着替えとバスルームはあるからね。」
「何を研究していたんですか?」
「爆弾。」
草間が驚いて椅子に足を引っ掛けてごろんだ。
「四月一日さん。爆弾って。冗談ですよね?」
草間が僕をじっと見つめている。

「冗談だよ。」

「四月一日さん、驚かせないでください。」
その日は特にそれ以外の会話もなく6限目も過ぎた。

草間が帰ると言った時、
草間は僕に近づいて、抱き締めてキスをした。
僕はただ、草間に抱かれながら
窓に光るオレンジ色の空を見ていた。

あなたを
ずっと探してました。
300年待ったんだよ。

草間、お前は誰だ?

blog_5 - 36