私が通りに出ると誰もが一斉に振り返り立ち止まり、
穢れた乞食を見るような冷たい視線で見るのだった。
そして私が側を通り過ぎるときには必ず、「天使さまがお通りになる」と憎しみのこもった声で蔑む。
私はその仕打ちから逃れるために耳を塞ぎ、誰の目も見ないように俯いて歩かなければならなかった。
だけど本当はそれ程気にはしていない。
みんなのあたまが狂っているからなのだと私は知っていたから。
私は塔に登る。
塔のてっぺんに立つと彼らがとても悔しそうな表情をしている。
ここは私の塔だから彼らは上がってくることができないのだ。
怒り狂って道端に落ちた石を投げつけてくる男がいる。
私はそれを見つけてふっと笑ってしまう。
他愛のない彼らの子供じみた行為に私は手を振って応える。
塔の上は次第に霧が濃くなって冷気とともに私と塔を覆い隠していく。
あたり一面霧に包まれて何も見えない。
そうして私は彼らのことを忘れていき、結果的に彼らのことを許すのだ。
私はクスリを使ってどんどん深い階層へ降りていく。
意識はときに揺れながらときに私自身でありながら世界全部を構成する。
普通の夢とは違う、意図して作った夢の世界は狂いそうなほどリアルで鏡に映る私は紛れもなく私だ。
私はここで見つけなければいけない。
(何を?)
壁に三つのレリーフが飾られている。
大きさはちょうどレコードジャケットくらいで素材は三つとも違う。
それぞれにタイトルがつけられている。
左のレリーフのタイトルは「存在のない私」素材は銅で大きな天使が大勢の人間を踏み潰している様子が描かれている。
真ん中のレリーフのタイトルは「気丈な猫」素材は鉄で羽の生えた猫が空を飛んでいる様子が描かれている。
右のレリーフのタイトルは「輪廻する宇宙」素材は木で何も描かれてはいなかった。
私は少しだけ時間を進めて、雪の降る森の中を歩いている。
目を閉じると瞼に雪のかけらが降って、頬に溶けて落ちていく。
雪景色で覆われた森の先に塔が立っている。
私は塔に登る。
(私はこれを知っている。)
でも思い出すことはできない。
意識が輪郭を取り戻すと私は目覚める。
部屋は真っ暗で時計を見ると朝の2時50分。
私はもう一度ベッドに戻って目を閉じた。
