夢のような日。| Parade Alone

Jul 22 2012 3:12:32

やっぱり本当の夜はいいな。
昼でもここは夜と変わらないけど。
西向きと東向きに二つある窓、
どっちもカーテンで閉められてるんだよね。
真っ黒くて分厚い遮光カーテン。
おかげで、ここにいると時間感覚が狂っちゃう。
時計は必須だよ。
腕時計に置き時計が1、2、・・5つ。多いな。
あれ、このデジタル時計、今昼だ。
みんなバラバラの時間で行動するから
ここにある時計って全部同じ時間のものないんだよ。
誰のだろ?
今昼か。ふうん。

どうでもいいや。
とりあえず僕はグリニッジ標準時を採用してるから
本当の時間軸で生きてるよ。

ええと、それでさ、
今日はね、特別な日なんだよ。
記念日とかいう意味じゃなくて、
ある人がここへ来る。
超重要人物。
僕が会うの4度目くらい。
滅多にお目にかかれないよ。
超レア。

あ、、、あれ、
なにしようとしてたっけ?

もう、3時だ。
あ、今日はあの人が来る日だ。
嬉しいな。
何かくれるかな。
挨拶とか失敗しないようにしなきゃ。
最後にあったのって、多分、5年、まえ、くらい?
雪が降ってたような、うーん、思い出せない。

そうだ、コンピュータのカレンダー見れば。
昔のデータ残ってる、かな。
ああ、ないっぽいな。

そいえば、あのときって
大変だった、え。?
たいへん、?
何かたいへんなこと、
が、あって、
たいへんなこと。
なんだっけ?
すっごい・・・たいへん  

だった、ああ、でもー、
なんだったけ。
思い出せない。
あの人が来たら聞いてみよう。
あの人は忘れたりしないから絶対知ってるよ。

いつくるんだろ。
あれ。

誰が?
誰が来るんだっけ?
誰か来るの?

誰?
誰だっけ?

また、忘れちゃった。
僕の記憶回路は壊れてるよー。

いいや。

のど渇いたな。
冷蔵庫に何かあるかな?

冷蔵庫、冷蔵庫、と。
はい、開けます。

・・・え。

人のあたま、だ。   閉めよう。バタン。

・・・
ちょっと、びっくりしたぞっと。

誰の仕業?
やめてよ、ほんとに。
気持ち悪いからさ。
僕、グロい系苦手。ほんと、無理。
冷蔵庫、買い直す、絶対、決定。

虚ろはベッドの上に飛び乗って
ベッドサイドから寝転んで
キーボードに手を伸ばして素早くタッチする。
コンピュータの画面をブラウザに切り替えて
慣れた手つきで冷蔵庫を検索している。

これでいいや。
これにしよ。

ああ、でも冷蔵庫。
あのままじゃ処分してくれないよね。
僕がやるか、誰か他の、

あたまのなか、で、こ、えが、き、こえ、る
うつ、ろ、ひさ、ぶり、
あ、たまが、か、らd、だがきゅ、に

4時1分か。
バースデーと一緒。

さ、早く片付けて帰ろう。あの人が待ってる。

語りは冷蔵庫を開けて、
人のあたまが入っているのを確認する。

虚ろにも困ったな。
毎回、姉様は後片付けを僕に押しつける。
こういう汚れ仕事はジンロウあたりが丁度いいと思うけど。

人のあたまは結構重い。
語りは両手で耳の下を支えて冷蔵庫から取り出す。
それから用意していた分厚いビニールの蒼いゴミ袋を広げて
中に転がすように投げ入れた。
(ボーリングみたいだな。)
そして、あたま全体が隠れるように
ベッドから剥ぎ取ったシーツをぐちゃぐちゃにして中に押し込んだ。
冷蔵庫の指紋を全部拭き取ったあと、
ガソリンの入ったポリタンクをふたを外してから持ち上げた。
(全部語りが用意したもの。)
冷蔵庫の上から
ガソリンをぶちまけていく。
部屋中、ガソリンの匂いが充満してる。
語りはライターを取り出した。
火を付けたまま
ガソリンまみれの冷蔵庫の足下へ投げ捨てた。

一瞬、ライターの火が大きくなって、
そのあとすぐに小さな爆発音がして火は天井に燃え移っていく。
すぐに部屋全体が黒い煙でいっぱいになった。
語りはドアから平然と部屋を出る。
入ってきたときと同じように静かに開けて、静かにドアを閉めた。
それから、ゆっくり歩きながら最短距離でエントランスを出て
何も無かったように、いつもと変わらない自然な動きで
大通りまでゆっくり歩いて、
いつもと同じように小さく手を挙げてタクシーを止めた。
開いたドアの中へ入る。
「三軒茶屋へ行ってください。女子大の近くになったら教えてください。左折したい場所があるので。」と行き先を丁寧に伝えると
目を閉じて眠ったふりをする。

余計な話しをするのが嫌いなんだ。

語りはよく、ファッションデザイナーと間違われた。
語り自身ファッションが大好きで特にハイファッションを好んで着た。
最新のモードファッションスタイルの語りは
何処にいても目立った。
運転手はミラー越しに語りをちらちらと何度も見ていた。
眠っていると思っているから遠慮がない。
明らかに見ているとわかる挙動だった。
けれど、運転手がみていたのは語りではなく
語りの着ている服だった。
どうやって着る服なのか、形が複雑すぎて
運転手は何度見てもわからなかった。

(語りは殺し屋なのにね。アーティストだからさ。おしゃれなんだ。)

タクシーの運転手はそのあと、
海外のあるブランドの名前を思いだそうとして
走りながらずっと考えていた。
思い出せそうなのに、どうしても思い出せなかった。
そして、タクシーは池尻を通り過ぎた。
(運転手が思い出そうとしていたブランドは「Dior」)
運転手が語りを起こそうと声をかけようとしたとき、
語りは目を開けて起きたふりをした。
そして、運転手に、女子大を過ぎた次の信号機を左に入って
水道局を越えたら道なりに少し走るとファミリーマートがあるので
そこで止めてください、と丁寧に告げた。
コンビニの前でタクシーが止まると料金を全部一万円札で支払い
おつりはいいです、と少しだけ微笑んで見せた。
運転手は金額が多いからと一度断ったが、
語りが大丈夫です、全部会社のお金ですから、と言い、
もう一度小さく微笑むと、
運転手は、有難うございます、と言ってレシートだけを語りに渡した。
語りは上着を手に抱いてドアが完全に開くのを待ってから、
ゆっくりとタクシーを降りて、開いたドアの方へ振り返り、
小さな声で、有難うございました、と言ったが、
その声は小さすぎて運転手の耳には届かなかった。
語りはコンビニに入るふりをしながらゆっくり歩いて
手に持っていたレシートを細かく契って手のひらの上において、
バースデーケーキのキャンドルの炎を子供が消すみたいに
ふうーと息を吐いて捨てた。
(語りは自分の誕生日を知らない。だから祝って貰ったことはない。)
そのあと語りは道路に背を向けて歩道を歩きながら
それとなく視線だけは遠くなっていくタクシーを追いかけていた。
タクシーが完全に視界から消えると
語りはコンビニから離れて、
タクシーが消えていった方向の逆へ向きを変えて歩いた。
そして、駅に着くと、また小さく手を挙げてタクシーを止めた。
語りは少しかがみながら静かにシートに坐り、
視線を少しだけ運転手に向けて、
丁寧にゆっくり小さな声で行き先を告げた。

(成城学園までお願いします。砧公園を越えると大きな病院があるのでそこで止めてください。)

タクシーから降りるともう外は明るくて
病院前のバス停にこれから通勤しようとする人たちが大勢並んでいた。
語りはアーケードのある商店街を歩いた。
そして、マクドナルドの前に来ると隣のTSUTAYAとの間にある
狭い裏道へ入っていった。
狭い道を出ると割と広い道路に出た。
道路を挟んで左右それぞれ独特のデザインで
凝った作りのデザイナーズハウスが立ち並んでいる。
(いわゆる高級住宅街。)
語りはそれには目もくれず右折すると、
それまでと違って早足で走るように歩き始めた。
デザイナーズハウスに両側を挟まれた、
それとはまた少し雰囲気の違うマンションの前で語りが止まった。
語りはマンションの上を見上げたまま、
携帯のボタンを押した。
少しだけ長いコールのあと、短い会話。
(10秒くらいだったと思う。)
語りはそのマンションの入り口に置いてある
コカコーラの自販機で2本小さなペットボトルを買って
マンションのエントランスのコールボタンを押した。
少しの沈黙のあと、スピーカーマイクから女の声がして、
ドアのロックがはずれると、語りはドアを開けて
静かに戻し、薄暗い階段を静かに昇る。
スパイラルを三回繰り返した。
部屋と部屋を分けるコンクリートの壁は解放で
そこから薄青い空が見えるが、語りは見ていない。
語りは目的の部屋の前に着くと
ずっと手に持ってた携帯をマナーモードにして
バッグの中にしまった。

インターフォンがあったけど、語りはドアを静かにノックする。
ドアのロックが外れる音と同時にドアが開いた。
語りはその瞬間今までずっとしていたメガネをはずし、
そこで意識が消える。

(バイバイ)

ドアの前で椿はメガネをバッグにしまった。
少し開いたドアの中から小さい声で名前を呼ばれ
椿は開いたドアのすきまをすり抜けて中に入ると
折れそうなほど細くて華奢な身体を柔らかく抱き締めた。

(お帰りなさい)

(ただいま)

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投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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