舞い散る桜。

暗い闇の中に天窓から光が差している一筋のロープのような場所があって
私はその光の筋を静かに音をたてず歩いている。
しばらく進むと光の筋のおしまいの所にドアが見えて私はそのドアを開ける。
ドアを明けると光が一斉に目に入ってきて思わず目を閉じた。
光に目が慣れてくるとそこは公園で一面に桜が咲いている。
私の隣にはあなたがいて手を繋いでいて
桜の回廊をゆっくり人の群れに従いながら歩いている。
あなたが時々こちらを向いて笑顔で何か言うのに
私には何も聞こえない。
私は何も聞こえないから何も答えられない。
それでも時々あなたは話しかけてくる。
私は何も言っていないけどあなたには私が何か話しているらしく
あなたは相づちを打っている。
そう思っているうちにあなたの声が徐々に聞こえ始めた。
私はあなたの手の温もりに懐かしさと切なさを感じながら
これは多分夢の類いなのだと思う。
私はきっと夢でもいいからあなたにもう一度会いたかったのだろう。
私はあなたに手を引かれてベンチに座ると
あなたがどこかに行ってしまう。
もう行ってしまうのかと涙が出そうになったら
あなたが飲み物を持って戻ってきた。
私はあなたから飲み物を渡されてそれを一緒に飲んだ。
この時あなたは色々な話しをしていて
でもほとんどはこのお花見の公園のことについてだけれど
私はあなたが話す言葉の一言一句を予め知っている。
これは一度通った過去だから。
それでも、私はあなたと手を繋いでいるだけで嬉しくて泣いてしまった。
あなたには私の涙は見えていないようで
それは良いことだけれど
この幻想か夢がずっと終わらなければいいなと思う。
私の記憶が正しければこのあとあなたは重要なことを言うのだ。
けれど、その内容を忘れてしまっている。
だから、私はそれを記憶として記録するために
もう一度あなたの言葉を聞きたいのだ。
私の手をとってあなたは立ち上がる。
立ち上げると風が吹いて桜が空一面に舞い散った。
それがあんまり綺麗だったから私は綺麗ねと声に出して言った。
あなたはその声に振り向いて他人を見るような目で手を離して後ろに下がる。
そこで私はまた暗い闇の中に戻った。
それは幻想でも夢でもなかった。
私だけの世界の出来事で
結局あなたの言葉は聞けないままそれは終わった。

blog_5 - 59

春の木漏れ日とさよならの私。

滴の滴りのようにゆっくりと太陽が差し始めて
あなたの頬に格子の影を作り
私の膝を温める。
あなたの見る夢を想像しながら
眩しい光の方へ目をやると朧気な幻が浮かび上がってきて
そのうちに輪郭を帯びて
忘れていた名前のあなたになった。
その目に私は映っていないのか、
私が適当に選んだ名前を呼んでも明後日の方を向いたまま動かない。
それは多分どんなにはっきりとして見えても
幻なのだから当たり前のことだと今は思うけれど
その時の私はその姿があまりに鮮明なので
当たり前のことを忘れていて
遠くを見る名前を忘れたあなたの肩に手をかけようとして
手が宙をすり抜けた拍子に小さくよろめく。
その動きでひざの上のあなたも揺れて顔に水滴が落ちた。
私はあなたが目を開かないことを確認して
もう一度光の方へ目をやった。
もう太陽は上の方に行って眩しさも無く
忘れていた名前のあなたも消えていた。
本当は見えていたのかさえもわからないのに
消えていたことが少し寂しい。
私には今このあなたがいるのに名前を忘れていたあなたが
とても懐かしくて目にシャッターがあれば
写真を撮っていたのにとわけもないことを思った。
もし本当に目にカメラがあって
写真が撮れるならきっと幻でも写すことが出来たはずだから
心の中の写真をどうやってプリントアウト出来るのかとまで考えて止めた。
そのくらい驚いた出来事で
心がひんやりして冷たい気持ちになった。
ああ、懐かしいな。
もしもう一度あなたに逢えたら、と思うことだけで
心がさっきより一層冷たくなった。
私はそんな感傷に浸りながら
少し重く感じるあなたの頬に手を触れて温かいと思う。
私は我が儘だから名前を忘れていたあなたさえも
もう一度手で触れたいと思うのだろう。
手を触れて多分涙を流して
あなたの名前を思い出すまで見つめている。
それでもきっと名前を思い出すことはないと知っているから
通り過ぎたあなたに会うことも叶わずに
私は動きを止めてしまってそのうち死ぬんだ。
私は執着心が強いから、名前を忘れていても
実際に私の中に存在した人の幻に出逢うだけで泣けるのだと
改めて知るだけの怠惰な木漏れ日だった。

blog_5 - 58

さよならの日記:2014年8月7日

7 AUG 2014 04:14:09

最近、シドのミルクばかりずっと聴いてる。

「見慣れた夢の續きが見たくて
遠く 遠く 君を想う
詠えない詩人は書き留めた言葉
屆かぬ言葉 歌う
戾れない日々と生きる」

「ミルク」by シド

私が戻らなくても悲しまないでね。
一緒に乗ったタクシーの中でずっと手を繋いでくれて有難う。
本当は怖くて泣きたかったけど我慢できた。
私、私、

あなたに
本当に有難うって伝えたい。
有難う。有難う。有難う。有難う。有難う。有難う。
有難う。有難う。有難う。有難う。

本当に本当に有難う。
私をいつも照らしてくれた太陽のあなた。
影に隠れていた私を外へ連れ出してくれて有難う。

朝が来たら私行くね。
こうしてあなたと一緒に居られることが
私、本当に幸せだった。
ごめんね。
愛してる。

Forever ever

blog_5 - 52

さよならの日記:2014年8月6日

6 AUG 2014 00:40:00

今日はずっと雨だった。
雨音を聴きながら
あの人は雨が好きだったことを思い出して、
そして、急に思いついた。
私が死んだら、
きっと何人か泣く。
それを私が知ることが無くても
一方的に泣かれるのはとてもずるい気がした。
だから、私は中庭に出て
痛いくらい強い雨に打たれながら
数人の顔や声を思い出して
大声で泣いた。
こんなこと誰も知ることはないけれど
これが私から
これが私のためにあなたが流すかもしれない涙への
心ばかりの感謝のつもりで。

でも違う。
誰も知らない出来事で
感謝を示すことは出来ないの。

だから、言っておくね。

あなたが居てくれたから
私は生きて、笑ったり悲しんだり出来た。
私はそれだけでもう十分幸せだったよ。
十分すぎる程だよ。
本当に有難う。
だから、泣かないで、
私はもうそこにはいないよ。
私はもう何処にもいないんだよ。
だから、泣かないで、
その灰はただの炭、
その灰に私の欠片も残っていないよ。
何の価値もない、
それは私じゃないの。
だから、笑っていいんだよ。
私はそれでいいの、
本当に。

死ぬことは眠ることと同じ、
誰でも何回も経験してきたこと。
それを死と同じだと思えないのは
あなたが朝目覚めることを当たり前のように思いながら
眠りにつくからだ。
目覚めない朝もあるというのに。

シェイクスピアの言葉だったかな。
死も眠ることと同じ。
間単なこと。
違うのは、
二度と目覚めないってこと。
だから、私、
眠るような気持ちで死のう。
今まで何千回、何万回って繰り返してきたんだもん。
簡単に死ねるよ。
ベッドの上でただ目を閉じる。
何も特別じゃない。

ただ、朝が来ないだけ。
バッカみたい。

おやすみなさい。

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さよならの日記:2014年8月4日

4 MAY 2014 02:45:28

今日は久しぶりに泣いた。
理由は空の色が灰色だったからとか
いつも使うガラスペンが見つからないとか
出した手紙が宛先不明で帰ってきたとか
そんなような類いのこと。
こぼれ落ちた涙がシャツを濡らして気持ち悪かった。
シャツを着替えて
悲しい気持ちでいたら
やっぱり私は近いうちに死ぬんだろうと思った。
私は失うものもないし、
悲しむ人もいない。
どうして私、生きてるんだろう。
私はどうして此処にいるんだろう。
理由も知らないのに
ただ流れにまかせて生きている。
突き付けられる選択肢の中から適当に選ぶだけ。
だから、私はもうすぐ死ぬ。
この中から死ぬ。
代行者はきっとあの人ね。
終わりのテンプレートを私にくれたあなた。
雪が見たい、もう一度雪が降る景色を見たかったな。
死が呼ぶの、おいでって
死が呼ぶの。
私、冷たい水の中で
ギリギリまで息を止めて
最後に叫ぶよ。

「愛してる」って。

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さよならの日記:2014年7月29日

29 JUL 2014 06:05:28

私は126分のあいだ何も書けずにいた。
書くことはあった。
沢山の思いが浮かんだ。
でも、それを言葉に出来なかった。
ほとんどがどうでもいいことだったし
浮かぶ言葉もどれも精彩に欠けていた。
日記なんだから
何でも好きなことや出来事を書けばいいのに
それが出来なかった。
(私はさよなら、という現象だから)
私には想像することしか出来ない。
今よりほんの少し未来を想像して
悲しくなって
涙を流す。

目を閉じて、
あなたを想いながら。

blog_5 - 49

さよならの日記:2014年7月25日

25 JUL 2014 00:34:24

今日の私は青い雨のようでした。
針のように細く降る線のような雨でした。
小さな青い滴には無数の青い滴が映り込み
青い線と滴が私の髪を濡らし
頬を滴り落ちていった。
空を見上げると目の中に降ってくる。
そして、私を青くしたい、そう言っていた。
誰が?
多分、空が言ったんだ。

白かったワンピースは
私の感情を細分化したモザイクのように
濃い青と薄い青と普通の青で
穢された。
藍色がそうしたの。
私の大嫌いな藍色が私の心を青で穢す。

針は線、滴は涙、青はイヤ。

私はここから逃げ出さなければいけなかった。
私は青く染まるわけにはいかない。

(シアンはね、自然界には存在しない色なんだよ。)

走らなきゃ、もっと遠くへ、逃げて、逃げて、
青くなんてなりたくない。
私はみんなが好きな青色になんて染まりたくない。
それに、私は透明でいなければいけない。

私は見えない。
あなたに私は見えない。
あなたも私が見えない。
誰にも私が見えない。

私は居るけど居ない。
そういう現象なの。
私はヒトじゃない。私という現象で、この世界に存在している。

青く染めないで。
もうこれ以上青く染めないで。
私に色をつけないで。
私は無色で何色でもない。

光さえ私を透過していく。
私に影はない。

35秒の扉を開けて私は47秒へ飛ぶ。
48秒の青い針が私を刺し貫いた。
水溜まりに映った私の右目から流れ落ちる青い水が
死ぬほど憎かった。
怒りにまかせて握りしめた両手から真っ赤な血が流れる。
赤いんだよ。
血は赤いんだよ。

どうしてあなたは青いの?

私は何を言っているの。
青い雨が綺麗だと思う人間もいるというのに、
私はヒトと同じ生命と同等の現象なのに
あなたたちの心が理解出来ない。

私は空に向けて言う。
私を穢した罪は人間に償ってもらう。
青い雨をまた見たら
次は神様、あなたを殺します。

私は無色透明で孤高。
叫んだり泣いたりなんてしない。
弱さも強さも関係ない。
愛も憎しみも関係ない。

私は生きているという幻想の中でしか生きられない。
だから、私は何も欲しくないし、全てが欲しい。
矛盾は私を鋭利に尖らせる。
あなたには本当は知って欲しくなかった。
私はあなたの前ではヒトでいたかった。

私が死んだらあなたは悲しむでしょうか。
私は現象だから、死ぬという機能はないけど、
消滅することは出来る。
私の居ない世界であなたは何を思い、何を忘れるのでしょうか。

blog_5 - 48

さよならの日記:2014年7月24日

24 JUL 2014 01:15:35

私の名前は「さよなら」。
あの人がつけてくれた。
名前らしくないけど、とても気に入っている。
私は沢山の人に名前を呼ばれる度に
「さよなら」と言われ続けてきた。
私はあなたから、何度も「さよなら」と呼ばれる。
そのことが名前だとわかっていても
私には、少し悲しい。

さよなら、意味は悲しいけれど、
響きは美しい。

あなたは私に優しい。
とても優しい。
愛なんてもう枯れたはずなのに
相変わらず優しいあなたが
私にはとても苦しい。
私はあなたを愛している。
あなたは私を愛していない。
それがわかるのは、
私がミクニの目を持っているから。

あなたが私を見ている。
けれど、あなたが見ているのは私の後ろの回転扉。
あなたはいつも私に優しくて愛がなくてもこんなに暖かい。
私はそれをずっと知っていた。
ただ、ただ、知っていた。

あなたのために私は
あなたのために私は
あなたが今一番欲しいものをあなたに贈ります。
でも、もう少しだけ待ってて。
もう少しだけ、こうしていたい。

もう少しだけ、

  生きていたい。

blog_5 - 47

さよならの日記:2014年7月17日

17 JUL 2014 00:07:34

海の色が蒼いのは空の色を反射しているからだと教わったとき、
じゃあ、どうして空の色は蒼いのですか、と私は尋ねた。
先生は黒板を消しながらこちらを振り向かずに淡々と答えた。

空の色は多彩で、24時間で色相が大きく変化します。
夜明け前は、朝焼けが起こって暗い空が赤くなり、
太陽が昇り充分な高さになると青色に変わります。
そして日没近くには夕焼けで橙色になり、
太陽が沈むとまた暗くなります。
空の色が変化する原因は、
太陽光線が7色にわけられる可視光線をすべて含んでいる事と、
それぞれの色の光が持つ性質に関係するからです。

特に空が青く見えるのは、
光の波長よりも小さいサイズの光の粒子の散乱、
いわゆるレイリー散乱と呼ばれる現象のためである。

散乱の量は粒子の大きさと光の波長による。散乱係数は波長の4乗に反比例し、
レイリー散乱の散乱係数ks は下式のようになる。

nは粒子数
dは粒子径
mは反射係数
λは波長

ですが、本当の空に色はありません。
私たちが空と呼んでいるのは高高度の大気のことであり、
空気に色がないことと同じです。

私はそれをノートに綴りながら
真っ青な海を思い浮かべて、そこに飛び込み
どんどん深く潜ってみた。
海が明るい蒼い色から深い色に変わっていく。
もっともっと潜っていく。
生き物も何も居ない深い深海へ潜っていく。
真っ暗で何も見えない。
底もない。
上を見上げても
何処を見ても闇で何も見えない。
私は何を探してるの。
わからない、わからない。
これが記憶の底なの。
何も感じないよ。私何も感じないよ。
息が苦しくて
押しつぶされそうになる。
大気が七色の大気が
私を包んでどんどん小さくなっていく。
潰される。
腕が千切れる。
もう、やめてー、と叫んだ。
目を開けると静まりかえった教室。
先生がみんなが私を見ていた。

今日見た空は灰色で、私の心も薄く曇っていて、
時々、悲しいと寂しいの混ざり合った藍色が隙間から見えた。

私にとって藍色はそういう類いの印象を持った色。
理由はわからないけど。
知る必要も無い。
(いずれ朽ちるこの身では。)

blog_5 - 46

さよならの日記:2014年7月15日

15 JUL 2014 01:01:03

最近、私は物忘れが酷い。
今日一日を振り返ってみても
何をして過ごしたのか思い出せない。
今日は晴れていたのか、それとも雨だったのか。
確かに私は窓の外を見ていたはずなのに
本当に思い出せない。
今は雨が降ってる。
囚人の足音のように規則的な雨音が聞こえている。
この記憶も明日目が覚めたら多分忘れてしまう。
今私が思うことも明日には消えてしまうに違いない。
だから、私は今覚えていることを書き綴る。
毎日、寝る前の習慣にしよう。
私は、私は、今日私は、何をしていた。
思い出せ、思い出せ、思い出せ、
思い出せ、

何もかもが消えてしまう。
私は、きっと記憶出来る量を使い果たしてしまったんだ。
だから、私は今しか知らない。
でも、構わない。
私は今だけでいい。
私はあなたを
愛してる。

明日忘れてしまっても、
明日の私が明日のあなたを愛してる。
あなたは何時まで、
私を覚えていてくれますか。

私は、未来に、もういないかもしれないの。

例えば、
1年、
2年、
3年、
数年後、私は居ない。

あなたは、私を覚えているでしょうか。
7月の気まぐれな夕立の日のように
淡く私を思い出すのでしょうか。

ああ、
それでも
私は
あなたを
愛して
良かったと
思う。

 有難う。おやすみ。

blog_5 - 45