12月、私のサンタクロースが死んだ。

永遠が虚ろの部屋に入ってすぐ目に付いたのはホログラフィックのクリスマスツリーだった。
ツリーは自転しながら上昇と下降をゆっくりと繰り返して同じエリアを周回移動していた。
バスルームで首までお湯に浸かりながら虚ろは煙草を吸う。煙を上に向けて吐きだすと天井を横切るホログラフィックのクリスマスツリーが見えた。そして不意にサンタクロースの存在を信じていた数年前のさよならとした会話を思い出した。
12月の中頃、クリスマス間近でさよならの機嫌が急上昇していたある日、虚ろははしゃぎ気味のさよならに本当はサンタクロースなんていないんだと告げた
毎年プレゼントを贈っていたのは女王闇で、クリスマスカードを書いていたのは椿なのだとも教えた。
意外なことにさよならは虚ろのサンタクロースのネタばらしを何の戸惑いも無く理解した。
その代わりにその日を境に12月24日、25日はさよならにとって一年で最も忌むべく日となった。
それ以来さよならは、毎年貰うクリスマスプレゼントを全部断り、女王主催のパーティにも一度も参加していない。

さよならは
12月を
私のサンタクロースが死んだ月として
毎日を真っ黒な衣装で過ごし
喪に服すことで
復讐をしているのだ。

>誰に?

幼くて無知だった自分に。

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さよならのこと。3

私、12月って大嫌いなの。
街中を埋め尽くすイルミネーションは私の憂鬱を加速させるし
大きく飾られたツリーは私を罰するための磷付の十字架にしか見えない。
大気は透明度を増して空を更に青くするし(私は青が大嫌い。)、
北から吹く風は百戦錬磨の殺し屋のように私の頬だけを刺してくる。
街を歩く人の顔は大抵がほころんでいて両脇に大きな荷物を抱えている。
百貨店には世界中から集めてきたんじゃないかと思うくらい大量のクリスマスカードが並んでいて、
それを買い求める客が列をなして品定めしている。
みんなが浮れている、楽しんでいる、喜んでいる、幸せそうな顔をして。
私の憂鬱は更に加速する。
フラワーショップの入り口に咲いた大きな赤い葉を広げたポインセチアが死刑判決を下す裁判官のように私に問いかける。

「あなたはどうして死なないの。」

答える必要なんてない。
私はさよならなんだから。
赤なんて嫌い。
緑も嫌い。
クリスマスが大嫌い。
サンタクロースが嫌い。
クリスマスが私を悲しく辛くさせる。
早く終わってよ!!
もう来ないでよ!!!
あぁ!クスリがきれちゃった・・いたいよ。辛いよーーーーー。
死にたい!
ねぇ、だれかクスリ持ってない。
だれかねぇちょうだい。
おねがいだからちょうだい。
もうわるいことしないからちょうだい!
どうしてわたしだけ・・・
いつも・・ねぇ
だれかあちょうだい・・
おねが・・い・
ちょうだい・・
くるしい・よ・・
じゃあ!もう死なせてよー!!
こんな辛いのやだよー!
もうしなせて・・
ころし・・てよ・・

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さよならのこと。2

まとーーう、待ってよー。まとうー、ちょっと待ってよ、まとう。
後ろから走って追いかけてくるさよならの声に、仕方なく立ち止まってちょっと面倒くさそうに真冬は、はあ、と溜め息をついた。

>全くこの暑さには本当にうんざりだ。
>この世界から夏なんて消えてしまえばいい。

追いついてきたさよならが真冬に向かい合うと、
真冬ってさ、夏嫌いでしょ。絶対そうだよ。名前からしてそうだもん。あははは。と真冬を指差して笑った。

>つうか太陽眩しすぎだろう。

真冬は右手をゆっくりとまっすぐに上げると人差し指を太陽に向けてこう言った。
闇を返せ。沈黙しろ。燃え尽きろ。消え去れ。

あははは、まとうー、太陽なくなっちゃったら私たち死んじゃうんだよー。
まとうって本当におかしいんだからー。

>いいんだよ。それで。全宇宙からしたらこの銀河のうちの一つの恒星系が消えるだけだ。何にも影響ない。

ねえ、まとう、アイスクリーム食べにいこうよ。
さよならは真冬の右腕にしがみつきながら不機嫌そうな顔を覗き込んで笑顔で言った。

さよなら、暑いんだよ、くっつくんじゃねーよ。離せよ。そう言いながらも真冬はさよならから腕を離さなかった。
まとうー、アイスクリームー。いつものところー。行こー。
唐突に真冬が言う。
さよならー、お前俺が死んだらどうする。

(世界は果てしなく広いのに、自分と云う存在は思考に限定されている。)

まとう、、、、、、、何言ってるの。まとうが死ぬわけないじゃない。まとうは死なないよ。
バッカみたい。まとう。あはははあははは。とさよならは笑い転げた。
まとう、アイスクリームいこー。アイスクリームーー。
もしもだよ、もーしもーのことー。真冬がそう言い終わる前にさよならが遮って言う。

まとうは私が守ってあげるから何が有っても死んだりしないよ。
私には力があるの。だから私はその力でまとうを守る。

言い終わるとさよならはまた笑顔に戻って真冬の腕にしがみついた。

まとうーー、アイスクリームいこーーよーー。
はやくーーー。
わかったよ、だーから、あんまりくっつっいてくんなよー。
いやだよー。絶対に離さない。あははー。

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さよならのこと。

私はなんのために生まれてきたのだろう。
なに不自由のない暮らし、
私の周りにはいつも人がいて
私の世話をしてくれる。
世界中にはいまたべるものもなく死んでいく人間もいるというのに。

私がさよならというだけで人の群れが割れる。
私がさよならというだけで人が恐れる。

(私は当時まだ12歳で世界を知らないただの女の子だった。)

それでも時間は私に様々な役割を押し付けてきた。
私は何をしているのだろう。
私は何をさせられているのだろう。
それに気づいたのは姉様の死後、私に付き従う大勢の人間の私への服従。
私へ発せられた「女王様」という声。
私の役目は姉様のあとをついで女王闇になることだった。
そして、私はさよならから女王闇になった。

私はこの世界を統治する。
悲しみを統治する。
不幸を統治する。
絶望を統治する。
失くしたものを統治する。
命を統治する。
女王闇として命令をくだす。

私はそれを百年続けた。
私は狂っていった。
私は自我を制御出来ず
闇夜に荒れ狂う嵐の海原を進む船のように軋みながら生きた。
何人殺したのか知らない。
誰を殺したのか知らない。
私は赤い月に囁かれるままに殺した。
歯車が人の血で出来ていることを知った。
この世界は人の血で動いている。
だから私は殺す。
私の世界は闇だから光しか見えなくて良い。
もっと光り輝け。
私の闇はもっと深いぞ。
冷たい風に慣れてしまえば痛みさえ心地いい。
私は忘れていくさよならだったことを、
私は最初から女王闇だったんだ。
私の闇を恐れるが良い。
私の闇を忘れるが良い。
それでも私は此処にいる。

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虚無は13番目に殺し合う。

手についた血を洗い落とす。
何時間洗い続けても消えない血を、ジンロウは何度も何度も手の皮が擦り剥けるまで洗い続けた。
手のひらの血が自分の血だと気づかないままジンロウは何時間も洗い続けている。

俺は血が好きだからな。いいんだよ。
俺はこの時間が大好きだぜ。

独特の金属のサビの様な匂い、黒くて赤くてねっとりと温かい血だけがジンロウの好物。
プロトコルナンバーズ13、ジンロウ。
永遠や虚ろ、語り、他のナンバーズとジンロウは全く違う異質なもの。
他のナンバーズは宿主から意思を持って生まれ各個人の人格を持っている。
ジンロウだけは女王闇によって人為的に作られた個性を持たない個性。
ジンロウという人格は疑似人格であり、人を模倣しているだけで人ではない。
ジンロウに備わっている行動原理は2つだけ。
女王闇に従うということ。
邪悪であるということ。
女王闇の後始末をするために作り出された唯一魂のないナンバーズ。

ジンロウ、あとは頼んだぞ。

姉様、まかせろよ。
全員ぶっ殺す。
死んでるやつもぶっ殺す。
死ね、ほら、死ねよ、ふふん。
楽しいぜ。
なに生きてんだ。
死ね。
俺の前で生きてていいのは姉様だけだ。
だから、お前ら全員死ね。

血が大好きで、
殺しが大好きで、
姉様が大好きなジンロウ。
本当は存在しないジンロウ。
そんなジンロウが女王闇に何度もいう言葉、
「姉様が大好きだぜ俺は。」。
魂のないジンロウ。

ジンロウ、私はお前のことが大嫌いだ。

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