reilla

ねだる。
我が儘を言う。
じっとしていられない。
誰の言うことも聞かない。

およそ今とは比べられないほど
私は幼少の頃、同じ年頃の子より幼稚だったのだ。
それがいつこのように変わったのか、
きっかけはなんだったのか、
私は知らない。

私は何年ものあいだ、眠り続け、目が覚めたら大人になっていた。
覚えているのは人形。
自分と同じくらい背丈のあるビスクドール。
黄色い髪をして、黒いドレスを着ていた。
あの人形はどこへ行ったのだろう。
私が眠っている間にあの子も大人になっただろうか?
人形は成長しない。

だから私は描かせた。
あの子が私と同じくらいに育っていたら
なっているであろう肖像画を。

それが今の私の一番大切なもの。
記憶の証。
自分の証。

reilla

blog_2 - 224

さよなら。

月の欠けかたが気に入らない夜に
あなたの思惑にのって
この国の夜を変えてみたけれど(本当に)
あなたはこんなことを願っているのかしら。
私はあなたの考えが見えない。
たとえ月の反対側にもうひとつの楽園があるとしても
ここからでは届かない。
私はただ、あなたの目によく似た赤い月を
見たかっただけ。
もう一度あなたの目を見たかっただけ。
私が闇になって
唯一理解してくれたのはあなた。
だから、そのことにとても感謝している。
けれど、それ以上にあなたのことを愛しているのよ。
あなたになら何もかもあげる。
この世界の果ても。
この世の全てをあげる。
そして、私が死んだらあなたは
この世界を好き勝手にすればいいわ。
パスワードは0401。
もう一度振り返ったあなたの瞳は
大きく赤く私の心に浸透して
私はあなたと月の区別が出来なくなるのよ。
私があなたであなたが私で
この世界は全て私のもの。
この世界は全てあなたのもの。

blog_2 - 223

シャッター・ハート。

今日はずっと眠っていたから
起きたとき戸惑った。
暗い部屋は元々だし、時計も見えなかったから
いつなのかわからなかった。
けど、博士が言うには
僕は今朝起きて博士と一緒に朝ご飯を食べたらしい。
記憶はないけど博士が言うから本当だ。
そういえば、昨日の夜眠れなくてクスリを沢山飲んだ気がする。
朝の記憶はないし、何を食べたのかも知らないけど
今は現状のことがある程度わかっている。
今は夕方で僕は起きたばかり。
今日は朝ご飯を食べてから部屋に戻って
ずっと眠っていたことになる。
僕はクスリのせいか少し身体が怠くて動きにくかったから
軽くシャワーを浴びてベッドに横になった。
少し休んでから
急に女王闇の絵を描きたくなって描いた。
あんまり上手く描けなかったけど
懐かしいあの人の顔が描けた。
女王闇、今何してるんだろう?
僕は何もしていないよ。
きみは今どこにいるの?
ねえ、どこにいるの?

blog_2 - 222

Report 2007.Apr 7 21:07

blog_2 - 221

夜になると聞こえてくる風の音や
空気の振動のようなもの、
全てが息づいていることの現象の仕草や
不確かな明日の光さえ
楽しげな気持ちにさせてくれることを
忘れていたのは
誰かになりきれない
自分がいることの気持ち悪さや
恐れやその他の時間的制限の仕業に他ならなかった。
こうしてそれを
今思い出したように
書き始めた自分がいることさえも
現象の仕草を不安がらせた。
笑うことはそれほど難しいことではなかったけれど
かんたんに済ませられるほど
優しいことでもなかった。
それは眠りの間に夢みるというほどに浅く
深い所では記憶が無いというように
高性能なコンピューターでも容量不足で計算できなかったし、
人間というデバイスを用いてさえも
笑うという事実を鮮明にすることが出来なかったから。
けれど、それが日常において自分の全てに影響するかというと
そういうわけでもなかった。
クスリの効果なしでもそれは無視出来る程度の
ブレでしかなかった。

ー後述日誌ー
彼の心を安定させる上で
確実に影響を与える要素だけを
私たちはモニターした。
しかし、そのブレのような感情くらいしか
彼の感情の起伏はモニターできず
そのことに我々は注視せざるをえなかった。
誰かが見ている。と彼はいつも言った。
誰が?と聞いても彼には誰なのかさえ誰という対象が
なんなのかさえ理解出来ていないようだった。
何度目かの覚醒で彼は人格を交替した。
唯一そのときだけ感情の変化があったが
自分の名前を名乗るだけの
単調な人格だった。
語りとその人格は名乗った。
次の人格交替まで彼は名乗り続けた。
僕は語り。
僕は語り。
僕は語り。
僕は語り。
僕は、か、た、り。
我々は誰をモニターしているのだろうか?
そもそも我々とは誰なのか?

プツン。

狂った21時21分。

blog_2 - 219

点滅するLEDが何かの暗号のように繰り返し発光している。
けれど時間の合っていない10時33分のデジタル時計は何も語ってくれない。
意志のない指先を宙でくるくる回す癖が染みついて離れない僕の虚空は
今日も無だ。
だから、最近の僕は心を言葉で言うのではなく、
蝶の絵で表現する。
僕はどこまでもいきたい。
この世の果てまで
どこまでも、ひとりでも
終わりがあるならそこへ行って見てみたい。
僕自身の終わりもきっとそこにあるはずだから。
情緒不安定の森はいつになく揺れていて、そこに立ち尽くしたままの僕は
揺れに酔ってしまった。
吐く物がない。
だから、意味もなく文字を打っている。(適当に行数をかせげればいい。)
いっそ死んでしまいたいと思う。
だけど、死ぬことも許されない僕は汚く老いて醜く死んでいくのだろう。
心だけはずっと同じ、今日と同じ、
不安定な透明を纏った煙草の煙のように
意志のない純潔のままで。

AM4:00の蝶は青い羽根を持つ。

blog_2 - 218

冷たいスープを退屈そうにかき回すように
言葉は無言で輪廻し続ける。
あの人にあげた芍薬がきみになり、あなたになったように
言葉は輪廻し続ける。
今日も深夜3時を廻る頃、言葉の再構成が行われている。
毎日の儀式のように淡々と進むその作業が
彼の意識を維持し続けるために必要だったことはレポートに記されていない。
冷たい目で見る冷たい景色を
別室でモニターする技師は腰回りにずっしりと肉がついた豚だ。
毎夜大量のドーナツを甘い珈琲で流し込みながら
画面をモニターする仕事の方がついでのように繰り返した報いだ。
モニターされる彼と豚のように作業する彼のどちらが
先に死ぬのか多少興味があったけど
僕は彼の意識と交替する時間がせまっていたので
早足で彼の部屋の壁をすり抜ける。
彼の吐く言葉に少しずつテンポを合わせながら
同じ言葉を呟いていくと僕はすんなり意識の壁をすり抜けて彼になる。
そして、僕は自分の名前をゆっくりと1文字ずつ囁いた。

か、た、り。

朧。

blog_2 - 217

目覚めはゆるやかに、
遠くから波の音が聴こえてくるようなそんな深夜2時だった。
確か眠りについたのは12時くらいだったと思うから
二時間しか眠っていない。
僕は寒くてとりあえずストーブをつけた。
かすかに灯油の匂いがして、
鼻の奥で何かが焦げるような匂いに変わると
自分の中で誰かに後ろから強く抱き締められ
引きずられるような感覚で自分が自分ではなくなってしまう。
そんな風にどうして思ったんだろう?
仮に自分が自分でなくなってしまうことって
どういうことなんだろう?
自分てなんだろう?
自分を構成する要素は意識や身体感覚、
鏡で見る自分の姿なんかだと思うけれど、
どれか一つでも変化してしまえば自分ではなくなるかと言うとそうでもない。
他人から見た場合、変化を感じることはあっても
戸籍上本人が別人に変わることはないし
多少見た目が変わっても本人自身を否定する理由は少ない。
前もって言っておくけどこれは一般的な変化の許容量の上での話しだ。
僕が本当に興味があるのは自分を自分と認識している意識自体の変化の場合
どういうことになるかということだ。
解離性障害という病気がある。
その名前のとおりに個人の人格がいくつかに解離してしまっている病のことだ。
かんたんに言うと多重人格。
僕は昨日の記憶がない。
初めて話す電話の相手に初めましてと言ったら二回目だよ、と言われた。
そんなエピソードは思い出せないだけで
無数にある。
僕はどうしてここでこんなことを書いているんだろう。
冷たい目が来るから早く逃げなさい。
出来るだけ速く、出来るだけ遠くへ。。。。
意識が奪われる。
続きはまた、、こ、んど。

迷宮入りのドロシー。

博士、今日は特別な話しを聞かせてあげるよ。

僕の誕生日は今日。午後三時頃に生まれたらしい。
僕は4月1日が誕生日であることが昔から好きだった。
それは、4月1日がエイプリルフールだから。
嘘をついてもいい日。
4月1日に生まれた僕の存在自体を嘘にしてくれそうな気がする。
僕は僕が生まれていなければよかったと思ってる。
そしてそれは実際そうだろうと思う。
だから、誕生日がエイプリルフールなことがなんとなく嬉しいんだ。
生まれたことが嘘のような気がして。
けど、その思いも当日には無様に引き裂かれる。
4月1日がエイプリルフールだろうとしても
僕が生まれたことは消えない。
またひとつ年をとる。
悔しいと思うすぐその瞬間に思い知らされる。
まだ生きていると。
4月に入っても風は冷たい。
それはそうだ、昨日までまだ3月だったんだから。
僕は死にたい。
出来ることならすぐにでも死にたい。
何もしなくてもいつか死ぬことは知ってる。
そんなことじゃない。
違う。
死にたいじゃない。
存在を消したいんだ。
この世界に居なかったことにしたい。
はあ。

初めから存在しなかったと、そういうことにはできないの、博士。
記憶置換だよ。
出来ないの。
そう、役立たず。
知ってる?
 僕 ここに来る前はアートディレクターしてたんだ。
本にも載ったんだよ。
有名とかじゃないけど作品がね、ADC年鑑ていう本に載ったんだ。
他にもカレンダーだけ集めた作品集とかにね、載ったんだ。
嬉しかったよ。
もっと、上に行けると思ったんだ。
でもね、博士、行けなかったよ。
限界だったみたい。
エージェンシーにさあ、通院してることがばれて
担当者に呼ばれてさ。
主治医と話したって、すぐに休養させないと危険だって言われたって。
ねえ、医者ってさあ、患者のそういうのぺらぺらしゃべっていいわけ?
結局それで3日後にもう会社来なくていいって、休みなさいって言われたんだよ。
そのまま有給消化して、エージェンシーには一度私物を取りに行っただけ。
直属の部下にだけ理由を説明して、辞めること伝えて、それきり。
送別会もなかったよ。
自分の大切なもの全部奪われた気がしたよ。
辞めてすぐの頃は、毎日買い物して時間つぶししてたよ。
将来を考えることが怖くてさ。
百貨店の店員さんてさ、すごく親切だしマメじゃない。
だからさ、なんか癒されるんだよね。
特別室で試着出来るんだよ。
どのフロアからも好きな服持ってきてくれるの。
飲み物もただで飲めるし。
煙草だけは吸えなかったけど。
あれは楽しかったな。
西武行って、VIABUS行って、PARCO行って、
そのままタクシーで伊勢丹に行ったりして。
ね、楽しそうでしょ。
ほんと、楽しいんだよ。
でもね、仕事にはすぐ復帰するつもりだったんだ。
最初の頃はね。
でも、実際にはうまくいかなかった。
症状がどんんどん悪化しててさ。
症状って言っても昨日の記憶がなかったりとかそんなもん。
生活には問題ないよ。
大事なことはメモしてたしね。
でも、エージェンシーの担当者にぺらぺら喋ったあの医者が
症状が良くないって、回復してないって、あんたのところに紹介状を書いてさ。
それで、こうして博士の所に来たってわけ。
でもはっきり言って、博士でも治せないよね、僕のこと。
博士言ったよね、僕はゆるやかに症状が悪化してるって。
その理由は僕自身にあるって。
僕さあ、知ってるよその理由、というか原因ね。
僕はね、博士、元に戻りたい。
それだけなんだよ。
でも、戻れない。
わかってるんだよ。
だから、もう消えたいんだよ。
自分に価値があると思えたあの時から
僕の中の時間は止まってるんだよ。
煙草の煙って紫だよね。
知ってる博士?
光に照らしてみるとうっすら紫色してるんだよ。
本当だよ。
煙草吸っていい?
ありがと、ここって普段禁煙だよね。
煙草って苦い。
でも、好きだな。珈琲も苦い方が好きだし。
関係ないね。
要するにさ、迷子になった子供が家に帰れなくなってるみたいなもんだよ。
それにその家なんてもうとっくになくなってるし。
迷宮入りのドロシー状態だよ。
どうすればいい、博士?
俺はどうすればいいのかな?

あんた俺に何度殺された?

くすり。
今日の分ちょうだい。
帰る。
またね、博士。

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クロアゲハ。

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遠い近い、それのどれにも当てはまらない国があるの。
私の手に触れるとそれの方向が曖昧だけどわかるの。
あなた、私の手に触れてみて。
何も感じない。
それならそれで良しとしましょう。
私が行きたい国はそこなのですけど、今は行く方法がありません。
どこか私の国の代わりになりそうな退屈しない場所へ
私を連れて行ってくださいな。
(私の国?)
世界の果てに行ったことある?
ありませんわ。
じゃあ、行こうよ。
そこには何がありますの?
世界の果てだよ。
何もかもが果てた場所だよ。
結果の収束。
全ての結末がしまってあるところ。
面白そうですわ。
行きましょう。
全ての結末が見られるのね。
私、私の結末が一番見てみたいですわ。
どちらの方角ですの?
あっち。僕は指を指した。
彼女が指先を向いたとき、
僕は彼女の首に後ろから手を回して、
メスで切り裂いた。
血が溢れかえる。
わたし、、
きみの結末はこうだよ。
バイバイ。