プラスティックガラスの蓋の上には「E」が花文字でスタンプされていた。
クリアで緑色の蓋の角がスタンドライトの光で輝いている。
小さなそのケースは三つ並んでいて蓋の色が全部違う。
左から、緑、青、クリアで緑以外にもアルファベットがスタンプされている。
青は「L」、クリアは「S」だ。クリアだけ円筒形をしている。
緑と青はスクエア形。
ケースの中にはそれぞれ違ったクスリが入っていて、つまり三つはピルケースというわけだ。
それぞれの蓋に押されたスタンプは中に入っているクスリのイニシャルだが、
緑の蓋の「E」だけはクスリのイニシャルではない。
(それはどういう意味?)
大きなディスプレイの前に並ぶ沢山の輝くものの最前列に三つのピルケースが置かれている。
すぐに手に取りやすいようにとそこに置いている。
「S」のケースを手に取って蓋を開けて、中から白い小さな円筒形の錠剤を2個取り出す。
私は一緒だと思っていた。ずっと一緒で離れることはないと思っていた。
永遠に愛されるのだと思っていた。
クスリを2個口に入れて噛み砕いてソーダで喉に流し込んだ。
椅子に座って背もたれに頭まですっぽりと身体を預け目を閉じると暗闇の奥が燃えている。
炎の勢いは強く無数の火柱が数千キロメートルまで昇る。
炎は暗闇を全て焼き尽くしていくかの勢いで目の奥へ迫ってくる。
炎が視界を全て塞ぐ。
目を閉じている視界は真っ赤に染まりそれ以外何も見えない。
そして炎が脳幹に到達すると涙が流れた。
幸せで涙が流れた。
満たされている。
すべて。
炎はとても冷たくて気持ち良い。
どうしていつからそうなった。
どうして教えてくれなかったの。
(教えても仕方ないよ、きみ、生きてない。死んでるんだもん。
言う必要ないでしょ。)
炎が脳幹を焼き尽くす間ずっと絶頂で
僕は笑ってたんだ。
目を閉じたまま何時間もひとりきりで笑ってたんだ。
目を開けると当たり前の世界があって
僕はというか私は当たり前に絶望したんだ。
だって、とても悲しかったから
泣かなかったけど
飴が食べたいな
小さくてまんまるの