僕は静かに狂っていた。
物音ひとつたてず、きみの寝息に耳を傾け僕は狂っていた。
僕は静かに狂気を纏った。
暗い海の底できみの笑い声が無音で響く。
言葉を失うべきときは既に過ぎ、
僕は止まない夢をきみに降らせるためだけに生きて(死なないで)
罪人が祭壇で空に祈る懺悔を踏みつぶした。
つまり、僕は炎だ。
いつか燃え尽きるまで激しくゆらめく予感のような存在だ。
寒がりなきみを消えるまで温めていたい。
夢が死の断片であるように
僕は幻想の早送りになってきみに届きたい。
ねえ、いつか僕はこの世界を憎んでると言ったよね。
でもね、今はこの世界が好きだよ。
君がいるこの世界に生まれてきてよかった。
聞いてる? 神様。
僕はあなたの選んだこの世界が好きだよ。
僕の一度きりの世界がこの世界であったことを
心から感謝します。
(sekai ga
boku wo
sabaku.)