23日、雨。

Aug 23 2012 14:07:28

モニター越しにどれだけあなたを見てきただろう。
アンブレラは虚ろを見ながら考えていた。

虚ろ、何もあなたは悪くないのにね。
あなたは死ぬの。
虚ろ、あなた、生きたい?
それとも、死にたい?
あなたが選んでくれたら私、
あなたを生かすことも殺すことも出来る。
あなたが生きたいなら、
私が代わりに死ぬからあなたが生きなさい。
死にたいなら、
私がこの手で殺してあげる。
どっちがいい?
虚ろ?

どうすればいい?
私、どうすればいい?
虚ろ?
虚ろ?
虚ろ?

アンブレラはデスクに頬をすりつけ
虚ろの名前を繰り返し繰り返し呟きながら
気がつくと
いつのまにか泣いていた。

虚ろ?
虚ろ?
虚ろ?
どっち?
どうすればいい?
どっち?
生きたい?
死にたい?
虚ろ?
虚ろ?虚ろ?
虚ろ?虚ろ?
虚ろ?虚ろ?
虚ろ?虚ろ?
虚ろ?虚ろ?
虚ろ?虚ろ?
虚ろ?虚ろ?
虚ろ?虚ろ?
虚ろ?虚ろ?
虚ろ?
私?
私?
生きたい?
死にたい?
私が?
生きたい?
死にたい?
私が?
私が?
誰?
誰?
誰?
誰?誰?
誰?
誰?
誰?
誰?

Aug 23 2012 14:35:04

虚ろ、
私は

あなたと生きたい。

Aug 23 2012 15:27:28

虚ろ、
私はこんなに辛い
思いをしたのは、
初めてだ。

それでも、
それでも、
何も無かったよりは
何も無かったよりは
良かったと
思うよ。

叶わない

だとしても
夢と
思えただけで
夢を支えに出来ただけで
これで死んだとしても
私は
あなたに
出逢えて
良かったと
心から
思う。

Sep 20 2012 1:39:12

アリーの墓石にも雨が降る。
あいつの腹の上の芝生にも雨が降る。
そこらじゅうが雨なんだ。

by J.D. Salinger(The Catcher in the Rye)

Sep 1 2012 19:33:09

聞いてる?

かなしくも、たのしくもなく、
       そして、永遠の輪廻の歌を作ろう。

    いつか見た夢。
      青い空と白い翼を持っていた頃のせかいを。

   砂漠に見る、蜃気楼のような夢を。

    ああ、くすんでいく、
せかいはこんなにも

         暗い。

   僕は死んで 闇になる。
     きみは 光になれ。愛しい人。

      ブラウスについた血は汚れてるから
          早く洗い落とした方がいい。

     ぼくは、おれは、これから、
        いつでも。

    いるけどいない。
         すでにここにはいない。

  君が見るのは ぼくの影だ。
           ぼくはもう

     せかいのはて に ついた。
 

私はベッドを椅子変わりにして
コンピュータでロックバンドのライブ映像を観ていた。
すぐ後ろに彼は寝ていて
時々、目を覚まして、私の名前を呼ぶ。
私は振り返って彼をみる。
彼は目を閉じたまま、少しだけ動く。
私は返事の代わりに彼の手を握る。
彼も少し握りかえしてくる。

あれはいつだったろう。
あれはたしか、

 (7(しち)あなたの番号)

私はドアのネームプレートの下のセキュリティスキャナーを右目で覗く。
(液晶表示:go_Umbrella…)
ドアが開いた瞬間、部屋でかけっぱなしだったビョークの歌が
フロア中に響き渡った。
 
(All is full of love)

 些末なことだよ。
全てね。
これに比べたら
全て些末なこと。

二人で一緒に死のう。

生まれ変わろう。
虚ろ。
私たちは。
生まれ変わって
やり直そう。

世界のはてでなく
世界の中心で
もう一度生まれ変わろう。

虚ろ、
私はこんなに辛い
思いをしたのは、
初めてだ。
それでも、
それでも、
何も無かったよりは
何も無かったよりは
良かったと
思うよ。
叶わない

だとしても
夢と
思えただけで
夢を支えに出来ただけで
これで死んだとしても
私は
あなたに
出逢えて
良かったと
心から
思う。

The eternity is not forever.
The eternity is a moment just a little,
or The eternity does not exist.
and, So I think that the eternity is a moment.
A moment passes, and it is perfect eternity.

Aug 23 2012 15:29:04

そう。
私は何もかもなくしたわけじゃない。
この想いがある。
あなたのために
喜んだり
悲しんだり出来る。
深い想いがある。
この
想いだけで
今まで
生きてきて
良かった

思う。

私はただ
死ぬわけじゃない。
私は
私の
夢に包まれて
満足して
笑って

虚ろ、
あなたは生きなさい。

blog_5 - 082

虚ろのいない日。

Aug 23 2012 01:17:12

ミス・アンブレラがいつものようにモニターから
虚ろを観察していた。
虚ろはいつも眠る時間を過ぎても起きて
鏡の前に坐って目の前に映る自分に話しかけていた。
アンブレラはいつもと様子が違うことに気付く。
あれは虚ろではない。
様子がおかしい。
誰と誰が話しているのか、
確かめるために音声をオンにして
会話を聞く。

このままだと虚ろは
来年の春まで持たないだろう。
代わりが必要だな。

代わりならお前がやればいい。
永遠なら虚ろに近い。
お前は虚ろに少し似てる。
やれよ。

僕が?
ん? 虚ろがあれでは仕方ない、か。
虚ろが回復するまで僕が虚ろを演じよう。
教授やアンブレラには気付かれるだろうけど、
それでも、役割はこなせるはずだ。
それに、あの人が来る。

ああ、夜、ね。
夜、虚ろにそっくりだからな。
外見は。
話さなければばれない。
それでいこう。

僕が虚ろを演じながら
夜と時々交代する。

けれど、虚ろはどうして、出てこない。

きっと、忘れられない人でもいるのだろう。
自分の殻に閉じこもって
思い出をリプレイしてるんだ。

鏡を交換して。
じゃあ、今から僕が虚ろだ。

ミスー、おやすみなさい。

アンブレラは少し混乱しながら
虚ろの(永遠の)おやすみなさい、に
おやすみなさい、虚ろ、と
声に出して言った。

音声のモニターを切って、
永遠をみていた。
本当に似ているな。
話さなければ虚ろに見える。

アンブレラはさっきの会話の音声データを消去した。
こんなことしても時間稼ぎくらいにしかならないだろうけど。

虚ろ、会いに行きたいよ。
何が欲しい?
なんでもいいよ。
言ってよ。

(きみの幸せ)

虚ろ、なにが欲しいの?
私が叶えてあげる。

永遠がこちらを振り向いて
笑った。

感情のない笑顔で。

blog_5 - 081

八月の通り雨。

Aug 20 2012 06:27:28

アンブレラはまた今日も朝まで虚ろの寝姿をみていた。
煙草を吸いながら、冷めた珈琲を飲みながら
アンブレラは虚ろを見つめている。

今日は何を買っていこう。
虚ろは甘い物が好きだから何かケーキでも。

溜め息をつきながら、虚ろを思う。

虚ろ、私はきみに会える時間がとても嬉しいけれど
帰り際、きみの部屋のドアを閉じるときに感じる
寂しさと悲しさの入り交じった陰鬱に押しつぶされてしまいそうだ。

会いに行きたい。
けれど、帰ることが怖い。
ずっと一緒にいられるなら良かった。
いつか、ずっと先でもいい、
ずっと一緒にいられるようになるなら
どんな寂しさにも私は耐えられた。
けど、これは二本の平行線だよ。
けして交わることのない平行線だ、私たちは。
そして、いずれ、消えてしまう虚ろ。
誰でも一度は生きて一度だけ死ぬ。
けれど、虚ろは生きたの?
研究室の中でなく本当の世界で。
虚ろはまだ生きたことがない。
ただ、生かされているだけ。
虚ろを生かしてあげたい。
たとえ、それが作り物の人形だとしても
虚ろは、自分で考え話し、笑うのだ。
虚ろ、私はきみに会う度に自分の心が衰弱していくのを感じるよ。
私には何も出来ない。
たまに、甘い物を買ってあげられる程度のことしかできない。

虚ろ、私はきみに会う度に切なく悲しく
そして、死にたくなる。

どうしてだろうね。

そう言ったアンブレラの頬は大雨のあとのように涙に濡れ
傘のない八月の通り雨のようで
でも、実際にはアンブレラの心は冷たく凍えて
凍り付きそうに震えていた。

流れる涙を拭くこともなく
アンブレラはポケットからクスリを出して
口に含んだ。

そして、いつものように
泣きながら笑った。

blog_5 - 080

アンブレラ・タイム。

Aug 19 2012 09:28:10

アンブレラは寝返りも打たず静かに眠る虚ろを
朝になるまでモニターで見続けていた。
虚ろ、虚ろ-、わたしーのうつろー。とおかしな歌を唄いながら。
珈琲はもう泥の味のようで、彼女は仕方なく
近くのコーヒーショップに行く。

(ああ、一つの方には甘いクリームとチョコレートをたっぷりと入れて。
私のはエスプレッソを5倍でお願いします。と注文した。)

5分ほどの帰り道なのに太陽が容赦なく照らすから
とても暑くて汗が気持ち悪かった。

アンブレラは自分の研究室に戻って
さっき買った珈琲の甘くない方を一口飲んで
ああ、この苦さ好き。といって二つを冷蔵庫にしまってシャワーを浴びた。
シャワーのあと、汗で気持ち悪いからと白衣まで全部着替えた。
着替えても同じ格好なのだけれど。
モニターから虚ろが起きたことを知らせるアラームが鳴った。
アンブレラは冷蔵庫からさっき買った珈琲を出して
虚ろの部屋へ向かった。
途中エレベーターの前で教授に会った。
教授は私が脇に抱えたコーヒーショップのバッグを見て
そのあと私の顔を見て微笑んだ。
私は一瞬微笑みを返そうかどうしようか悩んで
だけど、私の乗るエレベーターが開いたので
頭だけ下げてエレベーターの扉が閉まるのを待っていた。
私はとても恥ずかしいものを見られたかのように動揺した。
けれど、今更と思う。
教授は私の今までの発言や態度で
私が虚ろに被験体としての興味以上の感情を持っていることを知っている。
だから、さっき、珈琲の入ったバッグを見て笑ったのだ。
あれは微笑んだのではない。
嘲笑したのだ。

(5分後)

私は虚ろにおみやげと言って甘い生クリームとチョコレートが
山盛りになったアイスコーヒーを渡した。
それから定例の検査が終わるまでずっと虚ろと向かい合っていた。
じゃあね、虚ろ、また明日。
またね、ミス-。

私は研究室へ戻って
虚ろから採取した血液サンプルの3本のうちの2本を保存用冷庫にしまった。
もう一つは、持ち上げて明かりに透かして軽く振って
キャップを取ると一口で飲んだ。

虚ろ。
鉄の味がする。
きみはまだ人間だよ。
大丈夫。
きみはずっと
ひとだよ。

blog_5 - 079

ディズニーランドへ。

Aug 14 2012 02:24:32

そんなに心配そうな顔しないでよ。

鏡と話す僕は
誰かが見たら異常にみえるだろうけど、
実際に僕の中に入ってみたら
鏡に映る沢山の自分と会話してるんだって
簡単にわかるのに。
普通の人って、不自由だな。
虚ろはそう思う。

もうすぐ八月が過ぎていくよ。
花火、一度くらい一緒にみてもよかったのに。
一度ぐらいディズニーランドに行ってもよかったのに。
一度ぐらい、
なんだって、何度だって、出来るように
ずっと一緒に本当はいたかった、な。
今の一瞬も
この一瞬も
あのときの一瞬も
全部通り過ぎたもの。
現在進行形で全部の一瞬が過ぎていって、
もうすぐ僕たちの時計の針は止まる。
ミクニはそれが永遠だ、と教えてくれた。
何も変わらない状態。
それ以上変化しない状態。
つまり、
そういうこと。

ふと、眠っていて
目が覚めたら、目の前に椿が居た。

久しぶり。
椿。

僕はもう寝るよ。
じゃあね。

blog_5 - 078

椿の葬列

Aug 7 2012 11:42:03

虚ろは起きたばかりでまだ眠剤が残っている足下をフラフラさせて
椅子やテーブルにぶつかりながら
鏡の前に座り込んだ。
その鏡は何も飾りのない無駄のないデザインで
黒い枠の中の少し窪んだところが鏡だった。
虚ろは寝ぼけたまま、
来たよ、
何か用?
と言った。
床に座り込んでいる虚ろに対して、
鏡の中の人物は背を伸ばした綺麗な姿勢で立ったまま
虚ろを見下ろしている。
虚ろは見上げながら、
椿、なんのよう?
何か言ってよ。
ねぇ、椿。
椿は鏡の中から両腕をだすと
虚ろの首を絞めた。
その5、6秒の間、虚ろは意識が消えかけ、死ぬと思った。
まだ送っていないきみへの贈り物が
あたまに浮かんで
ちゃんと届けてくれるかな、
まとめておいたし、きっと、だいじょ・・・
鏡の中に虚ろを置き去りにして
椿はベッドの横にある青いクロコダイル柄の箱を見て
かわらないな、きみは。と独り言を言った。
そのままベッドに倒れ込むと枕の下に手を入れて
ピストルを取り出した。
ピストルのカートリッジを外して
弾の数を調べた。
3つ。
ひとつ、
足りないな。
そう呟くと、ベッドから飛び降りて
鏡のある方へ構え、トリガーを引く瞬間、
手に握っていたはずのピストルが見えない砂のように
サラサラと指の隙間から落ちていった。
ベッドサイドテーブルの上にある薔薇の鏡の中で
3人目の僕が笑っていた。

僕はもう用なし、か。

僕はバスルームでシャワーを浴びながら、きみに会いたいと思った。
あたまの中に浮かんだのは、
高台にある緑の公園で
石造りのテーブルに二人で椅子に腰掛けて
冷たいジュースを飲みながら笑って話したこと。
内容は忘れたけど。
あの高台から見えた景色はとても綺麗で。
湯気で曇った鏡をタオルで拭いて、
鏡越しに映る自分を見ながら、またね、と言った。
永遠は沢山の赤ワインが入ったダンボール箱を抱えながら
椿の鏡の前に来るとダンボール箱を降ろして
椿、椿、椿ィ-!と絶叫しながら
箱からワインを取り出して鏡に叩きつけた。
あはは、兄様、血が出てるよ。
それは、箱の中が空になるまで続き
ボトルがなくなる頃、鏡の破片なのかボトルの破片なのか
何もわからないほど鏡はなくなり、向こうが見えている。
飛び散った数十本分の赤ワインのせいで部屋中がワインの匂いにまみれた。
永遠はその匂いに少し酔っていた。
少しだけ赤くなった頬を気にしながら
黒い手鏡で自分を見た。

そして、
椿、またね、はもうないよ。残念でした、と永遠が言った。

blog_5 - 077

パレード・アローン

Jul 27 2012 00:03:23

先生、
ぼくたちが引っ越したら
あの部屋
誰がすむの?

ああ、あのへや、・・・
・・
・・(沈黙)

・・誰も住まないんだよ
実はね、せんせいたちもこの施設ごと移動で
誰もいなくなる

ああ、それとね、ここ建物が古いから
危険でね
全部解体して更地にしちゃうんだ。

解体してさらち?
どういう意味、先生。

壊すんだよ。全部。
そして、平らな土地にね、
なるんだよ。

ええ、こんなに大きい建物なのに
全部壊しちゃうの
もったいないなー
でも、
そのあと、どうするのここ?
こんなに広いのに
何かに使うんでしょ?
公園とか。

そう、だね。
公園いいね。
ここは国の持ち物だからね。
国が決めるんだけど。
たぶん、虚ろくんの言う通り
公園はいいアイディアだね。
公園になると
先生も思うよ。

ふううん。
僕の目は右腕に繋がって上にに伸びている管を辿って
半透明なパックの中身が 少しずつ、管に落ちる滴をみていた。

(涙みたいだ。)

虚ろ、は、虚ろは
いま、いくつ?

先生、ぼく、としいくつだっけ?

虚ろくんは、、
きみはいくつだったかな。
ごめんね。先生もちょっと
今、思い出せないみたいだ。おかしいね。

僕はきっと1500歳くらいかなと思った。
ミクニが築いた王国が滅んだのがち
ょうどそのくらいだから
僕は最初からミクニを知っていたわけだし
きっとそのくらいは生きてたはず。

ああ、眠い。
すごくねむい。
せんせい、なんかすごくねむくなった
どうして、か、な、せん、、、

少しずつ、はじめていかないと
苦しいからね。
虚ろ、
少しずつ、
これから、毎日、ゆっくり少しずついれていくからね。
おやすみ、虚ろ。

僕は夢の中で
ミクニの国を歩いた。
どんな国か
ぜんぜん知らないけど
砂漠のなかに
大きな宮殿があって、
たくさんのひとが
宮殿の前で
なにかの祭りをしていた。
ミクニの国。
たしか、
モロッコあたりの
大きな砂漠
近く

blog_5 - 076

世界の中心。

Aug 6 2012 00:35:34

虚ろたちはそれぞれの鏡を使って
人格を移動する。
それが出来るようになったわけを本人は知らない。
虚ろが先生と呼ぶ教授ですら、自分であることも知らない。
この物語を書く全ての人物が
たったひとりの身体の中にある膨大な数の人格なのだ。
そして、その人格が増える度に精神は壊れていった。
完全に壊れてしまう前にこの計画を策定した人格。
その人格こそが忘れ去られた本当の自分である。
精神が崩壊してしまう前にせめて人として死にたいと願った本人。
この世界の中心。
それが、わ、た、し。

すべて、滅べ、わたしの世界。
わたしの想い。
わたしのわたし。
わたしは逝く。
人として、あるうちに。

blog_5 - 075

黒いドレス。

Aug 2 2012 05:21:28

アラームが鳴っても虚ろは目覚めなかった。
3度目のレジュームが鳴り終わる頃やっと目を開けた。

今日は姉様の日か。
いいやめんどくさい、このままでいこう。

虚ろは寝起きのまま、ベッドからふらふらと降りて
ベッドやコンピュータのあるこちらの整頓されたフロアから
姉様たちの鏡やその他色々置かれている整頓されていない古美術店のような
フロアへ歩いて行く。
けれど、2,3歩歩いただけで足は止まり、
やっぱりシャワー浴びてこよう。姉様に怒られそうな気がする。
そう言って、バスルームのスイッチを押した。
ソファに寝転びながらアラームが鳴るまでずっと煙草を吸っていた。

虚ろの部屋にはたくさんの鏡があった。
どれも虚ろたちの身長に合わせて作られた等身大の立体鏡で
形やデザインはどれも違う。同じものは一つもなかった。

アラームが鳴って、身体を綺麗にすると
虚ろは真っ黒なドレスに着替えた。
そして、鏡が沢山並ぶ中から一見してロココ調とわかる
細かな装飾や植物柄が立体的に施された鏡の前に来ると
鏡の中へお辞儀して跪いた。

姉様、参りました。
虚ろが鏡に向かって言った。
そして、顔をあげて鏡に映る自分を確認したあと言葉を続けた。

お久しぶりですね。姉様。
ご機嫌いかがですか。

何も変わりない。
そちらの計画は予定通り進んでいるか。

それは語りから聞いた方がいいと思うよ。姉様。

そう、だな。
では、虚ろ、お前は少し眠っていなさい。

女王闇がそう言うと
虚ろは「おやすみなさい姉様」と声にならない声で言い
深い意識の暗闇の中へ沈んでいった。

女王闇はそのまま鏡の前に立ち、
ドレスのフォルムを気にしながら形を整える。
そして、語り、語り、語り、おいで、語り、と優しく声をかけた。
居るのでしょう、語り、あなたに聞いておきたいことがあるのよ、
ゆっくり話しましょう。語り、おいで、語り、

blog_5 - 074

虚ろの手紙。

Aug 2 2012 01:15:09

出逢いが永遠に続かないように
悲しみも永遠に続くことはないよ。
どんな悲しみも時間が吸収してしまうんだ。

きみはきみの未来の中から一番の幸せを選べばいいの。
その代償に何が支払われるかなんてきみは知る必要がないし
きみがこれから享受する幸せの総量と
比べてみれば本当に些末なものだよ。

虚ろは机の代わりに
真っ黒なコレクションテーブルの上で
きみ宛に短い手紙を書いた。
そして、切手の代わりに蝋燭で涙を描いて
ヴィクトリアンドレスを着たドールの前で写真を撮ったあと、
鋏で封筒ごと細かく切り刻んで、
バラバラになった手紙を両手ですくうように持ち上げて
空中へ投げ捨てた。

(きみへ、届け。僕の想い。)

I believe you.
Any rain is certainly over.
(Eternity is not forever. Eternity do not exist.)

blog_5 - 073