氷点下の理由。

私は本が好きだ。
本を読んでいる時間だけは、私が自分が誰であるかということを忘れさせてくれる。
私は自分を好きでいたことが一度も無いから。
特別に女王であることが嫌なのではなく、
例えば私が世界の果てではなく、世界の中心に住む普通の人たちの中の誰かだったとしても
やはり私は自分のことを好きにはなれないだろう。
私はなんのために生きるのか。
生きると云うことはその先に必ず死があるということ。
人は誰でも例外無く必ず一度死ぬ。
死は無だ。死後の世界なんて無いし、輪廻転生して生まれ変わることもない。
一度生まれ、一度死ぬ。そして、無。何も無い。
生命はその繰り返しだ。
下等生物や植物なら、生きるために理由が必要だなどということはないだろうが。私は違う。
私には理由が必要だ。
生きると云うことは命の奪い合いだ。
人間なら誰でも幸せを願う。
幸せな状況とは他人よりも自分が幸せであるということを意味する。
だから幸せと云う状況の判断は比較対象を必要とする。

幸せになるために人間は戦争や競争に勝たなければならない。
戦争という行為が有史以前から一秒もやんだことがないのは足りないものを得るため。
足りないものを得て満足するため、満足している状態を幸せという。
他人より幸せになるためには他人より多くのものが必要になる。
大げさに云えばこれはもう容赦のない、
殺し合いだ。
だからこそ、生きると云うことは戦争なのだ。
そしてこれは世界で最もたちの悪い類いの戦争なのだ。
この戦争は一度きりではなく何度も何度も、死ぬまでずっと戦い続けなければならない。
しかも死ぬまでずっと勝ち続けなければならない。
毎日続く戦争だ。
たった一度さえも負けることは赦されない。
負けることとはつまり、死。
だから結局のところ人間は全員が必ず最後に負けるのだ。
私が考える生きると云うことは戦争であり、
常に勝たなければ死んでしまう。
そして残酷なことにこの闘いはどんな人間であっても
いつか必ず負けることになっている。
負けることが赦されない戦争、けれど絶対にいつか負けることが決まっている。
それが生きるということなのだ。
それが私の世界。
大嫌いな世界。

私が生きることに理由を求めるのは勝ち続けなければいけない戦争の毎日に疲れてしまって
それでも戦い続けていかなかればいけないと云うのなら、その苦労に見合った正当な対価の見返りを求めたいと思っているから。
今はまだみつけられていないけれど
もしいつか、その見返りが見つかったら、それが私の生きるための理由になる。

もういい、か、この話は。
考えることに疲れた。
本当に私は生きることに不向きなのだな。
だから私は自分を忘れるためにいつでも本を読む。
とりわけ、生きる理由が死ぬための私にはお似合いなのだろう。
早く死にたいよ、永遠。
お前のところへ、私は早く行きたい。

天は闇に覆われて
肌をすり抜ける風は冷凍庫のように冷たく
時間だけが規則的に過ぎていく。
時間が過ぎるのをただひたすらに待っている。
物語はゆっくりと結末を編み始めた。
もう終わりも近い。
空が黒いな。
私の中のようだ。

おやすみ、永遠。
私はお前がいなくてとても寂しいよ。
夢で逢おう。

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投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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