死ぬために僕がしたこと。ver.2

18, Mar, 2215, 10:20:28

母親の運転する車から降りて、皆がいる列の最後尾に並んだ。
空は春らしく霞がかった青空であちらこちらで小鳥の声がしている。
皆といっても全く話したことのないクラスメートなので誰も僕には話しかけてこない。
それは僕にとって有り難いこと。
周りを見渡せば、一様に白い服を着て真剣な顔で葬儀の伝統であるかのように誰も声を発せずにただ車の到着を待っている。

>What?
魂の無いただの灰を。
>Why?
ただの灰になんの価値があるのか。
きっと価値なんて無い。
これはただの儀式。
レストランで食事をしたらクレジットを支払う。
それと同じ。
誰かが死んだら葬式をする。

一際大きくて真っ白い車がゆっくりと入ってくる。
参列者が待ちこがれていたかのように列を崩し車を中心に列を組み直す。
車が止まり運転手が後部座席を開けると白いつばが長い帽子を被った女が降りた。
白いレースに隠れて顔は見えない。
女は両手に滅菌処理されたアルミニウムの円筒形のボックスを抱えている。
白いロングドレスが風に舞った。
一礼して女は列の真ん中を歩み進んでいく。
参列者もそれに続いてゆっくりと進む。
広い十字路の一番奥、荘厳なレリーフを施したプレートの前で女は立ち止まる。
プレートに刻まれているのは僕の友人の名前だ。

>Who?
僕が唯一話をするクラスメート。
>Lady?
友人の母親。

友人の母親を見るのは初めてだった。
葬儀関係者と見える白いスーツの男がプレートに触れるとカバーが音も無く開いた。
そこに友人の遺灰を納めたボックスを入れる。
母親が後ろになした列に振り向いて深く長い礼をした。
それは俯いて泣いているようにも見える。
参列者は皆沈黙を保って悲しみを演じていた。
僕だけが違う。

友人と僕は自殺志願者だった。
二人とも何度も自殺を試みたことがあり
その度に失敗した。そういう仲間だった。
彼がよく言っていたのは、どうして生きなければいけないのか。ということ。

>NOT
どうして死んではいけないのか?
>Anser
生命は尊く何よりも大切にするべきものだから。

彼がどうして死にたいと思っていたのか、それはよくわからない。
けれど、彼の場合は衝動が先に有ったのだと思う。
理由より先に衝動が有ったんだ。
死にたい衝動。
それだ。

彼との最後の会話のログは残っていない。
ヴァーチャルじゃなく直接会って話したから。
これは記憶の一部。

>やあ。これから死ぬよ、爆弾を手に入れたんだ。
どこで?
>秘密。
何処で死ぬの?
>それをききたくてわざわざ来たんだ。誰にも迷惑がかからない場所知らないかな。
夜の代々木公園なら大丈夫じゃないかな。
>そうだね。有り難う。
うん。
>今日でさよならだよ。
うん。
>何か欲しいもの有ったらあげるけど。
何も無いよ。
>きみはいつやるの。
近いうちに。
>そう、じゃあ。
うん、健闘を祈る。

気がつけば皆が花束をレリーフに捧げて友人の母親に挨拶している。
僕も皆と同じように静かに歩いていく。
花束をレリーフに捧げて、ゆっくりと友人の母親を見る。
この人は何も知らない。

>Judgement
僕があなたの息子さんの自殺のお手伝いをしたんです。
だから、もしかしたら半分くらいは僕が息子さんを殺した様なものです。
それでもこの花束を受け取ってもらえますか。
僕も彼もただ死にたいだけなんです。
自殺に理由なんて要らないんです。
それでもわかってもらえますか。
僕を許せますか。

生きていることが美徳だなんて誰が決めたのだろう。
誰もが一度は必ず死ぬと云うのに。

>Fact
命は一度きりだ。
だからといって命の価値を押し付けられるのはもう嫌なんだよ。

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投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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