さよなら。

月の欠けかたが気に入らない夜に
あなたの思惑にのって
この国の夜を変えてみたけれど(本当に)
あなたはこんなことを願っているのかしら。
私はあなたの考えが見えない。
たとえ月の反対側にもうひとつの楽園があるとしても
ここからでは届かない。
私はただ、あなたの目によく似た赤い月を
見たかっただけ。
もう一度あなたの目を見たかっただけ。
私が闇になって
唯一理解してくれたのはあなた。
だから、そのことにとても感謝している。
けれど、それ以上にあなたのことを愛しているのよ。
あなたになら何もかもあげる。
この世界の果ても。
この世の全てをあげる。
そして、私が死んだらあなたは
この世界を好き勝手にすればいいわ。
パスワードは0401。
もう一度振り返ったあなたの瞳は
大きく赤く私の心に浸透して
私はあなたと月の区別が出来なくなるのよ。
私があなたであなたが私で
この世界は全て私のもの。
この世界は全てあなたのもの。

blog_2 - 223

断罪/免罪。

僕は儚く高いところで生まれた。
目覚めると一面が真っ白く煙った雲の中だった。
そこで僕はひとつの雨の滴として目覚めた。

そこは雲の中で
真っ白と薄灰色の色の強弱が
入れ替わり立ち替わり表れては消え
消えては表れ、夢の中の霧の様に見えてはいるけど
本当は実体がないようなそんな世界を作り出していた。

それを見ている僕はそれを自分の滴に反射させながら
自身も色を変えていく存在だった。
自分には色というものがなかったから。

僕は眩しくて目を塞ぎながら
けれどその美しさに圧倒されていた。

そして、僕は問いかける。

この美しさと僕が生まれた理由、
何故、僕は雨の滴として生まれたのか、
美しいものに囲まれた、この幸福という条件に問いかける。

誰に?

誰に?
知らなくて大きな自分よりずっと大きくて
永遠なる存在に。

答えはまだ聞こえてこない。

僕は雨の滴。
同じような滴に囲まれた雲の中で順番を待っていた。

順番?
なんの?

知らない。
知らないけれど何故かそうだと知っていた。
僕たちは順番を待って地上に降っていく。

そうだ。
僕たちは降っていくために生まれた。

(どこへ?)

遙かな地上へ。

(なんのために?)

知らない。
けれど、降っていく。
それだけは確かだ。

そして、僕たちの順番が来た。
僕たちは一斉に降り出した。

遠い高見から見る景色は
すべて初めて見る景色なはずなのに
何故か懐かしくて暖かい。

僕たちは厚い雲の隙間から、空へ出た。
ゆっくりと降っていきながら見える世界は
所々真っ白い雲に遮られて
断片的にしか見ることが出来ない。

僕はその隙間から下界を眺めることに夢中だった。
だって、そこは太陽に反射されたダイアモンドの粒のように
きらきらと反射されてすべてが光ときめいていたから。

僕たちは揃ってきらめいた。
落ちていきながらふらふらと小さな粒子が僕たちを照らし出すと
それは万華鏡のようにあたりを映した。

僕たちは降りだした。

降る先はまだ見えず、
僕たちは重力に引かれながら
小さくなったり、大きくなったりした。
そして、何故か一瞬寂しいと僕は呟いた。

地上に僕たちが降るとき
地上では傘を差した小さな夕暮れが微笑んでいた。

夕暮れは僕たちに話しかける。
「ようこそ世界へ、ようこそ命へ。」

僕たちは永い時間をかけて遠い高見から
地上へ降りてきた。

あるものは小さな丘へ、
あるものはアスファルトの路面へ、
あるものは小さな女の子の傘の上へ。

そして、僕は深緑の森の中へ降っていった。
森の中は静かで聞こえてくる音は
僕たちが落ちていく先の葉にあたる音、
柔らかな葉のたまった地面に落ちる音の、
ザァーッという連続した雨音や、
ピチャピチャと葉を濡らす音だけだった。

僕は結局、地面に吸収されていった。
そこは森の木々の根が密集した小さな宇宙みたいだった。
あたりは暗く何も見えないけれど
木々が水分を吸収する小さな優しい音がしていた。

僕たちは地上に降りて
木々に吸収されたり川に流れ海へ出たりした。

そして、木々に吸収された滴は
酸素に還元されて大気に混ざっていった。
大気に還元されるとそこでその滴の意識は消えた。
ある意味、それは死だった。

あるものは海へ流れ出て行った。
そして、大海をさまよいながら次第に海を南下し
太陽に長い間照らされると
熱を帯びて滴が蒸気に変わり空へと昇り雲になった。
それは、やはり死だった。

僕たちは雲で生まれ、地上に降り注ぎ
一度死んでまた空に還る。

(何故?)

知らない。
ただ、それはとても潔いという気がした。
一度生まれ、一度死んで

そして、新しい僕たちを生成する。
そこに以前の僕たちはいない。
すべてバラバラに組み合わされて再生成されるから。
同じように見えても
全て違う。

(何故?)

知らない。
僕たちはただいつか降っていく。
そのために生まれる。

目覚めるとそこが雲の中だったからとしかか言えない。
僕たちはその実体のないような美しい真っ白な雲の中で生まれたから
ただ時間が来れば降りだして
いつか君の空を濡らす。

それは振り子の永久運動のように
誰が振り子を最初に動かしたのかということが問題ではないように
誰も僕たちが何故降ってくるのかということを問題にしない。

それはそう決まっているからとしか誰も思わない。

だから、僕たちは降っていくときに一抹の寂しさを覚えるのだろうか。
理由がわからないから寂しさを感じるのだろうか。

(何故?)

知らない。
ただ降り続くんだ。

僕たちが雨の滴として生まれたから。
君たちの世界を濡らす滴として
落ちていくから
君たちの背中を濡らすから
ほんの少し冷たい思いを残して
忘れ去られる存在だって知っているから
だから、寂しいのかもしれない。

本当のことは知らないけれど。

 

blog - 170

 

 

また夢で。

 

 

 

 

空色。

溜め息の連続が空を蒼く染めて
僕の連続が空を赤く染める。何故?

君へ送る手紙は黒くて
僕へ届く手紙はない。

知らない、知らない。

夢を覚えていない朝は幸せ。
軽い絶望感と重い憂鬱。
足して2で割ったら
翌朝死んでた。

明け方は霧が濃くて
空は隠れてる。

蒼く澄んだ空は
昨日僕を刺して逃げた。

君へ。

例えば君の涙が止まらないときは
僕の空へ来るといい。

そこには君の大好きな蒼があるから。
そこには君の大嫌いな僕がいるから。

blog - 169

彼の彼岸。

痛み知れば
君を知り
温もり知れば
優しさを知り
夢を求めれば貴方が泣く。
僕は立ち止まることなく
君を求め
すべてを求めようとするけど
それは叶わないと知っている。

どうすればいい?

心、答えてよ。
砕け散って
すべて消える前に
涙流す前に
僕の正体を暴いてよ。

どうしても
欲しいものがあって
ひとつしか
手にいれられないと知ったとき
僕は何を選ぶだろう。

でも、それでは
僕は生きていけない。
だから
僕はすべてに印しをつけて
願う。

この世界すべてが欲しい。
もしそれが叶わないとしたら
僕はすべて諦めて
スイッチを切る。

それが
世界の果てなら
僕は潔く受け入れる。

ただ君の本当の笑顔を
奪いたくはない。

だから逃げるんだ。
走れ。
全力で走れ。

僕は闇になる。
だから君は星になれ。

 

blog - 168

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君が大好きだ。