八月の殺し屋は天使。

 いとしい想像力よ、私がおまえのなかでなによりも愛しているのは、
おまえが容赦しないということなのだ。

Manifeste du surréalisme/Poisson soluble / André Breton

頚動脈を確実に切るためにはコツがあるのだと教えてくれたのは、
意外にも三年も同じクラスだったのに一度も声もかけたことも話したこともない佐内茉央だった。
佐内は学年で常にトップに名前があるくらい成績優秀、
しかも特別に神様がズルしたのではないかと疑うくらい誰もが認める美人だった。
だから、彼女の周りには友達や知り合いになりたい連中がいつも溢れている。
そして僕は深刻ないじめにあっている、どこにでもいそうな
なんのとりえもない人間だった。
この二人が会話するなんてことはその瞬間が来るまで想像したことさえなかった。

その日は去年の8月、最高に暑くて、3分歩いただけで汗が顔中を濡らし顎から滴り落ちていった。
僕は額の汗を拭きながら歩き続け、人で賑わう駅前のショッピングモールを逃げるように足早に通り抜けて、
人気のない寂れた商店街に隣接する古びた商業ビルの中に入った。
ビルの三階にあるネットカフェの受付でいつもの席を選んで静かに自分の席に移動した。
僕はパソコンをスリープから起こして、1年前に知ってから必ず見る自殺サイトにアクセスした。
サイトには掲示板がいくつか用意されていて、自殺の方法教えます、とか、復讐しませんか、
心中しましょう、などがあった。
僕がいつも見るのは、自殺の方法教えますの掲示板。
なるべく痛くなくて人に迷惑のかからない方法を探していた。
5月になる前には死のうと決めていたから、
そろそろ本当に自殺の方法を決めなければいけないと少し焦っていた。
僕はいつも他人の相談や返事を読んでいるだけだったけれど
その日は焦りもあってずっと躊躇って出来なかった投稿を自分ですることにした。
内容は確実に死ねてなるべく痛くない自殺の方法を教えてください、というものだった。
投稿してずっとどきどきしていた、どんな返事がくるだろうか、
無視されないか心配で、投稿しなければよかったとさえ思えてくるくらいだった。
けれど予想より早くすぐに回答が来た。
内容は簡潔で頚動脈を切る方法を勧めるものだった。
理由として、頚動脈は切ってさえ仕舞えば5分で死ぬため
誰かに見つかったとしても蘇生させられることがほとんどないということ、
痛みもほとんどないということだった。
ただし、頚動脈を自分で切るためにはコツが必要だと書かれていた。
そして、そのコツを知っているけれど、
警察に捕まる恐れがあるからここでは教えられない。
知りたければ直接会って教えたいということが書かれていた。
僕は会う約束をした。

もうじかんがない
はやくおしえて
しにかたを

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (20)

投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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