宇宙のマニキュア。

虚ろのコンピュータのモニターには膨大な量のテキストが映し出されていた。
「心」
永遠に続く様なテキストの群れを素早く下にスクロールしながら一瞬で読み終わると
虚ろが興味なさそうに声に出して「噓ばっかり」と言った。
それから虚ろは姉様からもらったハンドクリームを丁寧に両手に塗って
明日のためのネイルを何にしようか考えていた。

何がいいかなー。
折角だし姉様がクリスマスにくれたあれがいいかなー。
僕に似合うかな。
派手かなー。
でも姉様に見てもらいたいしあれにしよー。決めた。

ヘッドレストに頭を沈めて身体を椅子に預けると、「あ」と一声言うのと同時に起き上がって煙草に火をつけて、もう一度後ろに倒れた。
煙草の煙が目の前を流れるのをぼおっと見ていた。
昨日届いた、Plastic Tree の新譜を半分くらいまで聴きながら、虚ろが退屈そうに「なんか死にたいなー」と言った。
枯れたポインセチアが気になったけど無視して、煙草を灰皿に落とすと次の煙草に火をつけて椅子にもたれた。
虚ろは煙草の煙が目の前を流れるのをぼおっと見ていた。

さて、やりますか。
姉様のために。

21時49分、虚ろがマニキュアを剥がし始める。
右手の親指から剥がしていく。
コットンと綿棒を使って丁寧に色を落としていく。
ゆっくり舐めるようにしてそれは続き終わったのは、22時25分。
虚ろはカップに残っていた冷えたコーヒーを飲んで煙草に火をつけるとさっきと同じように後ろにもたれかかって考えていた。
(何を?)
22時32分、新調したばかりのベースコートを塗る。
左指の親指を塗り終わると右手の爪は既に乾いていた。
虚ろが右手の小指を唇にあてながら「ほんとにはやいなー」と言った。
22時34分、全部の爪が乾いた。
姉様がくれたマニキュアを初めて使う事に少し興奮気味な虚ろが「じゃ、やろっか」と言った。
22時41分、マニキュアを塗る。
一度目の塗りでは色は浅く、乾くのを煙草を吸いながら待っていた。
「これは3度塗りくらいかかるかなー」と椅子にもたれながら目を閉じて言った。
結局4度塗りになった。
虚ろは乾くのを待ちながらキーボードにマニキュアが付かないように慎重にゆっくりとタイプしている。
「ベル・マジャンディの法則」
「脊髄神経」
「脳神経」
「視神経」
「中枢神経系」
「視床下部」
「副腎髄質」
「ドーパミン」
「L-ドーパ」
「バリコシティ」

マニキュアの色は地上じゃなくて宇宙から見た星空のように鮮やかで綺麗だった。

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投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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