虚ろとアンブレラ。2/3

2014-04-10 10:43:03

虚ろのレポートを読みながら私はデジャヴーを感じた。
私が知っている虚ろはただの実験体。
そんな実験体が私を知っている。
私はまだ自分を知らないでいるのかも知れない。
虚ろを待たせている罪悪感と自分と体制への不信感から
ポケットに手を入れて
青い錠剤を噛み砕くしかなかった私は
心から虚ろと声に出して呼んでみた。
涙が零れた。
笑いながら泣きじゃくって虚ろの名を呼び続けた。

2014-04-12 00:20:56

窓枠を支える細いアルミニウムに目を近づけて
虚ろは会話していた。
アルミの向こうに映っているのは最初は女王闇。
それから次々と変わり続けて今はミクニと話している。
今のままではこちらに出来ることは何もないということがわかった。
変わってしまったアンブレラについては意見が分かれた。
元々の人格に戻ってしまったという意見、
クスリで人為的に操作されているという意見、
立場上変わったとみせかけているという意見。
どれでも変わらない。
僕にとっては。
僕の知ってるアンブレラ以外のアンブレラは
期限の過ぎたチケットみたいなもの。
でも今はどうやってここから逃げだそうか
それを考えることが最優先だった。
虚ろはさよならに向かって
僕はアンブレラがいないと寂しくて仕方が無いんだと言った。
砂漠の迷子みたいに。
恋してるのね、虚ろ。寂しいね。
きっとなんとかなるよ。
だから元気出して、とさよなららしくない
普通の言葉で励ましてくれた。
僕は赤い錠剤を手のひらで掴んで口いっぱいに放り込んで一気に飲み干した。

2014-04-12 21:10:06

目が覚めるとじとじとと濡れた枕からバナナが腐ったような匂いがして
僕は布団を上げて起き上がった。
濡れた枕に赤い点々、と汚物、これは
記憶は無いけど昨夜クスリの飲み過ぎで嘔吐して眠ってしまったらしい。
それと腰の下に細い固い棒のようなものがあって
取り出してみるとそれは細身のピストルでマガジンに8発弾が入っていた。
取りあえず僕はこの匂いが嫌でベッドから降りた。
いつもの飾り気のない20畳ほどの部屋をシャワールームに向かって歩く。
なにか違う。いつもと違う。何だろう?
何も変わってないのに何かが違った。
そして、シャワーを浴びようとノブを回すと
突き刺すような冷たい水が出てきて
いつまでたってもお湯に変わらないので諦めてシャワーをやめた。
ガスがつかない。
そこから歩いてベッドに進む途中に気付いた。
いつもなら頻繁に動き回る監視カメラが全く動いていない。
壁に埋め込まれた時計の針は動いている。
10:58:12
電気はきている。
何か起こっているようだけれど
まだ今は何もわからなかった。
でも、もしかして、そう思って直感的に動いた。
締め切られたオートロックのドアが開いた。
静かにドアを開けて外の様子を見る。
ちらっとだけ見える窓枠には外の明かりが差している。
物音がした。
それで僕は一旦ドアを閉じて部屋に戻った。
頭を整理しなきゃ。
何かのトラブルかそれとも人為的なものか
この施設は一部が機能不全になっている。
それにこのピストルはなに。
ピストルがしかも自分の身体の下に置いてあったということは
多分、僕の知らない僕がどこからか持ってきた可能性が高い。
これだけ厳重なセキュリティを麻痺させて
弾入りのピストルを用意するだけのことが出来るのは四季。
四季久しぶりじゃないか。
きみが来たのなら隠れていないで出てきて
この後の作業も全部してくれないかな。
どこかにいるんだろう。四季。
四季、四季ー。
取りあえず冷たくてもシャワーを浴びて着替えよう。
今は急いでも仕方がない気がした。

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投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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