1st/November/2006/17:59
語りの残した言葉(1)
語りはファブリック地の柔らかいソファに座って
本を読んでいた。
ソファにもたれてはいなくて
背中を伸ばしたままで。
僕はどうして本ばかり読むのかというようなことを
聞いたと思う。
語りはこちらを一瞬向き
前に進むためと一言言うと
また本に視線を戻す。
そして、さらに続けた。
前に進むためには
後ろに捨てるものが必要だ
それはきみにとって何?と僕が聞くと。
今のところ時間だと答えた。
時間を捨てて前に進むのか。
僕は秒だから常に
語りに捨てられていくわけだ。
僕はなんとなく
それは悪くないな。と思った。
語りに捨てられるなら
それは幸せかもしれない。
前に進むために後ろに捨てるものが必要だ。
僕はその言葉をメモした。
/////////////
1st/February/2015/17:41
きみはまた一つハードルを越えた。
後ろを見てご覧沢山のハードルが見えるだろう。
あれは全部きみが越えてきたものだ。
(悲しい夢を見る。
それは僕にとって記憶の鑑賞装置。
大切な悲しみのライブラリー。)
外では大輪の雪が舞い散り
地上には足首が埋まる程の柔らかな雪が積もった。
僕はこの雪を綺麗だと思うけれど
必要に応じて片付けなければいけない。
それと同じことだと思う。
僕はこの世界を憎み続けながら留まり続ける。
僕は死にたいと思いながらこの世界に生き続ける。
願いは叶うものとは限らない。
それを知っているから僕は見ない振りでそれを全部片付ける。
良いとか悪いとかじゃなく
正しいとか正しくないとかじゃなく
純粋に堕落するために。