悲しい世界で薔薇が咲く。(永遠の帰還)

ここは留置場の面会室のような作りの部屋で
(ただデタラメに明るい。)
頑丈そうな分厚いガラスで真ん中を遮って部屋を二つに分けてある。
だからここでは向こうの部屋の人間との会話用に
マイクとスピーカーが設置してあって、
少し大きめな一人用のソファがこっちとあっちにある。
こっちには俺、あっちには何度かここで俺と話したらしいが
名前を聞いても思い出せない。
何色なのかわからないくすんだスーツを着た男が一人でいる。
俺の後ろでは精神科医の渡部が助手に手順を説明しているところだ。
(渡部は戦時中に精神医学の分野でかなりの功績を残した。人体実験を積極的に行い脳神経学などに多大な功績を残したが、その方法が非人道的だったという理由で現在の医学界からは排斥されている。予断だが、特に俺は渡部のこういう所が好きなんだが、渡部は80を越えて未だ童貞らしい。女が嫌いなんだ。渡部は男色家だ。)
渡部の隣で記録を録っているのは、、、、、
、どうでもいい。

話を続けろ。それと・・・
静かに話せ。そっちの声は十分聞こえている。
大きな声を出す必要はない。
それと、なんなんだ。その、、、
(その? その、?そのなんだ? 何が、何かおかしい。嫌な予感がする。淫を呼ばないと。)

4:23 AM
デジタル時計が点滅している。

何故か遠慮気味にこの男は
私の声が聞こえますでしょうか。と
少し大きな声で言った。
多分、さっきこの男が話していたことを
上の空で聞いていたオレが
自分のマイクの調子が悪いのだと勘違いしているようだ。
俺は声は出さずに軽く頷いて見せた。額に汗をふきながら
醜く太った向こうの相手はもう初夏だというのに
焦げ茶色のツイードのスーツを着ていた。
楽にしていい、と伝えたのにジャケットさえ脱がない。

最低だ。気持ちが悪い。

悲しい世界です。

あ?
向こうの男が唐突に言った。
俺は一旦マイクをミュートにしてから
渡部、今こいつなんて言ったんだ?、と聞いた。

悲しい世界です。
俺にもそう聞こえた。
俺は渡部の助手にチャプター201をもう一度再生、と言った。

悲しい世界です。

同じだ。聞こえたとおりだ。と俺は渡部に言う。
助手の千年がもう一度再生しますかと俺に聞いた。
俺は黙って、ソファをくるりと戻し
向こうのあの男と向かい合った。

(ミラー越しに冷たい宇宙できみを誰と間違うっていうのさ。
冷凍庫の中で二人がくるくる廻っている。)

向こうの男が急に立ち上がり、ジャケットに手を入れ
ガラス越しの俺にピストルを向けて、
Only You. と、言う。

ピストルのセーフティに指をかけている。
俺は向こうのあいつに視線を向けて無表情のまま、
渡部、これはなに?と聞いた。
返事がない。
俺はもう一度、渡部!、と後ろを振り返りながら怒鳴る。
渡部は凍り付いた顔が溶け出すようなアニメーションのように
モーフィングしながらあいつになって言う。

Only You. Jut Only You.

なに。
俺は天井を見上げ
小さく溜め息をついてから
向こうを見た。

そこにいたのは真っ黒いドレスを着た若い女。
初めて見る顔じゃない。
どこかで見た。
なにかが引っかかっている。
思い出せ。
誰だ。
俺はあの女を知っている。
目を閉じて
瞼の血管を意識する。
どこかへつながってる。
どこに。
どこか。
誰だ。
誰だ。
お前は誰だ?

(貧血みたいに目の前が真っ白になる、倒れる、ダメだ。時間が戻る。消える。)

俺は煙草に火を付けて
ガラス越しに暑苦しいスーツを着た中年の男を見ながら、
その姿を覆うように煙を吐く。
(悲しい世界だ。)

さっき、誰かが何か言った。
5分も前じゃない。
ほんの少し前。

誰かが、(悲しい世界だ。)そう。
悲しい世界だ。と言った。

俺は渡部の方を向いて
チャプター201をもう一度、と言う。

渡部の助手はおかしな顔をして
チャプター201ってなんですか?と言いながら、
渡部に何か小さい声で何か話している。

4:25 AM
開始します。と助手が言った。

何か変だ。
さっき、俺は、
さっき?
、、、
さっきって、いつだ。
さっき、俺は天井のに映る自分を見て、それから、
(冷たい川が流れている。)

俺は、、意識が混濁し始める。
眩しい。
光が鏡に反射して、それから、また、眠りに落ちる。

天井は鏡張りになっていて一瞬、上下の感覚がわからなくなるほど
精巧に出来ている。

ああ、ごめん、でも、
この辺の話はどうでもいいんだ。
やめようよ。

要するにさ、ここは、、、、
ここは?

ここ、
ここどこ?

ここを俺は知っている。
以前来た。

来た?

(いや、君はここで、生まれたんだよ。)

ゆめ。
君が唄う夢を見ている。

きみは、

やあ、永遠。
また逢えたね。

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投稿者:

暁、闇。 akatsukiyami

アンビエントサウンド、ヘヴィメタル、エレクトロニカ、ノイズなどに教会音楽などを組み合わせて作られる彼独特のサウンドは、ダークで重いマシンビート、繊細で妖艶な旋律、攻撃的なノイズで狂気と安寧、相反する二面性を表現する。オルタナティブ、ヘヴィメタル、ゴシック、インダストリアル、テクノ、エレクトロニカ、クラシック、様々な様式で構築されるコラージュスタイルのサウンドは、彼が考える架空の世界や架空の国の物語からインスパイアされた世界観からイメージされるコンセプトで作られる。彼にとって楽曲を作ることはその世界観から生まれる物語を表現すること。箱庭遊びのように。

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