冷たいスープを退屈そうにかき回すように
言葉は無言で輪廻し続ける。
あの人にあげた芍薬がきみになり、あなたになったように
言葉は輪廻し続ける。
今日も深夜3時を廻る頃、言葉の再構成が行われている。
毎日の儀式のように淡々と進むその作業が
彼の意識を維持し続けるために必要だったことはレポートに記されていない。
冷たい目で見る冷たい景色を
別室でモニターする技師は腰回りにずっしりと肉がついた豚だ。
毎夜大量のドーナツを甘い珈琲で流し込みながら
画面をモニターする仕事の方がついでのように繰り返した報いだ。
モニターされる彼と豚のように作業する彼のどちらが
先に死ぬのか多少興味があったけど
僕は彼の意識と交替する時間がせまっていたので
早足で彼の部屋の壁をすり抜ける。
彼の吐く言葉に少しずつテンポを合わせながら
同じ言葉を呟いていくと僕はすんなり意識の壁をすり抜けて彼になる。
そして、僕は自分の名前をゆっくりと1文字ずつ囁いた。
か、た、り。