9th/October/2006/02:08
黒い傘。
かなしい夢ばかりみる。
実際には、楽しい夢、行きたかった場所や、したかったこと、
そんなできなかったことを夢の中で実現している。
夢の中では楽しい。
だから、目が覚めると悲しくなってしまう。
それはもう失われてしまった出来事たちだから。
涙ばかりあふれてくる。
かなしい夢のあとには、必ず雨がふる。
溺れてしまわないか不安になって、
大量に傘を買う。
ずらっと並んだ傘。
色も形もバラバラで、どれがどの雨をよけているのかわからない。
この傘をさすといいよ。
それはなにがいいんですか?
この傘をさすと目が覚めない。
それはすごい。
じゃあ、せかいのはて でずっと暮らす事ができますか?
できます。
それはすごい。
この傘をもらえますか?
差し上げます。
この傘をさしたら、二度と目が覚めないんですね?
そうです。
僕は二度と目覚めない傘を手に入れた。
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23rd/February/2015/18:23
悲しい傘を手に入れた。
その傘を差すと世界の果てに追いやられてしまう。
世界の果てではいつも雨が降る。
雨が降ってた。
僕はこの雨に濡れるか世界の果てで雨に濡れるかの選択を迫られる。
どっちにしろ濡れるんだ。
どっちでもいいよ、と僕は傘を差した。
轟音がした。ーーー
一瞬に全てを失った。
世界の果てには何もなかった。
雨だけが降っていた。
何処までも続く地平線に降り続く雨。
こんなはずじゃなかった。
もっと違う世界の果てをイメージしていた。
そんな言い訳は通用しない。
何時間泣いても雨は止まなかった。
ずぶ濡れだ。
滴り落ちる雨に視界を奪われてもう前が見えない。
体温を奪われる。
隠れる場所も無い。
このままでは死んでしまう。
それでもいいと思った。
きみが傘を差してくれる前は。