ぼくたちがおわったあと | The rain of the needle with tears

Jul 25 2012 2:36:59

ミクニがいた。
僕はきっと聞いても教えてくれないことを予想しながら
ミクニに言った。

ねえ、ミクニ。今日は天気がいいみたいだね。
青い空好きなんでしょ、ミクニ。
見に行きたいんでしょ。
行く方法があるよ。
ここから出る方法、教えてあげてもいいよ。
だからさあ、代わりに教えて欲しいことあるの。
ミクニの眼帯の下の右目って水晶で出来てて、
未来を見ることができるんだよね。
ねええ、教えてよ。

何を知りたい?

あのさ、僕が消えたあと、っていうか、
僕ら全員になるけど、
この世界から消えたあと、
あの人たちはどうなったの、かな、って。
ちゃんと幸せに、なってくれたかな。

あの人たち。
あの人たちって、
誰?

ああ、そう、うんとね、
みんな、全部、全員、特に××は
ちゃんと幸せになって、
結婚したり、
子供が生まれたり、
僕らが出来なかったこと、
誰かにしてもらえた?
ミクニはそういうこと、気にならないの?
それとももう知ってる?
あの天使の契約、大丈夫かな?
心配じゃない。

私たちが消える代わりに
天使と結んだ契約は必ず守られる。
私たち全員のエントロピーの総量はひとりの人間が持つエントロピーの2万倍。
天使はそれを欲しがった。
だから、あり得ない条件の契約を許した。
私たちが消えたあと、
私たちが関連した情報は全てこの宇宙から破棄される。
私たちの記憶や何もかもが一切残らず消去される。
誰も、私たちのことを知らない、
いや最初から私たちなどいなかった宇宙に変化する。
そのことは過去も、現在も、未来にも影響する。
私たちの持っていた因果律の消滅で大きく影響を受ける。
その影響の最小値は2万%/sect。
最大で50兆%/sectを越える。

なにその%/sectって?

因果律の変動値を変化前の因果律と因果係数で微分積分して出す数値のことだ。

わからないよ、
もっと間単にわかるようにしてよ。
あの人たちの未来はどうなるの?

間単に?
無理。
間単に説明して、、、、
いや、それでも無理か。

あきらめないでよ。
僕は真剣に知りたいんだから。
っていうか、ミクニがその目で見てくれればいいだけなんだけど。

本当にここを出る方法知ってるのか?

知ってる、絶対に確実にするから、
青空、見れるよ。ミクニ。

、、、、、
仮に宇宙が受ける影響が最小の2万%sectだとして
それがどれだけ宇宙を変化させるのかシミュレーションしてみると
変化前の平行宇宙の総数が無限大なのに対して
変化後の平行宇宙の総数は100京に下がる。
これが意味するのは私たちが消えたことによって
本来在ったはずの出来事、因果が全て消失するということ。
つまり、

ちょっと待って、ミクニ。
それで、あの人たちの人生がどう変わるのかを知りたいの。
僕は。
だから、その目で見てよ。
あの人たちの世界。
知りたいのは、幸せでいるのかってこと。
僕たちが影響して生まれた不幸は
ちゃんと、幸せの最大値に書き変わったかってこと。
それが知りたいの。
もう朝になっちゃうよ。
朝日見たくない。ミクニ。

それなら、天使との契約にちゃんと書いてある。
それが条件だ。
私が見る必要もない。
間違いなく、実行される。

そう・・・
・・・そうだよね。
だから、契約したんだからね。
じゃあさ、あの人、ひとりだけその目でみて。
××だけでいいよ。
具体的に知りたいんだ。
見て、教えて。
あの人の人生は因果律の最大値で
最高のものになった?

ちょっと、待ってろ。
自分で見てみろ。
(そう言って、ミクニは眼帯をはずした。
ミクニの右目は黒い瞳がなくて
眼球が全て透明な濃い青で出来た水晶だった。)

凄い。

もっと近づいて奥を覗いてみろ。
きみの見たいものが見える。

僕は鏡越しにミクニのあたまを掴んで
目の奥を覗いた。
そこにきみがいて、
ピアノを弾いていた。
大きなコンサートホールで
真っ赤なドレスを着て
堂々と演奏してた。
それだけ見て
僕はミクニにもういいよと言った。
そして、ミクニは朝日を見に行った。

僕は嬉しい。
少し、寂しい。
だけど、本当に嬉しいと思う。

僕はきみへ手紙を書いた。
切手を貼って、
出そうとしたけど・・・

煙草を吸いながら、
どうせ手紙なんて書いても
全部記憶から消えてなくなるんだと思ったら
どうでもよくなって、
ライターで火をつけて燃やした。
ライターのオイルをかけて燃やしたから勢い良く燃えてた。
僕は煙草を吸いながら、
それをじっと見てて、同封した写真が燃えたとき
生きてるみたいにそれが素早くうねって
一瞬涙を流す顔が見えた。

どうでもいいこと。

ただそれだけ。
ただそれだけなのに
本当の涙が流れて
僕は少しだけ、泣いた。

空気清浄機の前でかがみ込んで床に座ったまま、
煙草を吸ってた。
吸い終わっても、またすぐ煙草に火をつけて
何本も何本も吸った。
他にすることがなくて
いつまでも、ずっと煙草だけ。
それだけ。

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おはよう、って一言だけ書いたメールを
きみに送った。

ただ、それだけ。

投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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