冷たいチョコレート。

私の青春はただまっくらな嵐ばかりで、
ところどころに輝く日ざしが落ちたにすぎない。
雷と雨とがあまりにも荒れ狂ったので、
私の庭には木の実もろくに残っていない。

そしていま 私も思念の秋にさしかかり、
シャベルや熊手を使わなければならなくなった
洪水にさらされた地面をもう一度ならしたいのだが、
墓のように大きな穴がいくつも水にえぐられている。

それにしても誰が知ろう 私の夢みる新しい花々は
河原のように洗い流されたこの土地に
滋養となる神秘の糧を見出だすことができるかどうか?

おお苦しみよ! 苦しみよ!「時」がいのちを喰らい、
私たちの心臓をかじる不気味な「敵」が
私たちの失う血を吸って育ち 肥えふとる!

Les Fleurs du mal X L’ENNEMI / Charles Baudelaire

黒い鳥が空を旋回していた。
私は庭に立ってそれを見ていた。
黒い鳥は私の上を何度も旋回し続けている。
ナイフから血が滴り落ちた。
返り血を浴びた純白のドレスは黒く染まり血の匂いを撒き散らす。
死が黒い鳥を集めている。
血の匂いに寄ってきた黒い鳥は獲物をじっと待っている。
これは虚ろだ。誰にも渡さない。去れ、カラスども。

虚ろが階段を昇って行く
私は虚ろの名前を呼ぶが彼には聞こえない
虚ろの進む先に小さな光が見えた
虚ろは光になるのか
私の闇から出て行って虚ろは光になるのか
私はクスリを噛み砕いて飲み干す
ゆっくりとまどろみがやってきて私は私を忘れて行く
気持ちが良くなって虚ろを忘れだす
頭をゆっくり揺らしながら足下がふらついている
沈んで行く月がとても大きく見えた
意識がバラバラになって
私はカミソリになる

(楽園で待っていておくれ、虚ろ。)

波のように滑らかに形を変えながら
私の意識は、、、ダメだ,

虚ろ、

お前がいないなんて私は嫌だ。

1 (12)

-273℃の夢。

私の血がときに波打って流れ出すような気がする。
リズムに乗ってすすり泣く泉にも似て。
長いつぶやきの声を立てて流れて行くのが聞えるのに、
いくらさぐってみても傷口は見あたらない。

Les Fleurs du mal CXIII La FONTAINE NE SANG / Charles Baudelaire

午前0時45分、私の神経は高ぶっていて城内は世界から全ての静寂を集めて詰め込まれたように静かで、
私の足音だけが不自然に大きく城内を響いているようだった。
誰の足音だろう、不安になる、いや、そんなことはない。
これは私の歩む足音だと私は知っている。
でも、それを忘れたい。(ダメ、それは出来ない。)
(乾涸びた花びらを綺麗だとお前はいつも言っていたね。)

気がつくと虚ろの部屋のドアの前に立っていた。
私は虚ろに会いに来たのか。
どうして。
(楽にしてあげるよ姉様。)
理由が意識から消えていく。
何も思い出せなくなる。
私は何のためにここにきたのか。
ここはどこだ。
ここは虚ろの部屋だ。
ラベンダーの香りがどこからか漂ってきて嗅いだあと急に意識が消えそうになる。
目を開けると床が薄淡いオレンジ色に発光している。
私はいつの間にか虚ろの部屋にいた。
天井は暗く足下だけが淡く光っていた。
虚ろはベッドで眠っている。
音楽の音が大きくて寝息は聞こえない。
(さあ、姉様。約束をいま果たしてください。)
私は虚ろのベッドに寄りかかりながら、流れている音楽を聴いていた。
座り疲れて時計を見ると1時54分だった。
虚ろの寝顔を見て本当に可愛いと思った。
虚ろの頬を撫でた。
虚ろは気づかない。
眠剤で眠っているから起きない。
ふいに虚ろに添い寝したくなって虚ろの左側によって虚ろの腕に掴まった。
それでも虚ろは起きない。
本当に可愛い。
私は虚ろの肩を抱きながら眠りに落ちて、夢を見た。
その夢は今のこの部屋の状況と全く同じで私は虚ろの左腕に掴まりながら暫く虚ろを見ていた。
そしてよく見ていたら虚ろは息をしていなかった。
虚ろは死んでいた。
それなのに私は何も驚かず何も無かったように虚ろの腕に掴まって眠った。

気がつくと私は両手でナイフを掴んで虚ろに馬乗りになっている。
そして、思い切り両手を振り下ろして虚ろの心臓を刺した。
大量の血が川のような模様を作った。
私は虚ろを殺した。
夢と同じようにではなくもっと残酷に。
私は息絶えた虚ろの腕に掴まって目を閉じた。
虚ろの身体が少しずつ冷たくなって、いつの間にか私は眠った。

1 (11)