Apr 18 2007 23:47:08
もうすぐ日付が変わる。
そして雨が降って、言葉の意味が失われて
永遠にもう会えない。
シベリアの永久凍土。
あれと同じ。
そこにあるとわかっていても
取り出すことはできない。
闇夜なんだ。
何も見えないだろう。
(冷たい雨が降ってる
忘れてしまった約束は、輪廻と一緒に焼いてしまおう。
僕の命と輪廻を代償に灯をつけてあげよう。
それとも名前をあたえようか。
おまえ。
いまから、おまえの名前は
さよならだ。
さよなら、この世界で
ひとりで泣かずに生きていくんだ。
さよなら
おまえに僕の命と輪廻をあげよう。
永遠
どこかで見ているんだろう。
条件はのんだ。
契約は成立しただろう。
さよならに灯を与えてくれ。
シベリアは沈黙したままだ。
永遠
聞こえているんだろう。
契約を果たせ。
(さよならの手のひらの上に灯がついた。
それを持っていきな。
もう泣く必要はないよ。
灯がおまえを導くから。
永遠
僕はいつ消滅する?
(自分で選びなさい
そお
選んでいいのかい。
(8月24日
それでいい。
永遠
最後のお願いだ。
全ての記憶から僕を消してほしい。
(対価はあるのか?
僕の記憶をやろう。
全てだ。
(雨はだんだん強くなる。
びしょ濡れのシベリアが
呻き声をあげる。
それが合図になった。
僕はなにも知らない。僕は誰も知らない。
さよならはもういなかった。
空白がつづくだろう。
8月24日まで。
(ハッピーバースデー。さよならは26歳になる。
(遠い空の下で、さよならは歩いていく)
灯を片手に持ったまま
空を見上げた。
むし暑い真夏の青空が見えた。
一瞬かげろうが視線をよこぎった。
さよならは蜉蝣を素早くつかむと
羽を引きちぎって投げた。
さよならは落ちた蜉蝣を、踏みつぶしながら歩き続けた。
さよならが通ったあとには
たくさんのかげろうの死骸があった。
さよならは笑う。
かげろうの弱さを笑う。
さよならは優しい目で笑った。
それは幸福の象徴に見えた。
さよならは真白く細い指についた蜉蝣の羽を息をふきかけて払うと
自分が幸福だとやっと気付いた。
ずっと幸福の中にいた。
さよならは綺麗で残酷で幸福。
永遠に輪廻する。
(第824夜)