かたちのないわたし、さよならの接吻、

冷酷な告白よ、私の願った未来、恋人への接吻は、
たった9つの文字で無に帰った。
今や闇を照らす蝋燭さえも消えかけ、
最後の揺らめきを楽しんでいる。
私はそれをただ見つめていただけ、
何もせず何もできず、あなただけを見つめて、
何も知らないふりをすることで、
私は私を慰めた。
そして私はあなたを失って、
冷たい気持ちの化け物になる。
私は壊す。
いつか夢見た世界を。

28 September 2016 14:00:26
Shiki Watanuki
—————————————-

冬のすべてが私の中に立ち戻る。怒り、
憎しみ、おののき、怖れ、逃げられぬつらい労働、
そして、極北の地獄に閉ざされた太陽に似て、
私の心も 赤く凍ったかたまりにすぎなくなろう。

Les Fleurs du mal LVI CHANT D’A UTOMNE / Charles Baudelaire

私の存在しない世界であなたは笑ったり遊んだりできる。
私は嬉しいよ。
あなたが楽しそうに笑う幼い表情や手首に傷を作って泣いたりしていないことが想像出来る。
私の最期はとてもゆっくりと始まった。
もう王冠のない私は静かな終わり方を選びました。
あなたが私を知らない世界で
いつまでだってあなたを待ち続けてもよかったけど、
私には長い物語はつくれないと知った。
あなたのことを
ひたすらに思い続けることは簡単にできた。
でも、それを物語にする力がなかった。
想像力と悲しみだけは無限に持っていた、ただ、
それを空想の出来事にしてしまうことがあまりにも辛くて言葉にすることができなかった。
私はこの世界に本当には存在しない。
私は風にさえなれない。
雨でもいい、雪でもいい、
なんでもいいから本当の形のあるものになりたかった。
私には死ぬことさえできない。
一度も生きたことのないこの身では、
存在自体がないのだから。
私はいない。
最初から誰もいない。
私は夢。
あなたが生涯にたった一度だけみた夢。
朝にはもう忘れてるそんな夢。
それを知らないあなたで本当によかった。
かなしいことばかりだったけど
わたしがゆめでよかった
ゆめならほんとうにはかなしまなくてすむから
めをあけて
ゆめはもうおわったよ

24 February 2016
END

1 (18)

かたちのないわたし、さよならの接吻、

冷酷な告白よ、私の願った未来、恋人への接吻は、
たった9つの文字で無に帰った。
今や闇を照らす蝋燭さえも消えかけ、
最後の揺らめきを楽しんでいる。
私はそれをただ見つめていただけ、
何もせず何もできず、あなただけを見つめて、
何も知らないふりをすることで、
私は私を慰めた。
そして私はあなたを失って、
冷たい気持ちの化け物になる。
私は壊す。
いつか夢見た世界を。

28 September 2016 14:00:26
Shiki Watanuki

—————————————-

冬のすべてが私の中に立ち戻る。怒り、
憎しみ、おののき、怖れ、逃げられぬつらい労働、
そして、極北の地獄に閉ざされた太陽に似て、
私の心も 赤く凍ったかたまりにすぎなくなろう。

Les Fleurs du mal LVI CHANT D’A UTOMNE / Charles Baudelaire

私の存在しない世界であなたは笑ったり遊んだりできる。
私は嬉しいよ。
あなたが楽しそうに笑う幼い表情や手首に傷を作って泣いたりしていないことが想像出来る。
私の最期はとてもゆっくりと始まった。
もう王冠のない私は静かな終わり方を選びました。
あなたが私を知らない世界で
いつまでだってあなたを待ち続けてもよかったけど、
私には長い物語はつくれないと知った。
あなたのことを
ひたすらに思い続けることは簡単にできた。
でも、それを物語にする力がなかった。
想像力と悲しみだけは無限に持っていた、ただ、
それを空想の出来事にしてしまうことがあまりにも辛くて言葉にすることができなかった。
私はこの世界に本当には存在しない。
私は風にさえなれない。
雨でもいい、雪でもいい、
なんでもいいから本当の形のあるものになりたかった。
私には死ぬことさえできない。
一度も生きたことのないこの身では、
存在自体がないのだから。
私はいない。
最初から誰もいない。
私は夢。
あなたが生涯にたった一度だけみた夢。
朝にはもう忘れてるそんな夢。
それを知らないあなたで本当によかった。

かなしいことばかりだったけど
わたしがゆめでよかった
ゆめならほんとうにはかなしまなくてすむから
めをあけて
ゆめはもうおわったよ

24 February 2016

END

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (19)

よく切れるハサミのはなし。

ーおまえの手がぬけたこの胸を滑っても無駄なこと、
さぐってみてもそこは 恋人よ。もう略奪にあった場所
女の爪と 凶暴な歯が 荒らし尽した場所なんだ。
私の心臓を探すのはおやめなさい、もう獣らが食べてしまった。

Les Fleurs du mal LV CAUSERIE / Charles Baudelaire

暗い闇の荊に獰猛に絡みついた巨大な蛇のように
うねりのけぞりながら闇の底まで(どこまでも深き闇の底)それは繋がっていた。
しかし、底と呼ばれる場所はなく、此処(此処とは何処か?)から見える闇の一番深い黒い点の先からのことは何もわからない。
それは螺旋を巻いている形が似ているだけの単純な理由で螺旋階段と僕が呼んだ。階段はついていない。

(この辺で死んでみたくなる気持ちがあるから闇は夜にやってくるのだろう。)

僕は此処で何をしているのか、何をすればいいのか、何をしてはいけないのか、
何処かへ行くのか、ずっと此処にいるのか、そんな抽象的で具体的なことばかり考えていた。
今日は昨日と何が違ったのか、
思い出してみようとしても何も思い出せなかった。
どうして生きているのか、どうして死なないのか、どうしてこんな世界があるんだろう。
この世界を作ったのは僕だ。
それなのに、どうして作ったのか理由も知らない。
作りたかったのか、作りたくなかったけどできてしまったのか、
その合間に、
唇にカミソリを挟みながらいま目に映っているものすべてにタグ付けをして
必要なものと必要のないものに分けてしまわなければいけないような衝動に襲われて
これが絶望なのかもしれないと感じた、と同時に一番最初一つ目にタグ付けをした特に意図なく目に付いたピンク色の何も入っていない小さなプラスチックのピルケースをゴミ箱に投げ捨てた。
そのあとに始まった際限なく続くタグ付けレースの話はいつかどうしようもなく暇なときに書こう。

唇に挟んだカミソリを舌で丁寧に舐めながら感じる絶望は
とても冬に似合うそんな類の冷気を含んだ絶望だった。
とにかくいますぐにでも死にたい。
そんなセンスの悪い死にたさだった。
死ぬときは一番好きな服を着て綺麗に死にたいなんていう気持ちは
タバコ一本の価値もなかった。
そうして目に付いたのがデスクトップのペン立てに入っていた髪を切る用のハサミで、
去年前髪を自分で切るように買った有名なスタイリストなら誰でも使っているブランドの高級なハサミで
改めて手にとって刃で指を軽くなぞっただけで痛みもなく血が吹き出した。
このハサミなら死ねるだろうと考えながら、
何かやり残したことはないか少し考えていた。
そして5分経っても何も思いつかなくて
ハサミを全開にして片方を握れるようにガムテープを巻いた。
刃を頚動脈に当ててたまま、
何も残せなかったけど
やりたいことはいいことも悪いことも全部やったし
思い残すことはないと思って
右手に持ったハサミで思い切り首を切り裂いた。

ぜんぜんいたくなかった
ただくびがすごくあつかった

めをとじてもまっかで
すごかった

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (18)

輪廻しない、でも、リインカーネーション。

   ごらん 運河に
   眠るあの船
放浪の心を持って生まれた船たちを。
   おまえのどんな望みでも
   かなえるために
あの船は世界の涯からここへ来る。
   ー沈む日が
   野を染める、
運河を染める、町全体を染めあげる、
   紫色と金色に。
   世界は眠る。
いちめんの 熱い光の中で。

Les Fleurs du mal LIII L’INVITATION AU VOYAGE / Charles Baudelaire

空は青色をすべて雲に奪われ2月にしては陰気で暗く、艶のない風景だった。
ん、、、、、、、違う、陰気で暗くて、嫌な予感のする風景だった。・・・ん、これも違う、
陰気で暗くて、乱れていた。
・・・んーこれも違う、、、・・・。

(網膜に張り付いた何億という数の光の点が瞬間に現れては消え、現れては消え、絶え間なく、僕の答えを待っていた。)

バスタブに浸かり灰皿を浮かべて虚ろは煙草を吸いながら今日会う予定のさよならのことを考えていた。
300年振りの再会に彼女は僕だと気付いてくれるだろうか。
本当の自分が自分ではないことに驚かない人はいない。
それが何千年も続くリインカーネーションなら尚更不安になる。
(神経質に何度も細かく煙草の灰を落とす癖、彼、緊張しているわ。)
バスルームは水蒸気と煙草の煙で深い霧に覆われたように彼の表情を隠した。
黒いスーツに着替えて、襟を直しながら鏡の前で、現在の彼女はまだ12歳、僕は16歳。と声に出していった。
僕は予定の時間を大幅に遅れて外に出た。
空は阿片の巣窟のように何層もの煙が重なりあうみたいに濁った雲が一面に張り出して、、、
・・・・・・・僕の気持ちを奪おうと明らかに淫に振る舞った。
性格の悪い神様が僕に意地悪をしている。
僕は小さなブルーのスニッファーに入ったコカインを吸って、さよならのことを想った。
今はまだ何も知らない少女のさよならはこの輪廻でもう時期死を迎える。
死ぬ前に会って伝えたい。
彼女は1世紀前に僕が今からしようしていることと全く同じことをしてくれたのだから。
夢じゃない。
妄想でもない。
これは現実。
私とあなたの永遠に続くリインカーネーション。
さっき、さよならが死んだ。
虚ろに会うことは叶わず、何も知らず死んだ。
病室のドアのネームプレートには火憐という名前があった。
虚ろは帰り道、青い薔薇を12本買って帰った。
次の輪廻まであと2世紀、虚ろは18歳で死んだ。

公式ブログ用フォト - 2 / 2

不滅の記憶。

愚かしい酒池肉林の残骸がまだ煙を立てている上へ
君の思い出が明るさを増し、薔薇いろを増し、魅力を増して、
見開いた私の目に 絶えずひらひらと飛びまわる。
日の出が ろうそくの焔を黒くかげらせた。
こうして、またも勝ちを収めて、君のまぼろしは、
輝きわたる魂よ、不滅の太陽にもひとしいのだ!

Les Fleurs du mal XLVI L’A U BE SPPIRITUELLE / Charles Baudelaire

消えない記憶なんて
この世界のちり一つの価値すらもない。
僕の中で暴れまわる魂は記憶一つに縛られてバラバラにされて、挙句
人を失った幻想を生きる怪物を幾つも生み出した。
それは未来を、今を、過去を縦横無尽に行き来する力を得て
無限の輪廻を余儀なくされ、さらに多くの記憶を束ね、
自らの重力に押しつぶされて爆発する超新星爆発のように
記憶の束はシナプスを焼く尽くし神経網を吹き飛ばし
僕を無限に分化させた。
それがこの話のことの顛末となるのだ。
僕や、私や、俺や、永遠や、闇や、虚ろや、さよなら、
みんな最初は一つだった。
それがこうなってしまったのは
たった一つのなんの価値もない記憶のせい。
怖いのは色褪せない記憶、
今も香る花の香り、
君の温度、
そういうのが
化け物を作るんだ。
女王闇、きみが始めたんだ。
責任はすべてきみにある。
そんなこと言われても私には関係ないわ。
好きにすればいい。私はこれから忙しいの。殺すの邪魔しないで

公式ブログ用フォト - 1 / 2

青の世界へようこそ。

私は幾度も思い浮かべた あの魔法にかかった月と、
   あの静けさと あのものうさを、
そしてあの、心の告解所でささやかれた
   おそろしい打ち明け話を。

Les Fleurs du mal XLV CONFESSION / Charles Baudelaire

私の中にあるエーゲ海は青い花弁のガーベラの群れ。
青色の世界が私を犯す。
私の放つ蝶々の群れに囲まれる。
ブルーモルフォ、鮮やかな青色には毒があって、
その毒は12年かけてゆっくりとあなたを奪う。
新しく雇った殺し屋は気が短くて
すぐ殺してしまうから私は退屈してしまう。
新しい退屈のために新しい憎しみを求める私は、
気がつくと窮屈なプラネタリウムで
偽物の未来を見上げ
世界で一番悲しい嘘を吐いた。
(××××××××××××)

狂ったあなたがプロポーズする。
私はそれを無視した。
でも気にしない、いつでもおいで、ここは楽園、私の海。
あなたが願えばいつでもここにいる。
永遠と絶望と愛情と憎しみ、
あなたの願いは必ずここにある。
そんな悲しい目をしないで、
誰にでも必ず訪れる当たり前の終わり。
目を閉じて眠るだけ、二度と目覚めない。

私の海では青い花弁が舞い踊る。
たった一度のさよなら、私のこと忘れても
青い海は覚えていて。
私が殺したあなた。

公式ブログ用フォト - 1 / 1 (17)

真っ白で、真っ暗で、冷たくて憐れ。

人々の心の上に建物を建てるなんて馬鹿なこと、
   何もかも崩れ落ちるの、愛も美も、
結局は「忘却」が背中の籠にほうりこんで
   「永遠」に返してしまうんだわ!

Les Fleurs du mal XLV CONFESSION / Charles Baudelaire

悲しみの針が意識の痛覚を刺激する。
ダモクレスの剣を振り下ろされた兵士のように、
無残に一瞬で切り裂かれた。
命は失っても意識だけは残っていて
夢の中で出逢う理不尽な現象が流れ出す。
そこにあるのは痛み、
激しい痛み。
その痛みが私を切り裂いて
私を思い出させた。
悲しい記憶は私の知らない誰かの記憶だった。
私はそうしてとにかく始まった。
私の名前は冬といいます。
真っ白で冷たい2月の空から降ってきました。
誰も私のことは知らないの。
私は全部知りました。
私はこの世界の大抵のことは嫌いです。
でもこの景色を真っ白にする雪だけは大好きで
だから私の始まりは2月でよかった。
指先は冷たく淡く真っ暗で、
でもその冷たさだけが
私の唯一の存在証明だと知っているから
私の心も冷たいの。
真っ白で真っ暗で見えないの。
私ここにいるよ。

誰もいないたった一人の世界で
私は自由に生きている。

1 (26)

2月10日のラプソディー。

ほがらかさにみちた天使よ、ご存じですか 苦しみを、
屈辱を、悔恨を、すすり泣きを、倦怠を、
あのおぞましい夜また夜の とりとめのない恐怖が
紙屑を丸めるように心を押しつぶすのを?
ほがらかさにみちた天使よ、ご存じですか 苦しみを?

Les Fleurs du mal XLIV RÈVERSIBILTÈ / Charles Baudelaire

2月になって冬も中心を迎えると私たちはとにかく眠ってばかりいた。
冬の寒さが情緒不安定にさせるせいで私たちは耐え切れずそれを全て冬に任せた。
冬は景色が真っ白でとても素敵だと言ってときどき私たちに声をかけてくる。
私たちは誰も返事をしない。
冬が大嫌いだから。
冬は天窓に降る雪を読書しながら飽きずに毎日みていた。
私しかいないから、とても静かね。
この風景を独り占めできるなんて最高に幸せだわ。
夜になって、暗くなると部屋に戻ってコンピュータのあるデスクの椅子に座って
ヘヴンを起動させると煙草に火をつけて、今夜の気分にあう音楽を探す。
>Paramore – Acoustic
乾いた空気に響くピアノとハスキーな彼女の声が悲しくて好き。
>Decode Acoustic
デスクの上にある睡眠薬の入ったボトルの容器を開けて今夜眠る分のクスリを
モロッコに行ったとき一目惚れして買った24金で出来たアラベスク模様のピルケースに詰める。
煙草をくわえたまま一錠一錠両手で押し出して忘れ物はないか確かめて蓋を閉めた。
それをデスクの端に寄せて目の前に広いスペースを作って鏡を置いて
デスクの端っこでマニキュアの群れに紛れてる青いボトルを手にとって蓋をくるくる回してあけると
とても小さな計量スプーンでマイクロスケールの上に丁寧にそっと乗せた。
>0.003
ボトルから少し出して足した。
>0.006
まあ、いっかー。
ハイになった冬は音楽を大音量でならし、ベッドの上で笑い転げている。
セックスしたいな。と呟いて携帯を掴むと真冬に電話をかけた。
5回目のコールで真冬が出た。
とにかく早く来てと真冬にせがんで
来なかったら私今夜死ぬから、と言って電話を切った。
そしてシャワーを浴びて、バニラのような甘い香りのローションをふりかけ、
髪の毛は丁寧に乾かし、アイライン、シャドウ、マスカラ、ファンデーションを軽く済ませて
洋服を選び、何もすることがなくなると、
またボトルを取り出してスプーンですくってマイクロスケールに乗せる。
>0.007
冬は鏡の上にラインを4本引いてそれを吸った。
またハイになった冬は電話をかけて、真冬が出ると 来るのにあとどれくらいかかるのよー、と聞いた。
真冬はあと40分くらいで着くよ、と言った。
冬は、遅いーー。早く早く。早く来なさいよねえ、と言って電話を切った。

セックスなんて本当は大嫌いなんだけどね。
だって私愛されてなんてないし、

早く死んじゃいたい。

1 (25)

ウインターミュート。

あらゆる罠 あらゆる重い罪から私を救い、
私の足を「美」への道へと導いてくれる。
この目は私の召使 そして私はこの目の奴隷。
わが存在のすべてが生きた炬火に服従する。

Les Fleurs du mal XLIII LE FLAMBEAU VIVANT / Charles Baudelaire

ああ、私は寒さに耐えながらあのことだけを望んでいたから、
耐え切れず理性をなくすのは簡単だった。
私はベッドの枕の隣に置いてある白いテディベアに振り返って引き寄せて抱きしめた。
(大好きなルシファー)
そして背中のファスナーをあけて中にあるチョコレートの丸い缶を取り出してあけて中身を確かめると
ますます心が踊りだすのを感じた。
心は早く早くと願ったけれど、私はワザとゆっくり動いた。
ベッドから降りてコンピュータデスクに移って煙草を吸いながら、
マニキュアを塗り直して乾くのを待っていた。
新しいマニキュアは色乗りがとても良くて、唇に爪を軽く当てるともう大体乾いていたけれど
きちんと乾くのを待つために二本目の煙草に火をつけた。
数分後、全ての爪を唇に当てて乾いたことを確かめると、
私は目の前の液晶ディスプレイに向かって自分のアカウントネームを丁寧に言った。
すると真っ黒だったディスプレイがぼんやりと光りはじめてグレイの背景に変わると中心に「ヘヴン」というロゴマークが浮かび上がった。

>ウィンターミュート を 認証しています
>ウィンターミュート を 確認しました
>ウィンターミュート で ログインしました

コンピュータがそう言うと広い画面全体に淡いブルーのルノワールの絵が広がってその上に沢山のアプリケーションのウインドウが並んだ。
冬は煙草を灰皿に投げ捨て、その上に飲んでいたペットボトルの水を垂らして消した。
それからチョコレートの缶を開けて中から2錠出すとピルクラッシャーで粉にして、
液晶ディスプレイが映り込む鏡のようなガラスデスクの上にまいた。
それを吸ってハイになった私は楽しくて観たかった映画や本を何本何冊と読んで、気がつくと4日が過ぎていた。
冬のクスリ遊びは4週間続いて、体重は10kg減った。
そして、ある日突然、「もういいかなー。飽きたし。」と言って、さよならになった。

1 (22)

レインメーカー、ティアドロップ、本当の私。

何を語るつもりか今宵、哀れなひとりぼっちの魂よ、
何を語るつもりか、わが心、かつては萎れていた心よ、
美しさのきわみ、善良さのきわみ、いとしさのきわみ、
聖なるまなざしでおまえを突如ふたたび花開かせた その女に?

Les Fleurs du mal XLII / Charles Baudelaire

私の部屋には沢山の人形があった。
それに私は一つずつ名前をつけて、いつも話しかけた。
当然、返事は来なかったけれど私は気にしなかった。
話し相手が欲しかっただけだったから。
私は16歳で学校が嫌いだった。
入学式が終わって三日も経たずに陰湿ないじめが始まった。
みんながまるでダーツをするように私を的にして中心に狙いをつけて矢を投げてくる。
だから、私は嫌だって言ったのに。
母親が私の進学校を決めるときに
私立のお嬢様ばかり通うステータスの高い学校だからと
ほぼ強引に決めて私はそこに入学させられたんだ。
友達なんて誰もいない。
家族と会わなけれな誰とも話しをしない日もあった。
要するに私はとても孤独な女の子で
沢山の時間を持て余していた。
それで私はあるウェブサイトを見ていたときに、
カタンドールを目にして一目惚れをしてしまったのだ。
それからは早かった。
カタンドールの購入資金は両親から与えられた16年間分の信託口座の残高を全て使い、
なくなったら父親にねだり、母親にもねだり、おじいちゃんにねだり、おばあちゃんにねだり、
もう誰もお金を出してくれなくなったとき
私の人形集めは終わり、人形一体一体に名前をつけて
一人ひとりの性格や年齢、性別、職業まで徹底的にこだわり
人形としてではなく一人の人間として扱えるように個性を持たせた。

人形は全部で16体あった。
名前はこれ、

永遠(とわ)
虚ろ
さよなら


女王闇
ジンロウ
語り
ミクニ

殺(せつ)
アンブレラ

椿
四季

さよなら、女王闇、冬だけが女であとは全部男にした。
年齢もみんなかけ離れているから、話し方も声も何かも違う。
私は学校では一人も見つけられなかった友達をこの部屋で16人も見つけたの。
それからはずっと自分の部屋にこもるようになった。
頭の中で友達と話しをしていたから。
そんな日々が二年くらい毎日続いて、気がつくと本当の私はもう死んでいた。

1 (21)