心罪/夢現 42

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原罪/Bye Bye My,,,,

滅菌された僕のからだはもう人ではなかった。
そこには血の温もりや感情の動きすら何も残らなかった。
これが浄化とよばれる儀式だ。
僕は大切な人を永遠の幸せに閉じ込めることができると信じて
この儀式に頼った。
しかし、神様は嘘をついた。
儀式を終えた僕に神様は永遠などこの世界には無いと言った。
僕はだまされたんだ。
僕の汚れを浄化すれば神様は永遠をくれると約束してくれたのに。
全部嘘だった。

輪廻をいくら繰り返してもやがて尽きると
神様は言った。
彼女の幸福も何回、何千回、何万回かの輪廻で尽きて無に帰る。
どうしてどうして僕はこのからだを捨てて彼女との記憶を全て捨てて
なにもかも捨てて浄化したというのに彼女の永遠はどこにもない。
彼女はいつか朽ちてしまう。
僕の一番大切なあの人が塵になる。
エネルギーも思い出も全て。

神様が約束するというから
僕は人を捨てて神様のエネルギーを使って自らを浄化した。
それは複雑な素数変換であり複合意識の解体を用いた特別な儀式だった。
僕はそれによって宇宙になり、エネルギーの総体のようなものに変わった。
その構造で僕は自身を認識することはできないし
何にも干渉することができない。
ただエネルギーの塊となった。

神様は最後に言った。
永遠などなくてもあと何回、何千、何万回の輪廻を彼女の願い通りの
幸せにすることができればそれでもいいだろう。
事象が永遠に変わらないなどということは初めからわかっていたはずだ。
それでもお前が私にすがったのは
お前にとって彼女の永遠の幸せという言葉がキーワードとなって
私の心に抽出されたからだ。
永遠ではないが、彼女は生きながらえている間
誰かを愛し、愛され、幸せに生きる。
そして、死ぬ。
輪廻する。
それが、何回か繰り返されるのだ。
幸せは誰もが手に入れることのできるものではない。
それがお前のおかげで何度も繰り返すことができるのだ。
彼女はお前のことを知ることは無い。覚えてさえいない。
お前に関する一切の記録は浄化の際に世界から消えた。
そのおかげでこの幸福劇が続くのだ。
だから、誰もお前も気にしない。
それが願いだったろう。
お前のいない世界で幸せに暮らす彼女を永遠に願ったのだから。
永遠ではない。
だが、彼女に永遠の概念はない。
だから、彼女はずっと自分が幸せに生きていると実感できる。
それが大事ではなかったのか。

そうだ。
永遠ではなくてもそれを彼女が理解することがなければ
それは永遠と言ってもいいかもしれない。

そうなら、それならこれでいいのかもしれない。
僕の願いは叶っているのかもしれない。

あと五分でお前は流体になる。
意識も消える。
最後に何か私に言うことはあるか。

神様、彼女のことを見ていてやってください。
必ず、幸せになるように。
もし、この約束を違えば僕は僕のやり方であなたに報復します。
全宇宙を消滅させても
彼女をずっと幸せにしてください。
お願いします。

わかった。
もう時間だ。

はい。

煙草が吸いたい。
最後にもう一度彼女を見たい。
彼女って誰だ?
紫の煙が綺麗だ。
綺麗だ。
きれいだ。
きれ

すれ違ったお前を彼女が感じることもない。
苦しみは緩やかなお前の永遠とともにあって
けしてそれだけは消えはしない。
それが契約のすべて。

お前は宇宙。
お前は宇宙。
お前は宇宙。
お前は宇宙。お前は宇宙。
お前は宇宙。お前は宇宙。
お前は宇宙。お前は宇宙。
お前は宇宙。お前は宇宙。
お前は宇宙。お前は宇宙。
お前は宇宙。お前は宇宙。
お前は宇宙。お前は宇宙。
お前は宇宙。お前が宇宙。
私が宇宙。

心罪/夢現 41

僕が死んだ日、雨だったら、
きみは何色の傘差して歩くかな?

(僕はね。)
きみが死んだ日、もし雨だったら、
傘は差さずに濡れて歩く。

絵空事も綺麗事もぜんぶ、ぜんぶ流れていくように。
星と星のあいだに流れる時間のように。

遠く儚く見つめる先に青い輪郭、それが世界の境界線。
僕ときみの境界線。
青い境界線越えたらいつか
またあえるから。
(蜉蝣は羽化したら一週間しか生きられないの。)

僕が死んだ日、雨で。
きみが差す傘の色は黄色。
きみの未来まで明るく照らすような太陽の色。
きみはそのままずっとまっすぐいくの。
それをずっと見てる。
(バイバイ。)

 

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心罪/夢現 40

世界は滅んだ。
地上にはなにもなくなった。

生きているのは僕ときみだけ。

僕たちの前にひとつの命の実が置かれた。
それは永遠の生命の実。
その実を食べた者がもう一度生命を育む元となり
その者の願う世界を創造する主となる。

選ばれるのはひとりだけ。

僕は記憶の階段を降りていく。
きみの中を降りていく。
階段は螺旋状になっていて下に行くほど
半径が広くなっていく。
(清浄の階段。)
ひとつ降りるとひとつ記憶が消える。
僕はどんどん降りていく。
(きみの中から僕が消えていく。)

きみは生命の実を半分ずつ食べようと言った。

僕は階段を降りていく。
きみの声が小さくなっていく。
僕が消えていく。

僕は階段を走った。
(きみが僕の名前を呼んだ。)

降りていく。
(きみの目から僕が消えた。)

階段を降りる。
(きみは僕の前で生命の実をとった。)

階段は終わりが見えない。
(きみが生命の実を口元に運ぶ。)

きみのあたまを撫でた。
(僕の手をきみはもう感じない。)

さあ、食べて。

きみの世界なら素敵だ。

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心罪/夢現 38

LADY MACBETH.
Come, you spirits That tend on mortal thoughts, unsex me here
And fill me from the crown to the toe top-full Of direst cruelty!
(マクベス夫人:さあ、人殺しの手助けをする悪霊よ、私を今ここで女でなくしておくれ。そして、頭から爪先までおぞましい残忍さで満たすのよ。)

by William Shakespeare(Macbeth)

 
赤い輪の中に浮かぶ心理ノイズ(揺れる渇望)と
光と闇の本質、真理、絶望を天秤にのせたら、秤はどちらに傾くだろう。

生きたい、死にたい、もっと、もっと、もっと、(あなたは誰に問う?)

光も闇も思うたび、拡散していく欲望の波が本質を覆うから
見えなくなってしまう。

遠く速く、
もっと、もっと、もっと、(願いとかのこと?)見せてよ。せかい。

(可能性の平均値を割り出すことにはもう飽きたよ。)

だからさ、
本当のこと教えてよ。

(さよならをいま返そう、ねえきみ。)

時間だよ。いこう。

シアンとマゼンタを70%ずつ混ぜてちょうだい。

甘い毒の爪で染まった青紫は艶めいて囁いた。
生まれたばかりの口から出た最初の言葉は(愛してる。)

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心罪/夢現 37

tsumetai me no boku ga
inochigoi suru youna yoru de

soko ni ha nanimo nakute
akari sae nakute
kuraku mienai
makkurayami no naka de

tsumetai yuka no ue ni
te wo tsuite ue wo miageta
(hontou no imi de ue to ha ienai kamo shirenai keredo)

yuka ni suwattamama
tenohira wo
hidarite de sasutte
sukoshidake atatamete te wo nobashita

yubi ga nukeru kurai

tsuyoku tsuyoku inoruyouni nobashita

yubi no saki ni
sukoshidake hureta

sore ha kono sekai de “ai” to yobare

inochi yori taisetsu na mono dato mukashi
ojiisan ga itteta mono

tsumetai boku no te ga
itai kurai atsukatta

sore ni hurete boku no mune ha atsukatta
itaikurai
hontou ni itaikurai
atsukattanda

dakara mou sukoshidake
ikite miyou to omotta

tada soredake no koto
tada namida ga nagareta
soredake no koto

hui ni kimi ga waratta
boku mo issyo ni waratta

ikiteru ne
bokura

ikiteru ne bokura

blog_2 - 097

心罪/夢現 36

読者よ、この著作にとりかかったとき、ぼくが助けをもとめたのは、おそらく君も欲しがっている憎悪なのだ!君がその憎悪を、かぞえきれない悦楽にひたりながら、高慢でおおきく、うすっぺらな鼻の穴で、鱶のように腹を仰向けにして、美しく黒い大気のなか、その行為の重要さと、君にふさわしい食欲のすくなからぬ重要さとを、君がまるでわかっているかのように、その赤い放射性物質を、ゆっくりとおごそかに吸い込むんじゃないぞと、言っているのはだれだ? ぼくは君に約束する。その放射性物質は君のみぐるしい鼻の、ゆがんだ二つの穴を楽しませるにちがいないと。おお化け物よ、その楽しみのために、永遠なる神への呪われた信仰を、あらかじめ三千回たてつづけに、君は吸い込んでおけ! 君の鼻孔はえもいえぬ満足、びくともしないエクスタシーに際限なくひろがり、香水やお香のようにかおりたち、もうそれ以上のものなど、この世でほかに欲しいものなど、なにもいらなくなってしまうだろう。というのもそうすれば、ここちよい天空のすばらしさ、そして平和のなかに住む天使たちのように、君の鼻孔は完璧なしあわせにすっかり満たされてしまうからだ。

by Le Comte de Lautréamont(Les Chants de Maldoror/Chant 1)

天使の声が響くとき、
彼の空では嘲笑の鐘が鳴り、針の雨が降る。
針に撃たれ、痛みから狂気へと成り下がった悪徳は
その凛とした輝きで美徳を越える。
凍えた左手はもうすでに死に
深海を漂う体は誰も手の届かない超深海層に閉じ込められた。
この声が届くとすれば
それは神の言葉で話しているからだ。
堕ちた。
そして何もかもを手に入れた。
きみの永遠の笑顔。
人でなくなった。
それでもいい。
きみが永遠に笑うなら。
それでいい。
さよなら、きみ。
もう僕を覚えていないきみ。
消えた時間はすべて僕が持っていくよ。
きみの最後の言葉も後ろ姿も全部。

 

blog_2 - 096

夢現/運命の実

Everything, for your eternal happiness.

もし、
この世界に
自分の命と引き換えに
どんな願いもひとつだけ
叶えることができる
運命の実というものがあったら

この世界は光と闇のどちらに傾くだろう。

mienai sekai de
mienai kimi no
warau sugata wo

souzou shinagara
hontou ha mienai boku no me ga
zutto zutto
mienai kimi wo
oikaketeiru

 

blog_2 - 095

心罪/夢現 35

欲はあらゆる種類の言葉を話し、あらゆる人物の役を演じ、
無欲なものまで演じてみせる。

by François VI, duc de La Rochefoucauld(箴言集)

言葉がもっと発達した時代だったら
この世界がきみにとって素晴らしい世界といえるか。
今以上望めばそれは何人も侵してはならない個人の絶対境界を越えてしまう。
きみはいい。僕はどうだ。
僕が望むのは何だ。

秘密のありかか、それとも、、
やっぱり、、、この世にないもの、、、、か。

それならいい。
これでいい。

閉じ込められていよう。
そっと隠れてみていよう。
冷たいリノリウムの床に裸足で小さくなって
凍えながら夜が明けるのを待とう。

ああ、来たよ。
あの人だよ。
あれが、

(しっ、黙って。見つかっちゃう。)

僕の夢、食べてる。
僕の夢、なくなっちゃう。

(黙って、聞こえちゃう。)

僕の冷たい左手。
特別な魔力で封じ込められた僕の時間。

(何回生まれ変わっても、きみは笑っていたよ。)

目を開けると闇。遠くに小さな光。
空間のない広場、僕はひとり噴水の下で踊る。

意識で出来たベンチに腰掛けて
吸った煙草はバニラの匂いがして儚い。
だから、もう一本煙草に火をつけてそれを吸い終わったら
どこか眠れる場所を探そう。
意識で家を作れるかな。

僕はここに置き去りにされた。
世界の反対側に。

blog_2 - 083

 

心罪/夢現 34

太陽も死もじっと見つめることは出来ない。
by François VI, duc de La Rochefoucauld(箴言集(しんげんしゅう))

僕がきみと交わすいくつかの約束(願い)の中に
きみの知るところの無いものがいくつかあって、そのせいで
これから先、僕がきみと離ればなれになってしまったとしたら
きみは悲しむだろうか?

僕が僕と毎日繰り広げる二者択一の現実が
僕の形を変えていっても
きみは今までと同じように微笑んでくれるだろうか?

眩しくて見上げたら焼き付いてしまうきみの瞳。
僕が願うのはその目だよ。

振り返って君の目を見つめていたい。
それが意味する死なら進んで受け入れよう。

いつか、どこかで、出逢った未来へ
遠く去っていく過去の螺旋に巻かれながら
きみの願いと君たちの願いを巻き込んで
透明なガラスケースに僕は全部閉じ込めていく。

そんな世界だから僕は
選べない未来と過去を悲しまずにはいられないんだ。

だけど、有り難う。
ずっと一緒にいてくれて。

 

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心罪/夢現 33

さよなら、老人よ。
ぼくの書いたものを読んだのなら、ぼくのことを思ってくれ。

by Le Comte de Lautréamont(Les Chants de Maldoror/Chant 1)

死んだ四季の目に浮かぶ記憶の泡沫は
宙を数秒舞うとその透明な体を持ち上げて空に消えていった。
淡い痛みが四季の目を覆って
痛みに耐えながら目から流れ落ちる赤い血は
四季に残った最後の体温を奪っていく。
四季の体は鏡のように冷たくなって四季の命の終わりを
鮮やかに告げた。

さよなら、輪廻。
さよなら、涅槃。さよなら、きみ。

 

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