午前2時4分、夜の公園を歩く。

11月だった。
気がつくと、(世界各国の首脳が)この夢にかじりつくように見入っている。

いつのまにか、色々なものが変わってしまった。
(「確か、まだ6月なのに。」と呟く。とシナリオに書いてある。)

たとえば、
空は容赦なく、青く染まったし、
風は、素早く丁寧に、僕を悲しませた。

たとえば、 あのそよ風の吹く暖かな真昼の新月、
(気温18℃)
空はどこまでも青くて(端っこだけ、黒いのさ。)、
乾いた唇とのどは、話すべき言葉を忘れ、
あたまを支配するのは、憂鬱、憂鬱、憂鬱、色彩。

ちょうどいい、
このくらいの気温のほうが、
悲しみにふれやすい。
弱き心を持つものよ、世界中の恋人たちよ。

さあ、いま、悲しめばいい。
別れればいい。

それで、冷たい風があなたの頬を撫でたとしても、
それは、ほんの数秒。
それは、ほんの数日。
それは、ほんの数ヶ月。
それは、ほんの数年。
それは、
それは。
永遠に続く。
無言のパレードのように。

そして、これが
最果てのワルツなのさ。

blog_5 - 62

切り裂いて、永遠に愛しているといった、さよなら。

Apr 27 2007 10:26:34

ある日 ぼくは ギザギザの刃を持ったサカナだった。

何回も切り刻んだし、
何度も切り裂いた。

嘘でもなく、夢でもなく、

超現実的に切り裂いた
(あたり一面が黒くて冷たい深海だ

25638745219605

今までに切り裂いた数、今までに切り刻んだ数。

弱い魂をひとつひとつ並べて
数秒、眺めた後、
やっぱり、切り裂いた。

なんでも切れる。

概念も抽象も
物質以外のものも、切り裂いた。

世界中、切り裂いても
切り裂くものは、そこにあった。

そして、それらは大抵、脆かった。

暖かい気配を感じたら
ぼくは ただ それを切り裂けば良かった。

それに気付いたら 振り向いて、

(こんにちは はじめまして

一瞬で 切り裂いた。

とても簡単だったし、
幸せだった。

あるとき、気まぐれに
一度だけ 切り裂くのを やめた。

振り向くと
深い森のような 真っ暗な 悲しい目をしていて
傘もささずに雨に濡れている少女がいた。

それがまだ
名前をつける前の

さよならだった。

刃は さよならの 1mm前で ひかる。
さよならは ぼくが欲しいと言った。

それから、1年と8ヵ月を一緒に過ごした。
その間、何度も切り裂くことを迷った。

いつも途中でためらった。

(水温が上がってきている
(体温があがってしまう

さよならはいつも笑う。
深い森の目で 笑いながら、言う。

切り裂いてもいいよ。

ぼくは 何度も、何度も、切り裂こうとしたけれど、
途中でやめた。

(強い風の吹く夜に思い出すだろうか?
(あるいは冷たい雨の夜に

7カ月が過ぎた頃、
さよならを切り裂くことを諦めた。

かわりに さよならを切り裂こうとするものを
切り裂いた。

どんな小さなかけらも
切り刻んだ。

さよならはそれ以来、笑うことはなかった。
そして ぼくを憎んだ。

    終わらない闇のような 濃紺の密集した
どこまでも 続く 憎しみのための憎しみ。

(10分後に)
 
さよならは
ぼくの方を振り返り、微笑んだ。

そして、ぼくを切り裂いた。
切り裂かれながら
僕はさよならに

さよなら と言った。

さよならは ぼくに 愛してると言った。
永遠に 愛していると言った。
さらに、

永遠に 憎むとも言った。

(30時間後

僕は深海をすてて 陸にあがった。

ギザギザで作ったリングは
小指にはめた。

(切り裂いた証しに
(切り裂かれた証しに

※さよならがまだ 不幸だった頃のはなし。

blog_3 - 35

見えないものを欲しがる男。

Nov 09 2006 15:31:59
 
階段を降りて行く男
それを見ている見えないもの
回転の止まらない男
それを見ている見えないもの

未来でも過去でも夢でもない嘘をつく
ミクニ

聖歌を口ずさみながら
首をはねていく
そのリズムはワルツ

見えないものが欲しいと
階段を降りて行った男は
砂時計に出会う
(そういうのデタラメっていうんだよ)
砂時計は砂が落ちきっていて
秒を刻まない
それを見て動きを止めた
ずっと動かないまま

回転の止まらない男は目を回しながら
不毛な唄を唄う

見えないものが欲しいと唄う
けれど見えないものは
見えないままだ

けれど見つめている
目に見えないものは彼らを見つめている
(憎みながら…でしょ)

ああそうだよ
僕は憎い
彼らのやましい魂が憎くてたまらない

いくら望んでも
見えない僕を見ようと必死になって
降りたり回ったり
止まったり
首をはねたり夢見たり
そういうのがあたりまえのように
彼らには(鈍いんだ)デリカシーがない

全員死ねばいい
いまから僕が殺してもいい
(それは違反です)
知らないよ
彼らを砂の城に閉じ込めたら
気が済むかな

あなたも気が狂っているみたいだわ

僕は最終的に幻想になるからね
いいんだ
これで

…プツン

blog_3 - 30

線になる男。

Nov 10 2006 15:30:56
 
さっきから僕は線になって
普通なら誰も入ることのできない
狭さの中にいる。
その狭さは時間も空虚も空白だ。
(彼はなにを言っているの?)
(しっ! 彼は真実を語ろうとしているんだから)
空虚で細くて
でも信じて
ゆるやかな欠乏症にかかってしまったようですね。
きっと彼は細い線になりますよ。
よい線です。
先生、空白でもメールがうけとれますか?

空白には手紙さえ届きません。
では、どうやって彼と話すのですか?
(何代目かの夢の島から空虚の風がふいてくる。)
言葉は狭さの中で
とくに稀薄になる。
目には見えないし、すべてが忘却ですから
誰もそこにはいません。
灯りがもれてくるのは一本の線の反射です。

blog_3 - 29

音売りと世界の終わり。(眠りの町交差点停留所)

Nov 10 2005 15:09:47
 
指の震える音が聞こえる。
耳を澄まし
その音を濾過して
抽出できたものはひとつの手紙だった。

夢に出て来た町から手紙が届く。
「わたしは 眠りの町。
夢から覚めてもけして忘れないように
こうして手紙をかきました。
あなたがこの町に 忘れていった かけらは
いまは 町の博物館に大切に保管されています。
このかけらは 単に記憶の断片というには もったいないくらい美しく
もし、あなたさえ かまわなければ
ぜひとも この博物館のロバの耳の横に展示させていただきたいのですが
いかがでしょうか?
このかけらは 本当に 美しい。
そして 時々 かけらは 音色を奏でているのです。
その音色がまた美しいのです。

もちろん、展示するといっても
あなたがこの町へ受け取りに来られたときには
すぐにお返しいたします。
それまでの間の展示をどうかお許しください。
良いお返事をお待ちしております。」

眠りの町は
いまの僕にとっては 果てしなく遠く
複雑な道を順番を間違えずに通り抜けていかなければ
辿り着くことはできない。
いまはそのための時間と労力がない。
次に行くのは 何年も先のことになるだろう。
だから、僕は展示を許可することにした。
ただし、条件をつけて。

その条件は、
「かけらと一緒に この物語を展示すること」。

『音売りと世界の破滅』

歩くたびに音のする床の上を
ひとつ ひとつ 音を拾いながら歩く。
時計が止まってしまった。
さっきからずっと歩き続けてる。

(いつか?)

はしっこに着くと 外へ出る階段があるから
そこを降りていくといいよ。
長い階段だけど 途中に小さな窓のあるへこみがあるから。
その窓はいつも閉まっているけど
窓をたたくと 音売りがでてくるからさ。
拾った 音 は全部そこで売ってしまって。
ここで拾った 音 は外へ持ち出せないんだ。
だから 音売りに全部売ってしまって。
間違いなく全部売らないと大変なことになるから
気を付けてね。
その 音 聴いてみた?
きれいな音色でしょ。世界の終わりの音だからさ。
わかるでしょ。そういうの。
なんて言うんだっけ? そういうの。君たちの世界では。

(儚い)

ひとつ 手にとって 指で叩くと
キーンと 高く澄んだ耳鳴りのような音がした。

階段を降りる途中に 音売りのいる窓があった。
窓は開いていて中を覗くと
小さなドビュッシーと目があった。

(小さなドビュッシー)

アラベスクを弾いている。

(いつのまにか時計が動いている)

小さいドビュッシーが弾いているのは
自分の体と同じように 小さなピアノで
いつも聴いている ピアノの音色とは なにかが違う気がした。
たぶん 拾ってきた 音 と似てる。

やあ お待たせしました。お待たせしました。
音 を 売りに来たんですね。音を売りにきたんですよねー。
全部もらいます。全部もらいます。
なにも心配しないでください。 なにも心配しないでください。
即決ですから。即決。すぐですから まかせてください。すぐですからねー。
どんどん もらいますからねー。 どんどんもらいますからねー。
遠慮しないで さあ だして。遠慮しないで さあ だして。

何事も 2度繰り返した。

小さなドビュッシーは
慣れた手つきで 音 を数えている。

はい。終わりました。終わりました。
結構ありましたね。 結構ありましたよ。
お客さん やりますね。やりますね。
今日は大漁ですよ。 大漁ですよ。
これで またいい曲が作れそうです。これでまた いい曲が作れそうです。
じゃあこれ代金です。代金です。
この先を降りていくと 5分くらいで外に出ますからね。
お気をつけて お帰りください。

そして ハーモニカをひとつくれると 窓をしめた。

(ガタン)
小さなドビュッシーが 代金としてよこしたハーモニカは
やっぱり小指くらいの小さなハーモニカで
側面に きれいな貝殻細工がついていた。
試しに吹いてみると
キーンと 耳鳴りのような音がした。やっぱり同じだった。

本当は ひとつだけ 音 を残した。
さっき 試しに叩いた 音。
ポケットに入れっぱなしにして忘れていた。
階段を降りていくと 音売りが言うように 
5分も歩かないうちに外にでた。

外に出ると 彼が言っていた理由がわかった。

手が熱かった。
手に持っている 音 が どんどん熱くなっていく。
耳鳴りがして。
耳鳴りが大きくなっていく。
音 が 熱くなって。
手に持てないくらい熱くなって。
でも 離したいのに 離すことが出来ない。
耳鳴りは 手のひらを中心に どんどん広がって
手の中にあった 音 は 手の平をはみだして
体を包み込んで 
森を包み込んで 
海を包み込んで
町を包み込んで 
夜を包み込んで 
朝を包み込んで
世界全体を包み込んでしまうと 
世界から音が消えた。

そのあとは ずっと 耳鳴りだけ してた。

blog_3 - 28

曖昧な羊の境界。

Aug 23 2006 14:57:27

羊のこと。(曖昧な理由。)
いつのまにか
羊と夢がごちゃまぜになってきている。
そういうことは誰にでもありますから
心配ありません。と先生は言うが
僕にはたまらなく不快でならない。
気持ち悪くてしかたがない。
いつも先生は心配いらないと言う。
いつか 僕が自分の首を切り落として
先生に送りつけたときも先生は動じなかった。
ダンボール箱の中で
木クズの中に埋もれている僕を見て
なかなかシュールですね。と言った。
(シュール! 先生まさに目の前で起こっていることは全くの現実ですよ!)
先生はそれを見ても
誰にでもよくあることですから
心配ありません。と笑った。
(時間です。次の人どうぞ。)
とにかくぼくは境界を
作り直さなくてはいけない。
そうしなければ羊から溢れた夢が羊を満たし
夢から溢れた羊が夢を満たしてしまい
まるで境がない二つの大きな水たまりのように
端から見ると ひとつの水たまりなのに
同じ口で個別を言い合っている
道化のようになってしまう。
まず羊の定義から始めて
そのあとに夢を定義しよう。
境を分けるのはそれからだ。プツン

blog_3 - 26

語りの夢言葉。

Jul 26 2006 14:55:35
 
百年に一度 
羊の毛が全部枯れて
抜け落ちて
花が咲く。
百年に一度
真冬の真昼に羊が満開になる。
語り は
眠っているような虚ろな声で
嘘の物語を語った。
僕が ほんとに?と聞くと
満足そうに目を閉じたまま笑って
本当のはなし。と声に出さずに言うと
そのまま本当に眠ってしまった。

blog_3 - 25

語りとの出会い。

Jul 25 2006 14:51:59
 
きれいなシミですね。と 語り は言った。
増殖していくシミを見て
彼はきれいだと言った。
そうですか。けれどただのシミなんです。
シミが増殖しているだけなんです。
増殖はきれいですね。
増殖はいいなあ。
(月とは違う。
もっと増えますか?
シミはもっと増えますか?
ぼくは 語り といいます。
(語り という名前はこのとき知った。
語り はさらに続けて言った。
今夜も私の月がきれいなんです。
見に行きませんか?
ぼくは少し月に嫉妬していましたから
シミは増殖していくだけですから
月の満ち欠けのきれいさとは
根本的に違うものです。と意地悪く答えた。
私の月を見に行きませんか?
私の月のクレーターは
あなたのシミのようにきれいなんですよ。
語り の月のクレーターは
何百種類もの黄色で出来ていて
影も光も微細な粉で描いたように
精密でなめらかな境界を見ることができた。
ぼくは語りの月を見てますます
どうして このシミのことを語りが
きれいだなんて言ったのかわからなくなった。
結局ぼくはそのとき 語り を問い詰めることが
出来なかったから語りがいなくなった今は
そのときの 語り の本当を知ることはもう出来ない。
(語りとはそれから百年間一緒にいた。)

blog_3 - 24

ミクニについて。

Jul 25 2005 06:53:11
 
42573619730401。
僕は物心がついたときから
いままでずっと数を数え続けてきたんだ。と
ミクニは言った。
その言葉を聞いたあとには
ただの数字がとても恐ろしくかんじられて
まるで呪文のように僕の頭の中に響いたし
跳ね返っても また跳ね返り
その反射はいつまでたっても止まなかった。
42573619730401頭。
僕が羊を殺した数だ。
42573619730401時間。
僕の失った時間だ。
例えて言うなら
ぼくの感じた恐さはそういったものに近かった。
ミクニは片目が水晶で出来ていて
水晶をのぞくと海が見えた。
ミクニに どうして数を数えるの?と聞くと
ミクニはどんどん増えていくことが楽しいから。と言った。
増えてどうなるの?と聞くと
増えていくだけだ。と言ったあとに
ダメ?と聞き返してきたけど
ぼくはうまく答えが思い浮かばなくて
沈黙してしまった。
ミクニは少し悲しそうな顔をした。
その少しというのが あんまり小さなものだったので
悲しそうな顔が沈黙したことに対してなのか
ミクニの個人的な憂鬱なのかが
僕にはわからなかった。
この話はミクニと出会って間もない頃の出来事だったけれど
それから僕がミクニの顔を思い浮かべるときは
決まってその表情だった。
僕の中でミクニはいつも 少し悲しそうな顔で
僕を見ている。

blog_3 - 23