永遠が虚ろの部屋に入ってすぐ目に付いたのはホログラフィックのクリスマスツリーだった。
ツリーは自転しながら上昇と下降をゆっくりと繰り返して同じエリアを周回移動していた。
バスルームで首までお湯に浸かりながら虚ろは煙草を吸う。煙を上に向けて吐きだすと天井を横切るホログラフィックのクリスマスツリーが見えた。そして不意にサンタクロースの存在を信じていた数年前のさよならとした会話を思い出した。
12月の中頃、クリスマス間近でさよならの機嫌が急上昇していたある日、虚ろははしゃぎ気味のさよならに本当はサンタクロースなんていないんだと告げた
毎年プレゼントを贈っていたのは女王闇で、クリスマスカードを書いていたのは椿なのだとも教えた。
意外なことにさよならは虚ろのサンタクロースのネタばらしを何の戸惑いも無く理解した。
その代わりにその日を境に12月24日、25日はさよならにとって一年で最も忌むべく日となった。
それ以来さよならは、毎年貰うクリスマスプレゼントを全部断り、女王主催のパーティにも一度も参加していない。
さよならは
12月を
私のサンタクロースが死んだ月として
毎日を真っ黒な衣装で過ごし
喪に服すことで
復讐をしているのだ。
>誰に?
幼くて無知だった自分に。