課題曲「楽園」

「楽園なんて何処にも無い。
この心の中には。」

四季さん
なに?」
今流れてる曲はなんていう曲ですか?
楽園」
いいなあ。
初めて聴きました。
私も欲しいです。
なんていうアーティストさんです?

僕だよ」

え。

僕が作った」
四季さん、音楽創るんですか!!!!!
そうだよ」
凄いです。
凄くない、ここは音楽藝術大学附属高校だ」
でも、四季さん、授業に出てるところ見たこと無いのに。
授業に出なくても課題やテストはちゃんと受けてる。」
へえー、意外と真面目なんですね。

くださいな。
え?」
くださいこの曲。
ここにくればいつでも聴けるだろう。
それにクラウドにのってるんだ。
勝手に落とせばいいよ」
それはダメです。
私ちゃんとした形で受け取りたいんです。
お金も支払いますよう。

ダメだ」
どうしてですかあ?
一生のお願いです。

まだ未完成なんだ」
これ映像の実習課題だから」
完成したら、プレゼントするよ」
本当ですか。
嬉しい。
いつ出来るんですか?
新しいコンポジションを作ってるから
まだ・・・・・・・以下省略」

映、いつか見せてあげるからね。
未来で二人で一緒に観よう。

blog_5 - 43

終わる世界。

記憶をパルスにエンコードしている間、
僕は永い永い夢を見た。

宇宙が始まり星が生まれ
生物が生まれヒトが生まれ
世界が生まれ国家が生まれ
大きな大戦が幾度も繰り返され
その度に何度も何度もヒトは滅んだ。
そして永い時間を経て
また同じことを繰り返した。
その時間の流れの中心に自分がいた。
生まれ
生きて
世界を憎み
映を愛し
失い
死んだ。
時代が変わり
世界が変わり
生命がすべて消え去っても
僕だけは何度も何度も生まれ変わる。
永い宇宙の時間の中で
唯一、一筋の光のごとく一瞬だけれど
暖かい手のひらと
この手に抱いた柔らかい腰の華奢な軋みを覚えている。
僕はこの宇宙で何度も何度も生まれ変わった。
数えきれない程。
なのに映は一回すら生まれ変わらない。
僕は待った。
何度も死んで
何度も生きて
それでも映はリボーンしない。
どうして、僕は自分を過信していたのか。
そんなはずはない。
ブレインドライブの解析は終わっている。
遺伝子の修復も。
それなのにリボーン処理しても
映の細胞は分裂しない。
それが狂う程何度も繰り返された。
地獄のような年月が続いた。
それでも僕は諦めなかった。
解析データを再処理にかけてから
ブレインドライブを僕の記憶の保護優先にして
二人が300年おきにリボーンするように設定した。

人類が滅び生命が滅び
地球から海と大気が消えると
ブレインドライブは太陽系の外へ脱出した。
地球が太陽のフレアに飲み込まれる映像を見た記憶が残っている。
リボーンする度
目にするのは透過メインフレームの外の沢山の星。
それから、、、、、

眼から涙が零れた。

目覚めると
水でシャツが濡れていた。
天井が見えて
アイコンタクトモバイルがバイヴすると
エンコード終了を示すメッセージが宙に浮いた。

これで全部終わった。

さあ、行こう。
映が、
待ってる。

(僕はこの世界が本当に大嫌いだ。)

blog_5 - 42

愛しさの果てにあるもの。

生命は続いていくことに意味がある」と言ったのは
インドの大学にいたときの化学の先生だった。
ロマンティシズムを捨てきった、
その言葉が少しだけ気持ちよかったことを覚えている。

だけど今は違う。

生命は続いていくことに意味がある、という言葉は間違っている。
生命は生きていることに意味がある」というのが僕の現段階の意見だ。
生きている、ということはずっと生き続けるという意味だ。
だが、生物には必ず死がある。
生き続ける、ずっと生きる、永遠の命という機能は
生物にはない。

その代わり、
生命は(真核生物に限る)
同種の生物、例えばヒトなら異性2体で配偶子を残す。
真核生物は卵子と精子の遺伝子による減数分裂によって
作られる遺伝子を持つ新たな生命を作る。
その際、一切の記憶や経験などの情報は捨て去ることになる。
二つの遺伝子の半分ずつを受け取った配偶子は
二人の遺伝子を受け継ぐという形で生命をつないでいる。
遺伝子を主人と考えるなら
遺伝子が続くという意味でずっと生きている、と言える。
というか、それが現状の生命の定義だ。

でも、違う。
僕は違うと思う。

それは、ずっと生きる、という言葉の意味のすり替えだ。

個体が個体としてずっと生きる、ということはあり得ないという
当たり前のことを前提としているだけに過ぎない。
個体が個体としてずっと生きる。
本当に不可能だろうか。

卵子と精子の減数分裂によって作られる
新しい生命は遺伝子によって
親と子という関係を得る。
しかし、減数分裂で作られる新しい遺伝子の情報には
親の膨大な記憶や経験は含まれない。

個体が個体として自己たるゆえんは
小さな頃の記憶や多様な感情、経験、
鏡に映る自分が自分であると認識出来るだけの知覚。
少なくてもそれらがなければ自己の確立は出来ない。

減数分裂によって作られる配偶子は親のコピーではない。
減数分裂が単なるコピーであったならば、
たったひとつのウィルスによって壊滅させられる可能性を孕んでしまう。

生命が遺伝子の個体の乗り換えを伴う継続だと定義するなら
生命の現在の定義に間違いは無い。

減数分裂が進化に促す影響は確かに魅力的だ。
(減数分裂は配偶子形成において遺伝的な多様化を生じさせ、環境変化への対応や進化に貢献していると考えられている。例えば2組4本の染色体を持つ生物では、22=4 通りの組み合わせをもった配偶子が作られ、ここから得られる次世代は 42=16 通りである。ヒトの場合では23組の相同染色体、計46本の染色体を持つため、223=8,388,608 通りの配偶子、8,388,6082=70,368,744,177,664 通りの次世代が生じる可能性をもっている。)

けど、僕が望む答えはそれじゃない。
だから、僕が自分で答えを作ることにしたよ。

記憶も経験も残したまま進化という可能性は維持し
なおかつ、いつでも、いつの時代でも再生出来る。
クロンじゃない。

リボーンだ。

ブレインドライブならそれが可能だ。
僕はブレインドライブに自分の遺伝子と映の遺伝子情報を残す。
映の遺伝子が解析を終えて修復を終えたあと僕らはリボーンする。
リボーンで作られる僕らは記憶も経験も維持したまま生まれ変わる。

光速演算が可能なブレインドライブが作った最高傑作は
光子によるネットワークと光速演算による進化の適合判定と
遺伝子にそれらのすべての情報を組み込むための
第16世代の新アーキテクチャ。
それと僕が一生をかけて作り上げた新プロトコル「EDEN」。

EDENは
未だかつて誰も実現することのできなかった
リボーンを実現する。

僕らは光の海で生まれる
最初のヒトになる。

ねぇ、映、これでいいよね

blog_5 - 41

CUT OFF [SEX]

僕は映とセックスをした。
中に入るとき映が小さい声で呻いた。
僕が止まると映は僕を見て「大丈夫、続けて」と言った。
規則的な空調の音、宙に浮いたデジタル時計、
ブルーのライトが暗闇を照らしていた。

night 21:05:08
映は二人の体液をスポイトで集めて
シャーレに保存した。
それを密閉して僕に渡し
いつか、これを完成させてね」と言って後ろを向いた。
僕はクロンのことだと思った。だから、
クロンなら、今でも出来るよ。」と言うと
映は振り返って
クロンじゃだめなの。」
クロンじゃ死んじゃうの。」と小さい声で言い、俯いて

何年かかってもいいから。」

とそれがどのくらい時間のかかることか
あらかじめ知っていたみたいに一文字ずつ噛み砕くようにゆっくり言った。

僕はそれを培養して冷蔵庫にしまった。
映が死んでから僕は真実を知る。

映が死なずに生きていたとしても
あと一年も生きていられない原因不明の機能不全にあったことを。
僕は映が残した遺伝子を解析した。
ブレインドライブを使っても解析に300年かかるとわかった。
僕はブレインドライブに僕の遺伝子と映の残した遺伝子情報を残した。

sore ga utsuru tono
saisyo de
saigo no SEX datta.

blog_5 - 40

白雪姫のロールプレイ

NC3 night, 04:38:23

NC3(New Century 3 years)
バースデーカードが一通も無かった。
心の中も空っぽだった。
消えてしまったから。
きみが、

いつの間にか、きみが
トリガーに

ああああああぁ

NC3 day, 08:40:20

前に一緒に草間と食べた誕生日。
あれから僕らは親しく付き合いだした。
よその恋人とはほど遠い存在だったと思うけど。

僕は初めて人を愛した。
草間はどう思っていたのかな、
今はもう誰も知ることはできない。

夏で
真っ白い服を着て
右腕をロープで天井に縛られ引っ張られるように首は天井を見上げて
左腕は落ちて
まるで白鳥みたいに草間は
学校の研究室の天窓からぶら下がっていた。
僕が見た最後の映は、逆光が眩しくて
白銀に召された天使みたいだった。

草間の死因が自殺だということは
すぐに判明した。
映像があったんだ。
3Dビデオ。
自分で設置したカメラで
ロープを縛るところから息絶えるまでが
全て記録されていた。
ただ自殺の原因だけは誰にもわからなかった。
その当時は。

草間と最後に会った日。
あの日は学校は夏休みになっていたから
ほとんど誰も居ない研究室で
二人で話をしてた。
データは何処まで小さく出来るのかとか
宇宙はいつどういう終わり方をするのかとか
そもそも宇宙に終わりがあるのかとか
小説家「皆川博子」の本はどれが一番好きかとか
とりとめの無い話し。(僕は「薔薇密室」、草間は「死の泉」)
そして僕は、左手首を裏返して、手首を軽くさすって、
唇に挟んでるロケットを手首の裏側に貼り付けた。
数秒で全宇宙を知った気分。にやける。

「四月一日さーん、ここ、学校。だめでしょそれはー。」
「草間もキメたいの。やってみる。あるよ。」
「いらない。」
「何か欲しいものないの?
「実は私、二学期からマサチューセッツ工科大学行くの。」
「だから、四月一日さんと会うの最後かも、、、。
「あ、じゃあ、尚更誕生日プレゼントのお礼するよ。」
「何がいい? お金なら心配要らないから何でも言っていいよ。」
「何でもいいの?」
「絶対?:
「もう口から出た瞬間から、ごめんそれむりとか、だめですよ。」
「映の願い叶えるよ。」
「だから、言えよ。」

「私とSEXしよう。」

It is to have all begun with you. If, only as for one, my wish has a meaning.
A Shki Watanuki finally relieve my life. 300 years later.

私の願いにひとつだけ意味があるとしたら全部あなたから始まったことだけど
最終的に私の命を四季が救うの。300年後に。

blog_5 - 39

四月の雨。

NC2 night, 04:38:23
暗い空だった。
目はぼやけていてあんまりよく見えないけど
部屋中を不透明できらきらしたものがくるくる廻ったり
素早く落ちたり舞ったりしていた。

僕達が生まれた時にはまだ誕生日という制度があった。
いまは全てを連続時間でのみ表すので
それ以降、生まれてくる子供達に誕生日はない。それを祝う風習もなくなりつつある。
誕生日制度がギリギリ間に合った僕の世代にはバースデーカードを贈り合う行事があった。
今ではほとんどが特権階級のお金を使いたいだけのイベントになっている。
それもいつかみんな忘れていくんだろう。
(僕は元々バースデーイベント嫌いだから、早くなくなればいいのに。)

とりあえず縦横無尽に闇を舞うバースデーカードを
指先でタッチしてソートする。
どれも見る気なんかしない。
「要らないのに。」そう言って
目の前に浮かぶフロートデスクトップを瞳でタップ、
鮮やかなイルミネーションは全部ライブラリに落ちていった。

右目の表面を優しく押される感触。
慣れるまではアイコンタクトモバイルの
ヴァイブ機能を嫌がる人が多かったけど
今では誰もが 利用している。
慣れてみれば目の表面を優しくヴァイヴされるのは気持ちいい。

着信メールが一件。
二回瞬きしてメールを開くと、KUSAMA と表示される。

“HAPPY BIRTHDAY SHIKI
三百年目の誕生日。
あなたをずっと待っていました。
300年後のお礼をしたくて。

といっても、今のあなたに何もわかるわけないんだから
心配しないで。””

U/KUSAMA

なに?

チャイムが鳴った。
モニターを見たらピザのデリバリーサービスだったけれど
頼んだ覚えがないと伝えたら
「料金はもうもらっています、これはギフトに成ります。どうぞ受け取ってください。」
僕は母親からかなと思って
エレベーターのロックをはずした。
5分でドアのチャイムが鳴った。
モニターを見てからドアを開けて、
玄関に来るとピザをはもう置かれていて
サインを求められた。
SHIKI WATANUKI
レシート要りません、と言う前に
もうデリバリースタッフはいなかった。

誰が?

またメール;ピザ届いた? 一緒に食べたいな。VCでつないでいい?

結局あの後、草間は自家用ヘリで送ってもらうといって、
マンションの屋上にある緊急用のヘリポートに10分もしないうちにいた。
そして、僕の部屋で仮想現実じゃなくリアルに誕生日をした。
二人だけどそれほど寂しくはない誕生日。

最後の誕生日と知っていたとしても
きっと何も特別なことは出来ない。だから、これは十分幸せな誕生日だったと思う。

blog_5 - 37

茜色の空。

NC2 night, 02:08:43

草間は研究会に入会した次の日
僕と同じようにクラスに出ず、
朝から研究室で過ごした。
そして、何日か過ぎると、
いつのまにかそれが日常になっていた。

day, 8:00:00丁度に草間はアイコンタクトモバイルで
研究室のセキュリティを解除した。
草間の父親は日本を代表する電子機器やソフトウェアを取り扱う
KUSAM IndustryのCEO。

ドアが開くと草間は奥のデスクにいる僕に向けて
「おはようございます。」と言う。
僕は振り返ることなく「おはよう、、、、ね、僕眠ってないけどね。」
「え、四月一日さん、昨日から帰ってないんですか?」
「着替えとバスルームはあるからね。」
「何を研究していたんですか?」
「爆弾。」
草間が驚いて椅子に足を引っ掛けてごろんだ。
「四月一日さん。爆弾って。冗談ですよね?」
草間が僕をじっと見つめている。

「冗談だよ。」

「四月一日さん、驚かせないでください。」
その日は特にそれ以外の会話もなく6限目も過ぎた。

草間が帰ると言った時、
草間は僕に近づいて、抱き締めてキスをした。
僕はただ、草間に抱かれながら
窓に光るオレンジ色の空を見ていた。

あなたを
ずっと探してました。
300年待ったんだよ。

草間、お前は誰だ?

blog_5 - 36

グッド・バイ

NC2 day, 10:24:34

インドの王立アカデミーにわずか4歳で入学し、生命学、電子工学、遺伝子工学、脳生理学、物理学、量子力学、熱力学など、多岐にわたる分野で博士号を取得し、若干7歳にしてブレインドライブを発表。(ブレインドライブはコンピュータとしては当時のスーパーコンピュータの演算速度の一万倍を叩き出しており、且つ、自己進化型AIとして初めてヒトと対等の知能を持ったAIとして世界史に名を残す。)発表時ブレインドライブは既にヒトと比較されており、推定年齢は知能水準から12歳程度だった。四月一日四季の論文によるとブレインドライブは従来のコンピュータのように場所をとり、能力を限定する固定型の記憶装置(ハードディスク)をやめ、脳にあるグリア細胞と同じ組成構造を持つニューロマティクβシナプスを用いて(生体とマイクロマシンから成る人工神経軸索)直径約1メートル程の球体の中で拡散しているクオークと呼ばれる光子半導体コア(光速演算を行うための量子サイズの新世代CPU。DNAによく似た構造で、細胞分裂のように核分裂を行う。)の光速演算が過去と未来の情報の最適化を可能にした。その結果、ブレインドライブはコンピュータ史上初めて「忘れる」という機能を得る。この機能によって、ブレインドライブの記憶領域は無限大となった。(しかし、四月一日四季は提出した論文からその項目を削除している。)四月一日四季はそれぞれ別々な因子を持つ5体のブレインドライブを制作した。(実際には最初のオリジナル、四月一日四季がイヴと呼ぶ因子を何も組み込んでいないブレインドライブが存在する。)四月一日四季はインド王立アカデミーの助力を得て量産型ブレインドライブを発表、タイマー基礎理論を組み上げ、その権利と数々の特許権を日本政府に無償で譲渡。世界中のあらゆる研究機関、製薬会社、巨大なコングロマリット企業のスカウトマンが四月一日四季を欲しがったけれど、四月一日四季は相手にしなかった。そして、一年後、化学研究室を作ってもらえるという理由で母親が校長を勤める東京の名門藝術音楽大学附属小学校の2年に編入した。

NC3 day, 08:00:08

四月一日四季は大抵、登校しても教室へは行かず真っすぐに研究室に向かう。
そして、一日の大半を研究室で過ごした。

奥にある自分専用の机の横のハンガーから白衣を取ると制服の上に丁寧にボタンを閉めた。
いつも、こうして、何事も無く、時間だけが過ぎていく。
カリウムがあって、注射器があった。
カリウム46gをシャーレにとって、真水に溶かした。
それを使い捨てのパッチ(パッチの中に薬剤を液状で入れると皮膚との浸透圧の違いで勾配が出来
皮膚の毛細血管から吸収されていく。)に吸い込ませて、手首に貼付けたら、、、、、

数十秒それを見つめていた。(まだ、まだだめだよ。)

night, 15:24:22

四月一日四季は窓を開けた。
風が頬を優しく撫でた。(誰かに前に、同じことをされたことがあるような気がした。)

外はピアノやフルート、声楽の練習なんかで騒々しかった。
窓を閉めて、
いつもどおりに自分の机に座って
いつもどおり、なんだろ。

njght, 15:44:53

ベルが鳴った。
研究室のベルが鳴った。
僕以外にここに用がある人いるんだ。
珍しいな。

そんなことを思いながら入り口のロックを外すと、
「失礼します。」としっかりした大きな声で丁寧にお辞儀されてしまった。
僕は数秒おいてから、
「何のよう?」と言った。
(初めて彼女に逢ったとき、彼女は僕より5センチくらい身長が高かった。)

「あの、
研究化学会、、
入りたいんです。」とても真剣な顔で言った。
僕は「いいけど、僕の邪魔はしないで。」

「はい、わかりました。」
とても緊張してたみたいだ。
「座ったら」と僕が言ったらすぐに椅子を引き出して座り込んだ。

彼女は名前だけの自己紹介をした。(草間映(くさまうつる)(12))
僕は学生証を胸ポケットから出して彼女の顔の前に突きつけた。

彼女は数秒沈黙して、「しがつ、、ついたち、、さん。変わった名前ですね。」と笑った。
「しがつついたち・・・・・馬鹿かお前。」
「わたぬきしき。これが僕の名前。」
「え、これで、わたぬき、って読むんですか?」
(そうだよ。馬鹿。)

「四月一日くん、今日からよろしくお願いします。」

あんまり物色するなよ。
危険な薬剤が多いからな。

「この部って、私たち二人だけですか?」
「そう。」
「今日から二人。元々、僕の研究のために作ったような部だから。」

blog_5 - 35

No Happy Birth time

NC5 day, 00:00:00

アイコンタクトモバイルが投影する宙に浮かぶ二次元スタイル表示のデジタル時計が、丁度、day,00:00:00に変わった瞬間、メール受信を示す着信バイヴで左耳たぶが小さく3回震えた。目の前にはメール受信を示すアイコンがひらひらと浮かんでいる。それは数秒くるくると目の前を旋回しながら少しずつ闇に消えた。四月一日四季の右目前に5ミリ程のクラシックな3Dモデリングスタイルの球体が1秒おきにエモートしている。浮かぶ球体を数秒睨みながら、右手をあげて人差し指で座標をクリック。急に目の前が鮮やかに輝き出す。”Message to My Dear SHIKI.”が丸みがかった幼稚なフォントで浮かび上がった。素早く2回まばたきすると。メッセージは細かくパラバラになって闇に消えた。そのあと、暗い足下から3Tピクセルの3Dサウンド付きの花火が9発上がったが、四月一日四季はもうそれを見てはいない。金をかけた子供だまし、タイマーメールと明らかにわかるタイミング。四月一日四季は「本当にわかってないなあ。こんな手の込んだ3Dメールをあの人が作れるわけがない。僕のプロトコルも読めないくせに。」そう言うと、メールに添付された電子小切手を展開。金額だけ確認して、(”5,000,000,000,000en” )右目に映るリスト表示されたブックマークの中から、チューリヒの指定バンクへアクセス。全額、円で換金すると、インドのAAA級の割と綺麗な湖ともう使われていない大西洋を横断している海底パイプラインを無償で解体するという名目で手に入れ、それを温暖化で水不足が深刻だったアフリカの小さな国に即時、使用可能な状態で海底パイプラインをつけるという条件で、買った金額の10倍で売った。さらに幾度か取り引きを繰り返し一時間足らずで元金の数百倍に増やした。最終的にそれは36個の人工衛星になった。「まあまあかな」と呟いて、満足したように目を閉じると、スクリーンブラウザが透過して終了した。

day,01:01:20、”delete message”。

blog_5 - 34

最期の日。

NC9 33 7:21:23 AM

day,06:02:01、ブレインドライブの開発者で現在都内の高校に通う四月一日四季さん(16)が自宅マンション敷地内の管理棟屋上で死亡しているのが確認され、ハドロンPCRによる強制クロンが行われましたが、復元に失敗。120分後、ブレインドライブにより死亡認定されました。タイマーの観測マップによると四月一日四季さんは母親と同居している西新宿区滅菌エリア内の超高層ビル居住棟130階にある自宅ベランダの外壁を自分で爆破し爆風による気圧圧縮現象によりビルの外へ吐き出されるような形で引き出され、敷地内管理棟の12階屋上に落下し、死亡したとのことです。遺書等は発見されませんでしたが自殺と認定されました。ビルの管理会社広報によると爆破されたベランダの外壁は厚さ100ミリメートルの光学式透過型ネオチタニウムで出来たスケルトンフレームで覆われており、第5世代パトリオット級迎撃ミサイル程度の直撃火力に耐えられ、外壁の損害状況が、爆破の中心から20メートル四方の球体状に完全消失していることから(地面であれば200メートル四方が完全消滅させられる程度の威力とブレインドライブは解答。)四月一日四季さんが使用した爆薬の火力は相当高かったと発表しました。ただ、四月一日四季さんの部屋が完全消失してしまっているため、ブレインドライブによるタイムカウント検証が行われましたが四月一日四季さんの思考マップには自殺や爆破などの行動を示すアクティブサイン、ネガティブサイン検査どちらも異常がないため現在解答は保留とされています。なお死亡確認後、遺体はリライフ処置されましたが損傷が激しく再生不可能と解答されたため、母親は遺体の破片によるクロンを要請しました。現在、解答を待っているところです。day, 08:34:12、ブレインドライブがクロンを承認しましたが、DNAがロックされており、アンチロックの処理が行われています。day,10:22:23、解析によりDNAのロックは人為的なものと解答。原因は本人によるケミカルトラップと解答するものの、トラップの解析に24,300.033,333,543,378時間を必要と解答し、解析不可と認定、アンチロック処理も不可と解答されました。day,11:23:12、ブレインドライブによる四月一日四季さんの消失認定が行われました。day,12:45:34、先ほど、ブレインドライブが四月一日四季さんの分析保留を解答しましたが、四月一日四季さんの思考に異常がないため、承認された自殺認定を撤回し、事故と認定。四月一日四季さんは事故死と正式認定されました。公安委員会第六会議がブレインドライブに再検証要請を出しましたが、即時解答、事故死と再度認定し、ブレインドライブは生みの親である、四月一日四季さんの国葬を指示、night,08:00:00、四月一日四季さんの国葬が護国寺で行われました。国葬には世界各国の首相が参加し、現在、東京は厳戒態勢がひかれ、道路や鉄道など交通規制が行われています。

世界、?神様?
どうして、
どうして、そんなに僕が憎いの。
憎い。
痛い。
痛い。
痛いよ。
痛いじゃないか。
心なんて、
世界なんて、
宇宙だって、
どうせみんななくなっちゃうんだ。
いつでも一緒だ。

だから、
僕が速めてあげる。

きみには本当に申し訳ないと思う。
きみだけは僕に優しくしてくれたのに、
きみも巻き込んでしまうんだ。
ごめん。
きみに罪は何も無いのに、
助けることができない。
僕に出来ることは
きみの冤罪の罰を代わりに僕が受けることだけ。
さようなら。

ごめんね。
本当に我が儘だと思うよ。
だけど、
仕方ない。
僕は

小さな

小さな
小さい、幸せ
なんて、いらない。
そんなもののために
この絶望を抱えて
苦痛に耐えて
生きていくなんて

できない。

たった、それっぽっち、

そんなもの
そんな

小さな
もののために

だから、無理。

見合う価値がない。
割が合わない。

苦痛と輪廻。

僕は我が儘だから
無理だ。

我慢出来ない。

(一緒にいてあげるよ)

無理だ。
僕は世界を許せない。

三日と待てないうちに
100通り以上の方法を導いて
その中から一番最悪なシナリオを
実行する。

(小さくてもあたたかいよ)

だから、

いらないっていってるだろう。
対価に見合わない。

僕を大切にしないこんな世界、
なくなっちゃえばいい。

滅べ。

(私がそばにいてあげる)

だから、
しつこい。

僕が欲しいのは、
そんなものじゃない。
僕が欲しいものは、
例えれば

この世界すべて、

全部、全部、全部、全部全部全部全部全部、ぜーーんぶだ。

それが手に入らないなら、
こんな世界いらない。
、、、、、、

これからまだずっと
十秒だって息が詰まる。

この屈辱と嗚咽に耐えて
生きていく、なんて
、、、

もう、
嫌だ。

こんな世界
こんな世界

もう、嫌だーーーー

最期に
これだけは
お前には奪わせない。
お前に
奪われる前に
僕が、

壊す

(空が大きい、ずっと下ばかり見てたから知らなかった。綺麗だ。空気がこんなに重い。僕はまだ全部を知らなかったみたいだ)

blog_5 - 33