ここは天国なのか、地獄なのか、そんなことはどうでもいい。
世界はどうして消えたのか。
誰一人いない、生命は僕一人だけ。
僕は死んだのか。
けれど頬を触る手はかすかに冷たい。
多分僕は生きている。
誰もいないこんな平野で。
きみはまだ世界にいるんだろう。
僕のいない世界。
きみの目が僕を映すことがなくなってから、
きみは僕の声を聞いているのに僕の声をすぐに忘れてしまう。
僕は精一杯きみの名前を呼ぶけど
きみは誰の名前も呼ばない。
僕はきみを苦しめているのだろうか。
そうだとしたら、僕はもう、
きみの名を呼べない。
そうしたらきみは喜ぶだろうか。
きみの僕は果てもなく変わってしまったのだろうか。
それともきみが変わったのだろうか。
でも、何れにしてもその原因は全て僕にあるんだ。
僕が悪だから、きみに嫌われてしまったとしても仕方のないことなんだ。
でも、それでも、100万光年先の宇宙の光ほどには、願いたい。
きみの中に僕はまだいて、僕の声も聞こえていると。
明日には忘れてしまったとしても、今は覚えていてほしい。
僕の中できみはいま目を閉じて長い眠りについている。
冬眠者のように寒い冬が過ぎて暖かい春を待っているみたいに。
僕の心が冬のように冷たいから眠っているんだ。
僕はきみを目覚めさせたいけど、僕の冬は終わりがない。
きみは永遠に僕が死ぬまで冬眠者であり続けるのだ。
眠り続けているきみを僕はずっと見守っている。
真冬の寒さに肩を震わせながら厚手のコートを羽織って、
きみの隣で椅子に座ってずっと一緒にいるよ。
きみが僕を忘れても僕はきみを名前を覚えているよ。
きみが長い眠りから覚めて起き上がり、
横で椅子にもたれかかって死んでいる僕のことを知らなくても全然構わない。
僕は忘れ去られる者だからね。
名前なんて忘れていいから、僕の言葉を覚えていて欲しい。
きみに愛してるといったあの言葉を。
だけど、もう少しだけここにいさせてね。
僕の灰が散ってしまうまで。
