風の匂い、血の匂い。

May 20 2008 05:47:33

くすりとも、笑わない。
かわいげのない、あなたの眼差しは、

       どこにいってしまったの。

いつか、きっと。
この言葉を残して、きれいごとをさっぱりと破り捨て、
あなたは消えた。

       いまでも、悲しい夢を見ているのですか。

私は、十一月の夜の風に吹かれながら、
遠くへ沈んでいく、真っ赤な月を、あなたの瞳と間違えてしまう。

虚ろな真実なら、雨に流されてしまえばいいさ。

あなたは、私にそう言って、傘を差し出した。
(ヘビ柄の黒い傘)
そして、左手に持ったナイフで私の心を突き刺し、
やまない雨の中に放り出した。

       私はあれから、闇になり。
       女王になり。
       多少、権力を得た。
       けれど、どうしても見つからないの。

(何が?)

       憎しみ、悲しみ、喜び、怒り、
       感情とよんでも、差し支えないわ。

       私のかわいい、ブラックハートが見つからないの。

十一月になって、頬を撫でる風は冷たい。
けれど、私の王国では、宮殿の天井ガラスから見える、
暗闇に浮かぶ真っ赤な月を、

       (あなたの瞳を)

           指先を凍えさせながら、
           見えなくなるまで、眺めている。

       いったい、あなたは誰なの。
       そして、私は誰なの。

       (灯りを消しましょう。
       (闇が降りてくる。

今夜は、3人殺すわ。
用意をしておいて。

        赤い月(あなたの瞳に)に供えるのよ。

blog_3 - 20

13階層の回想より(0P) TITLE – 「語ラレない言葉。」

Mar 10 2008 07:34:16

さあさあ、これからが見せ物だよ。
壊れていく様をご覧あれ。

一雫ずつかけらが落ちていく様子は見事でしょう。
綺麗と言わずになんと表現できましょう。
さあ、これからが本当の見所です。
お見逃しなきように。

さあ、壊れていきたまえ。
さあ、指から、唇から、きらきらとこぼれていくかけらを
皆様はご覧になりたいのだよ。

さあ、速く。もっと速く。もっともっと速く。
壊せ、壊せ、みんな壊せ。

かけらが降り終わったあとのことなんて考える必要はない。
どんどん落ちていきたまえ。
どんどん砕けてしまえ。

傷心の涙のようにぼろぼろと砕けて差し上げるのだ。
さあ、ご覧あれ。
見事な壊れっぷりを。
皆様。
ご満足いただけましたでしょうか。

(3日後。)

スイッチを切って
倒れていた。

悲しみはそれでも止まなかった。
静かな部屋の机の上に 、一年前の笑顔がいた。
静けさは悲しみを増幅させた。

誰かがまたスイッチを入れてくれるまで
悲しみの階段を昇って
もう悲しみが言葉としてしか意味を
もたなくなって
どうでもよくなってきてるってわかった。

それはシベリアの永久凍土のように
圧倒的虚無だった。

そこでは時間がない。ない。
ない、なにもない。

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blog_3 - 19

「ラザロ徴候、降る雨。」

Feb 05 2008 20:52:18

空から輝くものが降って
   海面に それを映すとき、

    彼は、なにを 思うだろう。(彼の名は、×。)

 いつか、そこへ(砂時計の最後の砂が落ちる瞬間。)
  たどりつく。

     空から降る、「輝くもの。」とはつまり、
 雨。

   その輝きが地上に降りそそぐとき、
         (つまり、彼の×が消えるとき。)

     彼の目に映るものは、輝きではない。
 それは、水色に
  映る、自分の姿。醜い獣。

   くだだけてしまえ。

      消えてしまえ。跡形も無く、塵すら残さずに。
 (雲ひとつない、蒼い、シミ。)

    
      ミクニ、涙をながせ。
  すべてをながしてしまえ。

  
     この世界に誰もいれるな。
 (恋人はどうするの。
 (悪いけれど犠牲になってもらう。一緒に連れて行く。)

     (ラザロ徴候。)

blog_3 - 18

prologue (77 Nights)

Feb 01 2008 16:55:05

(寂しさの意味は?と、呟いてみる。)

///////////////////
僕は、目を閉じ、耳をふさぎ、
唇をはぎとり、指を切り落とし、足をねじ切り、
そして、
氷の海にいた。
そこでは、何もかもが、並列化されていて、
僕が、オレが、私たちが
揃って、死んでいた。

まず、視界から、赤が消えた。
緑色に囲まれる。
次は、青の世界だ。
そして、漆黒でスプレイされたように、
闇になり、
無になった。

そこで、時間は止まり、
私たちは、せかいから、切り離された。
(声が重なる)

「これは、僕の、私の、オレの、願い。
「暁の願い。」

(第77夜)

blog_3 - 17

弱きもの、心切り裂かれるその日まで。

Oct 13 2007 10:04:30
 
誰でもいい。
ここを通り過ぎていく君。

悲しみの本質を、知っているか。
誰でもない、自我の崩壊の仕組みを知っているか。

夢、希望、優しさ、真実。
それらが、言葉ほどに誠実ではないことを知っているか。

すべてが、(まさにすべて、神経細胞の末端まで含めて)
同じように、再生される。
そして、そのことが、悲しみをうむ。
けれど、誰も語らない。
悲しみの本質を。

悲しみとは、いったい何を指しているのか。
悲しみの仕組みとは、どういった化学変化を起こしているのか。

知れば、きっと、誰もが笑うだろう。
なんだ、そんなことだったのかと。
しかし、その「そんなこと」に
哀れな弱き心を持つ者は、切り裂かれる。

僕は、私は、オレは、それを、知っていたよ。
そして、それを知った上で、悲しんでみたのだけれど。
やはり、レプリカでは、本物の化学変化は、起こせないらしい。
そういう意味では、弱き心を持つ者は幸福かもしれない。
けして、レプリカでは到達することが出来ない、
その世界の中心を(幻とはいえ)見ることが出来るのだから。

僕たちは、いつでも、ここで守られている。
どんな化学変化も受けつけることのない
堅い防壁で守られた、せかいのはて。

ここから、見る景色はガラス越しの風景と同じ。
誰が、どんなに手を伸ばしても、届くことのできない領域。

ここのアドレスは、A10という。
シナプスには、強固なセキュリティがかけられている。

時間も、空間も、ここでは無限にあって。
可能性だけが、すべて失われている。
なにも変わることのない、永遠の砂浜。
それが、何を意味しているのか。

これこそが、自意識の崩壊というもの。
すでに、失われてしまったもの。

ここにあるのは、
白い砂浜と、青い海。
そして、永遠に止まることのない砂時計。

blog_3 - 16

今朝、雨で。

Sep 28 2007 22:03:19

 今朝、夢の中で 椿に会った。
       霧の深い、深緑の森の中。

  少し歩くと、目の前に誰かがいて、
ぼくが立ち止まると、そいつがこっちに向かって歩いてきた。

 速くも遅くもないスピードでパレードのような歩き方、 
 ひとりで、パレードをしているように見えた。

けど、違った。濃い霧の中でも顔がはっきりとわかるところまで
近づくと、立ち止まった。

椿だった。左手の薬指にギザギザの付いた黒いリングをして
リングがゆるいのか、その向きを気にして、何度も直していた。

30秒ほど、椿は、リングをいじっていた。
それから、急に何かを思い出したように、こちらを向いた。

(8月24日以来だね)

手に提げた小さな黒いバッグから
一枚のCDを出して、ぼくに向けて差し出す。

  何も言わずに、CDをこちらへ差し出している椿を
2秒ほど、見つめてから、CDを受け取る。

    CDを渡すと、何も言わずに椿は消えた。
CDには、小さな文字で「Number 7」と書いてあった。

 7、孤独な数字。(誰かがぼくのなかで呟いた)

  目が覚めると、いつもの天井が見えた。
  CDには何が入っていたんだろうと考えた。

けれど、あれが夢だったことを改めて思い出して、
考えることをやめた。
 

      

    みんな、行ってしまう。

     来月には、ぼくも消えてしまうだろう。
 ぼくの本当のぼくって、いったい、どんなものなんだろう。

会えるものなら会ってみたいと思った。

   アラームが鳴った。
   クスリの時間を知らせている。

     ぼくは、まだ目覚めたばかりで
    気怠いからだを少し起こして立ち上がって、
      バスルームに向かいながら、クスリを飲んだ。
     
 バスルームの中でお湯につかりながら永遠は煙草を吸う。
  湯煙と煙草の煙が交ざり合う。

   目の前に新しい永遠が立っていた。

  お湯の中の永遠は、煙草の煙をゆっくり吐き出すと、
    その煙と一緒に消える。

     永遠は、出しっぱなしのシャワーを止めると
 バスルームを出て、からだを拭きながら
        いまの季節はいつだろうと思う。

 
     秋ならいいな、小さく呟いた。
  夢の続きが気になった。
   いまの季節が気になった。
椿のまつげを思い出した。
 虚ろはどうなったのか、ぼくはどうなるのか。

  けれど、どれもみんなどうでもいことばかりだと気づいて、
永遠は、少しだけ笑った。

       

 せかいのはて、ここはせかいのはて。
   
   本当ってなんだろう。
   そう、思うと、急に、生きることが怖くなった。
     
     
       とても憂鬱な朝だった。
         叫びたかった。

          (もうすぐこれも終わる)

   
         外は9月で、少し風の冷たい曇り空で
 静かに霧雨のような雨が降っていた。

blog_3 - 15

K+CN-

Sep 25 2012 22:45:34

今まで
どれくらいの時間を考えることに使ってきたんだろう。

それは本来なら全て
記憶の中に、(囁いて)「脳の中に、
グリア細胞の中に。」(掠れ声で小さく言って)
蓄積されるはずだったのに。

「どこにもない、何もない。」

繋ぎ合った手を離してしまえば
このつぎはぎの思い出さえなくしてしまう。
絶望という名の毒薬で願うのは、きみの
幸せ。

全部壊してまおうよ、ねえ。
 

     壊すこと。その本質は、形を崩すことじゃないよ。

  
          僕が壊すのは、
            壊れていく過程を見ることが大好きだからさ。
壊れていく過程は本当に美しい。

       壊れてしまったものは、あるものは美しく、
       あるものは、醜い。

    けれど、壊れていく過程は、すべて美しい。

   枯れた花は、壊れていく過程にあって、
        だから、綺麗。

          その話、長くなりそう?)

    永久に続くよ。)

       壊れてしまっては、もうあとかたもない。

    壊れていく過程の雨の中では
       きらきらと輝いている。なにか、一粒や、細い線。

        壊れていく過程。

      8月の雷雨。
         声が届かないほどの、雷雨。

          美しいメロディばかり作って、そして、壊すのね。)

そうだよ。壊すことがすべて。
すべてをゼロに戻すことがすべてのはじまり。

   目的。1が100へ。100から0へ。

毎日死んでいる。
だけど、ね。

壊している、その時だけは、生きていると実感出来る。
すべてが、破壊へむかって、歩いている。

 
それはわかるけど。)

  だからって、、そんな夢のない話、大嫌い。)

 7は そう言って、去る。)

      ひとり残されて、こわれかけていく。

     綺麗だ。と思う。きっと。ある瞬間から別の角度で

  願うことを忘れてしまう。
だから、壊れていく過程は、潔く、潔癖で、
      深淵で、すべてを埋め尽くす。砂の中へ。

        あるとき、みつける。

     そして、壊す。
壊す。
          許す。

   操り人形が叫ぶ。

 「ようこそ、せかいのはてへ!!」

             たしかに、僕はもう着いている。

        太った小鳩を切り刻んで、
           喜んでもらおう。観客たちに。
 ああ、わかってる。
  自尊心のかけらもない連中だ。
     壊れていく価値もない連中だ。

   見せてあげよう。せかいのはてを。
           それほど、壊れていく過程が美しいというのなら。

  ただただ、笑う、夢のはてへ。
    連れて行ってやろう。   小鳩たちを。

          せかいのはての、黄昏をみせてやろう。
            美しさの極みを。

新しい言葉はもう全部出来た。(クリスマスカードさえもう。)
さあ、海へ行こう。
海の底へ着く頃には僕等もう天使だよ。

きみをメビウスの輪から連れ出してあげる。
本当だよ。

春になればわかる。

There is nothing to be afraid of.
But if you are eternity……………………..

blog_3 - 14

青い羽根が咲いたら、ここへおいで。(ここが砂浜の永遠の苦しみのあとだから。)

Sep 25 2007 06:14:19

12秒。
ピアノから始まった。

 そこは、白くて、淡い遠い音階の中。
  遠くまで 囁き声が 響いている。
(誰かと自分をわける境界を探しているんです、と虚ろは言った。)

  誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か
   (響いている、ゆっくりと。(BPMは82で。))

       また、ピアノが繰り返される。

 堅そうな弦を ハンマーが 叩いていく。
  ピアノを弾いているのは、昨日のぼく。 
   (それを聴いているのは、クリニックの先生。)
先生が言う。

「だから、そこはもっと強く、速く、速く、速く、、、
     、、、、、到底、半年では、無理です。」

   きっと、イカレた神様が、悪戯したんです。
 はい、ぼくが、殺しました。
  でも、違うんです。
  (ああ、虚ろがいないと、何もわからないよ。)

 誰を殺したのですか?

    誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、

 誰でしょうか? ぼくには、わかりません。

    でも、あなたが、殺したと言ったのですよ。
 それなのに、わからないということは、
   知らない人を殺したのですか? 

 (誰でもよかったんです。)違う、そんなこと思ってない。

   ぼくは、殺していません。
 僕の記憶違いです。きっと夢を見ただけです。

 指先で耳をさわる。
 イライラしているときの先生のいつもの癖。

   「いいえ、あなたが殺しました。」

 ぼくは、誰も、殺していません。
 そんな記憶ありません。それに、死体もないじゃないですか?

   冷たくて、暑くて、意識が、
      どこかへいってしまいそうになる。

 先生、どうやら、いまは、真夏のようですね。
  砂漠のように、暑いです。

     それに、手がしびれるくらい寒いです。
 真冬のようですね。風も吹いていないのに、
    凍えてしまいそうです。シベリアみたいだ。

         雨が降っていた。
 桜が散っていた。子猫が鳴いていて、3歳のぼくに出会う。
羽根のように 大きな雪が降っていた。
 白い壁がぼくを囲んでいた。時間が反転して、
昨日になった。ぼくは、眠っている。

    「眠っているわけじゃありません。
      死んでいるのです。」

  「あなた の死体です。」
 
  ぼくの死体をぼくが見ている。
 そこから、見えるものすべてが憎くてしかたなかった。
   ぼくは、完璧に7だった、。

          7で、闇で、夢でさえない。
(死亡推定時刻は、2時29分。
    死因は、心臓発作。)

 蜘蛛がからだを糸で縛っていた。全く動けない。
  天使が、ぼくを見下ろしている。

    右手に、少し小さなリボルバーを持って。
 (天使のリボルバーは、真っ赤に染められていた。)

   青くも見えた。
    
  軽く見つめられた瞬間、ぼくのあたまは吹き飛んだ。

  
         ああ、そうかもしれない。
  そうだったのかもしれない。

     もう少し、あの蝶々を見ていたかったな。

       シベリア、オーロラ、サハラ、マラケシュ。

小学校の記憶、窓の開いた教室。
 算数の時間。 たぶん、秋くらい、9月の終わり頃。
  背の低い担任だった。
   ぼくの前の席の女の子は、居眠りしていた。
   ぼくも眠かった。昼休みのあとの気だるい空気があって、

 先生が、急に、音階を2つ上げたような声を出して言った。
 
 「知ってますか?
  数字の7は、孤独な数字です。
  もちろん、孤独というのは、比喩で、ひとつしかないという
  意味です。では、なぜ7という数字は孤独なのでしょうか。」

 
   なぜ、7が孤独な数字なのか。なんだっけ。
 あのとき、先生はなんて言ってたんだっけ。

  なぜ、7は孤独だったんだっけ。思い出せない。

 7。

       それから、ずっとぼくは7だった。
 (この紙に、樹の絵を描いてください。)

    せかいのはてでは、雪は降らない。永遠に9月のまま。

 

blog_3 - 13

薄紫色の煙の中に落下していく時間。

Sep 24 2007 17:57:57

ぼうっとしていたら、
ここ数日間のバックアップをとることを忘れていた。
だから、記憶がとんでいる。
夢と、現実の、境目がないのも、そのせいだ。

 涙をひざの上にのせたまま、
   虚ろは、青色のタブレットを取り出して、
 それを口にいれると噛み砕いて、水で流し込む。

     数分もすると、手足が自然にだらんとしてきて
  記憶が飛ぶ。鮮明になる。残酷な夢の中にいて、
    笑いながら、自分と自分と自分と自分に出会う。

  ひとりずつに、ファイルを渡す。
    ファイルは、虚ろの記録、レコードだ。

   時間のように、刻まれた細かな線が
     複雑な曲線を描いている。

  生まれたときのことを思い出せそうな気がした。
 けれど、それは、レコードにはない。

ふと、目を開けると、長い時間眠っていたような気がするのに
 振り返って時計を見たら、5分しか、過ぎていなかった。

  今日のバックアップは終わった。
 
自由と時間を引き替えに
  僕は、すべてを失うしかなかった。(唐突だけど)

   だから、ここで、死ぬまで
 記録し続ける。それが唯一の僕に与えられた仕事。

 来週から、違う施設に移るらしい。
  どこも、かわりばえはしないと思うけど。

    虚ろの空からは、相変わらず太陽が降り注ぎ、
 ゆっくりと、溶けていくのがわかる。

  どろどろに溶けて、蒸発してしくのもいいね。
   
 煙草の煙みたいに?
 
      そう、薄紫色の一瞬で消えていく煙みたいに。
  匂いさえ、残さずに、きちんと綺麗に、大気にまざって
ゆらゆらと、雲の上に昇っていきたい。

  そして、いつものように、バスルームのスイッチを入れる。

     涙は、虚ろの足下に巻き付いて、
      ねえ、ぼくを許してよ。と言った。

   沈黙が続いて、涙がもう一度同じ言葉を言いかけたとき
  
     もういいよ。
       行っても。

   小さな呟きだったけれど、涙は、はっきりと聞いた。
 それで、涙は、自分の首にナイフをあてると
  一瞬でのどを切り裂く。
     血が噴き出す、涙の血は青い。

 綺麗な青だった。
   虚ろはまたひとりになった。

blog_3 - 12

曇りのち、雨のち、針。

Sep 15 2007 03:11:28

 小さな、とても小さな、規則的な音が部屋を満たしている。
  それは、7つの時計の動く機械音。

   僕の部屋には、7つの時計があって、
 5つは、正しい時間を示し、残りの2つは、
   10分前と10分後を示している。

 形はどれも似たものはない。
    統一性はないけれど、
     どの時計にもアラームがセットしてある。

 アラームは、どの時計も夜中の3時に鳴る。
  起きるためのアラームではなくて、
    眠るためのアラーム。

  アラームが鳴ったら、眠りにつく時間だということ。
 アラームの音色は様々で、電子的な音や、アナログ的な音が
夜の3時になると、一斉に鳴り始める。

 僕は、それを、特に急ぐ訳でもなく、
ゆっくりとひとつずつ、とめていく。(それでも鳴り止まない)

睡眠薬が入っている、クロコダイル模様の青い箱をあける。
   箱の中は、一種のコレクション。
  睡眠効果の強い順に整頓されて、
   隙間なく、いろんな種類の睡眠薬が並ぶ。

 僕は、雨の音が針にかわるのを感じながら、
   一番奥から順番に、シートから薬をはがしていく。

  手のひらが色とりどりの薬で埋まる。
    (少し上を向いて、すべて舌の上に落とす。)

 ゆっくり噛み砕く。

    何種類かの苦さや甘さ、
  すぐに溶けていくもの、固くてなかなか割れないもの。
 最後は、水で飲み込む。それで、おしまい。

   儀式のように、デジャヴのように、
    同じ夜が毎日やってくる。

(では、今日から眠剤を追加しましょう、と頭の中で声がする)

 乾いた中年の女性の声で。
 
      ぼくの空からは、相変わらず針が降っている。
 針で濡れたからだをバスタオルでふくと
   
      白かったタオルが真っ赤に染まる。
 日本の国旗のようになったタオルを見ながら、
    涙は、
      あかい、と小さく呟いた。

     虚ろは、何も見つめないまま、
  目を開いて思考を閉じている。

      床が真っ赤に濡れている。
 涙はそれを見て、虚ろがもう帰れなくなっていることを知る。

   遠くに来てしまった。
どこにいるのかさえ、わからない。
 ほんの寄り道のつもりが、戻れなくなってしまっていた。

 揺れる。
  自分が揺れているのか、それとも、地震なのか。
   いまは、訪ねる相手がいない。

     (そんなことは、どうでもいいことだった。)

  時間は前に進み、朝が始まる頃、
 いつものように、バスルームへ向かう。
   新しくなった虚ろが、
    まだ濡れたままの涙を、ガフの部屋から出している。

  針の大きなアナログの時計の針が止まっていた。

     電池を入れ替えて時刻を合わせる。
   数分後に見ると、針は動いていなかった。

  壊れていた。
虚ろは、その時計から電池をはずすと、ゴミ箱へ捨てた。

  予定表に、新しい時計を買う、と書いた。

虚ろのすぐ隣で
 涙が、
    時計は、やっぱり砂時計がいいな、と呟いた。

      遠くに砂の落ちる音を聴いた。
        サラサラと細かな白い砂の落ちる音。

     砂時計がいいなと、虚ろが呟いた。

          4時5分。
            朝のくすりの時間。

      
             デジャヴのように同じ朝だった。

blog_3 - 11