見えないものを欲しがる男。

Nov 09 2006 15:31:59
 
階段を降りて行く男
それを見ている見えないもの
回転の止まらない男
それを見ている見えないもの

未来でも過去でも夢でもない嘘をつく
ミクニ

聖歌を口ずさみながら
首をはねていく
そのリズムはワルツ

見えないものが欲しいと
階段を降りて行った男は
砂時計に出会う
(そういうのデタラメっていうんだよ)
砂時計は砂が落ちきっていて
秒を刻まない
それを見て動きを止めた
ずっと動かないまま

回転の止まらない男は目を回しながら
不毛な唄を唄う

見えないものが欲しいと唄う
けれど見えないものは
見えないままだ

けれど見つめている
目に見えないものは彼らを見つめている
(憎みながら…でしょ)

ああそうだよ
僕は憎い
彼らのやましい魂が憎くてたまらない

いくら望んでも
見えない僕を見ようと必死になって
降りたり回ったり
止まったり
首をはねたり夢見たり
そういうのがあたりまえのように
彼らには(鈍いんだ)デリカシーがない

全員死ねばいい
いまから僕が殺してもいい
(それは違反です)
知らないよ
彼らを砂の城に閉じ込めたら
気が済むかな

あなたも気が狂っているみたいだわ

僕は最終的に幻想になるからね
いいんだ
これで

…プツン

blog_3 - 30

線になる男。

Nov 10 2006 15:30:56
 
さっきから僕は線になって
普通なら誰も入ることのできない
狭さの中にいる。
その狭さは時間も空虚も空白だ。
(彼はなにを言っているの?)
(しっ! 彼は真実を語ろうとしているんだから)
空虚で細くて
でも信じて
ゆるやかな欠乏症にかかってしまったようですね。
きっと彼は細い線になりますよ。
よい線です。
先生、空白でもメールがうけとれますか?

空白には手紙さえ届きません。
では、どうやって彼と話すのですか?
(何代目かの夢の島から空虚の風がふいてくる。)
言葉は狭さの中で
とくに稀薄になる。
目には見えないし、すべてが忘却ですから
誰もそこにはいません。
灯りがもれてくるのは一本の線の反射です。

blog_3 - 29

音売りと世界の終わり。(眠りの町交差点停留所)

Nov 10 2005 15:09:47
 
指の震える音が聞こえる。
耳を澄まし
その音を濾過して
抽出できたものはひとつの手紙だった。

夢に出て来た町から手紙が届く。
「わたしは 眠りの町。
夢から覚めてもけして忘れないように
こうして手紙をかきました。
あなたがこの町に 忘れていった かけらは
いまは 町の博物館に大切に保管されています。
このかけらは 単に記憶の断片というには もったいないくらい美しく
もし、あなたさえ かまわなければ
ぜひとも この博物館のロバの耳の横に展示させていただきたいのですが
いかがでしょうか?
このかけらは 本当に 美しい。
そして 時々 かけらは 音色を奏でているのです。
その音色がまた美しいのです。

もちろん、展示するといっても
あなたがこの町へ受け取りに来られたときには
すぐにお返しいたします。
それまでの間の展示をどうかお許しください。
良いお返事をお待ちしております。」

眠りの町は
いまの僕にとっては 果てしなく遠く
複雑な道を順番を間違えずに通り抜けていかなければ
辿り着くことはできない。
いまはそのための時間と労力がない。
次に行くのは 何年も先のことになるだろう。
だから、僕は展示を許可することにした。
ただし、条件をつけて。

その条件は、
「かけらと一緒に この物語を展示すること」。

『音売りと世界の破滅』

歩くたびに音のする床の上を
ひとつ ひとつ 音を拾いながら歩く。
時計が止まってしまった。
さっきからずっと歩き続けてる。

(いつか?)

はしっこに着くと 外へ出る階段があるから
そこを降りていくといいよ。
長い階段だけど 途中に小さな窓のあるへこみがあるから。
その窓はいつも閉まっているけど
窓をたたくと 音売りがでてくるからさ。
拾った 音 は全部そこで売ってしまって。
ここで拾った 音 は外へ持ち出せないんだ。
だから 音売りに全部売ってしまって。
間違いなく全部売らないと大変なことになるから
気を付けてね。
その 音 聴いてみた?
きれいな音色でしょ。世界の終わりの音だからさ。
わかるでしょ。そういうの。
なんて言うんだっけ? そういうの。君たちの世界では。

(儚い)

ひとつ 手にとって 指で叩くと
キーンと 高く澄んだ耳鳴りのような音がした。

階段を降りる途中に 音売りのいる窓があった。
窓は開いていて中を覗くと
小さなドビュッシーと目があった。

(小さなドビュッシー)

アラベスクを弾いている。

(いつのまにか時計が動いている)

小さいドビュッシーが弾いているのは
自分の体と同じように 小さなピアノで
いつも聴いている ピアノの音色とは なにかが違う気がした。
たぶん 拾ってきた 音 と似てる。

やあ お待たせしました。お待たせしました。
音 を 売りに来たんですね。音を売りにきたんですよねー。
全部もらいます。全部もらいます。
なにも心配しないでください。 なにも心配しないでください。
即決ですから。即決。すぐですから まかせてください。すぐですからねー。
どんどん もらいますからねー。 どんどんもらいますからねー。
遠慮しないで さあ だして。遠慮しないで さあ だして。

何事も 2度繰り返した。

小さなドビュッシーは
慣れた手つきで 音 を数えている。

はい。終わりました。終わりました。
結構ありましたね。 結構ありましたよ。
お客さん やりますね。やりますね。
今日は大漁ですよ。 大漁ですよ。
これで またいい曲が作れそうです。これでまた いい曲が作れそうです。
じゃあこれ代金です。代金です。
この先を降りていくと 5分くらいで外に出ますからね。
お気をつけて お帰りください。

そして ハーモニカをひとつくれると 窓をしめた。

(ガタン)
小さなドビュッシーが 代金としてよこしたハーモニカは
やっぱり小指くらいの小さなハーモニカで
側面に きれいな貝殻細工がついていた。
試しに吹いてみると
キーンと 耳鳴りのような音がした。やっぱり同じだった。

本当は ひとつだけ 音 を残した。
さっき 試しに叩いた 音。
ポケットに入れっぱなしにして忘れていた。
階段を降りていくと 音売りが言うように 
5分も歩かないうちに外にでた。

外に出ると 彼が言っていた理由がわかった。

手が熱かった。
手に持っている 音 が どんどん熱くなっていく。
耳鳴りがして。
耳鳴りが大きくなっていく。
音 が 熱くなって。
手に持てないくらい熱くなって。
でも 離したいのに 離すことが出来ない。
耳鳴りは 手のひらを中心に どんどん広がって
手の中にあった 音 は 手の平をはみだして
体を包み込んで 
森を包み込んで 
海を包み込んで
町を包み込んで 
夜を包み込んで 
朝を包み込んで
世界全体を包み込んでしまうと 
世界から音が消えた。

そのあとは ずっと 耳鳴りだけ してた。

blog_3 - 28

曖昧な羊の境界。

Aug 23 2006 14:57:27

羊のこと。(曖昧な理由。)
いつのまにか
羊と夢がごちゃまぜになってきている。
そういうことは誰にでもありますから
心配ありません。と先生は言うが
僕にはたまらなく不快でならない。
気持ち悪くてしかたがない。
いつも先生は心配いらないと言う。
いつか 僕が自分の首を切り落として
先生に送りつけたときも先生は動じなかった。
ダンボール箱の中で
木クズの中に埋もれている僕を見て
なかなかシュールですね。と言った。
(シュール! 先生まさに目の前で起こっていることは全くの現実ですよ!)
先生はそれを見ても
誰にでもよくあることですから
心配ありません。と笑った。
(時間です。次の人どうぞ。)
とにかくぼくは境界を
作り直さなくてはいけない。
そうしなければ羊から溢れた夢が羊を満たし
夢から溢れた羊が夢を満たしてしまい
まるで境がない二つの大きな水たまりのように
端から見ると ひとつの水たまりなのに
同じ口で個別を言い合っている
道化のようになってしまう。
まず羊の定義から始めて
そのあとに夢を定義しよう。
境を分けるのはそれからだ。プツン

blog_3 - 26

語りの夢言葉。

Jul 26 2006 14:55:35
 
百年に一度 
羊の毛が全部枯れて
抜け落ちて
花が咲く。
百年に一度
真冬の真昼に羊が満開になる。
語り は
眠っているような虚ろな声で
嘘の物語を語った。
僕が ほんとに?と聞くと
満足そうに目を閉じたまま笑って
本当のはなし。と声に出さずに言うと
そのまま本当に眠ってしまった。

blog_3 - 25

語りとの出会い。

Jul 25 2006 14:51:59
 
きれいなシミですね。と 語り は言った。
増殖していくシミを見て
彼はきれいだと言った。
そうですか。けれどただのシミなんです。
シミが増殖しているだけなんです。
増殖はきれいですね。
増殖はいいなあ。
(月とは違う。
もっと増えますか?
シミはもっと増えますか?
ぼくは 語り といいます。
(語り という名前はこのとき知った。
語り はさらに続けて言った。
今夜も私の月がきれいなんです。
見に行きませんか?
ぼくは少し月に嫉妬していましたから
シミは増殖していくだけですから
月の満ち欠けのきれいさとは
根本的に違うものです。と意地悪く答えた。
私の月を見に行きませんか?
私の月のクレーターは
あなたのシミのようにきれいなんですよ。
語り の月のクレーターは
何百種類もの黄色で出来ていて
影も光も微細な粉で描いたように
精密でなめらかな境界を見ることができた。
ぼくは語りの月を見てますます
どうして このシミのことを語りが
きれいだなんて言ったのかわからなくなった。
結局ぼくはそのとき 語り を問い詰めることが
出来なかったから語りがいなくなった今は
そのときの 語り の本当を知ることはもう出来ない。
(語りとはそれから百年間一緒にいた。)

blog_3 - 24

ミクニについて。

Jul 25 2005 06:53:11
 
42573619730401。
僕は物心がついたときから
いままでずっと数を数え続けてきたんだ。と
ミクニは言った。
その言葉を聞いたあとには
ただの数字がとても恐ろしくかんじられて
まるで呪文のように僕の頭の中に響いたし
跳ね返っても また跳ね返り
その反射はいつまでたっても止まなかった。
42573619730401頭。
僕が羊を殺した数だ。
42573619730401時間。
僕の失った時間だ。
例えて言うなら
ぼくの感じた恐さはそういったものに近かった。
ミクニは片目が水晶で出来ていて
水晶をのぞくと海が見えた。
ミクニに どうして数を数えるの?と聞くと
ミクニはどんどん増えていくことが楽しいから。と言った。
増えてどうなるの?と聞くと
増えていくだけだ。と言ったあとに
ダメ?と聞き返してきたけど
ぼくはうまく答えが思い浮かばなくて
沈黙してしまった。
ミクニは少し悲しそうな顔をした。
その少しというのが あんまり小さなものだったので
悲しそうな顔が沈黙したことに対してなのか
ミクニの個人的な憂鬱なのかが
僕にはわからなかった。
この話はミクニと出会って間もない頃の出来事だったけれど
それから僕がミクニの顔を思い浮かべるときは
決まってその表情だった。
僕の中でミクニはいつも 少し悲しそうな顔で
僕を見ている。

blog_3 - 23

蜉蝣でミクニ。

Nov 04 2005 15:53:38

透明な 木の箱を使って 階段を作った
透明だから 目に見えないし 足音も響かない

本当は 一瞬だけ足音はしてる
だけど すぐに吸い取られているから 誰も 気づかない

透 明な 階段 を登って
もっと高く 透明になる

(積乱雲の中では 自由放電が起こっている 
 屋根の上に登って 確かめに行ったまま 
 あの子は帰ってこない
 きっと くものす に絡めとられているよ
 僕はね 一度 あの くものす に
 絡めとられたことがあるんだ
 だから わかるんだよ
 気配がするんだ
 大きな くもが 音もたてずに 
 透明階段を ゆっくり 登ってくるよ

 僕はね 本当は く も に 食べられたかったんだ
 くもは くちゃくちゃ 音をたてて
 ゆっくり やわらかく 噛み砕いて
 まだ 獲物が大きなままでも 丸呑みにしていくんだ
 そのあと 腹の中で 時間をかけて溶かされる
 だから くもに食べられて死んでいくのは
 気が遠くなるし 不気味で 恐ろしいんだよ
 僕も 本当は そうやって 食べられるはずだったんだけど
 食べられる寸前で 夢から醒めてしまって 
 目が覚めたら 逆に くもを踏み潰してしまったんだ

 夢って なんのこと?)

下を 見下ろすとめまいがするからきをつけるんだよ(声が小さくなってきてるよ)
透明な  きの箱は ブロックがわりにされてるだけなんだ
しかも 空虚のかわりなんだ つみあげていって みえなくなるんだ
もともと みえないんだけどね
汗でてがすべるな
なにか で てをふかないと てが ぬるぬる して ぶろっくがつかめないよ  
なにか

いそいで宮殿に知らせておいで
ゆめのくうきょの透明な階段が もうすぐ くずれそうだよって

空をみて くものすは はっている?

はい 黒い線が何本も宙に浮いています

くも は 見える?

(あの子はきっと くもに食われてしまったよ
 夢? ちがうと思うよ 
 あれは  現実に 形のある く も で
 本当に食われてしまうんだ

 どうしてそんな嘘をつくの?)

くもはみえません
とうめいしかみえません
とうめいしかみえません

くうきょのぶろっくは どこまでならべたっけ?

どこまで?

わかりません
なにもみえません もうなにもみえません

よくみてごらんよ
くもはすぐちかくにいるよ
いますぐいくよ
まってていますぐいくよ

blog_3 - 22

未完成キャンディ。

Jul 24 2005 18:26:45
 
羊のつのから抽出された なんとかって 成分が
脳に効くって噂が風に飛ばされて

ここにやってきた。

それは 世の中にはとても必要なものらしい。
果たして、本当にそうなのかな。
そのことは今は忘れてしまおう。
実際には それが なんであれ
作ってしまわなければ 今夜 僕は眠ることができない。
(いま、一番重要なのは まさにそのことにつきる。)
僕は眠るためなら 睡眠時間さえ おしまないよ。

さて、 問題は山積みだ。
まず、レシピがない。
(音楽をなにかかけよう。)

そして、材料が羊の角であること。
(羊の角はなかなか手に入らない。)
他に必要な物は、、、ないが、時間もないのだ。
時間、時間、時間がとにかくない。
先に進もう。

「未完成キャンディ」

これが、いまから 作らなくてはいけないものの名前だ。
僕としては、飴は嫌いなので
本当はガムにして欲しいところだが
これは命令なので仕方がない。

命令なんて 本当は聞いてる場合じゃないんだよ。
僕には僕の発明したいものがたくさんあるし、
なによりも眠りたいんだから。
けれど、僕の発明したいものは世の中に必要のないものばかりだから
時間が余ったときにしか作ることはできない。
たとえば、「思いついた愛の言葉を何度も繰り返す装置。」
これは途中まで作ったんだけど
何度か繰り返し話すうちに、どうしても違う言葉になってしまう。
時間がなくて、なかなか直せないでいると
どうでも良くなって、直すにいたらない。
これは僕の悪いくせだ。
なんで、これが欲しかったのかすら忘れてしまうんだから。
とりあえず、言えることは、僕は「装置」って言葉が好きってこと。
とにかくなんにでも「装置」をつけたがる。くだらないんだ。

さて、僕はこれから羊を何頭か殺しにいかなくてはいけない。
残酷だと思うかい?
けれど、君たちが 必要だというから
僕が かわりに殺しに行くだけなんだよ。
もちろん、僕は羊が好きだし、
羊を八つ裂きにして、殺すことも好きだ。
相反していると思うだろうけど
そう思うのは 君がまだ世界の中心にいるからだ。
世界の果てで長く暮らすと
洗練されたものや 研ぎ澄まされたもの、
純度の高いものだけが 砂浜に流れてくるから
自然と 本質的なものにしか興味がなくなるんだ。
きみたちの言っていることは 本質的には無だよ。すべて。

ああ、もう時間がない。
急がないと 僕の睡眠時間が削られていく。
ああ、もう行くよ。 もう行かなきゃ。
羊を殺しに行くよ。思いきり、残酷に殺しに行くよ。

blog_3 - 21