サカサマの夢の話をしよう。
12月に入って三日目に今年初めての雪が降った。
降ったと言っても積もることなく
ゆっくりと降りてくる雪のひとつひとつを数えながら私は天窓に降る雪を楽しんだ。
雪は小さなパールのような大きさで色は透明で目には見えなくて、絞り立ての濃厚なミルクのように白く、殺したばかりのあなたを彩る新鮮な血液のように赤かった。
(冷凍されたあなたの赤い目はいつでも輝いている。)
私は隣に座るあなたのこめかみにピストルを押し付けてこう言った。
一から十まで数える間に私の元を去りなさい。
そうしなければ私はあなたを殺す。
何も言う必要は無いし、何も聞きたくない。
黙って此処から出て行って欲しい。
私はもう女王闇なのです。
あなたが出て行く代わりに、私はあなたの部屋に有るものは全てあなたのものとして取り扱う。
そしてあなたはそれを全て私に売る。
元々私の城であるあなたの部屋を一式、クローゼット内に有る洋服や靴、アクセサリー、腕時計、など
あなたの部屋に有るものは何で有れ例外無く全て買い取る。
あなたはもしかしたら気に入っていて持って出て行きたい何かが有るかも知れない。
でもそれは出来ない。
あなたは私がこの話を終えたら十数える間に宮殿を出て真っすぐエントランスへ向かい城を出て行く。
あなたはここから何も持っていくことは出来ない。
私は既にセキュリティクレジットネットワークにあるクイーンバンクにあなた名義のゴールドクレジット口座を開設した。
あなたはそのクレジットだけで贅沢をしながら一生生活に困ることはないし、働く必要も無い。
此処を出たらあなたは自分の命の有る限りあなたの好きなように生きていくことが出来ることを約束する。
クイーンバンクはあなたに埋め込まれている生体情報を常時観測している。
あなたが生きている限り、あなたの口座が空になることはない。
口座は使用すれば常に補充される仕組みになっている。
ただし、あなたが死亡したあと口座は登録が解除される仕組みになっている。
死人は何も必要としない。
問題ないはず。
さあ、それではこれから一から十までゆっくりと数えてあげる。
(あなたの目はどうして赤いの?)
天窓に降り堕ちる白い赤い雪を見上げていた。
私はどうしてこの世界がこの今が夢の中なのだとわかるのだろうかと考えながら雪を見ていた。
一
二
三
四
五
六
七
八
九
どうして?あなたはそうなの?
十
バン。
私があなたを殺した。
私はあなたを、
冷たい空気が天井から垂れ下がった細いピアノ線のように頬に触れる。
人は死ぬために生きている。
私はそれを幼い頃からよく知っている。
だから、私は、
この世界が本当に
大嫌い。
サカサマの夢の話なんてもう聞きたくない。
死にたい。