僕はそれにふっと息を吹きかけただけさ。それが二人の出逢いだった。
そして、辻褄の合わない恋をした。
けれど、それでも良かった。
愛してたから。
だから、後悔はしていない。
普通の不便さは最初から知っていたさ。
誰にも言えない言葉ばかり、
君に求めた。
あれは僕の我が儘。
それを許したのは君。
真夜中の雨の中を君と二人で歩いた。
それがいくつかの記憶のひとつだ。
いつか、朧に消えていく前に君に伝えたかった。
ねぇ、忘れてばかりいないで
時々は僕を思い出してよ。
君の凍った吐息は、今も覚えてる。
シベリア、黒い夢。
繊細な君が笑顔を作るとき、
僕はどんな顔をしていただろう。
今更思い出したとしても
何も変わることのないことが真実なのだけどね。
忘れていこう。
冷たい記憶は忘れていこう。
君の温もりを覚えてる。
唇の体温も。
例えば、これが全部夢だったとして、
あの時間に戻れたとしたら
僕は君を二度と手放さないよ。
だからもうお休み。
君との言葉遊びは追憶だ。
愛しているよ。
こんな11月の夜のなかでも。