音売りと世界の終わり。(眠りの町交差点停留所)

Nov 10 2005 15:09:47
 
指の震える音が聞こえる。
耳を澄まし
その音を濾過して
抽出できたものはひとつの手紙だった。

夢に出て来た町から手紙が届く。
「わたしは 眠りの町。
夢から覚めてもけして忘れないように
こうして手紙をかきました。
あなたがこの町に 忘れていった かけらは
いまは 町の博物館に大切に保管されています。
このかけらは 単に記憶の断片というには もったいないくらい美しく
もし、あなたさえ かまわなければ
ぜひとも この博物館のロバの耳の横に展示させていただきたいのですが
いかがでしょうか?
このかけらは 本当に 美しい。
そして 時々 かけらは 音色を奏でているのです。
その音色がまた美しいのです。

もちろん、展示するといっても
あなたがこの町へ受け取りに来られたときには
すぐにお返しいたします。
それまでの間の展示をどうかお許しください。
良いお返事をお待ちしております。」

眠りの町は
いまの僕にとっては 果てしなく遠く
複雑な道を順番を間違えずに通り抜けていかなければ
辿り着くことはできない。
いまはそのための時間と労力がない。
次に行くのは 何年も先のことになるだろう。
だから、僕は展示を許可することにした。
ただし、条件をつけて。

その条件は、
「かけらと一緒に この物語を展示すること」。

『音売りと世界の破滅』

歩くたびに音のする床の上を
ひとつ ひとつ 音を拾いながら歩く。
時計が止まってしまった。
さっきからずっと歩き続けてる。

(いつか?)

はしっこに着くと 外へ出る階段があるから
そこを降りていくといいよ。
長い階段だけど 途中に小さな窓のあるへこみがあるから。
その窓はいつも閉まっているけど
窓をたたくと 音売りがでてくるからさ。
拾った 音 は全部そこで売ってしまって。
ここで拾った 音 は外へ持ち出せないんだ。
だから 音売りに全部売ってしまって。
間違いなく全部売らないと大変なことになるから
気を付けてね。
その 音 聴いてみた?
きれいな音色でしょ。世界の終わりの音だからさ。
わかるでしょ。そういうの。
なんて言うんだっけ? そういうの。君たちの世界では。

(儚い)

ひとつ 手にとって 指で叩くと
キーンと 高く澄んだ耳鳴りのような音がした。

階段を降りる途中に 音売りのいる窓があった。
窓は開いていて中を覗くと
小さなドビュッシーと目があった。

(小さなドビュッシー)

アラベスクを弾いている。

(いつのまにか時計が動いている)

小さいドビュッシーが弾いているのは
自分の体と同じように 小さなピアノで
いつも聴いている ピアノの音色とは なにかが違う気がした。
たぶん 拾ってきた 音 と似てる。

やあ お待たせしました。お待たせしました。
音 を 売りに来たんですね。音を売りにきたんですよねー。
全部もらいます。全部もらいます。
なにも心配しないでください。 なにも心配しないでください。
即決ですから。即決。すぐですから まかせてください。すぐですからねー。
どんどん もらいますからねー。 どんどんもらいますからねー。
遠慮しないで さあ だして。遠慮しないで さあ だして。

何事も 2度繰り返した。

小さなドビュッシーは
慣れた手つきで 音 を数えている。

はい。終わりました。終わりました。
結構ありましたね。 結構ありましたよ。
お客さん やりますね。やりますね。
今日は大漁ですよ。 大漁ですよ。
これで またいい曲が作れそうです。これでまた いい曲が作れそうです。
じゃあこれ代金です。代金です。
この先を降りていくと 5分くらいで外に出ますからね。
お気をつけて お帰りください。

そして ハーモニカをひとつくれると 窓をしめた。

(ガタン)
小さなドビュッシーが 代金としてよこしたハーモニカは
やっぱり小指くらいの小さなハーモニカで
側面に きれいな貝殻細工がついていた。
試しに吹いてみると
キーンと 耳鳴りのような音がした。やっぱり同じだった。

本当は ひとつだけ 音 を残した。
さっき 試しに叩いた 音。
ポケットに入れっぱなしにして忘れていた。
階段を降りていくと 音売りが言うように 
5分も歩かないうちに外にでた。

外に出ると 彼が言っていた理由がわかった。

手が熱かった。
手に持っている 音 が どんどん熱くなっていく。
耳鳴りがして。
耳鳴りが大きくなっていく。
音 が 熱くなって。
手に持てないくらい熱くなって。
でも 離したいのに 離すことが出来ない。
耳鳴りは 手のひらを中心に どんどん広がって
手の中にあった 音 は 手の平をはみだして
体を包み込んで 
森を包み込んで 
海を包み込んで
町を包み込んで 
夜を包み込んで 
朝を包み込んで
世界全体を包み込んでしまうと 
世界から音が消えた。

そのあとは ずっと 耳鳴りだけ してた。

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投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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