All is full of love

Sep 1 2012 19:33:09

届きますか。
届きます。
いいえ、届きません。
はい、届きました。
届いた。
届いていた。
届かない。
届けない。
届く。

私はベッドを椅子変わりにして
コンピュータでロックバンドのライブ映像を観ていた。
すぐ後ろに彼は寝ていて
時々、目を覚まして、私の名前を呼ぶ。
私は振り返って彼をみる。
彼は目を閉じたまま、少しだけ動く。
私は返事の代わりに彼の手を握る。
彼も少し握りかえしてくる。

あれはいつだったろう。
あれはたしか、

私は背後から突き飛ばされるまで回想に夢中で
信号機が青色に変わったことに気付かなかった。

あれは、
あれは、
あれは、
あれは、あれは?

あれは、、、?
私は今、、思いだそうしていた。
忘れ、た?

思い出せない。

帰り道歩きながら
何度も思い出そうとして
順序立てて記憶を辿ってみたけれど何も思い出せなかった。
それどころか、思い出そうとする度に
他のことまでどんどん朧気になり
自分の部屋のドアの前に着く頃には
はっきりしていた背景の視覚イメージまでが曖昧になって
黒で塗りつぶされた。

 (7(しち)あなたの番号)

私はドアのネームプレートの下のセキュリティスキャナーを右目で覗く。
(液晶表示:go_Umbrella…)
ドアが開いた瞬間、部屋でかけっぱなしだったビョークの歌が
フロア中に響き渡った。
 
(All is full of love)

「いい曲なんだけどな」
私は失敗したときの表情をつくって、
取り繕うように呟いた。

煙草に火を付けて朝焼けに紫の煙が浮かんで
机の上に飾ってある虚ろの写真を手にとって、侮れないなきみは。
虚ろくんは大変優秀です。と写真にマジックで花丸を書いて
写真立てを放り投げた。

 些末なことだよ。
全てね。
これに比べたら
全て些末なこと。
そう言って部屋の電源を落として、
ドアを閉めた。

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投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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