井戸の中へ(語りからの手紙)

Nov 28 2006 08:41:53

今日、気付いてしまった。
だから僕はもう一度
自分自身の底へ降りていかなければいけない。
いままでの方法では
降りていけないから、まず方法を探さないと。
どこまでも続く井戸の深さを考えると
本当にそこに欲しいものがあるのか疑問に思える。
本当に欲しいもの。
特別ななにか。
もう外の世界にもあきてしまったし
あると信じていたものも
結局幻だった。
どんどん深くへ降りていこう。
見つかるまで。
特別な力がそこにあると信じて。
語りの手紙はそこで終わっていた。

語りはいなくなった。

blog_3 - 1

チョコレート。

Nov 22 2006 08:32:47

次に名前をつけたのはチョコレート。

全然甘くない。
だけど似合ってる。

その細い線にゆっくり風を送る。
揺れる糸が愛しい。

(あれは自分自身の神経だから。)

クスリを送った。
大量に。

D2レセプターを壊したかった。

糸を切りたかった。
寒い冬が待てなかった。
夢やクリスマスが憎かった。

それで羊を数えた。
何頭もいた。

ゆっくり憂鬱に数えながら一頭ずつ
ちゃんと殺した。

血にまみれた。

それは現実ではなかったけど
夢でもなかった。

自分自身と細い糸のスパイラルにいた。
もうそこでは生きていけないと知っている。

だから途方にくれて
でも笑う。

願いは確か、叶ってる。

それは優しい温度のせいで
本当ではない。

それでも良かった。
      なにもないよりは。

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死の前日。

Nov 04 2006 02:20:39

語りの死の前日。

語りは砂浜を歩きながら、
たとえ僕が死んでも

僕は、いつまでもこの景色が好きだと言った。
それは、永久にかわらないと。

夕焼けも見る事のないたんたんとした一日がすぎた。
そして、語りは本当に次の日に死んだ。
永遠の自由と思い出を手に入れて。
僕はその日を忘れる事ができない。
いまも、語りの声が聞こえる。

語りは、何を求めてもいなかった。
ただ、自由だけを求めていたんだと思う。
それを、語りのやり方で実践しただけだ。

語りに会いたい。
僕はいまでも語りに会いたい。

blog_2 - 289

語りの残した言葉(2)

飲み終わったコーヒーを片付けようと
語りに近付くと語りはカップを盆の上に載せようとして落した。
ガチャンという音がした。
語りどうしたの?というと
ちょっと熱っぽいと言って
目を閉じた。
たしかに語りの頬は赤くなっていた。
額に手を当てるとすごく熱い。
大変だと僕が言うと
語りは、立ち上がって寝ると言う。
僕が薬を持っていっても
飲まなかった。
そして、たかが風邪だろうと言った。
けど、風邪をこじらせて死ぬ場合もある。

「そのときはそれでいい。」と語りはつぶやいた。
そして続けた。

「本当にどれだけ生きるということが
自由を束縛しているか
きみはわからないの?
生きていこうとする気持ちが鎖になって
身体中を縛っていることに気付かない?」

だけど、死んだら自由もなにもないよ。
なにもないことが本当の自由だとしたら?
語りはそう言って向こうを向いて眠ってしまった。

生きていこうとする気持ちが鎖になって
身体中を縛っている。

僕は語りの言葉をメモした。

写真 - 10870

語りの残した言葉(1)

Nov 01 2006 17:59:30

語りはファブリック地の柔らかいソファに座って
本を読んでいた。
ソファにもたれてはいなくて
背中を伸ばしたままで。

僕はどうして本ばかり読むのかというようなことを
聞いたと思う。

語りはこちらを一瞬向き
前に進むためと一言言うと
また本に視線を戻す。
そして、さらに続けた。
前に進むためには
後ろに捨てるものが必要だ

それはきみにとって何?と僕が聞くと。
今のところ時間だと答えた。

時間を捨てて前に進むのか。
僕は秒だから常に
語りに捨てられていくわけだ。
僕はなんとなく
それは悪くないな。と思った。
語りに捨てられるなら
それは幸せかもしれない。

前に進むために後ろに捨てるものが必要だ。
僕はその言葉をメモした。

blog_2 - 287

冷たい海のあふれる涙。(語りの言葉)

Oct 31 2006 00:26:15

カップに水が一雫ずつ落ちる。
いずれは溢れるだろうけど
まだ当分溢れそうにはない。
(その雫はミクニの涙?

(もしそうなら船をださなきゃ。

カップに雨が降る。雨。
カップはすぐに溢れてしまう。

誰か呼んだ?
なにか聞こえた。
だけど本当に溢れているのは
ミクニの悲しい風の吹く海。
こぼれたら
ミクニがやってきて
水晶の目で見つめる。
その水晶の中にはミクニの海があって
ミクニの見えない水晶の目から
涙が流れているのが見える。
その目を見たら
世界のすべてがわかるという。
光りと闇の世界。最果て。
猫がたくさんいて
並んで列を作っている。
ミクニのために。

カップに降る雨はミクニを呼ぶ。

語りは、毎晩僕のカップには
雨が降るよと言った。僕には意味がよくわからなかった。

blog_2 - 286

破壊衝動機関。

Oct 12 2006 08:31:35

蛍光灯の光る群れとタイルに反射する光り。

それは壊せと言う。
そして、流れる音は加速する。

見えないものがほしいと言っていた男が
本当に欲しがっていたものはなに?

水晶の瞳から海を作り出すミクニ。
1000年前に滅んだ王国。
線の細さにフェティシズムを感じる誰か。

言葉を切り刻んで
なにか別の物語を作ろうとした
夢の中ではいつも雨が降ると嘆いた弱い男。

すべてが意味を持つし
すべてが一瞬にして意味を失う
それは真実…。

そう言って羊の首を狩り続ける
ここに登場した人物や

(脊髄の痛みはやんだ?)

夢と現時点ではなにも変わらない現実。

その現実も本当に存在しているのか
わからなくなる男。

(狂っているわけじゃなく
(かわいがって欲しいだけさ。

眠るまえにピンクのインクが壁から流れ出して
僕は混乱する。

しかし、冷静に考えてみる。

見えないものが欲しいと言った
男のことを思い出す。

(成層圏ではキャノピーが凍るんだよ。)

鏡が1メートルおきに配置されている。
その長い廊下を蛍光灯の光りの群れと歩く。

永遠だ。

それが永遠というものだよ。
             (いま永遠てきこえなかった?)

長い廊下を歩きながら、(それは夢の中だけれども)
僕の現在を認識できる程度の覚醒された知覚で
認識できるすべての音を破壊する。

階段をおりて
忘れていった世界を破滅させた音も、

すべてがあの瞬間に戻ろうとする意識の
コンプレックスを形成している。

それはどんどん大きくなって砂の宮殿くらいに膨らみ続ける
僕の夢は逃げることなく続く。

(すべて一人称で語れないのかしら)

blog_2 - 285

木蓮伯爵の季節。

Oct 03 2006 23:22:27

憂鬱なうたばかり作って、
気がつけば泣いている。
そんな羊がいた。
羊は革をはがれ、いまは遠い海の向こうへ流れていった。
けれど、僕はそんな羊がうらやましい。
自分の感情を表現する事ができる羊が。
僕はいつか元に戻れるだろうか?
階段を降りたり上ったりしながら考える。
そもそも元ってなんだったろう。
ひそひそ声が聴こえる。
うわさ話が聴こえる。
もうすぐ終わるだろうって。噂している。
けれど、終わらない。
通りすがりの太った兄弟に
僕の真実を占ってもらう。
兄は語らない。
弟が語る。
弟が語ることばは、普通にはわからない言葉。
僕の待つ時間は永遠より長いでしょうか?
弟は飽きてしまって答えない。
お菓子がなくなってしまった。
弟はもう答えない。
兄は行ってしまう。
弟も後を追って歩く。
僕は取り残される。
僕は自分の魂の中にだけでしか生きられない。
(きみになりたい。)
散ってしまって、華は木蓮で
香りが辺り一面に漂っている。
また、この季節だ。
木蓮伯爵が現れる。
木蓮伯爵、僕を連れて行って。
僕をここから、どこでもいいから。

blog_2 - 294

All is full of love

Sep 1 2012 19:33:09

届きますか。
届きます。
いいえ、届きません。
はい、届きました。
届いた。
届いていた。
届かない。
届けない。
届く。

私はベッドを椅子変わりにして
コンピュータでロックバンドのライブ映像を観ていた。
すぐ後ろに彼は寝ていて
時々、目を覚まして、私の名前を呼ぶ。
私は振り返って彼をみる。
彼は目を閉じたまま、少しだけ動く。
私は返事の代わりに彼の手を握る。
彼も少し握りかえしてくる。

あれはいつだったろう。
あれはたしか、

私は背後から突き飛ばされるまで回想に夢中で
信号機が青色に変わったことに気付かなかった。

あれは、
あれは、
あれは、
あれは、あれは?

あれは、、、?
私は今、、思いだそうしていた。
忘れ、た?

思い出せない。

帰り道歩きながら
何度も思い出そうとして
順序立てて記憶を辿ってみたけれど何も思い出せなかった。
それどころか、思い出そうとする度に
他のことまでどんどん朧気になり
自分の部屋のドアの前に着く頃には
はっきりしていた背景の視覚イメージまでが曖昧になって
黒で塗りつぶされた。

 (7(しち)あなたの番号)

私はドアのネームプレートの下のセキュリティスキャナーを右目で覗く。
(液晶表示:go_Umbrella…)
ドアが開いた瞬間、部屋でかけっぱなしだったビョークの歌が
フロア中に響き渡った。
 
(All is full of love)

「いい曲なんだけどな」
私は失敗したときの表情をつくって、
取り繕うように呟いた。

煙草に火を付けて朝焼けに紫の煙が浮かんで
机の上に飾ってある虚ろの写真を手にとって、侮れないなきみは。
虚ろくんは大変優秀です。と写真にマジックで花丸を書いて
写真立てを放り投げた。

 些末なことだよ。
全てね。
これに比べたら
全て些末なこと。
そう言って部屋の電源を落として、
ドアを閉めた。

blog_2 - 283

せかいのはては廻る

Sep 18 2006 23:38:29

つめをかむ癖を(手は震えながら)
    雪がゆっくりと落ちていく景色を窓から眺めることを
   ノイズが気持ちいいと思う事を
      過去の優しかった言葉の群れを
つかみそこなったなにか(それは良きにせよ悪きにせよ)

  いそがなければならない。

最後の小節がはじまった。

ノイズがランダムに(正確には規則性を持つ)
             音符を食い散らかす。

(忘れてしまうすべてを。)

見たいと思って 見る事のできなかった東京タワーの真下を。
あきらめるほどには求めていなかった希望を。

(祈りを。)

ここにおいて、波に流されるまで眺めていようと決めた。

全部、波にさらわれるまでは、
   ため息も絶望もすべて砂の城の一部にして

  崩れていく線の形を(それが美しいのか、それはたぶん美しい)
     正確に覚えていよう。

          忘れていくその日まで。

blog_2 - 282