人として。2/2

Jul 27 2012 04:57:12

だから    
死ぬな

(さようなら ミクニ。 永遠に 愛  してる。)

どうして、死ぬ。
どうして、失う。

どうして

その度に心が死んでいく。
全て大切だったもの。

この世界 は 
喜び 



溢れている。

素晴らしい世界だ。
欲しいものが在れば 努力して
手に入れることができる。
手に入れられない
ものもある。

でも
僕が 欲しかったものは
大抵手に入れた。

僕は
それを 手に入れて、
さらに欲しいもの を 
手に入れるために

努力して
頑張って

この世界を
一度は 
制した。

なのに。
いま、

ここは 
世界のはて。

もう私は
王では
ない。

王国が滅びた
あと

思い出や 大切な記憶
以外は
全部なくして。

けれど
ここで 別な
とても綺麗なものを
沢山 
手に入れること
出来た。

そして
僕は 
私は
また 失うという機会を
得た。

そして
それは 必ず
いつか
失ってしまう
もの
ものじゃなくて
ああ、
そう、そうね、
心の中のにある そんなもの

大切に してた
けれど
時は 奪う

もの じゃなくても、ね
壊れたり
なくしたり
時には 
間違って
捨てた
ことも
ある。

そして
安らぎを くれ
いつも
そばにいてくれた
一番なくしたくなかった
きみを
なくした。

私は
気が 狂い
そうだ。
狂ってしまえば 
いい。
そう 
すれば
きっと
楽になれる。

きみが 死に
僕に 残ったのは
思い出 記憶

それは なくすことは
絶対に ない
そういうものだと
私は 
信じていた。

記憶が
置き換わっていることに
気づいた。

それさえも
忘れてしまった
けれど

それで私は
これ以上
失うことの無いように
鍵をかけた。

私は
右目を
すてた。

そして
右目を失う代わりに
この世の 
記憶の
すべてを
手に入れた。

右目をの代わりに
涙の石を(これはサファイアの奇跡と呼ばれた眼球ほどの青い石)
右目の在った
何も無い穴の中に
それを
入れたのさ。

私は
もう
うしなわない。

私は
普段は眼帯をして
それを
隠している。

天使のような
化け物に
奪われたくはないからな。

私の右目が涙を流すと
新しい海が出来る。
私は
それを
売るんだよ。

誰にでもなんて
売らないさ。

私がそれを
売るのは

私?

僕?

いつから
私は

ミクニ

これは 私の 
過去

どうして

目が
ある。

右目が
眼帯がない
涙の石がない

私は

わたし、
僕は虚ろ。

さあ、そろそろ始めなきゃ
姉様が
起きる前に
これは
おわっていないと、
ね。

バイ、ミクニ。

blog_2 - 255

人として。1/2

Jul 26 2012 02:31:28

夜なのか昼なのかわからないけれど、
気がついたら鏡の前に座っていて
そこに映る
自分と
見つめ合っていた。

(自分と 見つめ合う?)

鏡の中の自分が
少しずつ
姿を変え
始めた。
顔自体は
変わらない。
ただ、
明らかに
僕では
ないとわかる
威圧感。
見つめる
目の奥から
感じる
息苦しいほど
強い視線。

(そうか、きみか。)暁、何しにきたの?

た、ば、こ、くれない?
つうかさー・・・
そ、の、ま、え、が、み。

(暁は僕を馬鹿にするように言葉を一文字ずつ区切って言う。)

俺の視力落ちたら、どうすんだよ。
今から、切ってやろうか。

相変わらず、きみは、
・・・・・あたまのくる口の聞き方して、
・・・・・・・・・・
煙草、
・・・・・・・・・
ないよ。

はああ。
向こうにあるだろ。
Macの前に、
のってる
あれ。
とってこいよ。むかつく。

ああ、あれ。

あああ、あれ、じゃないよ、おまえ。
早くとって来いよ。

あれ、
煙草じゃ、
ないよ。

はあ、
じゃあ、なに。
なになの、あれは。

あれは、
ね。
僕の
煙草。
煙草、
じゃなくて、
僕の
煙草。

クッ、、、、、、
く、くくぉ、殺そうか、おまえ。
お前の煙草は俺の煙草でもある、
んだよ。
ってはやくとってこい。
いいから、はやくとってこい。
いけ、いけ、いけいけ、
はやくいってこい。
そして、すぐ戻ってこい。
すぐもってこい。
はやくいけよ、
いけっつううの。
、死ねば、、おまえなんて。

(途中省略)

暁は何も言わずに
煙草を一つ取り出して
唇に軽く
挟んで、
右手の手首を素早く翻し
一瞬で
煙草に火をつけた。
その手の動きが
マジシャンの手つきに似ていて
それを当たり前のように自然に行い、
そのあと
誰よりも綺麗な仕草で
煙草を吸う
暁を見て
僕は、
暁が
羨ましいと思った。
(まるで、別人のようで、)

それを全部否定するようなタイミングで
暁が汚い口調で話す。

お前さ、なにか鬱っぽくない。
なに、その泣きそうな顔。
うける、超うけるんだけど。
死にたい、って顔、してるよ。
相変わらず、おまえ、

鬱だから、
あんまり
気分
よくない、
でも、
それは
いつも、
そうだから
それに、
・・・
夏が
来る・・・・
・・・
もうすぐ。

ああぁ、
最後
の、、、、
夏、
ね。
それで、おまえ、
泣いてる
の。

人として、

として、
・・・・・・
最後

夏、だから、
ね。

僕はいつのまにか泣いていて、
床に手をついて、
さっきどこかで切った手の
小指を見ていた。
潤んだ目の僕にそれは
繋がっていた細くて長い、赤い糸、
それが、
どこかで
切れて
指先から
床に
ぶら下がっている
ように
見え
た。

気がつくと

ひとりで、
床に
座った
まま

泣いて
いた。

目の前に
映って
いる

知らない

自分
に (自分 が)

右目から
涙を

流し
ながら

(右目からしか涙が出なかった。)

泣き
続ける
姿

(目の奥に きみが みえた。)

黙って

じっと、
見られ

(きみは うごかない。)

いた。

(この世 から きみ は さった。)

右目
から

流れ
る 
涙は

(ミクニ。ミクニ。大好きよ。ミクニ。)

葬列

似て

た。

僕の名前は、

(ミクニ、悲しまないでね、私は あなたの ことを ずっと、)

右目 に きみ が 最後 に 言った 言葉 が 
(暗い闇の中で 再生される。光る文字がスクロールする。)

あなた わたし
永遠よ 永遠に  

ずっと
(Eternity is not forever, eternity is a moment, It is a just little moment.)

死な
ないで、

(ミクニ。)

愛してる
愛してる
誰よりも
愛してる

blog_2 - 254

ぼくたちがおわったあと | The rain of the needle with tears

Jul 25 2012 2:36:59

ミクニがいた。
僕はきっと聞いても教えてくれないことを予想しながら
ミクニに言った。

ねえ、ミクニ。今日は天気がいいみたいだね。
青い空好きなんでしょ、ミクニ。
見に行きたいんでしょ。
行く方法があるよ。
ここから出る方法、教えてあげてもいいよ。
だからさあ、代わりに教えて欲しいことあるの。
ミクニの眼帯の下の右目って水晶で出来てて、
未来を見ることができるんだよね。
ねええ、教えてよ。

何を知りたい?

あのさ、僕が消えたあと、っていうか、
僕ら全員になるけど、
この世界から消えたあと、
あの人たちはどうなったの、かな、って。
ちゃんと幸せに、なってくれたかな。

あの人たち。
あの人たちって、
誰?

ああ、そう、うんとね、
みんな、全部、全員、特に××は
ちゃんと幸せになって、
結婚したり、
子供が生まれたり、
僕らが出来なかったこと、
誰かにしてもらえた?
ミクニはそういうこと、気にならないの?
それとももう知ってる?
あの天使の契約、大丈夫かな?
心配じゃない。

私たちが消える代わりに
天使と結んだ契約は必ず守られる。
私たち全員のエントロピーの総量はひとりの人間が持つエントロピーの2万倍。
天使はそれを欲しがった。
だから、あり得ない条件の契約を許した。
私たちが消えたあと、
私たちが関連した情報は全てこの宇宙から破棄される。
私たちの記憶や何もかもが一切残らず消去される。
誰も、私たちのことを知らない、
いや最初から私たちなどいなかった宇宙に変化する。
そのことは過去も、現在も、未来にも影響する。
私たちの持っていた因果律の消滅で大きく影響を受ける。
その影響の最小値は2万%/sect。
最大で50兆%/sectを越える。

なにその%/sectって?

因果律の変動値を変化前の因果律と因果係数で微分積分して出す数値のことだ。

わからないよ、
もっと間単にわかるようにしてよ。
あの人たちの未来はどうなるの?

間単に?
無理。
間単に説明して、、、、
いや、それでも無理か。

あきらめないでよ。
僕は真剣に知りたいんだから。
っていうか、ミクニがその目で見てくれればいいだけなんだけど。

本当にここを出る方法知ってるのか?

知ってる、絶対に確実にするから、
青空、見れるよ。ミクニ。

、、、、、
仮に宇宙が受ける影響が最小の2万%sectだとして
それがどれだけ宇宙を変化させるのかシミュレーションしてみると
変化前の平行宇宙の総数が無限大なのに対して
変化後の平行宇宙の総数は100京に下がる。
これが意味するのは私たちが消えたことによって
本来在ったはずの出来事、因果が全て消失するということ。
つまり、

ちょっと待って、ミクニ。
それで、あの人たちの人生がどう変わるのかを知りたいの。
僕は。
だから、その目で見てよ。
あの人たちの世界。
知りたいのは、幸せでいるのかってこと。
僕たちが影響して生まれた不幸は
ちゃんと、幸せの最大値に書き変わったかってこと。
それが知りたいの。
もう朝になっちゃうよ。
朝日見たくない。ミクニ。

それなら、天使との契約にちゃんと書いてある。
それが条件だ。
私が見る必要もない。
間違いなく、実行される。

そう・・・
・・・そうだよね。
だから、契約したんだからね。
じゃあさ、あの人、ひとりだけその目でみて。
××だけでいいよ。
具体的に知りたいんだ。
見て、教えて。
あの人の人生は因果律の最大値で
最高のものになった?

ちょっと、待ってろ。
自分で見てみろ。
(そう言って、ミクニは眼帯をはずした。
ミクニの右目は黒い瞳がなくて
眼球が全て透明な濃い青で出来た水晶だった。)

凄い。

もっと近づいて奥を覗いてみろ。
きみの見たいものが見える。

僕は鏡越しにミクニのあたまを掴んで
目の奥を覗いた。
そこにきみがいて、
ピアノを弾いていた。
大きなコンサートホールで
真っ赤なドレスを着て
堂々と演奏してた。
それだけ見て
僕はミクニにもういいよと言った。
そして、ミクニは朝日を見に行った。

僕は嬉しい。
少し、寂しい。
だけど、本当に嬉しいと思う。

僕はきみへ手紙を書いた。
切手を貼って、
出そうとしたけど・・・

煙草を吸いながら、
どうせ手紙なんて書いても
全部記憶から消えてなくなるんだと思ったら
どうでもよくなって、
ライターで火をつけて燃やした。
ライターのオイルをかけて燃やしたから勢い良く燃えてた。
僕は煙草を吸いながら、
それをじっと見てて、同封した写真が燃えたとき
生きてるみたいにそれが素早くうねって
一瞬涙を流す顔が見えた。

どうでもいいこと。

ただそれだけ。
ただそれだけなのに
本当の涙が流れて
僕は少しだけ、泣いた。

空気清浄機の前でかがみ込んで床に座ったまま、
煙草を吸ってた。
吸い終わっても、またすぐ煙草に火をつけて
何本も何本も吸った。
他にすることがなくて
いつまでも、ずっと煙草だけ。
それだけ。

blog_2 - 253

おはよう、って一言だけ書いたメールを
きみに送った。

ただ、それだけ。

夢のような日。| Parade Alone

Jul 22 2012 3:12:32

やっぱり本当の夜はいいな。
昼でもここは夜と変わらないけど。
西向きと東向きに二つある窓、
どっちもカーテンで閉められてるんだよね。
真っ黒くて分厚い遮光カーテン。
おかげで、ここにいると時間感覚が狂っちゃう。
時計は必須だよ。
腕時計に置き時計が1、2、・・5つ。多いな。
あれ、このデジタル時計、今昼だ。
みんなバラバラの時間で行動するから
ここにある時計って全部同じ時間のものないんだよ。
誰のだろ?
今昼か。ふうん。

どうでもいいや。
とりあえず僕はグリニッジ標準時を採用してるから
本当の時間軸で生きてるよ。

ええと、それでさ、
今日はね、特別な日なんだよ。
記念日とかいう意味じゃなくて、
ある人がここへ来る。
超重要人物。
僕が会うの4度目くらい。
滅多にお目にかかれないよ。
超レア。

あ、、、あれ、
なにしようとしてたっけ?

もう、3時だ。
あ、今日はあの人が来る日だ。
嬉しいな。
何かくれるかな。
挨拶とか失敗しないようにしなきゃ。
最後にあったのって、多分、5年、まえ、くらい?
雪が降ってたような、うーん、思い出せない。

そうだ、コンピュータのカレンダー見れば。
昔のデータ残ってる、かな。
ああ、ないっぽいな。

そいえば、あのときって
大変だった、え。?
たいへん、?
何かたいへんなこと、
が、あって、
たいへんなこと。
なんだっけ?
すっごい・・・たいへん  

だった、ああ、でもー、
なんだったけ。
思い出せない。
あの人が来たら聞いてみよう。
あの人は忘れたりしないから絶対知ってるよ。

いつくるんだろ。
あれ。

誰が?
誰が来るんだっけ?
誰か来るの?

誰?
誰だっけ?

また、忘れちゃった。
僕の記憶回路は壊れてるよー。

いいや。

のど渇いたな。
冷蔵庫に何かあるかな?

冷蔵庫、冷蔵庫、と。
はい、開けます。

・・・え。

人のあたま、だ。   閉めよう。バタン。

・・・
ちょっと、びっくりしたぞっと。

誰の仕業?
やめてよ、ほんとに。
気持ち悪いからさ。
僕、グロい系苦手。ほんと、無理。
冷蔵庫、買い直す、絶対、決定。

虚ろはベッドの上に飛び乗って
ベッドサイドから寝転んで
キーボードに手を伸ばして素早くタッチする。
コンピュータの画面をブラウザに切り替えて
慣れた手つきで冷蔵庫を検索している。

これでいいや。
これにしよ。

ああ、でも冷蔵庫。
あのままじゃ処分してくれないよね。
僕がやるか、誰か他の、

あたまのなか、で、こ、えが、き、こえ、る
うつ、ろ、ひさ、ぶり、
あ、たまが、か、らd、だがきゅ、に

4時1分か。
バースデーと一緒。

さ、早く片付けて帰ろう。あの人が待ってる。

語りは冷蔵庫を開けて、
人のあたまが入っているのを確認する。

虚ろにも困ったな。
毎回、姉様は後片付けを僕に押しつける。
こういう汚れ仕事はジンロウあたりが丁度いいと思うけど。

人のあたまは結構重い。
語りは両手で耳の下を支えて冷蔵庫から取り出す。
それから用意していた分厚いビニールの蒼いゴミ袋を広げて
中に転がすように投げ入れた。
(ボーリングみたいだな。)
そして、あたま全体が隠れるように
ベッドから剥ぎ取ったシーツをぐちゃぐちゃにして中に押し込んだ。
冷蔵庫の指紋を全部拭き取ったあと、
ガソリンの入ったポリタンクをふたを外してから持ち上げた。
(全部語りが用意したもの。)
冷蔵庫の上から
ガソリンをぶちまけていく。
部屋中、ガソリンの匂いが充満してる。
語りはライターを取り出した。
火を付けたまま
ガソリンまみれの冷蔵庫の足下へ投げ捨てた。

一瞬、ライターの火が大きくなって、
そのあとすぐに小さな爆発音がして火は天井に燃え移っていく。
すぐに部屋全体が黒い煙でいっぱいになった。
語りはドアから平然と部屋を出る。
入ってきたときと同じように静かに開けて、静かにドアを閉めた。
それから、ゆっくり歩きながら最短距離でエントランスを出て
何も無かったように、いつもと変わらない自然な動きで
大通りまでゆっくり歩いて、
いつもと同じように小さく手を挙げてタクシーを止めた。
開いたドアの中へ入る。
「三軒茶屋へ行ってください。女子大の近くになったら教えてください。左折したい場所があるので。」と行き先を丁寧に伝えると
目を閉じて眠ったふりをする。

余計な話しをするのが嫌いなんだ。

語りはよく、ファッションデザイナーと間違われた。
語り自身ファッションが大好きで特にハイファッションを好んで着た。
最新のモードファッションスタイルの語りは
何処にいても目立った。
運転手はミラー越しに語りをちらちらと何度も見ていた。
眠っていると思っているから遠慮がない。
明らかに見ているとわかる挙動だった。
けれど、運転手がみていたのは語りではなく
語りの着ている服だった。
どうやって着る服なのか、形が複雑すぎて
運転手は何度見てもわからなかった。

(語りは殺し屋なのにね。アーティストだからさ。おしゃれなんだ。)

タクシーの運転手はそのあと、
海外のあるブランドの名前を思いだそうとして
走りながらずっと考えていた。
思い出せそうなのに、どうしても思い出せなかった。
そして、タクシーは池尻を通り過ぎた。
(運転手が思い出そうとしていたブランドは「Dior」)
運転手が語りを起こそうと声をかけようとしたとき、
語りは目を開けて起きたふりをした。
そして、運転手に、女子大を過ぎた次の信号機を左に入って
水道局を越えたら道なりに少し走るとファミリーマートがあるので
そこで止めてください、と丁寧に告げた。
コンビニの前でタクシーが止まると料金を全部一万円札で支払い
おつりはいいです、と少しだけ微笑んで見せた。
運転手は金額が多いからと一度断ったが、
語りが大丈夫です、全部会社のお金ですから、と言い、
もう一度小さく微笑むと、
運転手は、有難うございます、と言ってレシートだけを語りに渡した。
語りは上着を手に抱いてドアが完全に開くのを待ってから、
ゆっくりとタクシーを降りて、開いたドアの方へ振り返り、
小さな声で、有難うございました、と言ったが、
その声は小さすぎて運転手の耳には届かなかった。
語りはコンビニに入るふりをしながらゆっくり歩いて
手に持っていたレシートを細かく契って手のひらの上において、
バースデーケーキのキャンドルの炎を子供が消すみたいに
ふうーと息を吐いて捨てた。
(語りは自分の誕生日を知らない。だから祝って貰ったことはない。)
そのあと語りは道路に背を向けて歩道を歩きながら
それとなく視線だけは遠くなっていくタクシーを追いかけていた。
タクシーが完全に視界から消えると
語りはコンビニから離れて、
タクシーが消えていった方向の逆へ向きを変えて歩いた。
そして、駅に着くと、また小さく手を挙げてタクシーを止めた。
語りは少しかがみながら静かにシートに坐り、
視線を少しだけ運転手に向けて、
丁寧にゆっくり小さな声で行き先を告げた。

(成城学園までお願いします。砧公園を越えると大きな病院があるのでそこで止めてください。)

タクシーから降りるともう外は明るくて
病院前のバス停にこれから通勤しようとする人たちが大勢並んでいた。
語りはアーケードのある商店街を歩いた。
そして、マクドナルドの前に来ると隣のTSUTAYAとの間にある
狭い裏道へ入っていった。
狭い道を出ると割と広い道路に出た。
道路を挟んで左右それぞれ独特のデザインで
凝った作りのデザイナーズハウスが立ち並んでいる。
(いわゆる高級住宅街。)
語りはそれには目もくれず右折すると、
それまでと違って早足で走るように歩き始めた。
デザイナーズハウスに両側を挟まれた、
それとはまた少し雰囲気の違うマンションの前で語りが止まった。
語りはマンションの上を見上げたまま、
携帯のボタンを押した。
少しだけ長いコールのあと、短い会話。
(10秒くらいだったと思う。)
語りはそのマンションの入り口に置いてある
コカコーラの自販機で2本小さなペットボトルを買って
マンションのエントランスのコールボタンを押した。
少しの沈黙のあと、スピーカーマイクから女の声がして、
ドアのロックがはずれると、語りはドアを開けて
静かに戻し、薄暗い階段を静かに昇る。
スパイラルを三回繰り返した。
部屋と部屋を分けるコンクリートの壁は解放で
そこから薄青い空が見えるが、語りは見ていない。
語りは目的の部屋の前に着くと
ずっと手に持ってた携帯をマナーモードにして
バッグの中にしまった。

インターフォンがあったけど、語りはドアを静かにノックする。
ドアのロックが外れる音と同時にドアが開いた。
語りはその瞬間今までずっとしていたメガネをはずし、
そこで意識が消える。

(バイバイ)

ドアの前で椿はメガネをバッグにしまった。
少し開いたドアの中から小さい声で名前を呼ばれ
椿は開いたドアのすきまをすり抜けて中に入ると
折れそうなほど細くて華奢な身体を柔らかく抱き締めた。

(お帰りなさい)

(ただいま)

blog_2 - 252

雨上がりのバスルーム。| Transparent Blood

次の日、起きたらもう夜で
(21:16: 28)
とりあえず煙草に火をつけて状況を思い出そうと考えていた。
そしたら、貧血のときみたいに
目の前が真っ白になって、一瞬意識が消えて・・・
そのとき見えた光景ががあの夢のなかでみた真っ白い空間に似てて、

(でも、、どうでもいいこと。)

長く寝ていたのに煙草を吸ったからだ。
気分は悪くないし、とりあえず二本目の煙草を吸った。
今度はもう大丈夫。
一本目の煙草で体はもう耐性が出来る。
便利だ。
僕はあの夢を思い出して、
最近、いつもそうだ。
ずっとあの夢が気になって、
思い出して、悲しくなって、そして、

どうして、悲しみには耐性がないんだろうね。
ねぇ、ミクニ。
ミクニは涙で海を作るけど
どうして?
ねぇえ、どうしてそんなに涙が出るの?
すっごく悲しいことがあるの?
何か辛いの?

ミクニは黙ってる。
でも、僕は根気よくミクニの目を見続ける。
アラームがなった。
クスリを飲む時間を知らせるアラーム。
僕はベッドに戻って
枕の隣の鍵付きの大きなバッグを乱暴に持ち上げて
中にあるクスリを小さい子供がするみたいに全部ベッドのうえにあけた。
(スタイリストさんが使うような持ち手があって
表面が真っ黒な革で出来たバッグでさ、割と大きいよ。
どれくらい? 知りたいの? 
ええと、どれくらいかな・・・)

あれ、、、僕いま、何しようとしてたんだっけ。
空白だ。

あ、クスリ!
クスリ飲まなきゃ。
僕は振り向いてコンピュータのディスプレイのカレンダーを
デイリー表示に変えて今の時間を入れて
クスリのリストをチェック。

あ、そっか、もう寝る時間か。
まだ寝る気にはなれないな。
リストを変更しよう。
今日は沢山眠ったから、今眠らなくても大丈夫。
それに眠れない。

何故ならば、20時間もねむっていたおかげで
今日やるはずだった予定が全てロストしている。
これは、マズい。非常にマズい。
姉様に知られる前に全部片付けないといけない。

リストをパターンAに変更。
急がないと。

真ん中に大きいサファイアが埋め込んであるファンデーションのふたを開けて
中のカプセルをひとつ取り出してジュースで流し込んだ。
それから、ベッドに広げたクスリを全部バッグに押し込めて
無理矢理閉めて、鍵をしておしまい。

僕はまた煙草を吸って一息ついたあと、
ミクニと話していた方を振り向いたけど
ミクニはもう居なかった。

また、逃げられた。

仕方ないから、シャワーを浴びるために
バスルームのスイッチを押してお湯がわくまで
ずっとミクニの涙の仕組みについて考えていた。

あれ、僕いま、何しようと、
あたまの中が空っぽで、何もわからなくて、
パニックになりそうになった瞬間、
バスルームのアラームが鳴る。

そして、僕はシャワーを浴びた。

blog_2 - 251

永遠に燃えよ、臨月。| Towa ni moeyo, ringetsu.

夢をみたんだ

とても悲しい夢で
自分がいて
それを見てる自分もいて
僕は永遠か虚ろなのか
意識が定まらない感覚のなかで

ただ悲しくて
とても悲しくて
まわりには何もなくて
上も下もわかないような
真っ白な空間みたいな
この世界とは違うのに
なぜか僕はここが好きみたいで
泣きながら
記憶の中を移動して
それがパラパラと捲るアルバムを見てるような移動の仕方で
沢山の思い出が本を読むみたいに
記憶を上書きしていく

新宿駅の東口を出て
伊勢丹の前できみが何か言った 声は聞こえない
都庁に行くんだ
途中でクリスマスのイルミネーションがティファニーのロゴに反射して
それがなんとなく悲しいなって思う僕を悲しむ僕も、、、
ひとごみ、凄いの
その中を歩きながらなんとなく
東京タワーから海を見てた
お台場とか
ヴィーナスフォートって 言葉が一瞬見えた
ヴィーナスフォートは映像がなくて
都庁に着いて
夜の都庁
中にきみがいたよ

そして、また意識は真っ白い空間に戻って
右手に冷たくて重いもの
すぐにピストルだってわかる
ワルサーPPK オートマチック 持ち上げて

悲しいな
悲しみ全部なくなれば
幸せと思う

トリガーに指をかけて
セーフティロックをはずす音がして
あたまの右耳の上に銃口をあてた

悲しみなんてこれで消えるんだよ
バーン

悲しみのない世界は
なにもない世界だった
大切にしてたもの全部 銀色のブレスレットも

ない

きみも
いない

世界から悲しみを取ったら
何もなくなるよ、
いつか、あの人が言ったとおりに
悲しみのない世界は空っぽだ

僕は狂っているの?
心配ないよ

たったひとりで狂ったって
誰も困らない
それに誰もいないでしょ、ここ

だから もっと狂っていいよ
早くして もっと狂って 狂ったらいい
そして、早く死んだらいいよ

さっき死んだばかりなのにもう死ぬはなしをして
バカな自分

死ねばいい
死ねばいいよ
死んだらいいよ
死んでいいんだよ
誰もいないから
誰も悲しまないから
誰もいないんだから

もう死んでるのに
どうやって?
バカみたいだよ

みんな、待ってるよ
みんな、待ってる

早くおいでって
きみのこと 殺したくて
みんな みんな 待ってるの

いま 行く
いま 行く だから
もっと狂うまで

待ってて
もう少しだけ
待ってて

愛してるんだ
もういないきみだけど

何度も伝えたけど
もう一度だけ 伝えたい

出逢ったときから ずっと

きみのこと

愛してる 愛してる 愛してる 愛してる
きみのこと

きみの名前 忘れた けど
ずっと ずっと 

愛してる
愛してるから

ここは何処?

誰もいないよ

雨が降り始めた

硝煙の匂いがアスファルトが焦げる匂いに
少しだけ 似てた

雨が ずっと 

きっと やまない
そんな   気がした

でも誰もいないから
濡れるのは僕だけ

そう思った
最後に

blog_2 - 250

悲しい世界で薔薇が咲く。(永遠の帰還)

ここは留置場の面会室のような作りの部屋で
(ただデタラメに明るい。)
頑丈そうな分厚いガラスで真ん中を遮って部屋を二つに分けてある。
だからここでは向こうの部屋の人間との会話用に
マイクとスピーカーが設置してあって、
少し大きめな一人用のソファがこっちとあっちにある。
こっちには俺、あっちには何度かここで俺と話したらしいが
名前を聞いても思い出せない。
何色なのかわからないくすんだスーツを着た男が一人でいる。
俺の後ろでは精神科医の渡部が助手に手順を説明しているところだ。
(渡部は戦時中に精神医学の分野でかなりの功績を残した。人体実験を積極的に行い脳神経学などに多大な功績を残したが、その方法が非人道的だったという理由で現在の医学界からは排斥されている。予断だが、特に俺は渡部のこういう所が好きなんだが、渡部は80を越えて未だ童貞らしい。女が嫌いなんだ。渡部は男色家だ。)
渡部の隣で記録を録っているのは、、、、、
、どうでもいい。

話を続けろ。それと・・・
静かに話せ。そっちの声は十分聞こえている。
大きな声を出す必要はない。
それと、なんなんだ。その、、、
(その? その、?そのなんだ? 何が、何かおかしい。嫌な予感がする。淫を呼ばないと。)

4:23 AM
デジタル時計が点滅している。

何故か遠慮気味にこの男は
私の声が聞こえますでしょうか。と
少し大きな声で言った。
多分、さっきこの男が話していたことを
上の空で聞いていたオレが
自分のマイクの調子が悪いのだと勘違いしているようだ。
俺は声は出さずに軽く頷いて見せた。額に汗をふきながら
醜く太った向こうの相手はもう初夏だというのに
焦げ茶色のツイードのスーツを着ていた。
楽にしていい、と伝えたのにジャケットさえ脱がない。

最低だ。気持ちが悪い。

悲しい世界です。

あ?
向こうの男が唐突に言った。
俺は一旦マイクをミュートにしてから
渡部、今こいつなんて言ったんだ?、と聞いた。

悲しい世界です。
俺にもそう聞こえた。
俺は渡部の助手にチャプター201をもう一度再生、と言った。

悲しい世界です。

同じだ。聞こえたとおりだ。と俺は渡部に言う。
助手の千年がもう一度再生しますかと俺に聞いた。
俺は黙って、ソファをくるりと戻し
向こうのあの男と向かい合った。

(ミラー越しに冷たい宇宙できみを誰と間違うっていうのさ。
冷凍庫の中で二人がくるくる廻っている。)

向こうの男が急に立ち上がり、ジャケットに手を入れ
ガラス越しの俺にピストルを向けて、
Only You. と、言う。

ピストルのセーフティに指をかけている。
俺は向こうのあいつに視線を向けて無表情のまま、
渡部、これはなに?と聞いた。
返事がない。
俺はもう一度、渡部!、と後ろを振り返りながら怒鳴る。
渡部は凍り付いた顔が溶け出すようなアニメーションのように
モーフィングしながらあいつになって言う。

Only You. Jut Only You.

なに。
俺は天井を見上げ
小さく溜め息をついてから
向こうを見た。

そこにいたのは真っ黒いドレスを着た若い女。
初めて見る顔じゃない。
どこかで見た。
なにかが引っかかっている。
思い出せ。
誰だ。
俺はあの女を知っている。
目を閉じて
瞼の血管を意識する。
どこかへつながってる。
どこに。
どこか。
誰だ。
誰だ。
お前は誰だ?

(貧血みたいに目の前が真っ白になる、倒れる、ダメだ。時間が戻る。消える。)

俺は煙草に火を付けて
ガラス越しに暑苦しいスーツを着た中年の男を見ながら、
その姿を覆うように煙を吐く。
(悲しい世界だ。)

さっき、誰かが何か言った。
5分も前じゃない。
ほんの少し前。

誰かが、(悲しい世界だ。)そう。
悲しい世界だ。と言った。

俺は渡部の方を向いて
チャプター201をもう一度、と言う。

渡部の助手はおかしな顔をして
チャプター201ってなんですか?と言いながら、
渡部に何か小さい声で何か話している。

4:25 AM
開始します。と助手が言った。

何か変だ。
さっき、俺は、
さっき?
、、、
さっきって、いつだ。
さっき、俺は天井のに映る自分を見て、それから、
(冷たい川が流れている。)

俺は、、意識が混濁し始める。
眩しい。
光が鏡に反射して、それから、また、眠りに落ちる。

天井は鏡張りになっていて一瞬、上下の感覚がわからなくなるほど
精巧に出来ている。

ああ、ごめん、でも、
この辺の話はどうでもいいんだ。
やめようよ。

要するにさ、ここは、、、、
ここは?

ここ、
ここどこ?

ここを俺は知っている。
以前来た。

来た?

(いや、君はここで、生まれたんだよ。)

ゆめ。
君が唄う夢を見ている。

きみは、

やあ、永遠。
また逢えたね。

blog_2 - 249

永遠の終わり。

3:30 AM
永遠(とわ)は夢を見ていた。
生きるという夢。
目が覚めたら死んでしまうから
永遠はずっと夢を見る。
夢の中で永遠は君と出逢ったり、
君と話したり、恋をする。
具体的なことは何も覚えていないけど
君の声と温度、
またね、と繰り返される言葉の群れと戯れていた。
永遠の名前の通り、
それは永遠に繰り返されるものだと
永遠はずっと思う。
それがやっと手にした楽園だと信じる。
永遠は一人きりの部屋で
二人を演じる。
僕が君で、君が僕だ。
愛してる。
ずっと、愛してる。
永遠は夢の中で
一瞬の永遠を手に入れた。
それはとても淋しいものだったけれど
永遠にとって一番大切な思い出で
君の名前が刻まれた銀色のブレスレットと共に
常に永遠の腕に刻まれた。
いつか永遠に朝が来て永遠の夢が覚めるときが来ても
腕に刻まれたブレスレットがあるから
永遠は笑って死んでいける。
夢は夢で
永遠にとっては生きることだったけれど
本当は永遠も知っている。
生きるが夢なら、
目覚めは死だということ。

君に届くかな。
僕の声。
愛してる。
ずっと、愛してる。
永遠に。

透明なカプセルを三つ飲み込んで
最後の煙草に火を付けたら
紫の煙が朝焼けに涙を描いた。

永遠はソファにもたれて
眠った。
永遠に眠った。

朝が来て、
世界は滅んだ。
永遠の世界は滅んだ。

3:51 AM

blog_2 - 248

願い。

冷たい指で、数えた。
未来。
悲しみ、歓び、
きみの温度。

すべて、夢。

朝露のきしみ、虚ろな影
幻。

本当に凍えていたのは
何?

(本当の願いは?)

ここから始まって
ここで終わって
ただそれだけ。

死が微笑んでくれる。
笑ってくれる。
おいでって、連れて行ってくれる。

こんな僕でなければ
もっと上手な僕なら良かった。

僕とさえ呼べない
不確かな空虚。
それが正体だと気付いたとき
引き裂いて
切り裂いて
欠片さえ残さない。
そんな終わりを望んだ。

きみがくれたガーネットを
右手にさげて
きみとお揃いの時間を左手で数えて
ひとりで
どこか
誰も知らない場所
誰にも気付かれないところで
紫の煙草の煙のように
ふっと消えて、、、

愛している。
ずっと。

そして、僕は
ナイフを胸に突き立てた。
きっとその痛みも
苦しみも
もう消えたあとで

僕は目を閉じるまもなく
ふっと消える。

最後に目に映るのは
きみと一緒に見た、あの夜の光。
ありがとう。

(きみが居るその場所へ帰りたい。)

blog_2 - 247

さあ、揺れて、揺れて揺れて。tode a re

煙草
マニキュア
砂糖のような愛の言葉

幾つかの未来
本当は届くはずだった願い
そして
ずっと一緒
僕は丘の上から
全部ばらまくよ
太陽も月も関係ない
失ったものへの哀れさへゆれ

blog_2 - 246