真実のレプリカ。

ある夜 二目とは見られないユダヤ女の傍で、
死骸に添って横たわる死骸のようになっていたとき、
この売られた肉体のそばでふと思い浮かべたのは
わが欲望の届かない美しい人のことだった。

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もしも、ある晩、ふとにじみ出た涙でもって
君がかりにも、おお 冷酷な女たちの中の女王よ!
冷たい瞳の輝きを曇らせることがありさえしたら。

Les Fleurs du mal XXXII UNTITLED / Charles Baudelaire

もしも私が得たものが全て本物そっくりの偽物だったとしても
私は気にならないだろう。
その理由は私はそれが偽物だと気づくことはないからだ。
本物とそっくりであれば本質は変わらない。
ものであってもそうだ。
中身まで忠実に再現されたレプリカは機能としては本物と変わらない。
誰かが私にそれは偽物だよ、と忠告したとしても
私にとってはそれは本物と何も変わらないのだ。
大体において誰がそれを偽物とわかるというのだ。
全て忠実に再現されているレプリカだとして
その違いはなんだ。
違いは一つだけ、偽物だということだけだ。
本物と違うのは本物ではないということにつきる。
機能も外見も材質も同じ、そんなものの違いについて考えたところで何の意味もない。
少なくとも私にとっては。

「僕はもうここから出て行くけれど、二度と会うことはないけど、死ぬまで永遠に愛している」
「きみが死んだら、僕もすぐに死ぬよ」
「きみが本当に望むなら、僕が殺してあげる、痛くないように銃で頭を撃ち抜いてあげる」
「きみと過ごした一瞬は僕にとっては永遠と同じものだよ」
「きみのために僕は生きよう」
「きみのことが本当に好きだよ、今まで逢った人の中できみだけが特別だよ、未来までずっと変わらない」
「もしきみが辛いなら僕はいつでもさよならしてあげる」
「きみがもしもいない世界だったら僕はもう死んでいるよ」
「きみと過ごしたあの夏だけはたったひとつの大切な記憶、きみとすごしたあの夏だよ」
「きみと出逢えたことが僕が生まれてからたったひとつ唯一の喜びなんだよ」
「つまり僕はもうこの先きみ以外の誰も愛さないよ、きみだけがいればいいんだ」
「正しいとは思わないけれどそれでも僕はきみのしてきた悪を全て許すよ」
「傘を差さず雨に濡れて歩くきみを僕はしかったけど雨に濡れて歩くきみはとても綺麗だったよ」
「僕は幸せだよ、最後にきみに出逢えたから」
「僕のことを見つけてくれて本当にありがとう」
「きみだけが永遠だ」
「愛してるって言ったのはきみにだけ」
「世界の果てに連れて行ってあげる」
「またいつか逢おうね」

レプリカの葬列だよ。
美しいんだ。
全部私の愛しい真実のレプリカだ。
永遠に失うことはない。
もう全部私自身だからな。
私が偽物なんだ。
それを悲しいと思ったことはない。
私は偽物でも十分に幸せだから。
これが世界の果ての永遠。
色褪せないプリントの私。
私がいない世界の偽物の私。
あなたがくれた世界。
ありがとう。

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投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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